なんとしてでも、推しは推しとして推したい! けどパンツは見たい!   作:黒マメファナ

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パンツが見たい!

 ──あれからそれなりに経った。と言っても、夏が冬になるくらいだけど。

 俺はあの後、パスパレのイベントで知り合った近くのコミュニティを見つけて、フットサルを始めて、そこで仲間との交流をし始めた。自分を好きになろう計画の第一歩だね。

 ただ、そこで大きな問題が起こってしまったんですよ。そう、俺にとってはとっても大きな問題。

 

「もう無理大学のレベル落とす」

「ええ……頑張ろうよお」

 

 そう、元々そんなに地頭のよろしくない俺なんだけど、バイトとイベントの合間に幼馴染である松原花音に勉強を教えてもらってて、そこでなんとか中程度の成績を維持していた。ノートの取り方が壊滅的に下手っぽくて、花音が解読して、足らないところを教科書から保存してくれるって寸法でね。高校違うのにホントそれは助かってた。

 ──でも、そこにフットサルが入ったせいで勉強時間を削ったんだ。あれだよ、結果二学期中間は至上最悪の結果を叩き出して、花音にも千聖さんにも、ついでに紗夜さんにも説教をされた。マイフレンズ厳しすぎん? 

 

「そもそもだよ? 先生の話をちゃんと聞いてたらさ、このノートにはならないと思うんだけど……?」

「う……そうですね」

「ちゃんと受かろうって気……ある?」

 

 目が怖い。マジで目が怖いんだけど、いやいつものだよねぇ……花音はいつもこうやって俺を脅してくる。すると不思議に頑張ろうって気分になるんだから俺ってやっぱマゾっ気あるかもしれないと思い始めてきた。変態じゃないよ。

 今日も学校から帰ってきたら速攻で花音に捕まった。やだぁ! 昨日届いたBD見たい見たい! 

 

「叩き割るよ?」

「やめて! 泣くからね!?」

 

 目がマジだし花音は俺に絶対に嘘を吐かないので割ると言ったら割る女である。なんて悪な女なんだろう。そんなダジャレを言ってる場合じゃなくて。

 それはさておき、頑張ろう。授業中も時折千聖ちゃんに想いを馳せてる気持ち悪いオタクだからね、こういう時くらい本気出さなきゃ。

 

「そうよ、推しが泣くわよ」

「……茶化しに来たんなら帰ってもらっていいですか?」

 

 優雅にヒトんちで紅茶飲んでるところ悪いんだけど、何しに来たの千聖さん?

 そう、推しは推しでも千聖さんには普通に接そうと努力はしている。まぁ推しだし顔がいいし声がいいしでふとした瞬間ペンライト振り回しちゃうんだけどさ。こういう状況なら悪態の一つくらいはつけるようになったよね。

 

「あら、帰っていいの? 今日のパンツみたくないのかしら?」

「あのね千聖さん毎日見てるみたいに言わないで(ちょうみたい)

「……千紘、くん?」

 

 あ、やば本音も一緒に出ちゃった。でも毎日は見てないです本当です信じてくれよ! 

 制服のスカートヒラヒラさせないで気になっちゃうじゃん! 目線が思わず千聖さんの太腿に引き寄せられていたら、花音が頬を膨らませて、俺の左腕に抱き着いてきた。おお……柔らかい。

 

「どう?」

「最高……じゃなくてなにしてるの?」

「集中してくれたら……ぶ、ブラくらいなら……見せてあげられるよ?」

 

 待ってそれじゃあ股間に意識が集中しちゃうからホント。

 後千聖さんが、胸部に若干のコンプレックスのある俺の推しが明らかに不機嫌そうな顔するからさ、離れてくれるかなぁ……? 

 ──とまぁ、こう、謎にほっこりした三角関係も継続中だった。まだまだ、俺は俺のこと好きにはなれてないけど。少なくとも三人でいる状況で、俺の顔面がとか、陰キャだからとかそういう遠慮はなくなってたらいいなぁって思う。

 

「花音、交代しましょうか」

「え?」

「ご飯作る間、私が教えるわね」

「えっちなことしないでね?」

「しないわよ」

 

 千聖さん、なんと花音にまで信用がない。そりゃね、会った時から散々パンツ見せられてきたことを知ってるだろうし、ちょっとした時にパンツ見せてくれるっていう謎の日常が続いてるからそう言いたくなるのもわかる。でも待ってほしい。俺最近実は花音のパンツも見せられてるんだけど人のこと言える? 

