ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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【4】(番外編)バケモノなモモンガ×人間味マシマシなゴーナイト

 

 

 

 

 さて、カルネ村を探そう。

 アインズさんと恋人関係になった夜から、俺はナザリック周辺にあるはずの村を探すべく、奮闘している。

 

 こんな姿、シモベたちに見られたくない。なので、部屋には俺が創造したNPC……名前をエードラムという……が一人、護衛についた。俺の後ろで、作業を見ている。

 

 種族はドッペルゲンガー。ナザリックの司祭という立場で、ギルドメンバーを神と崇めている……という設定だ。

 

 ――頭はかなり賢い。守護者統括の代理を務められるほどに。そう、設定付けた。

 そんなわけで、普段はアルベドと共に仕事をしている。今日は本人が「息抜きしたい!!」と爆発したので、俺の護衛につかせた。

 これが息抜きになるんだって。なぜ?

 

 話を戻そう。

 まず自室の倉庫から、遠隔視の鏡を取り出す。そして応接用の長テーブルに置いて、完成。

 あとは鏡の前に座り、大きなタッチパネルを動かすように、両手を動かす。

 鏡には直接手を触れずに行う。アニメでもそうだったし。だから、俺も。

 

 見えている景色は草原。夕陽が美しい。

 

 左右上下に動かして、視点切り替え。

 拡大、縮小の方法はタッチパネルと同じ。

 ……じゃあ、視点の移動はどうすればいいんだ?

 

 例えば、前に一メートル進みたい時。

 

 試しに、鏡に向かって手を突き出してみる。視点が変わる。

 進んだ!間違いない。見えていた景色がちょっと違うし。

 

「でも、どのくらいの距離進んだかわからないな……」

「大体一メートルですよ」

「おお」

 

 驚いて後ろを振り向く。

 いつの間にか、エードラムが背後に立って、鏡を覗いていた。

 

「よく、一メートル進んだとわかったな」

「鏡にうつる景色の特徴を、覚えていましたので」

「そうか。教えてくれてありがとう。エードラム」

「いえいえ。でしゃばりました。お許しを」

「許すとも。だが、それは俺以外にしてはダメだよ?」

「はい。心得ました」

「うん。それならいい」

 

 大体やり方がわかってきたので、本格的に村を探す。

 まずはナザリックから半径一キロ圏内を。

 

 六時間ほど探せば、ようやく村を見つけた!

 しかも、しかも!

 エンリとネムの姉妹が、鏡にうつっているじゃないか!二人とも寝ている。まあ夜だからな。

 しかも襲われた形跡はない。つまり、襲撃前って事だ!

 

「やった!ここだー!」

「おめでとうございます。周辺の村を見つけられましたね」

 

 拍手してくれるエードラム。声の調子も上がっているようだ。

 俺はここまで付き合ってくれた彼に、礼を言った。

 

「エードラム、付き合ってくれてありがとう。待たせたな」

「いえいえ。では、次はいかがいたしますか?」

「この村を監視する。時期を見て、ここへ行く」

「かしこまりました。掌握しますか?」

「戦争を仕掛けるんじゃない。恩を売るんだ」

「恩ですか。劇でもされるので?」

 

 劇?……原作でナザリックがやっていたマッチポンプの事を言ってるの?

 俺は頭を振った。

 

「違う。まあ、その内な……」

 

 とりあえず、今日はもう休もう。

 残業した気分だ……。いや、残業したのか。

 両腕を組んで、ぐっと上に伸ばす。

 精神的に疲れたな。こういう時はアインズさんの顔が見たい。

 俺は立ち上がる。

 

「とにかくアインズさんに報告するか……」

「私が《伝言》でお伝えしましょうか?」

 

 エードラムには《伝言》の魔法を覚えさせている。

 原作でよく使われていた魔法だからな。備えあって憂いなし、だ。

 

「いや、俺がするよ」

 

