スリザード・クラブ (蛇寮非魔法族出身者の会) 作:非魔法族
・(野暮な注意書ですが)今話においてはとりわけ、地の文で記された登場人物の価値観は筆者の意見と一致するものではありません
胸に「監督生」バッジを留めるスリザリン五年生のジェマ・ファーレイは、広大なスリザリン談話室の右の奥、彼女専用のふかふかした肘掛け椅子にもたれ、物思いに耽っていた。
午前十一時に始まったクィディッチの試合は、スリザリンの敗北という形で午後一時には幕を引き、ジェマはそのまま談話室に戻り――クィディッチは長引く可能性があるので、昼食は大広間ではなく競技場で済ませてしまうのがホグワーツ生の常である。
ベクトル教授の課題がまだ羊皮紙二巻ぶん残っているが、「数占い学」は夕食後の回らない脳みそで取り組むには如何せん荷が重い。明日に回してしまおうか。しかし明日はジャスミンやサブリーナと箒に乗って気晴らしをする予定だ。だからこそ今日は独りで勉強させてと頼んだのだ。それにどうせ平日はまた課題漬け。今後の進路を左右する
そのうえ今年から監督生になったことで、監督生の雑務もこなす必要がある。廊下を巡回したり、生徒の揉め事を処理したり、下級生の面倒を見たり。これらは中々に大変で、些細な楽しみ(つまり、グリフィンドールの校則違反を積極的に減点したり、虐めや喧嘩の現場に
「あのポッター、何でスニッチを呑み込んでも許されるんだ?」
「双子のウィーズリー、あいつら一昨日、糞爆弾・液体タイプをぶちまけやがって。今度という今度は――」
幾千回となるグリフィンドールへの憎悪の声が、左右のテーブルから聞こえてくる。スリザリンはひとつの家族のようなもの。だから、喜びも悲しみも、皆で分かち合う。
今日の試合でスリザリン寮は、英雄ハリー・ポッターの華々しいデビューの場の、当て馬を演じる役に甘んじるのみだった。ポッターは、自身の箒が不可解な暴走を始めたにもかかわらず、キャプテンのマーカス・フリントの反則級の妨害にもかかわらず、鮮やかに勝利を掴んだのだ。勝利のためにはラフプレイも辞さないのがスリザリンチームの伝統だが、それで勝てなければしようがない。
まあ、試合の中身もスリザリンチームの体たらくも、いまさら思い返すほどではない。ジェマにとって重要なのは試合結果が及ぼす影響だ。
明後日の魔法生物飼育学のクラスでグリフィンドール監督生どもの――
(「まあ、スリザリンの野郎が弱かったわけじゃねえな。うちのチームが強すぎたってだけだ。ハリー・ポッター御大を抜きにしても、新人チェイサー三人衆からしても層が厚い」「スリザリンに聞こえるだろう、少しは声を抑えたまえ、ジョンソン。それにだ、客観的に分析すると、
それに、スリザリンが六年連続で守り続けている寮対抗杯は、クィディッチの点数にも大きく左右される。今回大きなリードを――よりによってグリフィンドールに――譲ってしまった状況もいただけない。今年も勝ったところで、監督生は褒め讃えられないだろうが。負けたとしたら、寮生の関心が監督生に向かうのは避けられないだろう。とりわけ、今年初めて監督生になった、実績のない五年生には。
しかしながら、五年生のチームキャプテンのマーカス・フリント、およびその従兄の七年生ヴァルカン・フリントの傲然な言動がしばらくは鳴りを潜めるであろうことは実に喜ばしい。心底嫌いな男だが、英国魔法界屈指の歴史を誇るフリント一族の次代当主たる、ヴァルカン・フリントの寮内での影響力は非常に大きい。
スリザリンはひとつの家族のようなもの。だから当然、一人一人に
ジェマが胸に留める監督生バッジそのものには、所詮教師から与えられたに過ぎない代物には、実のところさして効力がない。監督生になったから力を持つのではなく、力を持つ者が監督生として振舞うことを周囲に認められるにすぎない。
