スリザード・クラブ (蛇寮非魔法族出身者の会)   作:非魔法族

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第4話 休暇 (1)クィディッチの日はホグズミード日和

 ハロウィーンのトロール騒ぎの余波はたちどころに消え、同時に十一月の寒波が容赦なく城を覆った。城の空気が日に日に冷え込む一方で、生徒達の熱気は日に日に増していく一方だった。

 なぜなら、クィディッチ(魔法界一の人気スポーツ)の学内リーグ初戦、グリフィンドール対スリザリンのゲームがいよいよ近づいていたからだ。どちらの寮も自寮のチームへの熱い期待に湧き、残るレイブンクローとハッフルパフの二寮は気ままな下馬評と賭けに精を出した。

 どの対戦カードであれクィディッチの試合は盛り上がるものであるが、何よりもグリフィンドールとスリザリンはこの数世紀来、不倶戴天の敵であるから、自寮の団結心と相手寮への対抗心が他の試合より高まるのは必至であった。寮の徳目「勝利のために手段を選ばない」を重視するあまりなのか否かはさておき、一部のスリザリンの生徒は隙さえあらばグリフィンドールの選手を呪おうとしていたし、一部のグリフィンドールの生徒もまた、反撃する機会をみすみす逃そうとはしなかった。選手は廊下を歩くときは、たいてい一人でなく集団で行動するよう心掛けていた。そしてグリフィンドールの集団とスリザリンの集団が顔を合わせるだけで空気は一触即発の様相を呈し、時には破裂することさえあった。そんな現場に居合わせるとグリフィンドール監督生のパーシー・ウィーズリーは声を枯らして叱咤を飛ばし、スリザリン監督生のジェマ・ファーレイは嬉々として杖を振るって制圧した。

 

 とはいえ、例年のグリフィンドール対スリザリンの試合は、ここまでの盛り上がりを見せるものではなかった。それはひとえに、魔法界一の有名人、「生き残った男の子」ハリー・ポッターの影響であった。

 英雄ハリー・ポッターは、マクゴナガル副校長の熱烈な推薦で「一年生はクィディッチ選手になれない」原則を百年ぶりに覆してシーカー(花形ポジション)になったのであった。グリフィンドールのキャプテンのオリバー・ウッドは飽くまでこれを極秘情報として取り扱っていたが、ホグワーツにおいて「極秘」とは即ち、校内の生徒すべてが知っている情報のことをさす(なお今回の「極秘」情報は、ドラコ・マルフォイがハリー・ポッターの箒を見とがめて「呪文学」のフリットウィック先生に言いつけた際に、ニコニコ顔の先生からマルフォイ経由で全校に漏れた)。

 一年生が、それもハリー・ポッターがチーム入りした事実は、スリザリン中を震撼させた。グリフィンドール寮監ミネルバ・マクゴナガルのあまりの暴挙に(厳格公正を旨としている彼女にしてはあまりに珍しいことである)当然スリザリン寮は不満を炸裂させ、マクゴナガル教授に直接抗議する者も現れた。

 しかしながら、「飛行術」担当のマダム・フーチ及び学校長アルバス・ダンブルドア両名が「『一年生は箒を持てず選手入りできない』という通例は飽くまで、身体も箒の操作も未熟な一年生の安全を慮ったものに過ぎず、規格外の生徒の才を伸ばす機会が妨げられる場合にはこの限りではない」とのお墨付きを与えた以上、またスネイプ教授が談話室で「有名なだけの一年生に頼らねば試合もままならないような弱小チームに負けるほど、我が寮のチームは脆くない。去年の我らの清々しいまでの圧勝を思い出したまえ」と薄ら笑いで演説した以上、スリザリン生達は不満の声を呑みハリー・ポッターやグリフィンドールチームへの嘲笑へと舵を切ることにしたのだった。

 

(なお、マクゴナガル先生がハリー・ポッターをチーム入りさせるのみならず、ポケットマネーで高級高性能の競技箒・ニンバス二〇〇〇を個人的に買い与えた事実については、スリザリン生がとりたてて文句を言うことはなかった。チーム入りの衝撃に比べれば全く霞むものであったからでもあるし、高性能の競技箒を乗りこなすには乗り手の技術も高度なものを要求されるからでもあるし、資金にものを言わせることへの忌避感がそもそもスリザリン生は総じて希薄だからでもあった)

 

 もっとも、グリフィンドールと合同の「飛行術」で毎週ハリー・ポッターの箒さばきを目にさせられるスリザリン一年生は、それだけの特別扱いを受けるのも無理からぬことだと、誰も口にせずとも認めざるを得なかった。ハリー・ポッターは、極めて危険なダイビングキャッチを鮮やかに成功させた初回以降も毎度、お粗末なホグワーツの箒「流れ星」の性能をものともせず自在に宙を舞い、レースであれ球技であれ群を抜いたパフォーマンスを叩き出していた。長年マグルの家庭で育ったにもかかわらずである。

