デュエル・マスターズ Call of Creature -神話の喚び声-   作:モノクロらいおん

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 澪の召喚口上は汐を意識しているはずなのに、ネズミくんがいつもちらつく。


シーン4 巻き戻しの許可はした

「わ、なんか強そうなのが出たわ! 澪君みたいに厳つい!」

「優しい俺はその発言をスルーしてやろう。ターンエンドだ」

 

 《憤怒の猛将ダイダロス》。それが、少なくとも今この時において、澪が切り札と定めたカードです。

 ただ一騎、悠然とバトルゾーンに鎮座しています。

 

「私のターンね……澪君」

「なんだ」

「手札がないわ!」

「さっきもなかっただろうが。今更だろ」

「私、どうすればいいのかしら? マナチャージしたら使えるカードがないのだけれど」

「マナチャージせずに手札を使うって選択肢もある。前のターンを思い出せ馬鹿」

「成程! そういうこともできるのね!」

「なんでこいつはこんなに馬鹿なんだ……」

 

 1ターン前の自分の行動くらい覚えておきなさいよ。

 

「じゃあ、3マナタップして《青銅の鎧》を召喚するわ。それで《ダイダロス》のパワーは……11000!? 強すぎない!? え? 4マナのクリーチャーよね?」

 

 その通り。《ダイダロス》はたった4コストで、パワーが11000、しかもWブレイカーという、コストに対して半端ないほどパワフルなクリーチャーなのです。

 しかしコストだけ軽くてメリットばかりということもありません。当然、高い性能には相応の代償がついて回るものです。少なくとも、この時代では。

 

「コスト対パワーの比率はバグってるが、代わりに《ダイダロス》は、攻撃するために自分のクリーチャーを破壊する必要がある」

「あらそうなの。澪君に他にクリーチャーはいないし、攻撃されないんだ。安心ね」

「それはギャグで言ってるのか?」

「《ポップル》の能力を使うわ」

「話聞けよ」

 

 澪が言うも木葉は《ポップル》をタップしてサクッとマナを増やしてしまう。考えなしなのに、あるいは考えてないからなのか、これと決まったら行動だけは早いです。

 

「おい。俺が次のターンにクリーチャーを出せば、《ダイダロス》は攻撃できるようになる。そうしたらお前のお気に入りの《ポップル》は破壊されるぞ」

「あ、そっか。ごめんなさい、マナ増やしちゃったわ」

「巻き戻してもいいぞ」

「いえ、いいわ。私のミスだもの。このままで」

「そうか。なら遠慮なく破壊してもいいってことだな」

「酷いわ澪君!」

「嫌ならとっととそのマナ戻せや」

 

 と澪は再三巻き戻しを許可するも、木葉はこれを拒否します。変なところで律儀です。でもお気に入りの《ポップル》が破壊されることについては嫌らしいです。面倒くさい女ですね。

 なんにせよ木葉は《ポップル》をタップしたままターン終了しました。

 

「3マナで《暗闇に潜む者バット・ドクター》を召喚。3マナでもう一体だ」

「…………」

「どうした」

「澪君の使うカード、あんまり可愛くないわね」

「黙れ。《ダイダロス》でプレイヤーを攻撃、その際、《ダイダロス》の能力で《バット・ドクター》を破壊。《バット・ドクター》が破壊されたことで、能力発動。墓地の《飛行男》を手札に戻すぞ」

 

 あえて澪は口にしませんが、《バット・ドクター》を破壊することで墓地のクリーチャーを回収して、《ダイダロス》の生贄を補給し続けるコンボです。

 あまりノリ気じゃなかったり、鈍っているなどと言いながらも、サラッとこんなコンボを組み込むあたり、思いのほかガチでデッキ組んできてますねこの人。

 

「Wブレイクだ」

「だぶるぶれいく?」

「一度にシールドを2枚ブレイクできる」

「へぇ、強いのね」

「最初に説明したぞ」

 

 忘れてしまったんでしょう。馬鹿だから。

 木葉は指示された2枚のシールドを捲ります。

 

「S・トリガーってあるカードは、ここで使えるのよね?」

「あぁ」

「じゃあ、S・トリガー! 《フェアリー・ライフ》よ! マナを増やすわ」

 

 S・トリガー、という言葉に澪は一瞬反応したものの、出て来たのが《フェアリー・ライフ》なら問題ありません。

 《ダイダロス》による破壊を起点に、カードを循環させていくコンボなので、マナ送りなどをされると少々厄介ですからね。

 

「俺はこれでターンエンド」

「私のターンね……あ、手札が増えてるわ澪君!」

「シールドをブレイクしたからな。デュエマはそうやって、攻撃したら相手が有利になるシステムなんだ。攻めてる方が一方的に有利なわけじゃない」

「面白いわね。それじゃあ……《雪渓妖精マルル》を召喚するわね」

 

 出て来るのはただの小型クリーチャー。特に今の盤面に大きな影響を与えない、取るに足らない存在。

 ――こいつ、ただ目に付いたクリーチャーを適当に出してないか?

 対戦ゲームというものがなんたるものかを理解していないような節があります。いや、マジで理解してなさそうですけども。

 とはいえお馬鹿な木葉さんも、いつまでもお馬鹿なばかりではありませんでした。

 

「《ポップル》はタップすると破壊されちゃうのよね……」

「今回はちゃんと学習してるな。そうだ、タップすると攻撃の対象になる。殴られたら破壊されるぞ」

「そういえば澪君、さっき攻撃しなかったわよね? どうして?」

「そんな雑魚、相手にするだけ無駄だ」

「酷い! こんなに可愛いのに! このみちゃんの次くらいに!」

「お前の評価が高いのはわかったが、絶妙にランクを落とされたのがなんだか不憫だな」

「でも、優しい澪君はきっと、私がミスでタップしちゃったからシールドを攻撃したのよね」

「妄想は自由だ。好きに思い込んでろ」

「澪君だって私のために教えてくれてるんだから、私もちゃんと学ばなくちゃ。ここはタップせずにターンを終わるわ」

「お前が知恵をつけるのなら俺は嬉しいよ。馬鹿を相手するのは疲れるからな」

 

 次のターンに忘れてないといいですね。

 

「とはいえ、だ。お前の学習は喜ばしいが、反省することが進歩とは限らない。殴れる時に殴らないと後悔するということもある」

 

 そう言いながら、澪は次のカードを切ります。

 まさか《ダイダロス》だけが切り札などということはなく。

 切り札と肩を並べるべきものもまた、切り札である、と。

 

「将軍の次はさしずめ、魔界騎士団の新軍、ってところか」

 

 小さな獣を、妖精達を、自然を蹂躙する黒い闇。

 それは一切の情けも容赦もなく、牙を研ぐ。

 

 

 

「魔界騎士団長様のお通りだ――《魔刻の騎士オルゲイト》」




 ちなみに作者はダイダロスもオルゲイトも持ってません。スーサイドビート、楽しそうなんですけどね。
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