だから、古き家でも富める家でもない生まれのジェマが、監督生として振舞うことを周囲に認められている現状は――様々な力を寮内の殆ど誰より磨いてきた当然の帰結とはいえ――脆いバランスの上に成り立っているものだ。さながら二月のホグワーツの中庭の池の薄氷に立つような(グリフィンドール生は馬鹿だからわざわざ度胸試しをしてたまに落っこちる)。
話に聞く前寮監、超一流の
(スリザリン生は概ね、強い同胞愛という点で気質を一にしているが、どのように線引きして「同胞」とみなすかは、必ずしも一枚岩ではない。つまり、流れる魔法族の血がどれだけ濃いかを重視する者ばかりだけでなく、魔法の力がどれだけ強いかを重視する者もいる。ジェマ・ファーレイは後者であった)
一方でいまの寮監スネイプは――恐らく寮生にほとんど一切の関心がない。自分は寮監に気に入られていると自慢気な生徒がたまにいるが、あれは単なる馬鹿だ。少し考えれば、グリフィンドールの当てつけとしての贔屓だとか、生家と教授に親交があるからだとか、気づけるだろうに。
監督生という立場上、ジェマは他のスリザリン生よりスネイプ教授と話す機会が多かったが。彼のジェマに対する印象は、どれだけ好意的に見積もっても、「そこらのウスノロより少しはマシな存在」か、あるいは精々「そこらのウスノロの起こす問題の多くを、自分の手を煩わせる前に内々に処理してくれる便利な存在」であるに違いない。
余程の才があれば、あるいは教授の持つ力と知を積極的に教え授ける気になるのかもしれないが――彼の魔法薬学のクラスで一番優秀という程度では、全く足りないようである。もとより、あの恐ろしい男に魔法を師事したいとも思わないが。
そういえば、そろそろセブルス・スネイプ教授に会わねばならない時刻が近づいていることを思い出した。暖炉のそばの居心地の良い暖かい空間から離れるのは気が重い。しかし寮監は遅刻を快く思わない。立ち上がり談話室の扉に向かう。「あら、ジェマ、こんな時間にどこに行くのかしら」「昨日、監督生用のお風呂にクレンジング忘れてきちゃったみたい」「それなら
ホグワーツの
「こんばんは、スネイプ教授」
足を踏み入れると扉が閉まる。廊下よりはマシとはいえ、室内も薄ら寒い。
室内の雰囲気に違わぬ、陰気な男に目を向ける。薬の染みがついたローブ。ねっとりと長い黒髪。土気色の顔。その風貌から、世間や周囲の一切に関心がなさそうだと推察できる。富貴や高雅とは絶望的に程遠い。くわえて、誰も口にしないが、そもそもスネイプなどという家の名は、とんと知られていない。
――にもかかわらず、この男を恐れないスリザリン生はいない。一目見て、魔法使いとして自らより格が上だと直観できないのなら、その者は馬鹿かグリフィンドールだ。
「掛けたまえ」
この教授は世間話や社交辞令の類を好まない。だからジェマは椅子に座るや否や、端的に要件だけを口にする。
「今週も特に何事もありませんでした。先生にご報告すべきことに限れば」
ホグワーツの寮生活は、生徒の自治を旨としている。寮監はみな、自寮に必要以上に干渉しないし、スリザリン寮監はなおのこと。その代わりに監督生のジェマはこうして、寮の模様について報告することになっている。その会合は、週に二度、十五分間。水曜夜の十分間は、他の監督生が全員そろっているから、一対一になるのは土曜夜の五分だけ。
「ご苦労。今後も監督生としての君の働きに期待している」
ジェマの簡潔な台詞も、寮監の素っ気ない返事も、いつも通り。厳密に何事もなかったわけでないのも、いつも通り。モンタギューとベイジーの諍いだとか、ブルストロードとパーキンソンの喧嘩とか、ブルストロードのカローの猫の死闘とか、ムーンとアンの深夜徘徊とか、オズモンドとサイアーズとセイシェルの痴話喧嘩とか、そんなことはいちいち寮監の耳に入れる必要も無いだろう。
「ときにファーレイ、先週の繰り返しにはなるが」
