デュエル・マスターズ Call of Creature -神話の喚び声- 作:モノクロらいおん
澪は2枚目の切り札、《魔刻の騎士オルゲイト》を繰り出しました。
「わぁ、キラキラしてる。強そう。顔こわー。澪君みたいね」
「俺は凄く優しいから、二度目の失言も聞き流してやろう」
「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃなかったのだけれど」
「どういう意味だよ」
悪口以外に取りようがない文脈だと思うのですが?
「えっと、それは……ブロッカー?」
「あぁ、ブロッカーだ」
――こいつ、ブロッカーなんて持ってたか?
懐かしいと感じるカードですが、いまいち効果がうろ覚えな澪でした。
「ブロッカーは、攻撃を止められるのだっけ」
「そうだな。相手の攻撃に合わせてタップすれば、その攻撃を阻止してバトルがはじまる」
「パワーは6000……強いわね」
「このコストだしな。で、《ダイダロス》は……今は殴らないでおくか。下手に手札を与えても面倒だ。ターンエンド」
澪は一旦待ちの構えです。
そして木葉のターンですが、
「……あれ? これって私、
「よく気付いたな」
そう、木葉は今、敗北寸前です。
「お前のシールドは残り3枚。俺の場にはWブレイカーが2体と、《バット・ドクター》がいる。このままだと次のターン、お前はS・トリガーを出さない限り負けだ」
「S・トリガーががあるかどうかは、わからないのよね?」
「あぁ。どうしても知りたいなら超能力でも使え」
「成程! むむむ、シールドのカードはなにかしら……!?」
「俺が悪かったから正気に戻れ馬鹿」
珍しく鋭いと思ったらこれである。
「うーん、あ、じゃあこれね! 7マナで《シェル・ストーム》を召喚! 相手のクリーチャーをマナに置くわ!」
「俺が選ぶけどな。《バット・ドクター》をマナに」
「でもこれでやられることはなくなったわね。一安心だわ」
「それはどうだろうな」
やはり、木葉は気付いていない。
《ダイダロス》と《オルゲイト》。この2体の布陣の意味に。
「俺のターン、《飛行男》と《屑男》を召喚。そして、まずは《オルゲイト》で攻撃、Wブレイクだ」
「むむむ……あ! S・トリガーよ澪君! 《秋風妖精リップル》! これは召喚できるの?」
「できる」
「やったぁ!」
「喜ぶのは生き残ってからにしておけ」
澪は攻撃したのは、ここで仕留められると判断したから。
その意味は、すぐに明らかになる。
「次に《ダイダロス》で攻撃、攻撃時に《飛行男》を破壊。この時、《飛行男》の能力で相手の手札を墓地へ。《屑男》の能力で、クリーチャーが破壊されるたびに俺は1枚ドローだ」
「私の手札は捨てさせるのに、自分はドローするの? 酷いわ! 確かにこれは大学で話に聞いたクズ男だわ!」
「流石にどんな屑野郎でも語尾に「~ずら」とは付けないだろうな……」
「えっと、それで最後のシールドもブレイクされちゃうのね?」
「あぁ。だがその前に」
澪のクリーチャーが、破壊された。
それがトリガーとなって、休眠した悪魔が再び、牙を研ぐ。
「《オルゲイト》の能力発動」
タップされた《オルゲイト》が、起き上がる。
「こいつは俺のクリーチャーが破壊されると、アンタップする」
「アンタップ? えっと、つまり?」
「もう一度攻撃ができる」
「酷いわ!?」
《オルゲイト》は味方が破壊されるたびに起き上がる。
《ダイダロス》は攻撃するたびに味方を破壊する。
能動的に味方を破壊することで、《オルゲイト》の隙を無くすだけでなく、守りを固めることができる
そしてアンタップするということは、当然、それは攻撃にも転用可能だ。
2体の悪魔が織り成す二段攻撃。
「え? それってつまり……私、負けちゃう?」
「俺の残るアタッカーは《オルゲイト》だけだ。こいつの攻撃を防げなければ、お前の負けだな」
「そんなぁ」
起き上がった《オルゲイト》が控え、《ダイダロス》が突っ込む。
木葉の最後のシールドを、打ち砕いた。
