「これより、巨大モンスターが掘ったと思われる空洞の調査を行う!」
調査隊長が隊全体に聞こえる程度に大声で呼びかける。
「「「はい!」」」
調査隊のの隊員達もそれに力強く返答する。
これから行われるのは未知のモンスターによって掘られた空洞の調査。その空洞がどこまで繋がっているのか、どの程度の大きさなのかを調査するのが今回の目的だ。
キャンプ設営が行われた後、いよいよ調査が開始される。
「・・・暗いな。」
調査隊の誰かが声を漏らす。
「確かにな。ただまぁ、一直線の道だ。迷うことも無い。」
「皆、それぞれ
隊長の号令と共に洞窟内が明るくなる。
明るくなると言っても、数十メートル先は見えないが。
それからしばらく進んでいると、空洞に比べると少しだけ小さい脇道を発見した。
「隊長、どうしましょう。二手に分かれて進みますか?」
副隊長が言う。
「そうだな。部隊を2つに分け、俺と副隊長でそれぞれ指揮を執る。副隊長の部隊は脇道を行ってくれ。我々の部隊はそのまま直進する。何かあれば
「了解しました。では、また後ほど会いましょう。」
「そうだな。」
「では調査を再開する!」
〜数十分後〜
「しかし、本当に大きな空洞だな。それに未だ最奥まで到達出来る気配すらない。」
その時、腰に付けた共鳴石が振動する。メッセージが来た合図だ。
「どうした。何か発見したか?」
「緊急事態です!謎のモンスターに襲われ、現在は岩陰に身を隠しています!負傷者数2!死者数3!」
「何!?」
思いもよらぬ返答に一瞬戸惑うが、すぐに冷静さを取り戻し、
「謎のモンスターとは東の都を襲った巨大モンスターか?」
「恐らく、別のモンスターであると思われます。大きくはありませんでしたが、それでも体高は目算3〜4ミル程。空洞内が暗く、はっきりとは見えませんでしたが、数十匹は居たと思われます。白色魔法で身を隠して居ますが、あまり長くは持たないでしょう。これから一度引き返します。」
「了解した。こちらも一度戻ろう。見つからぬよう注意せよ。」
「了解。それでは、失礼します。」
通信が終わり、静寂が残る。しかしその静寂も、すぐに消え、
「何があったんですか!?」
「部隊は無事なんですか!?」
隊員達の声が飛び交い、木霊する。
「謎のモンスターに襲われ、死者3名、負傷者2名の被害が出たそうだ。」
「そんな・・・。」
「これから一旦引き返す。地上に出て、王に報告せねばならん。」
「...了解しました。」
隊員達が力無く答える。
(クソッ!謎の巨大モンスターに加え、また新たなモンスターだと?一体この空洞には何がいるってんだ!)
隊長は心の中で毒を吐く。隊員達の士気の為にも決して口に出す事はないが、心の中でくらい、許されるべきだろう。
そして、脇道の入り口まで辿り着く。しかし、副隊長達の姿が無い。
それから数分が過ぎ、数十分が過ぎる。戻った時間を含めれば1時間以上経っている。
(いくら見つからないようにとはいえ、あまりにも遅すぎる。もしや...)