すぐに退室を促されることもあるのだが、今日のスネイプ教授は羽根ペンをインク壺に置き、口を開く。
「君も承知のことと思うが、近ごろの城の様子は平時とは少し異なる。生徒にそのような能力があるとも思えんが――城に下らん騒乱を持ち込むことを愉快に思うような輩が――あるいはそのような輩に協力させられている者が、万一にもスリザリンに紛れているとすれば――それは我がスリザリン寮にとって望むところではない。」
呟くような調子だが、寮監の台詞は聞き漏らすことがない。ジェマの脳裏に、ハロウィーンの騒ぎと今日のクィディッチの様子が浮かぶ。
(ポッターの滑稽な曲芸を見た下級生は彼を嘲笑していたが、買って二ヶ月の競技箒が故障するはずがないことも、箒を暴走させるほどの強力な呪いを生徒が使えるはずがないことも、ホグワーツ五年生にもなれば当然知っている。つまりポッターは何か異常な事態に見舞われていたとみるのが自然であるが、グリフィンドール生がどうなろうがジェマの知ったことではない)
「寮の広くを知る立場にある君が、仮に胸に秘めていることがあるとすれば。寮にとっても君自身にとっても、得策ではあるまい。――無論、君が何がしかの圧力を受けているならば、ホグワーツ教授の庇護が君の信用に足るものでないと考えているならば、その限りではないが」
スネイプ教授の言い回しは迂遠であるが、内容は
「……スリザリン寮の中で、何かしらの不審な動きは、私の関知する限りでは、生憎とありません――優れた能力を持つ生徒や、他の監督生を含めても」
ジェマは寮監の問いかけに嘘偽りなく答えた。嫌いな生徒、失脚してほしい生徒は多数いるが。仮にそいつらが後ろ暗いことをしていたとしても、ジェマが尻尾を掴めるとも思えない。ジェマ以外の監督生も、寮監から同じことを訊かれているのだろうが、ジェマはこれらの件に関して何もやましいことはないから、密告される心配は無い。いや、この件に限らなければ、やましいことをしていないわけではないが、寮監が問題にするほどのことは何もない、はずである。
ジェマは答えながらも、寮監の黒く虚ろな瞳に、毎度ながら寒気を覚える。明らかに卓越した魔法の力を持ちながら、まだ年齢も若いというのに、何の野心も目的も抱いていないように思える。こちらの生ばかりか、自分の命にすら一切執着が無いのではないか、とまで感じさせられる。
そもそも、この寮監はなぜ、ホグワーツで教鞭を執っているのだろうか。子供と関わるのが好きでないのは明らかだし、闇の魔術の研究をダンブルドアに禁じられているのは周知の事実であるし、魔法薬を研究するにも他に環境はある。だから、ダンブルドアが何か教授の弱味を握っていて、教授の意思に反して縛り付けているからという者もある。しかし、そうであればダンブルドアがこの闇の魔術師を自らのお膝元に置く理由が分からない。
「――構わん。もとより、スリザリン生を疑ってはいない。今のは、寮監の義務としての、形式的な質問にすぎない。無論、教師との会話の断片を吹聴するほど、君は愚かであるまい」
寮監はジェマから視線をそらし、手元の羊皮紙に向き直った。ジェマは緊張を少し緩める。
「もちろんです。……もし私に何かすべきことがあれば、お伺いしたいです」
「寮生達の学校生活に危害が及ばぬように努めるのは寮監の役目であるからして。我が寮の監督生に何かを――どこぞの寮のように馬鹿げた冒険心や使命感を
「承知しました」
会話が終わったと見てジェマは腰を浮かしかけたが、寮監はなおも呟く。
「――とはいえ。寮の……隅まで目を払い、物事を調整する君の手腕は、常々高く評価している。――加えて警告だが、無法の輩であれ、下級生に杖を向けるのは程々にしたまえ」
「今後も目を配っていきます。今後はマクゴナガル教授の目に留まらない狡猾さを身に着けるように努めます」
研究室の扉が開く。ジェマは今度こそ立ち上がって黙礼をし、退室した。
★
