ギレンの野望?なんだそれは・・・   作:国連宇宙軍

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第四十一話 オデッサ防衛戦③

 [貴様! 私の息子の腕を切ったこと許さんぞ! ]

 

 父さんの発狂した声が聞こえる。1号機の両腕を切り落とした今、奴の戦闘力はないに等しい。

 

「父さん、いい加減目を覚ましてくれ。息子は僕だよ」

 

 [息子を誘拐した男が本当の息子などあり得るわけがなかろう]

 

 父さんは僕を家から追い出したとき、すでに何かを注射するようになっていた。記憶障害はそこから来ているのかもしれない。薬物の効果が切れるまでまともな判断はできないか.

 

「とりあえずあなたは我々の捕虜として、本国に連れていきます」

 

 両腕を失い、立ちすくんでいる1号機を回収しようと近づいた時だった。背筋に悪寒が走り、咄嗟に後ろへと跳ぶ。直後、先ほどまで僕がいた場所にビームが着弾した。弾道を追って空を見上げると、強硬突入してくるミデアが視界に入る。更には懸架しているコンテナの前面を無理やり破壊し、こちらに狙いを定めているジムタイプが見えた。

 

「新手か!」

 

 僕は射撃しようと試みるが、正確な狙撃により行動を大きく制限されてしまう。奴が放つ桃色の閃光が寸分の狂いなく機体の至近へと着弾し続けているからだ。避けに専念せず射撃しようと隙を見せれば、その瞬間に確実に被弾するだろう。このままでは埒が明かない……僕は注意深く奴らを観察する。射撃と射撃の間には数秒に満たない間があるはずだ。

 

「1.2.3.1.2.3.射撃間隔は約2秒半 いけるか?」

 

 

 計測した時間を信じて、奴の射撃の隙間で一発を放つ。あえて正確な狙いは付けずに放たれたビームはミデアを掠め一瞬態勢を崩させることに成功する。それによってジムが持っているスナイパーライフルの銃口が大きく逸れた。僕はその瞬間を見逃さず、一気に加速した。一度先手を取れれば、射撃は避けられる。僕は1号機へと接近を試みようと、回避は続けつつ進路を変える。その時、狙撃の隙間を縫いミデアからミサイルが2発発射された。僕は反射的にそれを破壊する。だが

 

「ちっ、嵌められた!」

 

 弾頭が破壊されると同時、広範囲に煙幕が広がった。更にはレーダー阻害も付け合わせらしい。僕は白煙の中で身動きが取れなくなった。だが向こうはこちらの位置を把握出来ているはず、無理に動けば蜂の巣だ。その時、煙幕を掻き分けるように、ミデアが低空飛行を敢行した。狙いは1号機の回収だろう。僕は1号機が佇んでいるであろう場所へ牽制射を行う。だが手ごたえはない。続いてミデアへと目標を移し、射撃を試みる。しかしコックピット内にけたましくアラートが鳴り響いた。ビームライフルのエネルギーを使いきってしまったらしい。モニターには煙幕の隙間を縫って、地面を掠めながらコンテナを開き父を回収するミデアが確認できた。僕はモニターに拳をぶつけ、唇を噛みしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 改ミデア級・ブラックタイガー内

 

 連邦軍の汎用輸送機ミデア。そのミデアを地上でのガンダム1号機の運搬・簡易整備用に変更したワンオフ機がブラックタイガーである。コンテナ部分を改装し、移動中でも整備・補充が出来る仕様だ。そのコンテナに両腕を失くした1号機が横たわっている。

 

「整備兵は直ぐに焼き切れた回路を交換。推進剤も1/3程しか残っていないから補充してくれ」

 

 テム自らの指示のもと、コンテナ内は慌ただしく時が進む。そんな中、一人の男がテムへと歩み寄った。年齢に見合わぬ風貌をした男、ヤザン・ゲーブルである。

 

「テム大佐、ベットでお眠りしなくて平気なのかい?」

 

