なんとしてでも、推しは推しとして推したい! けどパンツは見たい!   作:黒マメファナ

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パレオ誕生日です。遅刻しました☆


おまわりさんは怠惰でいいよ

 パスパレの白鷺千聖ちゃん担当で厄介認知勢の気持ち悪いドルオタ、それだけで白崎千紘というパーソナリティはおおよそ75%が埋まると言っても過言じゃない。実際にアルバイトも、服の値札に頭を悩ませながら買い物をするのも、体型を頑張って維持してるのも、髪の毛をいい感じにいじくるのも、全部が千聖ちゃんに生理的な嫌悪感を抱かせないためにしていることだ。いや体型維持そのものは残りの25%であるフットサルにも関係してることなんだけどね。

 そんなクソキモドルオタの俺には現在、とんでもなく大きな秘密を持っている。それは、もうすぐ大学生になろうというのに中学生と付き合ってるということだ。おまわりさんぼくです。

 

「千紘さん、お迎えにあがりました!」

「お、おお……おはよう、パレオ」

「はい、おはようございます!」

 

 それが彼女、ぱっと見た目ですぐに覚えられるツートンカラーのツインテールが特徴のかわいらしさ全開少女、パレオちゃん。本名は鳰原(にゅうばら)令王那(れおな)と言うんだけど、彼女的には基本的にはパレオと呼んでほしいらしいから、基本はパレオかパレオちゃんって呼んでる。

 

「それでは出発致しましょう!」

「おー」

 

 もはや慣れ親しんでしまったパレオちゃんのご主人様、チュチュさんからの借り物である推し活カーに乗り込み、長距離移動をし始める。新幹線という手もあったらしいがパレオちゃん的にはこの移動時間にパスパレのライブを流せるというメリットが捨てられないらしい。俺も捨てられない。

 

「……それと」

「それと、他にも目的が?」

「パレオ的には、道中ふたりきりというのが捨てがたかったので……えへへ」

 

 はい天使、パレオちゃんマジ天使。ふたりきりじゃなくて運転手さんいますよーとかいうのはこの際関係なく傍にやってきて肩に頬を押し付けてくるパレオちゃん、かわいいがすぎるが。付き合い始めてからそこそこ経ったから言えることではあるけど、パレオちゃんのためならロリコンの誹りを受けたって構わないし女オタオタと呼ばれようが気にしない。

 

「俺も、これなら新幹線よりお得だって思うからいいんじゃないかな?」

「……あ、千紘、さん……」

 

 ちょっとロマンス的にキスをしてみて、だいぶ慣れてきたなぁと思う。パレオちゃんも心なしかそんな不意打ちにトロンとした顔をしていて、そんな雰囲気がピンク色になったところで、若いカップル、広い車内、ふたりきりの空間、何も起こらないはずもなく。

 

「う……ううっ、あやちゃん……こっちまで泣けてきちゃいますぅ……」

「周年ライブは神、何度見ても神としか言えない」

「それな、です〜」

「この千聖ちゃんがちょっとうるっとしてるところがなぁ……!」

「わかります〜、普段の千聖さんを知ってるとより、きますよね〜」

「……まぁ悔しいけどそう」

「そこでスンってなるところが千紘さんらしいと言いますか……」

 

 この空間で若いカップルがヤることと言ったらそう──パスパレのアニバーサリーライブを眺めててぇてぇに浸ることしかない。むしろそれ以外に何も思いつかん。あやちさてぇてぇなぁ。

 ちなみに幼馴染さん、花音の親友である千聖さんとパスパレで俺の永遠にして不朽の推し、千聖ちゃんは俺の中で未だ別物として扱いたい気持ちが強いため微妙な顔になる。

 

「ところで、本日は珍しいですよね?」

「何が?」

「本人がやってくるとはいえ、ヒロ様がこのような都心圏外のミニイベントに行きたがること、ほぼないじゃないですか」

「ん? ああ確かにね」

「限定グッズも、パレオを頼りにされるか通販されますのに」

「まぁそっちのが便利だからね」

 

 ならどうして、とでも続けたくなるようにライブ映像ではなく俺をじっと見上げてくるパレオちゃん。対して俺は()()()()()()()があり、それを彼女に知られるわけにもいかないので話がそれるように受け答えをしていく。

 

「デートも兼ねてるから、かな?」

「さ、さすがに……それは、オタクとしてどうかと思います……」

「不意打ちでちょっと照れてる、と」

「なら……デートらしいのも期待して、よろしいのですか?」

「それは……例えば?」

「例えば、画面ではなく……パレオだけを見てくださる、とか」

 