冷え込む廊下を近道を利用して練り歩き、談話室に戻る。深々と自分の椅子にもたれ、息をつく。緊張を強いられる会話は、たとえ数分であろうと疲れる。
「ミス・ファーレイ、今よろしいですか?魔法薬学でお伺いしたいことがありまして」
暖炉の火で体が温まるのに任せて休んでいると、一年生が分厚い「薬草ときのこ千種」「魔法薬調合法」を抱えてジェマのところにやってくる。遠慮がちの声色を示しつつも、背筋を伸ばして堂々と。とっさに威厳と寛容と敬意を混ぜた表情を作る。
「もちろん、喜んで。――それにしても熱心ね、グリーングラスさん」
「勉学は好みませんが、この分野をちょっと励みたくて。もちろん将来の務めは魔法薬師ではないのですが」
「感心な心構えです。ただ、私にわかる範囲だと良いのだけれど。一年生の宿題でないのならば、お役に立てないかもしれません」
「スネイプ先生とは未だ気軽にお話しできる仲ではないですし、優しくて賢いミス・ファーレイを頼りたいのです。それで、ここでアルマジロの膵液と双頭ナメクジを潰したものに日長石の粉末を加える意味についてなんですけど――」
スリザリンはひとつの家族のようなもの。だから、上級生が下級生の勉強を積極的に手助けする文化が根付いている。不正の手助けが多いのは汚点だが、周囲にさして興味のないレイブンクローの文化、勉強を馬鹿にする風潮のあるグリフィンドールの文化よりは遥かに素晴らしいにきまってる。――下級生のうちは呑気にそう思っていたが、上級生になると、はたして。監督生で、古い血筋でもないジェマは、積極的に下級生に頼られる、もとい、こき使われる。
とはいえ、ジェマは一年生に不正の味を覚えさせるほど冷淡ではない(ズルをする、他人にやらせるのがスリザリンの流儀だと思っている馬鹿は多い。労働と無縁の家に生まれた人間でなければ、ふくろう試験と就職で泣きを見ることになるのに)。だからガリオン金貨を手に代筆レポートを求めるような生徒が来ないのは良い。それにこの旧家の令嬢は、血筋を鼻にかけてジェマを軽んじるような態度を取らないのも良い。少なくとも表向きはだが(表にも隠さない奴らもいる。パグ犬みたいな顔の一年とか)。
それに、意欲的な生徒と魔法の議論を交わすには、自分にとってもメリットが――
「ファーレイさん、俺も少し良いですか。宿題ではないんですが。時間に関する魔術に興味があって」
――私はレイブンクローではないから、そんな危険な議論に巻き込まないで。反射的に喉から飛び出しかけた言葉を呑み込む。小難しい単語が書き殴られたノートを携えた一年生がノット家の息子であろうがなかろうが、せっかく自分を尋ねてくれたことへの礼節を忘れるわけにはいかない。といっても、関わりたくはない。時に関する魔法を皆が必死に追い求めようとしないのは、法で厳重に規制されているからではなく、時が思い通りにならないことも、下手にいじろうとすればロクなことにならないことも分かり切っているからだ。談話室を見回し、対岸の隅でぽつんと座る、不気味な魔導書を陰鬱な表情で読んでいるメイ・ルックウッドの姿を見止めた。あいつの父親は魔法省神秘部に勤めていたはずだから、もしかしたら何か知っているかもしれない。と思ったが、すぐにその父親は死喰い人の
それからほどなくして、ジェマが「数占い学」の本を取り出したとき、ばたばた駆けよる音が聞こえ、再び声がかかった。
「勉強お疲れさまです。良ければ、眠気覚ましにどうぞ。お好きでしたよね」
ジェマは顔を上げる。マグルの父を持つ、三年生の女子だ。真っ赤な
「ああシャーリー。気が利くのね、ありがとう。……でも本当に良いの?下級生に使い走りをさせているなんて、周りに思われてしまうかも」
「いえ、ほんとに私の気持ちですから!」
女子生徒は手をぶんぶん振ると、ジェマの耳元に顔を近づけて、囁く。
