破壊と殺戮と闘争を好むという伝説の戦士。
その伝説に応えるかのように。
圧倒的な気の上昇と痛みを感じない頑健な肉体を併せ持つ、超サイヤ人が現れた。
真・超サイヤ人ーーこの力が孫悟空とバーダックにもたらすのは勝利か?
それともーー。
惑星サイヤの王宮。
その中に作られた常世の石材を使った頑丈な闘技場。
二人の黄金の戦士と紫色の猫の顔をした破壊神が睨み合う。
二人の黄金の戦士の内一人。
赤いバンダナに黒と緑を基調とした色合いのバトルジャケットを着た男ーーバーダックは、天に黄金の髪を逆立てて翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で破壊神ビルスを見据えたまま告げる。
「テメエがフリーザもビビらせる破壊神ビルス。確かにとんでもねえ力を持ってるようだな…」
ビルスがこれに目を細めて笑う。
「知っていてもらえて光栄だよ。悟空の父親だそうだが。少しは楽しませてもらえそうだね」
「ハン。この俺を相手に、んなナメた口利いてるとケガするぜ?」
「フフ。はじめて会ったときの悟空を思い出すね。ホントによく似た親子だ。君にも躾をしないといけないかな?」
「やってみやがれ! 言っとくが、力が並外れてるだけのガキに負けてやるほど、俺はお人好しじゃねえぜ」
この二人のやりとりに悟空が真・超サイヤ人のまま不敵に笑う。
「…父ちゃん。ビルス様を怒らせっと世界がヤベエんだ。あんまり挑発しねえでくれよ?」
「あん? ナメたこと言い出したのはあの猫野郎だろうが」
不機嫌そうに睨みつけてくる自分と同じ顔の父親に、思わず悟空は肩を落とした。
「……ベジータの奴。よりにもよって、何で父ちゃんをこっちに寄越すんだ……」
真剣な表情で悟空は静かにグチをつぶやいた。
対するビルスはニヤリと笑ってバーダックを見据える。
「悟空ほどの力はないし、真・超サイヤ人のパワーもさっきから無駄に引き上がっていってるみたいだね? そのままだとエネルギー切れが目に見えてる訳だけど、それで僕の相手がつとまるかな?」
瞬間、バーダックが凄絶な笑みを浮かべてビルスの目の前に現れる。
ビルスも牙を剥き出しにした笑みで拳を握って応戦した。
ぶつかり合う両者の拳。
力任せのバーダックの拳に対し、ビルスの拳はきちんと武道を学んだ者の動き。
(…ん? コイツ)
しかし、ビルスの目は鋭く細められる。
先の一撃に彼なりに驚異を感じることがあった。
破壊神としての彼の勘だ。
(悟空に比べて荒削りな動きだ。アイツも天衣無縫というか。好き放題な動きをするけれど、こいつのは更に我流。しかし、実戦慣れした動きだな)
目を細めながら拳と蹴りを繰り出し合い、ビルスはバーダックを評価した。
互いに拳と蹴りを繰り出し合いながら、バーダックは驚異的なスピードでビルスのレベルに辿り着いてくる。
右の中段回し蹴りを右腕で受け、ビルスは左の拳をバーダックのボディに突き刺す。
「ぐぅ!?」
そのまま掌を開いて光弾を放つ。
「ぐぉおお!?」
悲鳴を上げながら、バーダックは地面に叩きつけられた。
「父ちゃん!!」
思わず悟空が声を張り上げるも、彼が動くよりも速くバーダックは立ち上がり、黄金のオーラを更に激しく燃やしながら空をかける。
「調子に乗ってんじゃねぇええええ!!」
ビルスも拳を繰り出す。
怒りに任せた荒々しく大振りで、しかし鋭い拳がビルスの拳と激突する。
バーダックの左手に青い気が凝縮されている。
ビルスが目を見開く。
「! まさか!?」
左手を突き出しながらバーダックは叫んだ。
「くたばれぇええええ!!」
青い光のドームが掌からビルスに向かって放たれて出来上がり、一気に全てを飲み込んで気柱を天に突き立てる。