 まあ今日は使わないけれどね。

 俺はアイテムボックスから、手のひらにすっぽり収まる水晶玉を取り出した。

 そして、水晶玉に登録してあるフレンドの一人、アインズさんに連絡する。

 

「もしもし、アインズさん?夜分遅くにすみません。村を見つけたので、一応報告させていただきます」

 

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 

 村を発見してから、二日ほどたった。

 俺はできるだけ全ての時間を使って、村を見守り続ける。

 いつでも村に訪問しても良いように、白い鎧を着用していた。

 白い方が、黒や紫より怖くないかなって思ってさ。

 

 今日はアインズさんも一緒だ。テレビを楽しむ感覚で、鏡に村をうつし、観察する。

 鏡の前に二人用のソファーを置き、そこに二人一緒に座る。周りには護衛のセバスが一人、背後に立っている。

 

「まだ何も起きないなあ……」

 

 そんな俺の呟きに、アインズさんが言った。

 

「起こせば良いではないか」

 

 そんな「散歩に行こうぜ」みたいな調子で言われても……。

 俺は頭を振る。

 

「何か起こる気がするので、もう少し様子を見ます」

「そうか?皆、ゴーナイトの命令を待っているぞ?」

「それはありがたいです」

 

 でも村を襲撃しろとか、命令できないよ〜。敵対してないもの。

 とにかく法国からの襲撃があるまで、のんびり姉妹を見守ろうか……。

 背伸びして、再び画面を見る。

 

「あ」

 

 エンリの視線の先で、彼女の母親が騎士に切られた。

 始まったぞー!!

 

「きた!アインズさん、お願い!〈転移門〉で、あそこに行きたいです!」

「わかった。セバスを連れていけ。こちらの指揮は任せろ」

「ありがとうございます!」

 

 今のアインズさんの指揮はめちゃ不安だけど、エンリ姉妹と生き残った人たちを助けに行きたい!

 

「セバス、行くぞ!」

「かしこまりました」

 

 アインズさんの魔法で作られた、半球の黒い渦の中へ飛び込んだ。

 

 

 

 ――視界が変わる。

 体に異変はない。

 外の風を感じた。

 

 目の前にはエンリとネムの姉妹。絶望に顔を染めている。

 奥の騎士たち……エンリたちを追いかけていたようだ……は、ひどく驚いているようだ。

 

 さらにその奥では、エンリの父親が素手で戦っている。

 だが、剣で切られてしまった。

 そこにさらに攻撃が――。

 俺は指をまっすぐ指した。

 

「あの者を、助けてやれ」

「御意」

 

 セバスは背後で爆発音を響かせ、エンリ姉妹、追ってきた騎士たちを通り抜けて、エンリの父親を助ける。

 鎧の上から拳で殴り、三人まとめて吹っ飛ばす。

 そしてセバスが唯一使える回復手段で、切られた父親を治してやった。

 

 その間に、俺は座り込んでしまったエンリ姉妹と、騎士たちの間に立つ。

 

「あ……」

 

 エンリが声をもらす。

 俺は手で制した。

 

「ここにいなさい。守ってあげるから」

「……はい」

「おねえちゃん……」

「大丈夫だよ」

 

 不安そうな姉妹の声に、ちょっと申し訳なくなる。

 騎士たちは、セバスより俺の方が弱いと勘違いしたのか、こちらへ襲ってきた。

 セバスがこちらに来ようとしたので、手で止める。

 

「う、うわああああ!」

 

 遅い。

 俺は騎士の手の甲を軽く強打し、落ちた剣を奪う。

 そのなまくらな剣の腹を使って、相手の胸部をまた軽く強打。

 騎士は「ごべ!」と言葉をもらし、二メートルぐらい吹っ飛んで転がった。

 

「うん。勝てるな」

 

 スキルを使わなくても勝てる。いい感じだ。

 俺は、姉妹を追ってきた騎士たちのうち、もう一人の騎士に顔を向ける。

 

「ひっ!来るなあ!!」

 

 相手は剣を無闇矢鱈に振りまわす。

 俺は姉妹から少し離れてから、スキルを使う。

 体を霧状に変化させて、ゆらりと騎士に覆い被さった。

 どれだけ腕を振っても、霧になった俺を振り払えず。

 

「が……ご……」

 

 騎士は倒れて動かない。

 うんうん。俺の〈カースミスト:レベルⅤ(即死Ⅴ、物理無効Ⅷ)〉か使えるな!

