「敵襲!敵襲!」
広大な王都を囲う巨大な城壁。その一角で番兵が声を上げる。
その視線の先にあるのは巨大な黒と赤の波。とてつもないスピードでこちらに迫ってくる。
「今すぐ王へ報告しろ!」
「どうした。緊急事態か?」
通信に応えたのはトーラム。宮廷魔道士の筆頭であり、世に2人といない全属性の魔法師だ。
「報告いたします!城壁の南東よりモンスター出現!以前現れたモンスターであると思われます!」
「分かった。すぐに部隊を編成し援軍を送る。」
「はっ!」
〜トーラムside〜
メッセージが切れる。落ち着いてる風を装ったが、内心はかなり驚いている。
「いくらなんでも早すぎる!3日と経っていないぞ!」
1人愚痴を零すが、すぐに頭を入れ替える。
「こうしている場合ではないな。すぐに兵を送らねば。」
トーラムは王の元へ急ぐ。
〜城壁にて〜
「門を閉じよ!」
その場の指揮官が命じる。
兵の1人がレバーを引く。すると門の上部から大きな落とし格子が落ち、更に大扉を数十人の兵士で閉じることで、門が固く閉ざされる。
「モンスターが門を破壊する前に陣形を組め!」
すぐさま陣形を組み始める兵士。しかし、城壁上の兵士が叫ぶ。
「うわぁぁぁ!モンスターが壁を登って来」
しかしそれを言い切る前に身体が上下に分断される。そして現れるのは赤色のモンスター。黒色のモンスターと形は変わらないが、明らかに異なっているのはその大きさである。黒色のモンスターの2倍はあろうかという程の体躯。全長は城壁の高さの半分ほどもある。
「盾兵!あいつを抑え込め!」
盾兵達が赤色のモンスターを囲む。
しかし、
「ぎゃぁぁぁぁ!」
赤色のモンスターが盾兵に噛みつく。するとすぐさま盾が兵士ごと真っ二つにされてしまい、モンスターが足踏みをすれば、圧倒的な体重により兵士が潰されてしまう。それに槍も剣も弓も全く通らず、攻撃したものから殺されていく。黒色のモンスターに辛うじて通じていた武器も全くもって歯が立たない。
その上大量のモンスターが城壁を越え、兵士に迫っている。
そして次々と兵士を潰し、切断する。
辺りが血の池の様に真っ赤に染まっていく。
殆どの兵士が死に、残った兵士も死を待つのみであった。
指揮官が逃走しようと後ろを振り返る。
その時、希望が見えた。
王国軍である。それも数万人の。
そして次の瞬間、何かが崩れる音が背後で鳴り響く。
咄嗟に後ろを振り返れば、崩れた城壁が在った。
そして城壁の穴からとてつもない量のモンスターが飛び出して来る。
そして指揮官は波に飲まれた。
〜王国軍side〜
「なんて数だ...」
大隊長が無意識のうちに言葉を漏らす。報告には聞いていたが、間近で見るとやはり多い。
(剣も槍も弓も効かず、抑え込むこともできないか...。だとすれば可能性があるのは魔法のみか。それにあいつらは足が速い。逃げても追いつかれてしまうだろう。兵士に壁になってもらう他ないのか...?)
覚悟を決め、兵士に命じる。
「壁を作れ!盾兵は前列!槍兵は後列!残りは攻撃で空いた穴を埋めよ!魔法師は後方に展開し6人1組で大魔法の詠唱を始めよ!」
すぐさま兵により壁が作られ、魔法師達の頭上には雷や火、風など様々な属性の魔法が作られ始める。
そしてモンスターが到達し、兵による壁を薙ぎ払っていく。
「撃てぇぇ!!」
大魔法が放たれる。放たれた雷撃がモンスターの体を焦がし、炎が焼き、疾風が脆くなった甲殻を切り裂く。
次々とモンスターは駆逐されていくが、兵士も所々穴が増えており、塞ぐために壁を小さくせざるをえなくなっている。
1時間が経過する。
ここで魔法師達の大魔法を撃つほどのマナが無くなってしまう。
だが、魔法師の恐ろしい所はここからだ。大魔法の強みが一撃の威力なら、通常攻撃魔法の強みは圧倒的な弾幕だ。今まで6人1組だったのが、全員で一斉に撃つ事ができる。
様々な属性の魔法が大量に放たれ、モンスターを殲滅していく。一撃の威力で劣っていても、それが数百にもなれば流石のモンスターの甲殻も防ぎきれない。
そして、
数時間の戦闘の末、王国軍の勝利で終わった。
しかし損害も多い。歩兵部隊のほとんどが戦死してしまった。
10分の休憩後死体を回収し、帰還しようとした時である。
軍の頭上を何かが高速で過ぎる。
全員が空を見上げる。そこに居た。いや、あったのは銀色の装甲を持ち、所々の隙間に赤色の光が漏れ、全体的に丸い形をした、謎の物体。
音もなく飛ぶ様はまるで紫色魔法を行使しているかの様だった。
次の瞬間、赤色の光線がそれから連続して放たれる。
それが兵士に当たった瞬間、兵士の体に大穴が開く。
すぐさま我に帰った大隊長、
「あれは敵だ!恐らく紫魔法を用いた魔導兵器だ!魔法師!通常攻撃魔法を放て!」
即座に魔法が放たれる。
しかし、
「速すぎる!」
「攻撃が当たらない!」
その魔導兵器は空中を縦横無尽に動き、魔法が当たることはない。そして攻撃の隙間に光線を放ち1人、また1人と兵士が散っていく。
大隊長は思考する
(よく観察しろ...どうすれば当たる...?どこか隙はないか。)
そこで気付き、考える前に声を出す。
「方向転換、もしくは攻撃時を狙え!あれはその瞬間は一時停止する!」
それに気付けば撃破は容易かった。攻撃しようとした瞬間を狙われ、魔法を数十発浴び、空中で爆発する。
大隊長は取り敢えず戦闘が終わったことに安堵する。
(...しかし、一体どこの兵器だ?帝国か?しかし、講和を結んだばかりで攻めて来る理由があるか?他の大陸の可能性は...)
(取り敢えず、報告だな。)
大隊長は帰投中、ずっと魔導兵器の事を考えていた。
後日、帝国に使者が送られ、王国は帝国の状況を知ることになる。
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ということで5話でした。
今回はちょこっとだけでしたが、次はちゃんとフォーリナー出ますよ!