煙の向こうから両腕を交差させ、紫色の破壊の光を掌に宿したビルスが現れた。
ガードした腕を下げて、鋭い瞳で静かにバーダックを見据える。
「なるほど、戦闘センスに関しては中々のモノを持っている。天才ーー。僕はあまり使いたくない言葉だけれど、君にも当てはまる」
「…くだらねえ。天才だと?」
するとバーダックは拳を握り締めて告げた。
「コイツは俺が敵と戦い続けることで作り上げてきたものだ。勝手に”天才”なんて安っぽい言葉で片づけんじゃねえよ」
「……フ、言うじゃないか。真・超サイヤ人のレベルも悟空と同じくらいに引き上がったようだし。そろそろ始めようか?」
言うとビルスは全身に破壊の力を凝縮させた紫色の神の気を纏い出す。
これに悟空もバーダックの隣に来て、激しい黄金の気を纏う。
「気に入らねえな。テメエ、俺の力が引き上がるように動いてやがったのか?」
「当たり前だろう? 金色のフリーザ程度の力じゃ僕と同レベルになった悟空の足手まといにしかならないよ。戦いとは同じレベルでなければね?」
瞬間、バーダックの気が一気に膨れ上がった。
「……どこまでもナメやがって。神だか何だか知らねえが、後悔させてやらぁああ!!!」
同時に孫悟空も翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳を見開いて吼えた。
「そういうこった、さっさと続きやろうぜ? ビルス様よぉ!!!」
真・超サイヤ人二人の怒りの気を受けて、ビルスも凶暴な笑みを返す。
「笑わせるな。ナメているのはお前たちだろう? 破壊神の恐ろしさをねぇ!!」
同時、二つの黄金の光と紫色の光が中央でぶつかり合い。
白い光が空中に浮かびながら、中心で三人の戦士が激しい打撃戦を繰り広げ始めた。
それを見上げながらウイスは静かに笑う。
「あらあら、すっかり全宇宙武道大会のことを忘れてお楽しみのようですねぇ。ビルス様」
微笑みを浮かべたウイスは静かに瞳を閉じ、死者の都に通じる階段を見据える。
「……あちらも、負けじと派手に戦っているご様子。お互いの力を感じて更に燃えているようですねぇ」
口元を手で隠してウイスは笑う。
「正義でも悪でもなく、ただ純粋に戦うことにしか興味のないサイヤ人ーー。神の域にありながら野心を持たず。ただただ、拳を磨くのみ」
破壊神を本気にさせたサイヤ人・孫悟空。
その父親・バーダックの戦いを見据え。
対峙する満面の笑みのビルスを見てウイスは微笑んだ。
「ビルス様が心から満たされている。感謝しますよ、悟空さんにバーダックさん」
ビルスの破壊の力を纏った左裏拳が、悟空の背後からの回し蹴りを受け止める。
同時に右手を開いて顔の横に置き、強烈なバーダックの右拳を受け止めた。
力をゼロにしたにも関わらず、激しい衝撃が巻き起こり爆風を巻き起こす。
三者の表情は様々だ。
破壊の力で威力を殺しきれなかったことにビルスは目を細め。
孫悟空は冷徹な瞳を持ったポーカーフェイス。
バーダックは同じ眼をしながらも口元を凄絶に歪ませて笑う。
瞬間、三人は入り乱れての打撃を交換し合う。
自分よりも一回り上のパワーと自分と同等のスピードでコンビネーションを繰り出してくる親子に、ビルスは破壊神となって得た武の技を持って応える。
真っ向から攻撃を繰り出してくる真・超サイヤ人達に対し、ビルスは時に受け流し。
時に力を使って威力を殺しながら、こちらも打撃を繰り出してピンポイントで当てることで相殺していく。
ただ相殺するだけではない。
力を一気に高めて真・超サイヤ人の纏う気をほとんど消してしまい、強烈なカウンターを繰り出してくる。
それをバーダックは野生の勘とも言うべき動きで、悟空はビルスとの手合わせから体に覚えさせた動きで紙一重で避ける。
