休日を使って買い物に来ていた。
果たして、この作戦は、成功するのか。
※これは、弐ノ章 第壱話のお店での出来事です。
森羅たちは、束の間の休息を味わうべく、買い物に来ていた。
立ち寄ったのは、ヘンテコなお店。ひとつでも身につければ、たちまちに個性派ファッションの先駆者になることができるであろう服や帽子が陳列されている。
レインボーカラーの靴下を手に取る森羅。今でさえ特殊な中隊長のファッションセンス。そこへさらに独創性を持たせるのはいかがなものかと彼は困惑していた。
「森羅さんはなかなか良いセンスをしてますね」
茉希が森羅の隣へとやって来た。
「このお店を選んだの茉希先輩、ですよね……」
「そうなんです、前から気になってて。可愛くないですか、これ」
彼女が見せてきたのは、白い短パンでしかもかなり丈が短いものだった。ジムでしか履けないような太ももの可動域に最大限の配慮というか、もう隠せるのは腰と股間付近のみ。それならまだ許す。しかしだ。お尻にウサギの尻尾が生えているのはどう見てもアウトだった。
「もしかして、これ、買うんすか……」
「ええ、シスターも環さんも同意してくれましたよ」
「いやいやいや、中隊長をまともにするってことで来たんじゃないですか!」
「えっとー。限界を見てみたくなりましてー」
茉希は困り顔をしているが、その頬は実に緩みきっていた。
女の人って、こえーんだな……。あれ、というかこれ、女性用じゃないのか。
「そもそも女性用ですよね。なんなら茉希先輩が着ればいいのでは? こういうの好きなんですか?」
「わ、わたしですか!? いや、えっと、好きじゃありませんというか、嫌いといえば嘘ですが、うー、もうとにかく似合わないんです、こういうの、わたしには!」
そう言って短パンを森羅に投げつけた。
何を怒ってるんだろうと気にしつつも、森羅は短パンを広げ、あらためてまじまじと観察する。
「ウサギの尻尾、ふわふわしてるんすね。けっこうしっかりした生地だし。うーん。やっぱり茉希先輩が着たらきっと似合いますよ! 背も高いし、スタイルも良いし、バニーガールとか絶対似合うと思います!」
「へっ!? なんですか!?」
「ですから、着たら可愛いなと思いますよと」
「おい、ハレンチ野郎。茉希さんになにセクハラ発言してんだ!」
二人の間に強引に潜り込んできた環。彼女も変な帽子を持っていた。そこにはヌーディストビーチクと印字されている。
「はー? 俺は正直に感想を言っただけなんだが。というか待て。お前のほうがハレンチだろ。なんだその帽子! 中隊長に何かぶらせそうとしてるんだ!」
「中隊長の限界を知りたくないのかよ!」
「知りたくねーよ。あっ、シスター。環に言ってやってくださ、い、よ……」
シスターは、白いシャツを持っていた。しかし、シルエットクイズをしたら、明らかにシャツとは分からない形状をしていた。両肩に金色の円盤が付いているのだ。
「シスターまでなんすか、それは」
「げ、限界を知りたくて。えへへっ」
彼女の笑顔に一瞬癒される森羅。
あー、シスターは許してあげたくなるけど。でもなんだろ、すげー残念な感じ。
「とにかく他の店も見てみましょうよ」
森羅は提案するも、環はそれを手で制する。
「これはうちら三人が同意して選んだコーディネートなんだ。多数決により却下する!」
「いいや、これは不正の匂いがする。諮問委員会が必要だ。火華大隊長に写真を送って可否を問うぞ」
「森羅さん。これは決定事項ですから」
シスターは手をクロスし、バッテンを作り、首を横に振る。
「シスターまで何を。もう桜備大隊長に怒られても知りませんよ!」
三人が空いている店内でギャーギャーと騒いでいる中、一人、茉希だけは議論に参加していなかった。
鏡の前に立ち、あの短パンをお尻部分に合わせてみる。三人のほうをちらり。議論に熱い展開が続いているのを確認し、ほっと一息。もう一度だけ三人を確認したあと、お尻を軽く振ってみた。ウサギの尻尾が茉希のお尻あたりでふるふる揺れていた。
可愛いってこういうこと? もうよく分かんない。わたしったら、何してるんでしょうか! 森羅さんが、か、可愛いなんていうから。
「私にはまだ、早いんです」
もはや鏡で自分の顔を見れないほどに赤くなってることを自覚していた。茉希は、その熱を振り払うかのように、女子二人に取り囲まれハーレム状態の森羅に突進し、短パンを投げつけた。
「どうせゴリラサイクロプスには似合いませんよ! ですので、中隊長で決定ですっ! いいですね、森羅!」
「はっ! って、命令ですか!?」
中隊長にかっこいい洋服をプレゼントする大作戦は、どうやら失敗に終わりそうである。しかし、俺は反対したもんな。だからお咎めになることはないと安心する森羅。
この後に降り掛かる悲劇を、彼はまだ知らないでいた。