デュエル・マスターズ Call of Creature -神話の喚び声-   作:モノクロらいおん

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 澪vs木葉、決着です。もっとサクッと終わらせるはずが、だらだら書いてたら思ったより長引きました。


シーン5 確率なんて所詮は確率

 澪は2枚目の切り札、《魔刻の騎士オルゲイト》を繰り出しました。

 

「わぁ、キラキラしてる。強そう。顔こわー。澪君みたいね」

「俺は凄く優しいから、二度目の失言も聞き流してやろう」

「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃなかったのだけれど」

「どういう意味だよ」

 

 悪口以外に取りようがない文脈だと思うのですが?

 

「えっと、それは……ブロッカー?」

「あぁ、ブロッカーだ」

 

 ――こいつ、ブロッカーなんて持ってたか?

 懐かしいと感じるカードですが、いまいち効果がうろ覚えな澪でした。

 

「ブロッカーは、攻撃を止められるのだっけ」

「そうだな。相手の攻撃に合わせてタップすれば、その攻撃を阻止してバトルがはじまる」

「パワーは6000……強いわね」

「このコストだしな。で、《ダイダロス》は……今は殴らないでおくか。下手に手札を与えても面倒だ。ターンエンド」

 

 澪は一旦待ちの構えです。

 そして木葉のターンですが、

 

「……あれ? これって私、王手(ヤバい)?」

「よく気付いたな」

 

 そう、木葉は今、敗北寸前です。

 

「お前のシールドは残り3枚。俺の場にはWブレイカーが2体と、《バット・ドクター》がいる。このままだと次のターン、お前はS・トリガーを出さない限り負けだ」

「S・トリガーががあるかどうかは、わからないのよね?」

「あぁ。どうしても知りたいなら超能力でも使え」

「成程! むむむ、シールドのカードはなにかしら……!?」

「俺が悪かったから正気に戻れ馬鹿」

 

 珍しく鋭いと思ったらこれである。

 

「うーん、あ、じゃあこれね! 7マナで《シェル・ストーム》を召喚! 相手のクリーチャーをマナに置くわ!」

「俺が選ぶけどな。《バット・ドクター》をマナに」

「でもこれでやられることはなくなったわね。一安心だわ」

「それはどうだろうな」

 

 やはり、木葉は気付いていない。

 《ダイダロス》と《オルゲイト》。この2体の布陣の意味に。

 

「俺のターン、《飛行男》と《屑男》を召喚。そして、まずは《オルゲイト》で攻撃、Wブレイクだ」

「むむむ……あ! S・トリガーよ澪君! 《秋風妖精リップル》! これは召喚できるの?」

「できる」

「やったぁ!」

「喜ぶのは生き残ってからにしておけ」

 

 澪は攻撃したのは、ここで仕留められると判断したから。

 その意味は、すぐに明らかになる。

 

「次に《ダイダロス》で攻撃、攻撃時に《飛行男》を破壊。この時、《飛行男》の能力で相手の手札を墓地へ。《屑男》の能力で、クリーチャーが破壊されるたびに俺は1枚ドローだ」

「私の手札は捨てさせるのに、自分はドローするの? 酷いわ! 確かにこれは大学で話に聞いたクズ男だわ!」

「流石にどんな屑野郎でも語尾に「~ずら」とは付けないだろうな……」

「えっと、それで最後のシールドもブレイクされちゃうのね?」

「あぁ。だがその前に」

 

 澪のクリーチャーが、破壊された。

 それがトリガーとなって、休眠した悪魔が再び、牙を研ぐ。

 

「《オルゲイト》の能力発動」

 

 タップされた《オルゲイト》が、起き上がる。

 

「こいつは俺のクリーチャーが破壊されると、アンタップする」

「アンタップ? えっと、つまり?」

「もう一度攻撃ができる」

「酷いわ!?」

 

 《オルゲイト》は味方が破壊されるたびに起き上がる。

 《ダイダロス》は攻撃するたびに味方を破壊する。

 能動的に味方を破壊することで、《オルゲイト》の隙を無くすだけでなく、守りを固めることができる

 そしてアンタップするということは、当然、それは攻撃にも転用可能だ。

 2体の悪魔が織り成す二段攻撃。

 

「え? それってつまり……私、負けちゃう?」

「俺の残るアタッカーは《オルゲイト》だけだ。こいつの攻撃を防げなければ、お前の負けだな」

「そんなぁ」

 