ビルスのカウンターの一撃を紙一重で避けた親子は同時に右拳を繰り出した。
ビルスは咄嗟に体を反転させて、右手と左手で前方からの悟空の拳と後方からのバーダックの拳を受け止める。
「この短時間で僕の力でも消しきれないほどに気を高めたというのか?」
「みてえだな。俺も正直、ここまで上手く行くとは思っちゃいなかったがーー」
真剣な表情で語り合うビルスと悟空。
と、バーダックが肩を揺らしながら笑う。
「ククク、ようやくナメた笑みが消えたな? 破壊神よぉ!?」
これにビルスが口の端をニッと歪めて告げる。
「まさか、この程度の闘いで僕が態度を改めると思っているのか? だとしたらーーナメているのはお前だよ!!」
「ーー!!」
悟空の拳を押し離して距離をとり、ビルスは一気にバーダックに襲いかかる。
強烈な打撃の応酬。
右ストレートが互いの顔をのけ反らせる。
「ぐぅ!?」
「へっ! ようやく一撃だ!!」
「ほざいたな、サイヤ人!!!」
顔を仰け反らせながらも、勝ち誇るバーダックに破壊の力を纏わせた拳を振りかぶるビルス。
左腕で受け止めた瞬間、バーダックの纏うオーラが一瞬消える。
「エネルギー切れから再び気が上昇するまでの数瞬。それがお前達、真・超サイヤ人の弱点だ!!!」
「っ!!」
避けようとするバーダックの前に「悟」のマークが描かれた山吹色の道着の背中が現れる。
「カカロット!!」
悟空は右手に満ち々ちた黄金の拳を繰り出す。
「やらせねえよ、龍拳ぇええん!!」
黄金の龍の気が悟空の拳に纏わり、ビルスの拳とぶつかり合う。
力と力のぶつかり合い。
両者の放った龍の気と破壊の力は、互いに相殺してゼロになる。
「こいつ!! 僕の力を相殺しやがった……!!!」
瞬間、バーダックが悟空の背から跳び上がるように横に体を回転させながら、左手に気が満ちた黄金の拳を繰り出してくる。
「これでーー最後だぁあああ!!!」
繰り出された拳から、悟空の龍とは違う、サイヤ人特有の大猿が牙を剥いてビルスに襲いかかるイメージがわいた。
「龍の次は猿か? ナメるなよ!!」
紫の光を放つ左手を前に構え、強烈な拳を受け止める。
バーダックの放った拳から黄金の気が消える。
だが、同時にビルスが驚愕に眼を見開く。
(左手が、痺れた? しかも、この僕が一瞬とはいえ押されたというのか? こいつの拳に!?)
バーダックが右手に青白い光の球を作り上げ、オーバースローで放った。
「吹っ飛びやがれ、猫人間!!!」
放たれた光弾はジャイロ回転しながら光線に変わり、破壊神ビルスの眼前に迫る。
直撃したと見えるタイミングで、バーダックの背後にビルスは現れた。
「…なっ!?」
鋭い飛び蹴りがまともにバーダックの顔面に入り、地面に叩きつけられる。
それを見下ろし、ビルスは真剣な表情で告げた。
「避けないとヤバイくらいの技だ。普通は上がった身体能力と気を使いこなせないものなんだが、恐ろしい勘をしている。悟空より上かもしれないね」
「…父ちゃん! 無事か!?」
ビルスから目を離さずに、悟空は声に出してバーダックに告げる。
バーダックはゆっくり立ち上がりながら、黒髪に戻ってフラついて現れた。
「…ち、畜生。エネルギーが、切れやがったか」
倦怠感と脱力感、体中に走る痛みで、意識が途切れそうになりながら、バーダックはビルスを見上げる。
「自分の力を使いこなせなかったとは、情けねえ…」
「…いや、真・超サイヤ人。お前達は完全に力を使いこなせているよ」
バーダックの自嘲気味の言葉をビルスは真剣な表情で遮り、告げた。
「だが、悟空やターニッブと違ってお前は基本能力値が神のレベルに達していない。真・超サイヤ人の力で引き上げても、肉体の基本能力が足りないから、こいつらより時間切れが早いのさ」
「…要は実力不足ってことかよ、畜生」