「! やったわ澪君! S・トリガーよ!」
「言っておくが、《フェアリー・ライフ》や《マドウ・スクラム》じゃどうにもならないからな」
「わかってるわよ! でも今回は違うわ!」
「……へぇ」
木葉はしたり顔で、最後のシールドを表に返しました。
「《ナチュラル・トラップ》よ! 《オルゲイト》をマナゾーンに送るわ!」
「…………」
――トリガー3枚、か。
いや、そんなものはよくあること。そもそも木葉のデッキはトリガーの厚いデッキだし、防御トリガーは1枚。妥当なところでしょう。
ぼやきかけそうになり、澪は口を噤みます。
「俺はもうこのターン、攻撃できない。ターンエンドだ」
「私のターンね! シールドがもうないけど、どうしましょう」
「まあ、殴るしかないだろうな。幸いにも打点は揃ってる」
「え? あら本当だわ。いつまにかクリーチャーがいっぱい」
「《リップル》が生きたな」
木葉の場には《ポップル》《青銅の鎧》《マルル》《シェル・ストーム》《リップル》……決して強力とは言い難いが、気付けば既に5体ものクリーチャーが並んでいます。
澪のシールドは4枚。ギリギリですが、殴りきるだけの打点は揃っていました。
「でも、澪君がS・トリガーを出したら私も攻撃できなくなっちゃったりするのよね」
「有効トリガーを引いたらな。だがここで押さなければ、そのまま負けるだけだ。トリガーを引かない可能性もあるからな」
「ふむふむ、最後まで諦めちゃいけないってことね!」
「まあ……そうだな。デュエマは最後まで逆転の芽が残りやすいゲームだ。軽々に諦めるのは、良くないな」
――諦めないからと言って、勝てるとも限らないがな。
澪のデッキも、決してトリガーが薄いわけではない。《デーモン・ハンド》と《アクア・サーファー》を4枚ずつ、その他にもトリガーは入っている。
そしてそれらのカードは、今のところ1枚も見えていない。シールドに埋まっている可能性は十分あると言えるでしょう。
澪はわざわざそんなことを言ったりはしません。木葉は興奮した様子で、攻撃を宣言します。
「なら諦めないわ! 総員攻撃よ! 《青銅の鎧》でシールドブレイク!」
「1枚目、ノートリガーだ。ちなみに、これは比較的上級テクニックだからすぐには覚えなくていいが、攻撃の順番でS・トリガーをケアできることもあるぞ。《スパイラル・スライダー》がマナに見えてるなら、コスト6以下のクリーチャーで先に攻撃して、コスト7以上のクリーチャーの攻撃を後に回すとかな」
「《シェル・ストーム》でもシールドをブレイクよ!」
「人が教えてやってるんだから話を聞け」
続けて《マルル》の攻撃。3枚目のシールドがブレイクされる。
(……トリガーが来ない)
1枚も見えてないはずのトリガーが、シールドからも捲れない。
無意識のうちに、焦燥が掻き立てられる。
「《リップル》で最後のシールドをブレイク!」
「……期待値やら確率を計算ってのは、できて損はないことだ。高い確率を引き、低い確率を取り除く。効率的に、効果的に進むためには重要だ」
最後のシールドを捲りながら、ぼそりと、彼は呟く。
「だが、いくら計算したって、出ない時は出ない。こういうことも、ある」
「澪君?」
「トリガーはなかったよ。運がなかったな」
――いや、こいつの運がいいだけか。
「じゃ、じゃあ! これで私の勝ちね!」
10枚以上入ってるはずのトリガー。それらすべては1枚も捲れることなく、山札の中に。
それもまた確率。そのような事実。
可能性としてあり得るのならば、それはあり得てしまう。
それが、目の前の現実なのだと、澪は目を伏せる。
「《春風妖精ポップル》で、攻撃――!」
――まあ、こいつに花を持たせてやった、ということにしよう。
負け惜しみのように、そんなことを思うのだった。
トリガーなんて出ない時は出ない。80%や90%でも信用できない。30%に殺されることもあれば、5%に振り回されることもある。
確率とはそういう世界。カードもダイスも。