 

「いいから、真面目にやるわよ」

「どの教科?」

「保健体育……というのは冗談だとして、数学にしましょうか」

 

 わーい数学だー。俺数Bの範囲が壊滅的なんだけど。そう言うとベクトル苦手だものねと煽られた、そうだよ! 現実の感情やらなんやらのベクトル苦手だようるさいなぁ! 

 だから私が教えてあげるのよ、とノートにめちゃくちゃ几帳面な字で、まるで板書してるんじゃと思うくらいキレイに公式やらを色を変えてわかりやすくまとめている。

 

「どう? 少しはわかりやすいかしら?」

「少しどころじゃないよ、すごい」

「でしょう?」

 

 芸能人として活動しながらも単位を確保している秘密はこういう纏め方力なのではないのかと思わせるものだった。というか推しに勉強見てもらえるとかご褒美すぎて捗る。あ、妄想じゃなくてね。

 

「頑張りなさいよ、大学」

「同じ大学行くの、千聖さん」

「どうかしらね、芸能人として忙しいし、単位取れるかどうかわからないもの」

 

 花音は同じ大学行く気らしいし、だからこうやって鬼のように勉強させられてるんだけど。

 千聖さんはその様子を羨ましいわね、とちょっとだけ寂しそうに笑った。最近また仕事が増えたらしくて、千聖さんとはあんまり会えてない。だからこそイベントやラジオの公開収録なんかには欠かさずに足を運んでるけどね。

 

「それで、今日のご褒美見る?」

「……見せてくれるの?」

「目、ギラついてるわよ?」

 

 それはしょうがない。推しのパンツは見たい。でもなぁ……変態になりたくないんだよね。いやね、パンツ見たいとか言ってる時点でアレかもしれないけどさ、花音もどんどんとそういうことするようになってさ……逆に悶々としちゃうんだよね。

 

「ヌけばいいのよ」

「サラっととんでもないこと言ったね?」

「事実じゃない」

 

 推しとか幼馴染を前にして堂々とヌくって宣言するのってどうなの。その返しで千聖さんが私でヌいてる人なんて幾らでもいるわよとか言い出した。いやそれ気持ち悪いって前に言わなかったっけ。

 千聖さんはそんな言葉まだ覚えていたのね、なんて驚きの口調で言われた。

 

「あの時私は言ったはずよ。()()()()()()()()オカズにされるのはゾっとするわよって」

「俺は見ず知らずではない、とも言いましたね」

「ええ」

 

 だからそれはつまり逆を返せば……ヌいていいってこと? と言ったら推しをオカズにしないってなんなの? 性欲ないの? と煽られてしまった。

 えっと、つまり……ああまだわかってないらしい。千聖さん、答えプリーズ。

 

「ヌきなさい、私で」

「あ、そういうこと……?」

 

 強制だった。推しにオカズを指定されるのってどういう気分? なんとも言い難いしなんなら言葉にできない気分。千紘のベクトルは既にこっちに向いてるけれど、とにやにやしながらスカートひらひらさせられてるし、ああもうこのヒトやっぱりサドだ。

 

「英語でもいいわよ」

「千聖さんは何教えたらいいのかわかんないって言ってたじゃん」

「じゃあ……ロシア語?」

「受験科目だったらよかったね」

 

 そんな適当なこと話していると、花音にもうすぐできるよお、と声を掛けられた。ううんしまった、千聖さんの言動に振り回されてすっかり揺れるスカートが気になってしまう。変態さんって言われてもしょうがないなこれは。

 でも実際のところ制服姿にエプロンつけてる花音も反則級のかわいさしてるのよ。家庭的JKって需要あるんだってね。

 

「……えっちな目、してない?」

「してない」

「してもいいよ?」

「よくない」

 

 お前までそう言うこというんだな! 二人揃って俺に対するその性的なアレに対するハードルが低すぎるんだけど、俺はこれにどうしたらいいの? いやそれに対する答えなんてわかりきってる気がするけどさ。

 

「カラダに訴えかけるのも、また一つよね」

「やめてほしい」

 