あまり考えたくは無かった事が頭を過ぎる。
しばらくして、考えを決める。
「お前達。」
隊長が声を発する。
「お前達は先に地上のキャンプに戻れ、そして、王に状況を報告し、軍の出動を要請してくれ。」
「隊長はどうするんですか!」
「俺は...副隊長を迎えに行く。」
「そんな...」
「ダメです!」
隊長の判断に逆らうのは、部隊として良い事とは言えない。だがそんな事も投げ出してしまうほどに、隊員達には隊長に返しきれない恩があった。
隊員達は元々、魔法師崩れであった。魔法師は優秀だがどこかで雇われるなどしないと他に出来ることが少なく、毎年一定数の魔法師崩れが出る。スラムで街明日生き延びれるかも分からない程の飢餓や、誰にいつ殺されるかも分からないような状況で生きていた。そんな魔法師崩れ達の才能を見極め、鍛え、正式な魔法師として、働かせてくれたのが隊長である。隊長が居なければ、あのままスラムで野垂れ死んでいた所だっただろう。今の生活が全て隊長のおかげであった。隊長が生かしてくれたのだ。だからこそその隊長を死地に送る事ができず、隊長の言葉に反対したのだ。
しかし、
「これは命令だ。私はこの部隊の隊長である。ならば、生きて隊員を帰すのも隊長の責務である。」
「くっ...了解しました。」
隊員達が半分泣きそうになりながら承諾する。
「ははっ、そう泣くな。安心しろ、俺は必ず、副隊長達を連れて戻る!」
「っ...はい!」
隊員達が泣きながら答える。皆、分かっている。隊長が戻る事はないだろうと。だがしかし、隊長の覚悟を踏みにじる事は、出来なかった。
「さて、部隊の生存が絶望的であったとしても信じるのも、隊長の責務か...」
少しだけ笑いながら、脇道に入って行く。
隊員が全滅したのを悟ったのは、それから間も無く、数分後の事であった。
目の前に何人か分の人骨が転がっている。東の辺境の村で見た死体と一緒だ。所々溶けた肉片がこびり付いている。
(と言う事は、この部隊を襲ったモンスターは、村を襲ったものと同じものか。しかし、巨大モンスターではないのなら、東の都を襲ったのは巨大モンスターだけでなく、これをやったモンスターもという訳か。これは、報告し損ねたな。)
「ッ!今何か、暗闇の中で動いたな。」
闇を見つめる。よく耳をすませば、何か音が聞こえる。
ギチギチ・・・ ギチギチ・・・
何かが擦れ合うような、あまり聞いていて心地良くない音が聞こえる。だんだんと近づいて来るようだ。
「あまり時間もないようだ。そして、副隊長の部隊も全滅していた。しかし、残った部隊が王に報告してくれている頃合いだろう。ならば後顧の憂いなし。最後まで抵抗させてもらう!
何かが居るであろう暗闇へ魔法を放つ。奥で鉄板を引っ掻いたような音が響く。恐らく、少しは効いたのだろう。
そして直後、橙色の弾が飛んでくる。間一髪のところで回避するが、衣服の掠った箇所が一瞬にしてボロボロになる。
「なるほど、これで村々や部隊をやったのか。」
もう一度火球を放つ。効いてはいるようだが、倒したような手応えは無い。
そして、その瞬間、隊長は死を覚悟した。
直径20ミル程の空洞を覆い尽くす程の弾幕がこちらに向かって来ていた。回避は不可能だろう。
「クソッタレが...」
直後全身に弾が襲いかかる。一瞬で衣服は溶け、肉はただれ、骨だけになるのに時間は要さなかった。
巨大生物達は、隊長を倒した後、隊長が来た道を進んでいく。その数、数百。
地上にて
部隊が地上に戻って来る。キャンプに残っていた部隊が問いかける。
「お前達だけか?隊長や副隊長、他の隊員達はどうした?」
「...皆、死んだ。」
「は?」
「死んだんだよ。モンスターに襲われた。隊長は食い止める為に、そこに残ったんだ。」
「そんな...」
「それよりも、隊長の最後の命令だ。空洞で起こった事を王に報告し、軍の出動を要請する!」
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という訳で3話でした。
いやー、4.1の洞窟は暗いですよねー。突然視界にアリやクモが入って来ると驚いてしまいます。そんな恐怖感を演出したかったんですが、私には技量が足りませんでした。
そしてついに次回王国軍vsフォーリナー第1戦でございます。頑張って盛り上げるので、出来れば見てやって下さい。ついでにお気に入りや評価もよろしくお願いします。
次回は明日の23時に投稿する予定です。