 これがいかに異常であるかは、他寮よりもむしろスリザリン一年生にとって――いずれも魔法族の出身であり、その多くは幼児用箒に乗ったことがある――痛烈に理解できた。ドラコ・マルフォイは――ハリー・ポッターのレギュラー入りに誰よりも怒りを燃やし自らもチーム入りを望んだ――確かに安定した美しい飛行の腕を見せ、一年生にしては非常に上手いとマダム・フーチに認められていたが、やはりクィディッチ・チームに入れる域には未だ程遠いものであった(事実、キャプテンのマーカス・フリントも寮監のスネイプも、マクゴナガルに続いて自寮の一年生をチーム入りさせようとする動きを見せることはなかった。もちろんスリザリン一年生は皆、マルフォイにそれを面と向かって指摘するほど愚かではない)。そしてマルフォイと大きく水を空けてロナルド・ウィーズリーやセオドール・ノットなどが続くほかは、残りの一年生は皆パフスケインの背比べであった。シムは十一月に入ってようやく箒を手なずけられるようになり下位集団を抜け出すことができたが、ネビル・ロングボトムは相変わらず箒に振り回され続け、ビンセント・クラッブとグレゴリー・ゴイルは誤って箒を壊し、才媛ハーマイオニー・グレンジャーは明らかに体育の才が欠落していた。

 

 クィディッチの試合への熱を燃やすのは、生徒だけではない。グリフィンドール寮監のマクゴナガル先生はクィディッチのこととなると、ハリー・ポッターの例のように普段の公明正大の信条をかなぐり捨てることも厭わなかったし、スリザリン寮監のスネイプ先生もまた、(常日頃からの、息を吸って吐くかの如く贔屓と逆贔屓を繰り返す姿勢のごく自然な帰結として)グリフィンドールの選手の練習時間を削る機会を虎視眈々と狙っていた。ごく一例をあげるならば、自らの担当する魔法薬学の実習で、選手のテーブルを執拗に巡回して罰則や補習を与えようとしていた。

 とはいえ、常日頃からターゲットにしているハリー・ポッターにはこれ以上構う時間を増やす余地はなく、三年生の双子のウィーズリー(悪戯で常に学校を騒がせる悪童だが、同時に敏腕クィディッチ選手でもあった)の調合の腕は卓越していて難癖を付ける余地がないために、もっぱら五年生のオリバー・ウッドに対してスネイプは監視の目を強めていた。

 オリバー・ウッドはグリフィンドールチームのキャプテンであり、端的に言ってクィディッチに命を賭けている男である。そのため、試合の直前期には、疲労と寝不足と不注意とで授業中にミスをすることがしばしばであった。もちろんそれを見逃すスネイプではない。だからグリフィンドール五年生は一丸となって、スネイプやスリザリン生の難癖をかわすべく、必死になってウッドをさりげなく手助けしていた。

 しかしよりにもよって試合の二日前の魔法薬の時間に最大のピンチが訪れた。ウッドは初歩的なミスで自らの鍋の底を融かしてしまう大失態を犯してしまった(種々の魔法的な理由からホグワーツ指定の鍋は錫(白鑞)製であるが、この合金は熱に弱く魔法保護が破れると容易に融け出す)。ウッドの二つ隣のテーブルにいた、監督生アンドレア・ジョンソン(グリフィンドールの選手アンジェリーナ・ジョンソンの姉)は、異変に気づくと即座に、一切の躊躇もなく、手元が滑ったふりをしてクリスタル瓶をスネイプの頭上に投げつけ、サラマンダーの血液をスネイプの髪にぶちまけた。次いで、もう一人の監督生パーシー・ウィーズリーが、底がこんなにも薄い鍋が市場に出回ってしまっていることに本気で憤り、赤黒い液を滴らせるスネイプに自らの持論をぶちまけ始めた。そうしてスネイプや他のスリザリン生の注意がウッドから逸れているうちに、ウッドの鍋もこぼれた魔法薬も元通りになり、グリフィンドールは寮点マイナス25点と監督生二人の一週間の居残り罰則とを引き換えに、ウッドとチームの最後の練習時間を守り抜いたのだった。

 

(なお、マクゴナガルもまた、スリザリン選手の変身術のレポートの採点の手を緩めることは当然あり得ず、ましてや他人に代筆させるなどの不正を見逃すはずがなく、スリザリンの選手は自らの実力で難解な変身術の課題に悪戦苦闘せねばならなかった。そのために、チームを率いる期待のキャプテンにして、日頃あまり成績の振るわない五年生マーカス・フリント――現在のスリザリンの最高権力の一角に坐す七年生ヴァルカン・フリントの従兄でもある――などは、寮内の最上級生たちに手取り足取り変身術の理論を叩き込まれることになった)

 

 しかし、寮への帰属意識もクィディッチへの興味も薄いシムにとっては、試合の日が近づくことへの感慨はさしてなかった。それだけに、日ごろセラに施される魔法の訓練にもクィディッチの影響が表れたことにシムは驚いた。