 とまぁあれ以来二人は色々な方法で俺を篭絡……篭絡かな? しようとしてくる。その中でも一番効果があった、というか反応がよかったのがやはりパンツらしい。やっぱり俺って変態かもしれない。

 

「今日は黄色よ、新品だけれど」

「わ、私はピンクだよお」

「……食事中に暴露しないでもらえます?」

 

 そしてご飯を食べて俺は花音と千聖さんを送っていく。いつものように千聖さんを先に送っていって、そして花音と来た道を戻っていくって日常。

 二人きりになった瞬間、花音はぎゅっと俺の腕を抱いて恋人同士のように甘えてくる。

 

「泊まりたいなあ」

「ダメ」

「えー」

 

 えーじゃないです。一応花音の気持ちを知って、なんとか努力してる最中なんだけど未だにこの好きって気持ちを前面に出してくるのは慣れない。特に千聖さんはあれはあれでツンデレの気質があるけど、花音はハートが飛び交ってくる。

 

「じゃあ、またねのキス?」

「そんなことした覚えないんだけど」

「今日から」

「あはは、帰れ」

 

 いじわると言われようとなんと言われようと、俺はまだ花音と恋人になった覚えはないからね。一応まだ幼馴染なのです。

 けどやっぱり花音はそんな関係がもどかしいようで、不満そうな顔をしてくる。

 

「じゃあ幼馴染やめよ(こいびとになろ)?」

「やだ」

 

 受験が近づいているせいか、秋あたりは収まっていたアプローチが復活してる。もうすぐクリスマスだということも関係してるのかもね。

 ただ、もしこれで俺がうっかりどっちかと付き合っちゃったらなぁ、今のままならクリスマスは三人でわいわいできそうだから……その時くらいまでは引っ張ってもいいかなぁと思ってたりする。

 

「じゃあ、また……明日?」

「わかった、また明日」

「……うんっ」

 

 花音を送っていき、お風呂に入ってベッドでだらだらとしていると、知らない番号から電話がかかってきた。

 ううん、誰だろう。ただワン切りとかじゃないし……ちょっと嫌だったけど恐る恐る電話に出た。

 

「……もしもし?」

『リアクションが他人行儀なところを見ると番号を登録してないのね』

「教えてもらってないからね」

『そうだったかしら』

 

 千聖さん、絶対に電話する時非通知設定にしてるじゃん。そう返事をするとしばらく間が空いてから、ああそうだったわねとまるで遠い過去のように呟いた。ついつい非通知にするのを忘れていたそうで。

 

『面倒なのよ、イチイチ設定するの』

「だからって、俺キモオタだから推しの電話番号入手して悪用するかもよ?」

()()はそんなことしないわ。それに』

「それに?」

『好きな人のスマホにライバルの名前はあるのに私の名前がないなんて許せないもの』

「なにそれ」

 

 思わず笑ってしまった。じゃあありがたく登録させてもらうよと言ったらちょっと待っててと千聖さんはなにやらスマホを操作しているようだ。使ってないからログアウトしたのだけれどとか、パスワードこれじゃないのねとか聞こえてくる。

 千聖さんの格闘を聞かされてから少し、俺のスマホに通知が届いた。SNSのフォロー通知。鍵のついたアカウントで、名前は……レオン? 

 

『私よ』

「……え、なんで」

『返事いらないわよ、すぐ解除するから』

 

 じゃあなんで? と思ったらダイレクトメールが届いた。メッセージアプリのQRコードだ。え、えっ……これ、もしかすると。答えは分かり切ってはいたけれど恐る恐るそこにあった白鷺千聖、という名前のアカウントを友達登録する。

 

『登録したわね?』

「う、うん」

『これからはこっちでも連絡するわね』

「……わかった」

 

 ついに、ついに……いやガチ恋勢じゃない以上どう喜んだらいいのかわからないけれど推しの連絡先を入手してしまった。しかも千聖さんから他愛のない話をしてくれるとか。公式アカウントのアレで満足してるオタクたち、すまんなオタク、すまんなガチ恋、俺は千聖さんにおはようって言ってもらっておやすみって言ってもらうわ。なんなら返事もらえるからな! 

 ところで幾らお支払いいたします? 月五万くらい? もっとほしい? 