 これで低レベルの相手ならば、今みたいに一方的に倒せるぞ!

 喜んでいると、後ろの気配が増えた。振り返ると、アインズさんが姉妹に腕を伸ばしている。

 ちょっと待ってくれ。

 俺は素早く、姉妹とアインズさんの間に体を入れた。

 

「……何しているんですか?」

「あなたが注目する人間に、興味があってな」

「注目……?」

 

 声を発したエンリが……姉妹が、今度は俺に注目する。

 俺は後ろを振り返らない。

 

「それで、軍はこちらに来ているのでしょうか?」

「まもなく、な。アルベドが五百のシモベを連れてくる」

「村を助ける為ですよね?」

 

 瞬きする一瞬。

 

「いや、襲うんだろ?」

「違いますってば!」

 

 俺は叫んだ。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 生き残った村人を、村の中央広場に集める。

 みんな怖がって泣いたり、家族と身を寄せ合って、可哀想な事になってる。

 助けただけなんだけどな……。なんか、ゴメン。

 

 村を襲撃した騎士たちは少し離れた場所に、置いた。

 騎士たちは縄で縛ったり、両手足を折って使えなくしたり、様々だ。武器は回収してある。

 

 その周囲を、ナザリックの百のシモベたちが囲んでいる。

 残り四百は周囲の森にとけこみ、隠れている。

 俺はアインズさんの隣で、指揮する。

 

「それじゃ、騎士たちは拠点に運んでくれ。ケガした村人たちには、治療してやって」

「御意」

「かしこまりました」

 

 セバスとエードラムが、村人たちを治療していく。

 セバスは一人ずつ、エードラムは周囲の人間をまとめて。

 村人たちの困惑の色が濃くなった。それでも、ケガを治してくれた相手に、警戒の色を少しだけ解いたように見える。

 俺は、さらに指示を出した。

 

「ケガ人の手当てが終わったら、セバスはこちらに戻れ。エードラムは死体の方に行って、祝福を。アンデッドにならないように、してやってくれ。……それでいいですよね?村長殿」

「は、はい……」

 

 俺から近い場所に、村長夫婦を座らせている。

 奥さんの方はすっかり怯えてしまっているが、村長殿は妻を守ろうと、恐怖に立ち向かっている。つまり俺たちと、まだマシに話せる状態だった。

 

 さてセバスが戻り、エードラムが死体を並べている場所へ向かった。

 頃合いだろう。

 俺は村人たちの注目を集める。

 

「はーい、皆さん注目してくださーい」

 

 気分は学校の先生だ。

 ……周りは、そんな楽しい空気ではないけどね。

 村人たちがこちらを向く。皆、怖がっているようだ。

 それでも俺は続ける。

 

 自分たちは、この村を助けにきた事。

 対価として、情報を得たい事。

 必要があれば、村の復興を手伝う事。

 

 なんて事を話した。

 村長殿は、隠しきれない戸惑いを表す。

 

「どうしてそこまで、我等を助けてくれるのでしょうか?」

「簡単ですよ。お隣さん同士、仲良くしましょうって事です」

「は、はあ……?」

 

 村長殿は戸惑いに、困惑が加わった顔をしている。

 バケモノが何言ってんだ?って感じかな?わかる。

 でも、本気で考えているんだ。

 

 バケモノな姿なのに、中身だけ転移する前とほとんど変わらない、そんな俺と仲良くしてくれる人間さんを探している。

 じゃないと……。

 

「(俺、そのうち狂っちゃうよ)」

 

 冗談じゃなく、本当に。

 

 

 

 

 

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