 試合の前日の2E教室では、銀色に光る球体が二つ飛び回り、セラの呪文のみならず球体をもかわさねばならなかった。この球はシムだけでなくセラの方にも飛来していたが、セラは球に注意を払うこともなく易々とかわしていたので、単にシムの難易度が上がる一方だった。これは明らかに、クィディッチのブラッジャー(選手たちに平等に容赦なく襲い掛かる暴れ球)を模したものだった。とはいえ、ブラッジャーの素材が鋼鉄であるのとは異なり、この球は単なる柔らかいゴムで出来ていた(セラが「常識的に考えていくらなんでも鉄球は危ないから」と言うのを聞いて、シムは彼女が非魔法界の常識を身に着けて育ったことに心から感謝した)。もっとも、ゴム球とはいえ「宙を踊れ(エヴァーテ・スタティム)」と同等の効果を示すルーン文字列が刻まれており、当たると勢いよく吹き飛ばされてしまうのだったが。

 セラが「今日は終わり」と言って球をケースに片付けたのを見て、シムは床にしゃがみ込んで壁に背をもたれて息を長々吐いた。

 

「セラ、実はちょっとクィディッチが好きだったんですか。ちょっと意外でした」

 

「クィディッチのルールはさておいて、箒やスポーツ自体は好きだよ。それにこうも世間様がクィディッチの話題で盛り上がってるとね。たまにはこうやって流行に乗ってみるのも楽しいだろう?」

 

 セラは愉快そうに問いかけたが、疲労困憊のシムは球を苦々しく見つめたまま何も答えなかった。ようやく息が整ってきた後、しばらくして口を開く。

 

「でもまさか、試合は観に行かないのですよね?セラがスリザリンの応援席に混ざってスリザリン生と一緒に声をからして応援するとは思えませんが……。他の寮に混ざるのも目立ちそうですし」

 

「まあ、確かにスリザリンの試合を見に行ったことはないね」

 

 セラは苦笑して、あっけらかんと言ってのけた。 

 

「他の寮同士の試合は何回か見に行ったことがあるけど、もう見なくて良いかな。いつ終わるか分かったものじゃないし、顔見知りだったチャーリー・ウィーズリーはもう卒業しちゃったし、他に友達が出てるわけでもないし」

 

 そう言ったのち、セラはふと首をかしげて「……いや、そういえばディゴリーがレギュラー入りしたらしいから、ハッフルパフの試合は観に行こうかな?どうしようか」と呟いた。

 

「まあ、そうですよね。……でも、他のスリザリン生は、クィディッチに興味があろうがなかろうが、多分ほとんどみんな試合を観に行きますよね。一番団結心の強い寮ですし。するとその間は、誰もいないスリザリン談話室を独り占めできますね」

 

 スリザリン談話室は、他のスリザリン生であれば授業でない時間の大半を過ごす場所であるが、シムにとっては、単に寮の寝室と校内の廊下を結ぶ通り道――それもなるべくなら通りたくない道に過ぎなかった。

 セラは意外そうに眉を上げた。

 

「――たしかにそうだね。でも、あんな重苦しい雰囲気の場所よりスリザード談話室(ここ)の方がずっと居心地良いから、談話室を独り占めしたことはなかったよ」

 

「じゃあ、その間はいつも何をしているんですか?」

 

「――生徒も先生もせっかく全然いなくてガラガラの城を、思う存分に探険しているよ」

 

「……本当ですか?」

 

 シムが問い返すと、セラは平然とした調子で返したが、僅かに一瞬の間が空いたのをシムは聞き逃さなかった。少し不審に思って、シムは記憶をたどるうち、ふと一つの可能性に思い当たった。

 

「…………セラは前に、城に抜け道があって、魔法族だけ住んでいる村に続いていたりする、みたいなことを言ってましたよね?もしかしてですが、ひょっとしてそこに行ってたりするんじゃないですか?平日は行く暇がないですし」

 

 セラの表情は特に変わらなかったが、三度だけ瞬きをした。シムは何となく、直感が当たった気がした。

 

「……たしかに城を休日に抜け出してホグズミード村に行ったことはある。けれど、よりによって皆がクィディッチを見ている休日に、こそこそ城を抜け出しては逆に目立つと思わない?」

 

「さすがに皆が皆、試合を観に行くわけじゃないですよね。関係ない寮の生徒は、特にレイブンクローはそこまで観戦しないでしょうから、別に目立たないですよね。まあ、そもそも僕達がスリザリンの応援席にいなくても気にされないでしょうし。それなら、どうせ『目くらまし術』を使って歩く以上、生徒が城をあまり走り回っていない休日の方が城を抜け出しやすいんじゃないですか。観戦する先生も多いなら、見咎められる危険も小さくなりそうですし」

 

 セラはお手上げとばかりに両手を上げた。

 

「うん、その通りだ、ごめん。スリザリンの試合の日はホグズミードに行くことが多い。本当は許可された休日にだけ三年生以上が行けるけれど、もちろんとても混み合うしね」

 

 途端にシムは、イベントに乗じてこっそり学校を抜け出して外に観光しに行くときのことを想像し、その香りに強く惹かれ始めた。シムは思い切って尋ねてみた。

 

「最初に会った日に、僕の気が向けば、いつかその村に連れて行こうと言ってくれてましたよね?僕もホグズミードを見に行ってみたいです」

 

 セラは手近な椅子に腰かけると、しばし黙って窓の方に目をやり、それからシムの方に視線を戻した。

 