 それだけじゃなくてパレオちゃんと手を繋いで買い物やら、ご飯やらは期待してもらっていいと思う。というかやっぱりオタクとか言いつつもふたりきりの時は自分を見てほしくなっちゃうものなんだろうか女の子って。そしてパレオちゃんが恋人らしさを求めて来る時にはいつも思うんだけど、この子は本当に中学生なのだろうか。中学生の時の同級生ってこんなにかわいかったっけ? いや元カノとか比べ物にならんくらいかわいいと思う。パレオは最高にかわいいからね。

 

「わがままなパレオを、千紘さんは、かわいいとおっしゃるのですね」

「まぁ、かわいくないパレオいないし、俺の中に」

「うう、そこで呼び捨てはずるいです」

「ほら、ガチ恋勢へのご褒美をあげないとね、おいで」

「……千紘さん、最近は本当に女の扱いに慣れてしまってきていますね」

 

 (パレオ)の扱いに、だけどね。付き合ったはいいものの最近は受験やらでバタバタしてたから、こうしてゆっくりと二人で過ごせるのも久しぶりだったりするから、その分待っててくれたご褒美はちゃんとあげないと。膝の上にやってきたパレオを抱き寄せると素直に甘えてくれる。ああもう本当に、俺ロリコンでいいです。そう思えるくらいにパレオが愛おしかった。

 

「今日は、そのまま現地にお泊りなので」

「うん、そうだったね」

「ちょっとだけ、気合を入れておきました」

 

 短めのスカートをめくり、頼んでないのに黒くてちょっと大人っぽいパンツをあらわにするパレオ。懺悔しますが俺は中学生にパンツを見せられて喜ぶ変態です。いつものかわいいを基調としたパレオちゃんのパターンとは全く別種の、あるいは少女ではなく女性としてのパレオちゃんの成長、羽化を見てしまったかのような──もうこれ優勝でいいよ。はい優勝、おまわりさんぼくですけど合意なのでセーフですよね? 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ──はっきり言って、今回の限定イベントのグッズは大当たりの部類だと思う。ブロマイドも缶バッチもカメラマンの腕がよかったのかすごく映え映えだった。千聖ちゃんマジで透明感があって、ああもうマジで、神はここにいたのかというような、自分で持ち歩いてるブロマイドのケースとファイルを本気でそろそろ収納から神棚に移動させようか悩むレベルだ。

 

「レートは甘く見積もって四倍くらいでしょうか」

「えぐいな、現地でよかった」

「現地でなくてもパレオがおりますよヒロ様♡」

「いや、パレオちゃんに頼りきりはよくない」

「そんな! 自分で歩かなくてよろしいのですよ? パレオがずっとずっと、推して差し上げますから〜♪」

 

 いやダメにしてこようとするな。積極的に推しをダメ人間にしようとしてくるの怖すぎだろ。

 そんなパレオがご機嫌な理由はグッズの当たり具合もそうなのだろうけど、やっぱりミニイベが終わった夕方からゆっくり現地を観光というかデートできていることなのだろう。

 

「正直パレオ、千紘さんと腕組んで歩けるだけで蕩けそうなくらい幸せです!」

「俺はパレオがそれだけで幸せそうで幸せだよ」

「‥……それなら、パレオは安心です」

 

 デートと言ってもイベントがあったビルの近くにある大きな駅周辺の街中や駅の中にある商業施設を歩くだけで、これなら都心から出た意味がないかのように思えるが、そうじゃない。

 そもそもパレオと一緒に駅を歩くことも少ないからっていうのが大きな理由だ。そもそも冒頭で言ったけど、中学生と付き合ってるってバレたら通報されかねない案件だから大多数の人間には秘密にしてるんだよね、パレオとの関係を。

 

「その点出先ならほぼ気にする必要ないから」

「四年の隙間は、遠いですね」

「……うん」

 

 俺だって、もっと堂々とデートしたい。パレオは俺のカノジョですよって言っていたい。でも、高校生が──しかもよりによってあと一週間もすれば高校生でなく大学生になる俺が、一週間経ってもまだ中学生のパレオと付き合ってるというのは、何よりもパレオにいらない世話を掛ける。俺なんて批難されてロリコンと揶揄され、石を投げられるだけで済む。

 ──でもパレオは、パレオは俺という最低なロリコン男に騙された()()()()()な女の子になってしまう。パレオが泣きながら好きだと、傍にいたいと告白してきたそれを、かわいそうってとんでもなく無責任な言葉で片付けてしまう。そんな無責任さから、俺は彼女を守ってあげたいと思った。

 

「それじゃあそろそろ、ホテルに戻ろうか。レストランも予約してるし」

「はい」

 