「――月曜、三階の女子トイレの前の廊下で、オールディスとブラッドバーンの鞄とローブから、黒い蛇が何十匹も這い出してきて、壁に牙を突き立てて。それが手紙に変わって、読んだ二人が蒼ざめてるうちに、手紙が消えて。それからはあの二人に、何もされなくなりました。――あれ、ファーレイさんですよね。わざわざ私なんかのために、本当に本当にありがとうございます」
「……そんなことがあったなんて、全然知らなかった。教えてくれてありがとう」
眉をひそめて呟き、右手を顎に当てる。
「でも、何か誤解していない?監督生ジェマ・ファーレイが、同じスリザリン生に危害を加えるなんてことを、見逃すはずも、ましてや自分がするわけもないでしょう?」
ジェマは声を冷たくとがらせて囁き、右手をローブの裾に入れ、杖に触れる。怯えた顔で女子生徒が飛びのく。
「……も、申し訳ありませんっ……!」
そしてジェマは両手で少女の手を包み、微笑んでウインクをする。
「――でも、シャーリー・サザランドの友達のジェマなら、もちろん。あなたに陰険な酷い嫌がらせをする奴らを、ただで許すわけない。……私こそ、もっと早く気づいてあげられなくて、ごめんなさい。あなたにとって気軽に相談できる存在でなくて、ごめんなさい」
少女の顔が輝く。目をうるませて下を向きながら、ジェマの両手を上下に振る。雫が二滴三滴、床に垂れる。ジェマがゆっくり手を離すと、少女は目元を拭う。そして不意に表情に不安の影がよぎる。
「でも、家に言いつけたり教師に犯人捜しをさせたら――私のせいでファーレイさんにご迷惑が――」
「そうしたら、あいつらの秘密が、談話室にばら撒かれることになる。どうせそんな度胸はないから、心配しないで。――あとレイチェルから聞いた話だと、キャベンディッシュは
少女は驚いた顔をすると、深々と頭を下げて、ジェマのもとから早歩きで去っていった。人に聞かれるべきでない会話を談話室でしてしまうような、
紅茶を一口飲み、先ほどの女子生徒が置いていった錫の缶から、
そしてジェマが図や式がごちゃごちゃ並んだ羊皮紙を取り出して、インク壺に羽根ペンを浸したとき。談話室に不意に静寂が訪れた。
「『穢れた血』かよ……」「チッ」
ざわめきが聞こえる。辺りを見回す。遥か遠くで、
★
「
しかし近ごろでは、生粋の純血主義者であっても、その言葉の意味する対象は、きわめて限定されている。昔がどうだったのかはいざしらず、少なくとも近年のスリザリン寮では、「親の少なくとも一方が、『穢れた血』ではない」のならば、「『穢れた血』とは呼ばない」という共通認識ができあがっている。
つまり、「親の片方がマグル、親の片方が半純血」というような生徒でさえ――むろん寮での序列がどうなるかは言うまでもないが――スリザリンの同胞として迎え入れられる。同胞に「穢れた血」と呼ぶことは、決して許されない。本来サラザール・スリザリンが自らの生徒に望んだとされる条件からすれば、柔軟とさえいえる。
その代わりに、「穢れた血」が同胞として迎えられることはない。その最低限のラインは守られなければならない。たとえ「穢れた血」がホグワーツ城に混ざっていようと、選ばれしスリザリン寮だけは、清浄でなければならない。
とはいえ、新入生に自らが「穢れた血」でないかどうかを証明させる、ということはしない。端からスリザリンには「穢れた血」は来ないものとして扱われるからだ(そもそもスリザリンには、お互いの出自を過剰に探らない不文律がある。よほど傲慢な詐称でなければ、自称を最大限に尊重しなければならない。気に入らない相手の弱味を探るためであっても、家系図の
それでは、マグルの生まれであることを隠さないような魔女がいたとしたら――それどころか、マグルの血を堂々と誇るような魔女がいたとしたら。
「……『穢れた血』か。今頃になってのこのこ顔を出すとは、良いご身分だな」
当然、徹底的に無視をされる。もしくは、容赦ない攻撃の対象にされることになる。ちょうど今のように、寮全体が、鬱憤の捌け口を求めているときには。