 起き上がった《オルゲイト》が控え、《ダイダロス》が突っ込む。

 木葉の最後のシールドを、打ち砕いた。

 

「! やったわ澪君! S・トリガーよ!」

「言っておくが、《フェアリー・ライフ》や《マドウ・スクラム》じゃどうにもならないからな」

「わかってるわよ! でも今回は違うわ!」

「……へぇ」

 

 木葉はしたり顔で、最後のシールドを表に返しました。

 

「《ナチュラル・トラップ》よ! 《オルゲイト》をマナゾーンに送るわ!」

「…………」

 

 ――トリガー3枚、か。

 

 いや、そんなものはよくあること。そもそも木葉のデッキはトリガーの厚いデッキだし、防御トリガーは1枚。妥当なところでしょう。

 ぼやきかけそうになり、澪は口を噤みます。

 

「俺はもうこのターン、攻撃できない。ターンエンドだ」

「私のターンね! シールドがもうないけど、どうしましょう」

「まあ、殴るしかないだろうな。幸いにも打点は揃ってる」

「え? あら本当だわ。いつまにかクリーチャーがいっぱい」

「《リップル》が生きたな」

 

 木葉の場には《ポップル》《青銅の鎧》《マルル》《シェル・ストーム》《リップル》……決して強力とは言い難いが、気付けば既に5体ものクリーチャーが並んでいます。

 澪のシールドは4枚。ギリギリですが、殴りきるだけの打点は揃っていました。

 

「でも、澪君がS・トリガーを出したら私も攻撃できなくなっちゃったりするのよね」

「有効トリガーを引いたらな。だがここで押さなければ、そのまま負けるだけだ。トリガーを引かない可能性もあるからな」

「ふむふむ、最後まで諦めちゃいけないってことね!」

「まあ……そうだな。デュエマは最後まで逆転の芽が残りやすいゲームだ。軽々に諦めるのは、良くないな」

 

 ――諦めないからと言って、勝てるとも限らないがな。

 澪のデッキも、決してトリガーが薄いわけではない。《デーモン・ハンド》と《アクア・サーファー》を4枚ずつ、その他にもトリガーは入っている。

 そしてそれらのカードは、今のところ1枚も見えていない。シールドに埋まっている可能性は十分あると言えるでしょう。

 澪はわざわざそんなことを言ったりはしません。木葉は興奮した様子で、攻撃を宣言します。

 

「なら諦めないわ! 総員攻撃よ! 《青銅の鎧》でシールドブレイク!」

「1枚目、ノートリガーだ。ちなみに、これは比較的上級テクニックだからすぐには覚えなくていいが、攻撃の順番でS・トリガーをケアできることもあるぞ。《スパイラル・スライダー》がマナに見えてるなら、コスト6以下のクリーチャーで先に攻撃して、コスト7以上のクリーチャーの攻撃を後に回すとかな」

「《シェル・ストーム》でもシールドをブレイクよ!」

「人が教えてやってるんだから話を聞け」

 

 続けて《マルル》の攻撃。3枚目のシールドがブレイクされる。

 

(……トリガーが来ない)

 

 1枚も見えてないはずのトリガーが、シールドからも捲れない。

 無意識のうちに、焦燥が掻き立てられる。

 

「《リップル》で最後のシールドをブレイク!」

「……期待値やら確率を計算ってのは、できて損はないことだ。高い確率を引き、低い確率を取り除く。効率的に、効果的に進むためには重要だ」

 

 最後のシールドを捲りながら、ぼそりと、彼は呟く。

 

「だが、いくら計算したって、出ない時は出ない。こういうことも、ある」

「澪君?」

「トリガーはなかったよ。運がなかったな」

 

 ――いや、こいつの運がいいだけか。

 

「じゃ、じゃあ! これで私の勝ちね!」

 

 10枚以上入ってるはずのトリガー。それらすべては1枚も捲れることなく、山札の中に。

 それもまた確率。そのような事実。

 可能性としてあり得るのならば、それはあり得てしまう。

 それが、目の前の現実なのだと、澪は目を伏せる。

 

 

 

「《春風妖精ポップル》で、攻撃――!」

 

 

 

 ――まあ、こいつに花を持たせてやった、ということにしよう。

 

 負け惜しみのように、そんなことを思うのだった。




 トリガーなんて出ない時は出ない。80%や90%でも信用できない。30%に殺されることもあれば、5%に振り回されることもある。
 確率とはそういう世界。カードもダイスも。
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