「……たしかにあのときはそう言ったけれど、ハロウィーンにあんなことがあったばかりだったからね。君を安全な城の外にわざわざ連れ出そうとするつもりはなかった。私もちょっと大人しくしてようかなと思っていたんだ」

 

「そうですか……」

 

 シムの脳裏につい先日の生々しい記憶がよぎったが、しかしそれは、禁を破って学校を抜け出すことの魅惑、ホグズミートなる未知の場所そのものの魅惑、未知の場所にセラと二人で赴くことの魅惑を撥ねのけるには、十分ではなかった。

 

「……でも、ホグズミード村って怪物がうじゃうじゃいるような、そんな危険なとこなんですか?城にいて礼儀正しく過ごしていてさえ、怪物に喰われそうになったり、普段も色々な生徒から呪いをかけられそうになっている以上、どこにいてもあまり変わらないような気もしてきますが……」

 

 セラはしばし黙った。迷ったような声を出す。シムに向けてというより、自問するような調子だった。

 

「まあ正直、私もホグズミードにいるときの方がむしろ警戒を緩められるくらいではあるけれど――『禁じられた森』と違って村を歩いてて危険な魔法生物に遭遇するということもないし――でもホグズミードにどんな魔法使いが来るか分からないから、万が一もしこちらに害意を持つ大人の魔法使いがいるとすれば、生徒なんかより遥かに危険だし、私の手には負えないけれど――まあ、昼間の表通りを歩いていて、品の良くない店に近づかなければ、そんなに危なくはないか――そうでなければ、いくら監視の先生を置くとしても、数百人単位で生徒を村に送り出さないだろうし――少なくとも今までは大丈夫だったし――」

 

「じゃあ、大丈夫ってことですか?」

 

 セラはまたしばらく黙り込んだ。シムの顔をちらりと見ると、上を向いて呟く。

 

「――ただ、学校の中にすら危険が入ってくるなら、普通に考えて学校の外にもっと危険な目に遭ってもおかしくはないし――この前の件は多分私達を狙ったものではなかったとはいっても、先生がいない城の外にいては――いや逆に城と違ってホグズミードの方が大人の数はうんと多いからむしろ――あとは抜け道で特に何も起きなければ――万一のときは『守護霊』を飛ばせば――」

 

 セラはシムに視線を戻して溜息をついた。

 

「分かった、今度の試合の土曜日にホグズミードに連れて行こう。表通りをちょっと歩いてお昼を食べてすぐに帰ってくるだけで良いなら、私の指示には絶対に従うなら、私のそばから離れたりはしないなら。良いね?」

 

「ありがとうございます!」

 

 シムは目を輝かせた。セラはからかうように言う。

 

「でも今度の試合は、『生き残った男の子』ハリー・ポッターの待望された初試合だよ?しっかり目に焼き付けなくて良いのかい?村にはいつでも行けるよ?」

 

「彼が頭から真っ逆さまに墜落して死ぬようなことがなければ、いずれまた見れる機会はあるでしょうし、彼が死ぬようなことがあれば、そんな試合は見たくないです。それよりはここで村に行く方が楽しそうです」

 

 シムは即答した。セラは再び溜息をつき、目を意地悪に光らせる。

 

「いつもなら君は『城を抜け出すなんてグリフィンドール的ですよね』とでも言いそうじゃないか。そもそも規則破りだよ。バレるのが怖くないの?」

 

「バレないようにやるから心配するなとセラが言っていたからですよ。……実際、ホグズミードに勝手に行ったのがバレたら、けっこうまずいのですか?」

 

 シムはひとたび冷静になったことで、少し不安になってきた。セラは淡々と答える。

 

「まあ、重罪だろうね。敷地を勝手に離れたら生徒の安全を保障できなくなってしまうし、一人が味を占めたことで次々に他の生徒も城を抜け出すようになっては、なおさらだ。秩序を保つために、勝手に城を抜け出す不届き者には、重い罰を持って見せしめにしなければならない」

 

「……」

 

「その不届き者たちが、そもそもホグズミードに行く権利のない一年生と、いたいけな一年生を非行の道に引きずりこんだ上級生の組み合わせだったら、さらに罪は重くなるだろう」

 

「……」

 

「ああ、怖くなった?――なんてからかわないよ。それで慎重になるのこそ賢明なスリザリンだ」

 

「……重い罰って、つまり最悪、退学とか?」

 

 ――箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますよ――

 

 シムは、ふと初回の飛行訓練の授業のマダム・フーチの厳格な言葉が頭をよぎり、胃がすっと冷たくなった。箒に乗った生徒が退学になることは結局なかったが、それは単にその生徒がハリー・ポッターであったからかもしれず、仮に退学の基準があの程度のラインに引かれるなら、城を抜け出す行為は間違いなく退学にあたるように思えた。セラはのんびりとした口調で安心させるように言った。

 

「先生方は、一年生とか二年生には、よく退学という言葉をちらつかせて戒めるよね。でも、さすがに一発で退学にはならないと思うよ。普通魔法レベル(ふくろう)試験も終えていない未熟な生徒を退学にするなんて、魔法社会から追放するのとほとんど同じだし。それに、今のホグワーツにどれだけ悪ガキや無法者がのさばってるか考えてみなよ」