スリザリンはひとつの家族だ。だから、
「これは失礼しました、ミスター・ヴァルカン・フリント。私の黄色い声援で、キャプテン・マーカス・フリントやスリザリンチームの士気が上がるとは思いもしなかったもので。――もしそうだったのでしたら、心より、お詫び申し上げます」
「勝手に泥まみれの口を開くな。誰が発言を許可した」
こちらまで響く、ヴァルカン・フリントの傲然とした声をものともせず、セラ・ストーリーの涼し気な声が聞こえる。
「黙っていたままでは許されないのなら、何か発言すべきなのかと思いましたが、それすらも許されないとは――魔法使いは色々な物理法則を無視するだけでなく、排中律も無視できるのですね。勉強になりました」
セラ・ストーリーとは長い付き合いになるが。才気に溢れ、除け者の地位を堂々と甘受する、この魔女に対する自分の気持ちが。慈愛か親愛か羨望か嫉妬か同情か憐憫か軽蔑か嫌悪か罪悪感か恐怖か憧憬か敬意かは、未だによく分かっていない。
「発言の許しを乞えと言ったのだ。マグルは英語を教わらずに育つのか?少しは身分をわきまえろ。……一年生の頃はあんなに怯えてコソコソ背中を丸めていたというのに。随分と偉そうに増長したではないか」
「たしかに一年生の頃の私は七年生のシーナ・シンクレアとソフィア・ソールズベリーの背中に隠れて生きていたけれど――しかしミスター・フリントこそ、彼女達に近づこうとはしていなかったのでは?」
「あのような穢れた野蛮な雌犬どもの名前を二度と出すな」
存在しなかったことになっている忌み名をセラが口にし、四年生以上の一部は、顔を歪める。不本意ながら世話になったジェマ自身、あまり思い出したくはない。セラのように毎日あの二人に
あの二人は、スリザリン寮の一切合切に、何も気を払わなかった。二人の世界は、二人だけで完結していた。その代わりに、自分達の領域を侵す者に対しては、苛烈に徹底的に応じた。それができるだけの実力は備えていた。自然、相互不可侵の合意が暗黙に生まれていた。今の上級生たちは、何にも媚びず我が物顔で城を闊歩するあの二人を苦々しく思いながら、何も手を打てない自分達にも苛立っていたことだろう。
「スリザリンの純血達が、あの下賤な輩に怯えるわけがなかろう。常に片時も離れずくっついているわ、猿のようにすぐに杖を振り回すわで、油断も隙も――いや、ひたすら野蛮だったというだけだ。……奴らに美点があるとすれば、魔法族の高貴な血に、あの穢れた血を混じらせることも無いだろうというくらいのものか。あの様子では二人でいつ式でも挙げるのかと不思議に思ったくらいだ。端から嫁の貰い手もあるまいが」
「劣等種は劣等種同士で身を寄せ合うのが世の節理だが――しかしお前もお前だ。身分を偽って、従順な半純血の女として振舞って、蛇に取り入ろうともしないとは。狡知と野心の寮の、素質の欠片もないと言わざるを得んな」
「高貴な家名に恥じないだけの、中身を備えておられない方々に媚びて、人生を無駄にするつもりは無い。生憎と、利己や合理を尊ぶ寮にいるもので」
「それで行き着く先がその小童のお守か。――お前はさぞ楽しいだろう。この独りぼっちのママに、寝小便の面倒を見てもらうというのは」
フリントの侮辱の矛先は一年のシム・スオウに移った。
「彼の価値を見出せないのであれば――資産のある家に育った人間は審美眼が養われるものだという私の認識は、どうやら見直す余地がありそうですね」
シムの目が談話室を泳ぎ、やがてこちらに向いたのを感じ、ジェマは本に目を落とし、頁をぱらぱらとめくる。自分は無思慮なグリフィンドールではなくスリザリンだ、という言葉は、自分の心に蓋する言い訳に、たいそう好都合だ。
「なんで――なんで、そんなに僕達を忌み嫌うんですか」
「なんで?……言うに事欠いて、なんで、だと?『穢れた血』の罪業を、説明されなければ分からないだと!?よくもぬけぬけと――」