 一通り楽しんで、イチャイチャして、それからレストランへとやってきた。髪色そのままでいいよと言われたせいなのかご機嫌そうにツートンカラーのツインテールを揺らしながら隣を歩いて、ホテル内のレストランのエントランスにパレオが入ると、パンッと乾いた破裂音のようなものがした。

 

「──え?」

「せーっの!」

「パレオちゃん、お誕生日おめでとう!」

「え、えっ……ええええ!?」

 

 まぁ正確には日付が変わる四時間後になるんだけど、俺がこのイベントを知った時にチュチュさんにこっそり頼んで、パレオちゃんの誕生日を祝ってくれるサプライズのパーティを予定していたのだった。ゲストには彼女は来てくれなかったけれど、そこには恐らくパレオが泣き崩れそうになるだけのサプライズが待っていた。

 

「パレオさん、いつもイベント参加してくれてありがとうございますっ!」

「フヘヘ、ジブンもささやかながらサプライズのお手伝いをさせていただきました」

「パレちゃんへのプレゼントもあるよ!」

「あ、え……そんな、こんな、こんな贅沢なこと、も、もしかして夢……?」

「あら、夢ではあるんじゃないかしら? オタクがアイドルに囲まれて誕生日を祝ってもらえるんだもの」

「喜んでくれて嬉しいなっ! でも、これを考えたのは千紘くんだから!」

 

 今日ほど、今日ほど本気で俺がパスパレのオタクの風上にも置けないくらいアイドルとプライベートで知り合いであることを感謝した時はなかったよ。そしてパレオがパスパレみんなに認知されてることも。

 というか千聖さんに相談して、最初は千聖さんだけがお祝いしてくれる予定だったのに、彩が割り込んできたと思ったらあっという間に、こんな贅沢なサプライズパーティになったんだから彩の発案でしょう。

 

「千紘さん……パレオ、パレオは……私は」

「ほら、いいんだよ、一日前とはいえ誕生日なんだから、贅沢してさ」

「パレちゃんのために用意したケーキあるよ!」

「とっても大きなケーキです!」

「わぁ……」

「ところでこれ、私たちだけで食べられるのかしら?」

「さ、さぁ……チュチュさん、やりすぎだよ」

 

 まるでメリーゴーランドのような装飾がつけられた──これ何号ケーキ? 俺の両腕に収まりきらないくらいの直径のケーキが中央には置いてあった。十四本のロウソクが飾られており、淡いパステルカラーのピンクと水色、黄色、緑、紫で埋め尽くされた配色が、パレオのかわいいと好きが詰め込まれているようだった。

 ──息を吹きかけ、一つ一つを消し、そして拍手が場を満たした。

 

「こんな、こんな幸せでいいんでしょうか……!」

「いいよいいよ! 誕生日おめでとうパレちゃん!」

「おめでとうパレオちゃん!」

「あ、ありがとうございます……っ!」

 

 すごく嬉しそうで幸せそうでよかった、と頷いていると後ろから咳払いと肘で突かれる。そこにいたのは千聖さんで、どうしたんだろうとそちらに目を向けると小さな、俺にしか聴こえない声で表情と口をほぼ動かすことなく話しかけてきた。その能力なんなの。

 

「よかったわね」

「本当に、よかった」

「ふふ、あなたは……そんな顔をするのね」

「え、どんな顔?」

「教えてあげないわ」

 

 え、めっちゃ意地悪言われて落ち込んでしまった。こうプライベートは幼馴染の親友として頼りさせてもらってたのに。

 千聖さんはそんな俺の抗議に対して意に介さずに、パレオに抱きついているイヴちゃんと日菜ちゃんを引き剥がしに向かったことで、入れ替わりでパレオがやってきた。

 

「千紘さん……っ!」

「楽しそうで、なにより」

「こんな楽しい誕生日パーティは、初めてです!」

 

 よかった、本当に。俺の初めてのサプライズはとんでもなく大成功を収めたことがパレオちゃんの顔でよくよく伝わった。誰かのために何かをするって経験が足りなくて、どうしようかと散々頭を悩ませていたから、正直ほっとしてる。

 ──だけど、パレオは急に不安そうな顔をして、俺は首を傾げた。

 

「どうしたの?」

「あ……い、いえ」

「ん?」

 

 ただ答えは得られず、パレオちゃんは彩のところに行ってしまった。まぁとりあえず、俺は満足感に浸りつつはしゃぐ少女たちを眺めてほっこりしていたのだった。

 よくよく考えると気持ち悪いけど、時々は彩とか千聖さんとかが話しかけてきてくれるからまぁ空気にならずには済んだかもしれない。

 