 

「……たしかに」

 

 シムは頷いた。「グリフィンドールの双子のウィーズリーが、糞爆弾(クソばくだん)を息を吐くように廊下で炸裂させる彼らが、『禁じられた森』に頻繁に繰り出しては森番のハグリッドにつまみだされているらしい彼らが、ホグワーツに二年間以上在籍している」という事実が、シムを大きく安心させた。

 

「もちろん、絶対に安心とは言えないけどね。ホグズミードは魔法族しかいないから大丈夫だけど、たとえば休暇中に校外で魔法を使うとか、『国際魔法使い機密保持法』を脅かす行いは退学になりうるらしい。ただそれ以外は、よほど道に外れた行いをしなければ、まず大丈夫だと思う」

 

「……黙って校外に抜け出すのが学校に対してとても迷惑というのを置いておけば、指定された日以外に一年生がホグズミード村に行くこと自体は、そこまで道に外れた行いとは思いません」

 

 セラは右手の甲を顎に当てて考える素振りをした。

 

「ホグズミードに行ける日にちが決まっているのは、恐らく一つには生徒の安全を確保するためだ。校外に生徒がバラバラに出てしまってはチェックをし辛いし、休日のたびに先生が出て行かなくちゃならないからね。そして一つには、もしかしたらお店のためでもあるのかもしれない。毎回の休日に不規則にばらばらに来られるより、何度か決められた日に確実に数百人が来てお金を落とすと分かっていた方が、受け入れる体制を整えやすいのかな?商売について分からないけれどね」

 

「そして三年生以上しか行けないのは、一・二年生のうちはまだ分別のつかない生徒も多いし、魔法の腕もまだまだで危険に巻き込まれやすいから、村に迷惑をかけかねないということだろう。だから――分別のある上級生が、分別のある一年生を連れて、何も問題を起こさず無事にこっそり帰ってくれば、あまり大きな問題はないと思う」

 

「分別のある生徒がそもそもこっそりホグズミードに行こうと思うかはさておいて、何事もなく戻ってくれば良いんですよね」

 

「そうだと思うよ」

 

「今までも何度も行ってて大丈夫だったんですよね?」

 

「六年上のシーナとソフィアに連れられたときも、私が一人で行ったときも大丈夫だった。二人は『上級生にもなって規則違反がバレるのは、馬鹿かグリフィンドールか、その両方だ』とよく言っていた。私はホグズミードに限らず校則違反がバレて重い罰を喰らうことは一度もなかったし、私よりずっと好き放題に過ごしていた二人も、私の知る限りでは一度もない」

 

 セラはさらりと言う。そして、ふと思い出すかのように付け加える。

 

「……まあただ、あの二人は、『校長がどこまで校内の事情を把握してるのかまるで分からない。ほとんど何もバレてないのかもしれないけれど、もしかしたら見逃されているだけなのかもしれない』とも言っていたな。『校長の目を誤魔化すのは厳しいから、一線を越えていないか、道に外れていないかどうかをよく考えなさい』とも。――そうはいってもあの二人はたまに、談話室に私を置いて、ホグズミードから『姿現し』して遠くの海岸やらに出かけていたくらいだったけど、それはちょっと一線を越えている気もするけど……」

 

 シムはまだ、アルバス・ダンブルドア校長と話したことはおろか、間近で目にすることすらもなかった。食事のたび、大広間の上座の中央で、にこやかに笑みを浮かべているところしか見たことがない(シムはいつも、上座から最も遠い端の席に座っているし、そもそも夕食時はたいてい大広間でなく談話室で食べている)。あの老人について知っていることといえば、今世紀で最も偉大な魔法使いと称されていること、マグル生まれの権利の擁護者であるらしいということ、「例のあの人」に対抗したということ、スリザリン寮で激しく憎まれていることくらいだ。

 

「ともかく、寮監や他の先生に一任しているのか、わざわざ校長先生直々(じきじき)に生徒を罰する場面はまだ私は見たことがないけれど、もし校長先生に見咎められたら、諦めてくれ」

 

 セラは切り替えるかのようにあっけらかんと言ってのける。シムは神妙に頷いた。

 

「あと、繰り返しになるけど、退学にはならなくても、バレたときの罰は多分ひどく重いからね。管理人のフィルチさんがひどく喜ぶような目に遭うかもしれないし、スネイプ先生は激怒するだろうし、これ以上悪くなりようがないスリザリン寮での立場がさらに悪くなるだろうし、監督生のジェマに呪われるだろう――その覚悟はある?」

 

 意地悪な口調でセラは問う。シムは目をつむって考える。頭の中で、にたにた笑うフィルチと、激怒するスネイプと、無表情で杖を向けるジェマ・ファーレイの姿とが浮びあがった。目を開くと、セラの姿が視界に入る。たちどころに頭の中のフィルチとスネイプとジェマ・ファーレイはかき消える。

 

 シムが再び頷くと、セラは悪戯っぽく口の端を吊り上げた。鼓動が二度跳ねる。杖がなくても魔法は使えると知る。

 

「それじゃあ、明日、ホグズミードに行くとしよう」

 

 

  ★

 

 