心底悔しげなバーダックにビルスは、笑いもせずに告げる。
「お前で実力不足なら、世の中のほとんどの戦士はゴミ以下になるね。胸を張れ、お前は破壊神ビルスに本気を出させたのだ。お前が卑下すれば、僕の本気まで軽くなる。僕はそんなのはゴメンだからね」
「ケッ、アンタに勝てなきゃ意味ねえよ!!」
「…本当に、よく似た親子だ」
フラつきながらも吠えるバーダックに、ビルスは微かに優しい笑みを浮かべてみせた。
そんなバーダックの隣に悟空が超スピードで動いて現れ、支える。
「…父ちゃん! しっかりしてくれ!!」
「安心しろ、命に別状ねえよ。意識が途切れそうだってだけだ。そんなことより、カカロット。テメエは役立たずの俺に構ってる場合かよ?」
「…父ちゃん」
「…俺にできなかった事。フリーザの時みてえにもう一度託す。破壊神の野郎にサイヤ人の誇りを見せてやれ、カカロット!!」
力強いバーダックの言葉に悟空は翡翠に黒の瞳孔が現れた目を向けて頷いた。
それにバーダックは満足したように笑う。
ウイスがバーダックの隣に現れ、体を倒れないように支えた。
「…テメエ」
ウイスがニコリとバーダックに笑い、悟空に向かって頷く。
ポーカーフェイスの悟空は静かに頷くと空にいる破壊神ビルスの元に飛び、黄金の気を纏って対峙した。
「さあ、いよいよ決着だな。本気と本気の闘いだ」
ビルスが構えると、悟空は静かに拳を握り締めて告げた。
「…俺は、地球育ちのサイヤ人。アンタを超えるため、強さと穏やかさを兼ね備えた超サイヤ人ブルーを経て目覚め、野生の勘と圧倒的なパワーを持った超サイヤ人4を得てようやく使いこなせた超サイヤ人の真の姿!!」
黄金の気を纏い、両腰に拳を置いてオーラを高める。
「これが真・超サイヤ人ーー孫悟空だぁ!!」
「……来い!!!」
ビルスが叫ぶと同時、悟空が消える。
目の前に現れた拳を掴み止めるビルス。
互いに睨み合う。
「…超サイヤ人ブルーのような神がかった予測も、超サイヤ人4のような野生の勘もない。ただ、純粋な気による能力の強化。孫悟空という人間そのもののセンスが問われる変身だな」
「…ああ。無理矢理引き上げられてると感じてたが、今分かったよ。この姿は、気が上昇すっからダメージ無しでどんな奴とも殴り合えるってだけで。超サイヤ人ブルーや超サイヤ人4みてえな、便利なもんは何もねえってな」
「破壊神ビルスを相手にして、最も不利な変身だ。気がどれだけ上昇しようと、僕の破壊の力で消せないものはない。消された瞬間に自動的に気が引き上がったところで、僕はその前にお前を攻撃できる。さっきのバーダックのようにね」
ビルスの言葉に悟空は何も言わない。
ただ、突き出した拳を引いて構えを取るだけだ。
「見せてもらおう、孫悟空そのものと言える今のお前の実力を!!」
「…行くぜ、ビルス様」
ぶつかり合う両者の拳。
しかし、ビルスの破壊の力をまともに受けても悟空の気が消滅しない。
これにビルスの目が細まる。
「…そういうつもりか!!」
悟空の気が両手と足に満ち々ちた状態で繰り出される。
気が無限に高まる真・超サイヤ人だからこその芸当だ。
凝縮された気による盾を両手足に纏わせ、破壊の力を受け止めて本体に影響が出ないようにしている。
普通の超サイヤ人でやると簡単に気を消費しきり、動けなくなる事まちがいない。
「…これで五分と五分さ! アンタの破壊の力を俺の真の力で受け止めてやる!! コレで、余計な手間はねえ。後は殴り合いの強い方が、勝つ!!」
「肉弾戦なら、分があると思うのか? あまり僕をナメるなよ、悟空!!」
再びぶつかり合う両者。
拳と蹴りを繰り出しあい、超スピードで空を陸を所狭しと駆け回る。
黄金と紫色の光が幾筋も描かれ、火花と衝撃波が、無数に発生する。
ビルスは思う。