「ヤザン少尉か、あいにく私には息子の看病があるのでね」

 

「へっ、大佐殿は相変わらずだな。さっき捕虜になって頭も交換してもらえばよかったんじゃねぇか?」

 

 ヤザンの言葉に、テムの顔が強張る。

 

「なにが言いたい?」

 

「いくら上の命令とはいえ、ヤク中を助け出すのに命を掛けたくないって話さ。相手の白いMSが殺意を込めていたら、俺は今ここにいない。甘ちゃんだったから生きている」

 

 ヤク中という単語に、一瞬テムの体が反応する。機体負荷に耐えるために無理やり体を対応させている。これは事実だが、人知れずバレないようにやってきた。それを見透かされている。

 

「今回、君の協力があったから私は助かった。だがあまり調子にのらない方が.」

 

「へいへい、分かりましたよ大佐殿~」

 

 テムの言葉を遮りヤザンは肩を竦ませ、雑に手を振りながら去っていく。その後姿を目で追いながら、テムの心は焦りに飲み込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ドズルside

 

 オデッサ・基地本部

 

 戦闘突入から10時間ほどが経過した。現在の戦況は我々が優位に事を進めている。このままいけば、数日も経たずにペキン・マドラスまで再奪還できるはずだ。しかしペイルライダーがまだ現れていない。奴等はあっという間に戦況をひっくり返す性能を持っている。そんな不吉な事を考えていると、広域レーダー網に反応が検出される。

 

「第一警戒網に複数方角で反応あり! モニターに映像を出します」

 

 オペレーターの言葉通り、モニターに映像が映る。そこには例のペイルライダーがしっかりと確認できた。どうやらフラグを回収してしまったらしい。

 

「4機だけか? まあいい、作戦前に説明した通りマツナガ、ガトー、ラル、シャアに出撃命令を」

 

 本部からの命令はすぐに格納庫まで伝わった。招集されていた4人は格納庫で既にSFSに機体を載せ待機しており、数分も経たないうちに基地を飛び立っていった。僕はその後ろ姿を見送りながら、思考を巡らせる。

 

「セイラさん、ペイルライダーの出現位置に気になる事はあるか?」

 

「北東、南東から2機ずつ……これは推測ですが、こちらの主力が会敵したことによって、基地が手薄になっていると判断したのではないでしょうか? 東から侵攻してきている部隊と連動して動いている可能性は高いと思います」

 

「そう仮定した場合、残りの1機は西の部隊と連動しているはずだ。しかし、西の部隊は既にこちら側。開戦から10時間も経っているのに、小規模な戦闘すら起こっていない。この事実に連邦が気付いたら……」

 

 僕は最悪の可能性を考える。もしレビルの部隊が戦闘を開始しているのであれば混乱に乗じて殺害、戦闘を開始してないのであれば離反の意思ありで断罪できる。どう転んでもレビルを始末できる訳だ。しかも所在不明なのはペキンで大暴れした初号機だ、その後投入されたであろつ兄弟達とは脅威の大きさが違う。僕は迷うことなく決断する。

 

「すぐに俺のドムをSFSに載せろ。俺が出る」

 

「承知致しました。すぐに準備致します」

 

 セイラは頷き、格納庫へと向かっていった。てっきり止められると思っていたが杞憂だったか.

 

 と思っていた瞬間が僕にもあった。だが格納庫にいってその杞憂は無情にも打ち砕かれる。なぜかセイラがSFSのコックピットにいるのだ。それもパイロットスーツで。

 

「セイラさん、そこで何してるんだ?」

 

「最短で飛ぶなら自動運転ではなく私の方が速いですわ」

 

 満面の笑みでそう言われたら従うしかない。僕は仕方なくそのまま機体へと乗り込んだ。数秒後、SFSが離陸し基地を離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヨーロッパの空を西へ飛ぶこと約30分。地平線の奥に点々と黒煙が見え始めた。どうやら既に戦闘が起きているらしい。

 