 土曜の大広間は、クィディッチの試合への期待と興奮の空気に包まれていた。シムがテーブルについた頃には、既にスリザリンの選手は競技場へと去った後で、生徒達も三々五々、玄関ホールへの扉に吸い込まれてゆくところだった。シムは寝不足の頭を恨めしく思いながら、スクランブルエッグとトーストとかぼちゃジュースを胃に流し込み、人の流れに逆行し、玄関ホールとは反対、一階の廊下へ通ずる扉をくぐった。

 

 もちろんスリザリンのテーブルで、大広間から遠ざかるその方向に歩く者は誰もいない――いや、違う。一人だけいた。

 シムは自分の前方に、銀髪を長く垂らした少女が、大広間の喧騒に関せずすたすた歩いているのを見とめた。見覚えのある姿だった。

 少女はふと足を止めると、こちらを振り返った。淡いブルーの瞳が三度、眠たそうに瞬いた。

 

「……ああ、マグル生まれ。おはよう」

 

「……ムーン」

 

 スリザリン一年生の、リリア・ムーンだった。

 スリザリン一年生は、男子も女子も奇数である。そして一年生の魔法薬学の授業では、たまに二人一組で作業をすることが求められる。リリア・ムーンはその際にシムのペアとなる生徒だった。片親がマグルというわけでもない。由緒ある家の生まれにもかかわらずである。

 

「おはよう。試合、見に行かないんだね」

 

 シムは意外そうな調子で挨拶を返す。ムーンはシムのことを、「マグル生まれの生徒」として以上の認識や関心を持っていないようであり、授業の外の場で、彼女から会話を始めるのは初めてのことであった。

 

「マグル生まれ。あなた、今日もあの魔女に会いに行くの?」

 

 ムーンはシムの言葉を関せず、鈴のようなソプラノボイスで囁いた。シムは目を(しばたた)かせた。「魔女」はセラのことだろうか。セラとムーンが顔を合わせているところは別段見たことがなかったが。

 

「あなたとマグル生まれの魔女、この前危ない目に遭ったでしょう?」

 

 眠たげな目をもたげて気だるげに、しかしどこか楽しそうにムーンは言った。

 

(いつも眠たげな様子のムーンはしょっちゅう授業中に睡魔に襲われていたが、それは教室がどこであるかを問わなかった。皆が仮眠か内職をするビンズ先生の魔法史の教室は言うに及ばず、担当教授も含め誰一人として居眠りが発生するとは想定していない、スネイプの魔法薬学の教室でさえも、その例外ではなかった。スネイプが黒板に向き直って座学の講義をしている間、彼女の頭が船を漕ぐたび、シムは背筋が凍る思いで彼女の背筋を小突くのだった。とはいえムーンは実技に極めて優れており、講義が終わってひとたび調合が始まると、シムは彼女の足を引っ張らないように集中せねばならなかった) 

 

「……なんのこと?」

 

 シムは(とぼ)けたが、ムーンは確信しているような調子で、シムを気にせず続けた。

 

「あの魔女、多分そのうち、また危ないことに巻き込まれる。今日じゃないけれど」

 

 彼女の青い瞳がシムにまっすぐ向いた。

 

「それは……忠告?それとも予言?占い?」

 

 シムは占いの類を信じるような性格では元来なかったが、魔法が存在すると知った今、ホグワーツでは「占い学」なる科目があると知った今、少女の奇怪な発言を一笑に付す気にはなれなかった。

 

「――ただの勘。私は『予見者』の器じゃないから」

 

 初めてシムの問いかけを無視せず答え、ムーンは首元に下げたブローチを弄んだ。ブローチには透明な水晶の球が埋め込まれていた。

 

「…………そうか」

 

 眉をひそめるシムの反応を気にせずに、ムーンは言葉を続ける。

 

「ところでマグル生まれ。人にはそれぞれ、その人が主役の物語があって。その無数の物語が少しずつ重なり合って世界が出来ている。私には私の物語、マグル生まれにはマグル生まれの物語。……けれど、もしこの世界が、ひとつのうねる物語にまとめられるとしたら――マグル生まれ、あなたはこんなことを考えたことある?」

 

 シムは当惑して口をぽかんと開けた。

 

「つまり、もしかしたら、無数の名無しの人達でなく、ごく一部の重要な人達の思惑と行動で、世界が動いてゆくのではないかって、そう思えてしまうことはない?――そんなひとつの物語では、私は多分、名無しの端役。でも、マグル生まれは、もしかしたら、脇役かもしれない。あのマグル生まれの魔女も、脇役」

 

 ムーンは歌うように天井を見上げて、夢見心地の表情で言葉を紡ぐ。

 

「脇役は否応なしに主役達の物語に巻き込まれる、脇役は主役ではないから。そして脇役はページから降りる権利もない、名無しの端役でもないから。――だから気を付けてね。気を付けようもないかもしれないけれど」

 