はじめて闘った悟空は超サイヤ人ゴッドの力を吸収した状態で超サイヤ人になった。
あの闘いを思い返す。
あの時は、大きな力の差があった。
だが、今は全くの互角だ。
破壊の力を使った上で全力の自分と、悟空は互角の戦いを演じている。
「…フン、余計な予測や勘がない方が強いじゃないか。お前本来の動きに磨きがかかるみたいだな」
互いに拳を顔面にぶつけ、のけ反るも更に速く動く。
「ああ、基本がしっかりしてねえと。この変身はガタが来るのが早いからな。徹底的に鍛えたさ」
真剣な表情で殴り合う両者には緊張感がある。
真剣勝負特有の、ひりつくような気配。
ビルスをして、はじめての経験だ。
ラッシュを互いに繰り出しあい、手数で勝負する。
どちらも打ち負けない。
まともに顔で受け、首をのけ反らせる悟空。
首がねじ切られるように横面が吹き飛ぶビルス。
拳が蹴りが、互いの肉体に炸裂しては吹き飛ぶ。
互いにのけ反るも一瞬、悟空が打ち勝って体勢を整え、のけ反るビルスに右ストレートで殴りかかる。
瞬間、ビルスの肉体は眼前から消えて背後から悟空を殴り飛ばした。
「…ぐあああ!!」
地面に叩きつけられた悟空に、ビルスが肩で息をしながら両手を頭上に掲げて叫ぶ。
「終わりだ、悟空ぅうう!!!」
恒星のような巨大で赤い炎の球が、悟空目掛けて振り下ろされようとしている。
「ビルス様! 悟空さんや惑星サイヤを破壊するおつもりですか!?」
「…なんだと? か、カカロットォオオ!!!」
ウイスの言葉にバーダックは動けないながらも必死に悟空に手を伸ばす。
その時、土煙を黄金の気が吹き飛ばしながら孫悟空が仁王立ちしてビルスを睨み上げる。
同時に両掌を開いて青い光の球を左右に作ると、自分の前で手を上下に合わせて一つにし、右腰に置いてたわめる。
「かぁ〜、めぇ〜、はぁ〜、めぇ〜!!」
青い光球は真紅に輝き始めて、一気に威力を上げていく。
「…あれは、超かめはめ波ではない?」
「ベジットの野郎に撃った技か!!」
ウイスの言葉にバーダックが叫びながら、悟空を見据える。
破壊神ビルスはニヤリと笑い、悟空に振り下ろした。
「勝負だ、真・超サイヤ人!!!」
放たれる炎の球に向かって悟空が、両手を突き出した。
「このまま打ち破ってやる! 10倍!! かめはめ波ぁああああっ!!!」
ぶつかり合う両者の一撃。
真紅のかめはめ波と破壊の力を纏う炎の球。
ビルスはぶつかった瞬間に悟空のかめはめ波と似た構えを取ると、両手を突き出して紅の光を炎の球に向かって放ち、押し出す。
瞬間、炎の球は紅の光と融合し、数倍の太さの熱線に変わった。
押し合う両者の光線と熱線。
「…どうした!? あの時と違うというのなら、破ってみせろ!! それとも真の力を引き出して、この程度なのか!? 此処までやって終わりなのか!? 真・超サイヤ人!!!」
やや、ビルスが押し返す。
悟空の背後の地面に亀裂が走り、ポーカーフェイスの悟空の眉がややしかめられた。
この反応に僅かにビルスが寂しそうな顔になったあと、眦を吊り上げ、両手の気を更に強く放った。
「…これで終わりだ!!!」
更に一回り大きくなる炎の熱線。
だが、ビルスの目が見開かれる。
熱線の勢いは増しているのに、紅いかめはめ波を押し返せていない。
むしろ、迫って来ている。
「…まさか!?」
瞬間、ポーカーフェイスだった悟空の目が見開かれ、激しく咆哮した。
「真・超サイヤ人のフルパワーだぁあああああっ!!!」
一気に気が爆発し、ビルスの熱線を打ち破って真紅のかめはめ波が迫る。
「…なんだと!? こんな…!!」
叫びながらも、ビルスは静かに笑う。
「…フフフ、見事だ。素晴らしい強さだったぞ、悟空」
相手を讃える声が悟空に届き、真・超サイヤ人となった悟空は冷徹な顔を思い切り歪ませた。