「はぁ、食べたねパレオちゃん」

「はい」

「……なんか、元気ない? なんか、嫌だった?」

「あ、いいえ! 嬉しくて、幸せでした! とっても、とっても……」

 

 とは言いつつ、ホテルの部屋に戻ってもパレオちゃんの表情は決して晴れているとはいえなかった。

 もしかして、なんかやらかしたか? それともパレオちゃん的には推しに誕生日を祝ってもらうのが解釈違いだったか? そんな風にオロオロしていると、パレオは泣きそうな顔に見えた。

 

「──パレオ、先にお風呂いただいてもよろしいですか?」

「あ、あーうん、行ってらっしゃい」

 

 そのままお風呂に入ってるのを待っている間、考えていたけどわからなくて、わからないままパレオちゃんが──ウィッグを外して腰くらいまで届くんじゃないかってくらい長い黒髪を降ろしたパレオちゃんが、なにやら刺激的な姿で表れた。

 下着がスケスケ、というか、パンツ紐だ。面積も少ないそのピンクのパンツとおそろいな感じの胸以外は半透明の上は、えっと確かネグリジェだっけ、そんな格好だった。

 

「ぱ、パレオ……ちゃん?」

「パレオは、私は……確かにドルオタです。どうしようもなく」

「うん……」

「ですから、パレオは、()()()()あのパーティでとても幸せでした」

「……なら」

「同時に、ドルオタであると同時に──私は、千紘さんの、恋人です」

「うん」

「ですけど……私は恋人に誕生日を祝ってほしいと思うのは、私だけを見てほしいと願うのは、わがままでしょうか?」

 

 その言葉に泣きそうな、けれど必死な顔で、パレオは、れおなちゃんは俺に抱きついてくる。

 ──恋人として祝ってあげてない。確かに、俺から、俺だけの気持ちでおめでとうは言ってない。俺は、パスパレのみんなを使って言わせただけだ。恋人としては、なんにもしてあげてないにも等しかった。

 

「ごめん、れおなちゃん」

「……千紘、さん」

「俺は、なんてバカなんだろうな……これで、これがプレゼントだなんて本気でバカなこと考えてた」

「……そう、だったのですね」

 

 でも、それじゃダメだった。それじゃ、彼女は満足しなかった。

 パレオが、れおなちゃんが求めていたのは、俺からのプレゼントであり、俺からのお祝いだった。だから、だからこそ、彼女は不満げだったし悲しげだったのだ。

 ──これだけなのですか? 本当は、そう言いたくて仕方がなかったんだ。

 

「明日も」

「はい?」

「明日も、デートしよう。帰りは遅くなっちゃうけど」

「は、はい……!」

「そして、改めてお祝いするよ……車の中でもいいなら」

「もちろんです! 帰りは二人でケーキを食べたいです!」

「うん、わかった」

 

 でも俺のミスを彼女はこうやって笑って許してくれる。明日への期待に変えてくれる。

 安堵した彼女が離れたことで、入れ替わりでお風呂に入って、ハーフパンツとシャツというラフな格好で戻ると既に彼女の髪はツートンに、黄色とピンクに変わって、恐らく散らばったり引掛かかったりしないようにお団子でまとまっていた。

 

「ちひろさんっ」

「わ、ところで聞きそびれたんだけど……その格好は」

「パレオなりの、覚悟……というか、ホテルのお泊りということだったので、パンツの色(シチュエーション)を変えてみたいと思いまして」

 

 すごい、パンツの色って書いてシチュエーションって読むんだ、勉強になるなぁ。というか変わってるの色だけじゃなくて、何もかもなんだけど、パンツがギリギリ隠れないくらいのネグリジェは夜の街明かりだけでもスケスケの透明感があり、彼女の腰回りやお尻周りのシルエットをより、俺に意識させていた。

 

「パレオの誕生日なのに、いいのかな?」

「むしろこの上ないプレゼントです……千紘さんの愛をいただけるのですから♡」

 

 日付が変わるタイミングでパレオを抱き、唇から愛を分け合う。翌日のデートでアクセサリまで買ってしまって、これが千紘さんからの首輪なんですねとか言うと本気で犯罪じみてきてしまうのでやめてほしい。ああもう昨晩のことを考えれば犯罪者でいいや、もうロリコンでも変態でも最低犯罪者でもなんとでも呼びやがれとヤケになりそう。おまわりさん、どうか俺のことを見つけないでくださいね。

 

 

 

 




パレオの呼び方が安定してないのは恋人とオタ友の狭間だからという解釈でお願いします。
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