 ムーンは呆気にとられたままのシムに背を向けると、そのまま去っていった。リリア・ムーンが純血にもかかわらずスリザリン一年生から遠巻きにされていることは、その異質な言動と何にも頓着しない性格からは、自然な理といえた。彼女が虐めを受けているというわけではないのも、その魔法の才と超然とした雰囲気からは、やはり不思議ではなかった(それに、古くから続く魔法族の一族の中には、政治闘争に心血を注ぐ一族や純血思想に凝り固まる一族もある一方で、杖作りのオリバンダー家や箒乗りのパーキン家や星見のムーン家のように魔の道に取り憑かれてしまった一族もあるということは、スリザリン生は大抵知っていることであった)。

 

 シムは我に返ると、口を閉じて頭を振りつつ彼女のことを思考から追い払いながら、廊下を曲がり、セラとの待ち合わせ場所へと向かった。朝の陽光に照らされながら窓に背をもたれていたセラは、シムが近づくと読んでいた文庫本をローブの裾に仕舞い微笑む。相も変わらず、画になる光景であった。

 

「じゃあ、行こうか」

 

 セラは自身とシムに「目くらまし術」をかけ、周囲に「消音呪文」をかけると、のんびりと歩き出した。シムはついついセラを追い越さないよう、歩調を合わせるのに苦労した。

 

 

 ★

 

 

 三階まで上り、東棟(ひがしとう)へ入って、城の六階まで上り、古く侘しい廊下を歩いているうちに、ようやく「ここだ」とセラの声が響いた。初めて入る区画(一年生の受講科目の教室はこの階にない)を物珍しく見回していたシムは、慌てて立ち止まった。禿げてでっぷりとした、壺を抱えた男の銅像が、廊下の曲がり角の突き当りに鎮座していた。

 

「『おべんちゃらのグレゴリー像』。飲ませた相手が自分を大親友だと思い込むようになる魔法薬・『グレゴリーのアンクチュアス・アンクション(お世辞たらたら油)』の開発者らしい」

 

 セラの声だけが中空に響いた。セラは一度咳払いをすると、露骨に媚びへつらうような、大仰な芝居がかった調子の声を出した。

 

「グレゴリー様、魔術の茫洋たる海をかき分け前人未踏の偉業を打ち立てあそばされたグレゴリー様、ご機嫌麗しう。貴公のご尊顔を拝する栄誉に浴しましたこと誠に恐悦至極に存じます。貴方様がお守りになるその扉を、私めが通るお許しをもし賜りましたらこの上なき幸せでございます」

 

 シムが当惑してると、銅像がゆっくり動き出し左にずれた。そして銅像の背で隠れていた廊下の壁の一部が、両開きの扉のように奥に開き、暗闇に浮かぶ下り階段が姿を現した。

 

「とまあ、こんな風に心にもないおべんちゃらを言うと、像の裏の隠し通路が開く仕掛けになっている。――別に、グレゴリー像に向けてへりくだる必要はないんだ。スオウ卿に空虚なお世辞を申し上げるのは大変失礼かと存じて控えてしまいましたが、先ほど私めがスオウ伯爵を美辞麗句を持って褒めたたえたとしても、やはり同様に壁は開いた次第でございます。つまらぬ説明でお耳汚しをして恐縮でございます。ささ、中へどうぞ」

 

 セラは自身とシムの「目くらまし」を解くと、ふざけた調子で大げさにお辞儀をした。シムも深々と頭を下げて声の調子を合わせた。

 

「さすがはデイム・セラ。私めにホグワーツの神秘を寛大にも授けてくださるご慈悲を誠にありがとうございます」

 

「――ところで、つまらぬ疑問で恐れ入りますが、聡明にしてホグワーツの無数の秘密に精通しておられるストーリー女史に是非ともお伺いしたいのですが。これって開け方を知らなかったとしても、ふざけてお世辞を言い合って偶然知る生徒が一人くらいいてもおかしくはなさそうですね。この道は他の生徒にも知られてたりするんですかね」

 

 セラは声を普通の調子に戻して答えた。

 

「たしかに、意味ありげに鎮座してる『おべんちゃら』像の前でおべんちゃらを試しに言ってみるというのは、隠し扉を見つける手段として難易度が低い部類ではあるね。抜け道を知っているような生徒の不文律として、無闇に他の生徒に抜け道を言いふらさないだろうから――そんなことをして広まっては立ち入り禁止になるに決まっているから――どの生徒が知ってるのか分からないけれど、どうせ双子のウィーズリーとかグリフィンドール三年のリー・ジョーダンあたりは知ってると思うよ。私なんかより遥かに城に詳しいだろうしね」

 

 シムはなるほどと頷いた。

 

「……あ、あと管理人のフィルチさんとこの廊下でかち合ったことがあってね。像の前で立ち止まってたし、多分フィルチさんも知っていると思う。だから急いで入ってしまいましょうか、スオウ教授」

 

 そう言うとセラは穴をくぐって階段を下り始めた。シムも後ろを振り返りつつ階段に足を踏み入れた途端、隠し扉が閉じて壁の穴はふさがってしまった。同時に頭上で白い光が灯り、二人と周囲を淡く照らした。二人の歩調にあわせて、灯りは動いた。階段は螺旋になっており、かなり長いこと下ったと思ったところで、道は平坦に伸び始めた。

 

「ここは地面の下だね。換気がちゃんと問題なさそうなのが不思議なところだ。ちょっと凸凹しているから、足もとに気を付けて」

 