「ビルス様! 避けてくれ!!」
悲鳴に近い悟空の声が響いた時、紅いかめはめ波はビルスの眼前で不自然に傍に逸れ、青い晴天を撃ち抜いた。
呆然とした悟空の目にはバーダックを抱えたまま、右手を上げているウイスの姿があった。
「大丈夫です、悟空さん。私が居ますから」
安心させようと慈愛に満ちた笑顔でウイスが悟空に告げる。
「…すまねえ。俺としたことが、熱くなり過ぎちまった」
本気ですまなそうな悟空に、ウイスが微笑みながら告げる。
「それにしても素晴らしい一撃でしたよ? まともに行けば、私でも防げたかどうか……」
「こ、この野郎。破壊神ビルスを上回ったカカロットの一撃を簡単に傍に逸らしやがった…!!」
バーダックが絶句しながらウイスを見ると、彼は怒ってますと言わんばかりに後ろを振り返り、ビルスを見る。
「ビルス様! 悟空さんの真・超サイヤ人が強かったから良かったものの、下手をしたら悟空さんやベジータさん、惑星サイヤ自体が消えていたんですよ? 破壊する予定のない星を破壊しないでください」
ビルスはふて腐れた子どものように、そっぽを向いた後に呟くようにウイスに頭を下げる。
「…悪かったよ。だけど、本気の本気でやり合えたのは生まれて初めてだった。礼を言うよ、悟空」
「ビルス様ーー。悪りいが、俺は納得してねえ。アンタ、最後に俺にアンタを超えさせようとしたろ? 真・超サイヤ人の力を引き出させて、フルパワーを使わせる為に。違うか?」
その言葉にビルスはニヤリとした後、告げた。
「お前は勝った。僕は本気で闘った。それが事実さ。まあ、負けっぱなしは性に合わない。いずれ、再戦してやるよ、悟空」
「…ホントだな? なら、安心したぜ。このまま終わりじゃ、勝ち逃げされた気分だ」
心底、ホッとしたような悟空にビルスがニヤリと笑う。
「…ウイス。武道大会だけじゃない。次期破壊神も期待できそうだな?」
「…説得に苦労しそうですがねぇー」
小声で言い合う二人から、バーダックが離れてフラつきながらも悟空の下に来る。
「父ちゃん」
悟空はバーダックを支える。
見事に勝利した息子にバーダックはニヤリと告げた。
「カカロットよぉ、次は俺と闘る番だからな?」
「ああ。ビルス様に言って、この惑星から出れるようになったら、一緒に地球に来てくれよ?」
「…ま、しょうがねえ。お前の嫁や孫の面も見てえしな」
「約束だぜ、父ちゃん」
悟空はニヤリと笑いながら、腕の中で眠りにつくバーダックを見据えた。
ビルスが悟空の傍に歩いて来ると言った。
「…約束だからな。早速、バーダックの因果律を破壊するよ、悟空」
「すまねえ、ビルス様。父ちゃんが目覚めたら、死者の都に行こうぜ? ターニッブとリューベがやり合ってる」
「…ま、僕の闘志は全部、お前にぶつけたからねぇ。暇つぶしに観戦してやるか」
「待ってろよ、ターニッブ。俺もそっちに行くぜ!!」
こうして、破壊神ビルスと孫悟空、バーダックの闘いは終わった。
しかし、彼らは気づいていない。
先までこちらを覗いて居たサイヤ人の気配がないことに。
死者の都に繋がる階段が開いたままであることに。
その入り口前に長身の天使ーーウイスが立つ。
「……死者の都。惑星の意思。確かにそれを用いれば、貴方の肉体は固体化され、ビルス様に頼らずとも惑星は出れるでしょうが。はたして、そう上手く行きますかね〜」
ウイスは、こちらに近づいて来る悟空達に聞こえないような声で階段を見据えて呟いた。
何百年に渡り、命を賭して拳を磨いた鬼が居た。
鬼は、ただこの時を待っていたのだろう。
自分と同じ力を持ちながら、自分と真逆の道を行く者との対峙。
強者達が見守る中、ついにターニッブとリューベの決着がつく。
次回もお楽しみに(´ー`* ))))