 

『でたわね、貢ぎ根性とマウントお疲れさま』

「オタクだからね」

『あなたは……いつまでもそうね』

 

 多分このオタク気質は一生変わらないよ。例え千聖さんに好きだと言われようと、もしもこれで恋人として付き合ったとしても、俺は千聖ちゃんの害悪厄介認知勢オタクはやめられないし、やめるつもりもない。いつまでもイベントに顔出して他のオタクにマウント取るし、ライブでは汗掻き喉をからしながら黄色のペンライトを振るよ。

 

『千紘らしいわね』

「握手会とかお渡し会とか、ちゃんとアイドルとして対応してる千聖さんも相当だよ」

『内心キスしたいくらい嬉しいわよ』

 

 ちょ、それはドキっとするからやめてください。そんな優しい口調で……これだから女優はさ。

 焦っていると千聖さんはふふ、と柔らかく笑った。

 

『……あ』

「どうしたの?」

『空を見なさい』

「ん? なにが……?」

 

 何があるんだろうと思ってカーテンを開けると、薄暗かった部屋に大きな満月が白光を部屋に差し込ませた。

 これのことなのかな? 感嘆の声を上げた俺に対して何が見えたの? と千聖さんは問いかけてきた。

 

「月が」

『月が……どうしたの?』

「どうしたって、月がきれ──」

 

 ──ってあぶな! いくら俺でも月がキレイですねって言ったら愛していますって意味になることくらい知ってるよ!? わざと言わせようとしたでしょ今! 

 そういう誘導尋問には引っかからないからね。身構えていた時だった。

 

月がキレイね(すきよ)

「……え、あ……えっと」

『ふふ、顔が見られなくて残念だわ。かわいらしく赤くなっているのでしょう?』

 

 からかってくるね! そりゃもう今耳が熱いくらいなんですけどね。でも確かにキレイな月だった。俺は今、千聖さんと同じ空を見上げて、同じものを見てるんだなぁっていう感慨も一緒にやってくる。なんかこういうの、いいな。

 ――ああ、今すごく、俺のことを好きでいられてる。そんな気がするよ。

 

「ねぇ千聖さん」

『なぁに?』

「正直に気持ち悪いこと言っていい?」

『いいわよ』

「千聖さんのパンツが見たい(カレシになりたい)

『なら今からウチに来る?』

 

 今日じゃなくていいよ。明日でも、次に会えた時でもいいから。

 俺はやっぱりなんとしてでも、推しは推しのまま推したいって気持ちがある。千聖ちゃんを千聖ちゃんとしてオタクとしてペンライトを振っていたいんだ。

 ──でも、けどね、正直パンツは見たいよ。今まで見た千聖さんのパンツの色とか、下手すると全部覚えてるまであるよ。それはオタクとしてとか推しの、とかじゃなくて……いや前はそういう言い訳してたけど、白鷺千聖さんのパンツが見たい(すきだ)なぁってふと思ったんだ。

 

『つまりは私がスカートを捲った先にあるものを鼻息荒く見たいってことね』

「いや、まぁそうだけど」

『変態ね』

「見せてくる千聖さんに言われたくはないよ」

 

 変態なんだと思う。でも千聖さんだって同じくらい変態だと思う。すぐスカート捲るし、シチュエーション違いと言えば膝を立てて座って見せる、向かいに座った状態で捲る、膝枕してくれて顔の向きを変えた時に脚をちょっと開くとか。色んな方法で色とりどりのパンツを目撃してきた。黄色、白、黒、緑、青、紫、ピンク、後は赤色なんてものあったし。なんか意匠の凝ったものなのとか言って画像で解説しながら現物見せてくれたり、色々、ホントにこの数ヶ月で千聖さんのパンツを見てきた。推しのパンツを、これでもかというほど堪能してきてるんだよね。

 

『なにが言いたいのよ』

「ううん、いや別に……次はどんなシチュエーションかなぁって」

『そうね』

 

 とんでもない会話を、推しと繰り広げていく。楽しみにしていなさい、とか言われて俺は苦笑いをしてしまうけど、俺はそれが楽しみでしょうがなくなっているんだ。

 こう宣言した以上、千聖さんはとんでもない、所謂勝負下着で来るのだろうか、それとも案外普通かな。ああもう妄想が止まらなくなってきちゃったな。早く千聖さんに会いたいな。会って、推しのパンツが見たい! 

 

 なんとしてでも、推しは推しのまま推したい! けどパンツは見たい! イエローEND! Thank you for reading.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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