「まずいな。ここから1キロの地点で地上に降りる。君はこの辺りで待機していてくれ」

 

 言葉通り1キロを過ぎた所でSFSから飛び降り地面へと着地する。そして付近を見渡し安全を確認した時だった。突如、悪寒が全身を駆け巡った。まるで戦場の恐怖を感じ取るように・・・・

 気合を入れ直し、まずは黒煙を目指し荒野を駆ける。すると着地地点から数分も経たず、付近に無残に破壊されたような破片が散らばっているのが確認できた。先行していた部隊なのだろう。融解した装甲の状態から見て、それほどの時間はたっていないはずだ。レビルの本隊襲撃はまだとみていいだろう。だが、その時だった。桃色の閃光がモニターを埋め尽くす。

 

「野郎!! 待ち伏せしてやがったな!!」

 

 強引に上体を反らすも間に合わない。メインカメラは機能しているが、右側面を抉り取られた。それと同時、積み重なった瓦礫の中から1機のMSが姿を現す。奴の異様な程に赤いバイザーの奥では不気味に双眼がこちらを睨みつけている。その様はまさに死神・・・

 

[アハハハハハハハハハハハハハハハハハ]

 

 僕も挨拶替わりにライフルを奴に向けて放つ。タイミングは完璧に思えた。だが奴はいとも簡単に避けて見せた。それから数秒も経たないうちに反撃が正確無比な軌道で飛んでくる。普段なら余裕を持てる僕でも此奴の攻撃は紙一重だ。周りの瓦礫も利用し何とか避け続ける。

 

「盤面をこちらに引き寄せようか」

 

 僕は距離を詰めながら、近くの破片をゆっくりと投げつける。それに対し死神はつまらなそうに小さく回避行動を取った。そこへ射撃を挟み緩急で奴の回避のリズムを強制的に変えさせる。それと同時、僕はあるものを腰から引き抜いた。そして射撃の隙間で奴に投擲する。それは死神が持っていたライフルへと突き刺さり、小規模な爆発を起こした。爆発によって生じた煙が奴を包み込む。先ほど投げたのはソロモン工場特製の苦無。先端にヒート機能を持たせた近接用の特殊兵装だ。試作途中なのだが2本ほど拝借してきている。一方、死神は煙に紛れて抜刀しこちらへ一気に加速した。それを確認した僕はヒートソードを抜き迎撃態勢を整える。数秒後、お互いの刃がぶつかり激しく火花が散った。その火花を合図にしたように、激しい斬り合いへともつれ込む。

 

[アハハハハハハハハハハハハハハハハハ]

 

奴は完全な殺戮マシーンと化している。僕の刃が装甲を削っても動きが鈍る気配はない。一方の僕は、頭部を破壊するという単純明快な方法とは裏腹に、撃破よりも難しい難易度を攻略しなければならない。だが全ての分野でHADES状態には遠く及ばないのも事実だ。現に最初は対等に切り結べていたが、徐々にパワーで押され始めている。その刹那、ガードの隙間を奴の刃がすり抜けた。そして、切先は僕のドムの膝関節を掠る。それにより初めて機内にアラームが響き渡った。しかし、自分のピンチは裏を返せば千載一遇のチャンスである。

 

「その頭もらうぞ!!」

 

振り終わりで態勢の悪い死神に向け、右手のヒートソードを突き出す。だがその刃は虚空を突くだけに終わった。奴は上体を屈ませることで刃を避けたのだ。

 

「あの姿勢から避けるのか!?くそっ!!」

 

モニターには左腕の固定武装であるビームガンをこちらに向ける死神の姿。僕は咄嗟に後ろに大きく飛ぼうとした。だがその刹那、右膝関節が軋み姿勢が乱れる。僕が再び奴を視界に捉えたとき、死神は既に右手を大きく振り上げていた。

 

 

 

そして、冷たく無慈悲な一撃は僕に向かって振り下ろされた・・・

一年戦争が終わった後の戦乱

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