 セラは言いつつ、黙ってずんずん歩いていった。曲がりくねりながらも変わり映えのしない狭い道をセラはひたすら歩き続け、その背中をシムは追い続けた。暗さと沈黙とが相まって、シムの不安が高まっていった頃、ようやく景色に変化が訪れた。道は途切れ、梯子が五メートルほど頭上まで伸びていた。

 

「長かったけど、ここを登るとホグズミードに出る。お先にどうぞ」

 

 セラはシムに向き直ると、梯子を後ろ手で示した。冷たい風ではためくローブに足をとられながら、シムは梯子をよじ登った。金属で出来た梯子はひんやりしていたが、錆びてはおらず掴みやすかった。登り切ると、再び平らな短い通路が開け、三メートルほど先に重々しい扉が鎮座している。

振り返って声をかけると、セラも振り向いて梯子を登り始め、シムに並んだ。

 

「そうだ。ホグズミードに行く前に――」

 

 セラはシムと自身のローブを杖で叩いた。襟元が緑色の黒のローブが、紺色一色に変わった。

 

「ホグワーツ生がいたところで気にされないだろうけど、ホグワーツ生ですスリザリン生ですって見せびらかすのも気が引けるしね。こうすれば君は入学前の十歳と思われなくもないだろうし――気を悪くしたらごめんね――私は十八歳で通すのは苦しいかもしれないけれど、わざわざ『老け薬』を飲むほどでもないかな」

 

 セラは通路の扉を開けた。白い光に視界が覆われたかと思うと、シムの光景は一変していた。

 二人は開けた道の上に立っていた。抜けるように青い空のもと、茅葺(かやぶき)屋根の小さな家や店が、まっすぐ延々と立ち並ぶ。そして道ゆく人は皆、ローブをまとってマントを羽織り、山高帽子を被っていた。

 

「ここが、英国ただ一つの魔法族だけが住む村、ホグズミードだよ」

 

 愉快そうにセラは言う。シムは、息を吸って冷たい空気を取り入れるたびに、心もみるみる膨らんでいくのを感じた。

 

 

 

 




だいぶ間が空いてしまいました。続きは明後日の夜に投稿します。

「去年のグリフィンドール対スリザリンの最終戦」
 マクゴナガルは「去年の最終戦でぺしゃんこに負けた」と言ってますが、伝説のシーカーにしてキャプテンのチャーリーはこのときまだ七年生でホグワーツに在籍しているんですよね。もう七年時にはチームに在籍していなかった・偶々欠場していた・不調だった・そもそもチームの層が薄かった(ウッド以外みな年齢若い)とか色々妄想できます。チャーリーが二年時から七年時までスリザリンに寮杯をとられているという事実も、こじつければ、「グリフィンドールはクィディッチは強かったが、他の様々な面でスリザリンに寮杯を明け渡す結果になった」とか「チャーリーとウッド以外の層が薄くて、双子やチェイサー三人が入ってくるまでグリフィンドールチームは弱小だった(シーカーが強いなら、基本的にその時点で勝ててしまいますが…)」とか色々妄想できそうです。

「ムーン」
サリー=アン・パークスやモラグ・マクドゥガルと同様、一巻の組分け時のみ言及されるボツ生徒。ローリング氏の初期構想案の一年生40人(wizarding worldの"The Original Forty"の記事、写真はHarry Potter Lexiconや種々の日本語サイトに)の中には、「リリー・ムーン」なる女子生徒(寮は不明で恐らく鷲以外)がおり、後のルーナ・ラブグッドの原型になった模様。この二次創作ではスリザリン生に(ムーンをスリザリン女子に割り当てている他の作品も拝見しましたが、キャラ被りしてないので大丈夫だろうと判断)。「レオナルド・スペンサー=ムーン」(グリンデルバルド全盛期の英国魔法界を導き、チャーチル首相と強固な関係を築いた)は「史上三番目に偉大な魔法大臣」だそう(wizarindworldの"The best and worst Ministers for Magic")。


「おべんちゃらグレゴリー像の裏の抜け道」
一巻九章で双子が存在について言及。ホグズミード直行の抜け道かどうかは不明。(仮にホグズミード直行の抜け道だとすると、三巻で彼らが言及している「フィルチが知っている四つの抜け道」の一つになります。その他の抜け道は「四階の隻眼の魔女→ハニーデュークス」「暴れ柳→叫びの屋敷」「五階の鏡の裏→不明(後に使用不可)」)。
一巻で双子はこの抜け道について「新学期の初週に見つけた」と言っていますが、三巻によれば双子は一年の頃から忍びの地図を入手してすべての抜け道を知っているはずなので、一巻執筆時には忍びの地図の構想はなかった(少なくとも双子が持っている構想ではなかった)のかなという気がします(地図には、悪戯仕掛人が発見できていない構造/当時は無かった構造は記載されていないという風にも考えられますが。少なくとも「秘密の部屋」は地図には載ってないのでしょうし、この二次創作ではそんな感じの設定で行きます)。リー・ジョーダンは地図なしで独りきりで自力で抜け道を一つ発見していることになるので凄い。
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