弱々しいシムの問いかけに応えて、フリントが憤怒の声で演説をする。
野蛮なマグルに迫害されたおかげで、魔法族は隠れ住まざるを得なかった。「穢れた血」は、マグルにもかかわらず、魔法族のふりをして杖を振る恥知らず。魔法の神秘と文化にたかる寄生虫。マグルの血を混じらせて魔法を弱める侵略者。だから、「穢れた血」を、同胞に受け入れてはならない。……これが、スリザリンの「論理」なのだ。
「そのくせ、お前は――お前は――。サラザールの寮にありながら――その身に流れる穢れた血を、蛮族の血を、隠すでも恥じるでもなく、誇るだと?あまつさえマグルどもの低俗な文化を、優れていると崇めるだと?その杖を振り回しながら?――サラザールの教えを――魔法族の誇りを――どこまで辱めれば気が済むというのだ」
怒りのあまり声が途切れ途切れになるフリントの巨体に正対しながら、談話室中の生徒達の憎悪の視線を浴びながら、セラはあくまで飄々と堂々と立っている。つまらなそうな無表情で。もしかすると怯えや萎縮を欠片でも見せてはいけないと努めているのかもしれないし、あるいはセラにとってシーナ・シンクレアやソフィア・ソールズベリーに比べればフリントも周囲の有象無象も全く恐るるに足りないのかもしれない。いずれにしても並大抵の胆力ではないのだが。
「さらにそのうえ、『穢れた血』どもは、自分の身分に大人しく甘んじるでなく、声高に権利を求める。……このホグワーツでの教育を許されておいて、これ以上、何を望む?なぜ魔法族と同じだけの富や名声を望む?純血の敷いた秩序を、どこまで壊せば気が済む?『穢れた血』ばかりが護られ、純血はどんどん脇に追いやられ、打ち棄てられる。――あの、魔法力が莫大なだけで、魔法族の秩序を何一つ考えない、半純血で、ホグワーツもウィゼンガモットも国際魔法使い連盟も仕切る、痴呆の独裁者の、アルバス・ダンブルドアと、その信者どものせいで!……たしかに先の戦争で、英国の魔法族の貴重な血が多く流れてしまったのは事実だが――たしかにスリザリンは革命に加担した者も多いが――しかしそれは、ボケ老人の独裁と、純血スリザリンの迫害を許容できることにはならない」
フリントの被害者意識に満ちた演説は、古い家に生まれた者達を代表する叫びといえた。「スリザリン」や「純血名家」の印象は、他の三寮から見れば、魔法界を牽引する誇り高き指導者などではなく。千年前の異端の思想に固執し、マグルとマグル生まれを憎悪し、闇の魔術にのめりこみ、「例のあの人」のもとで家族や親戚や友人を多数殺した者達。マグルの血はどんどん濃くなっているのに、「純血」の自称にしがみつく、所詮は衰退する運命にある者達――そんなところだろう。もしかしたら純血主義者のほうも、今は金と力を蓄えていても、いずれは特権階級ではなくただの少数派の弱者になる恐怖を薄々感じているのかもしれない。
「そうはいっても――好きで魔法使いになったわけではないし、好きでこっちの世界に来たわけじゃないし、しょうがないでしょう。どうすれば良いというのですか?」
シムがなんとか反論する。ただでさえ魔法使いは数が少ないのだ。たとえ魔法を一切使えない家に生まれていようと、積極的に迎え入れていくのが、魔法界のためだとジェマは思うが。セラのように優秀な魔法使いならばなおのこと、取り立てないのはスリザリンの損失だが。
「魔法界にいるべきでないと言われても……そもそも、非魔法界から来る人がいなくても、魔法界は人口を保てるんですか。三親等までに限ってすら、マグルやスクイブが一切いない人なんて魔法界にどれだけ――」
しかしマグル生まれへの憎悪が寮の柱の一つになってしまっている以上は、理屈ではないのだろう。スリザリンの両親を持つジェマ自身、四年前までは大概だった。だからシムの正論に対して、寮は殺気立つ。
「もちろん、私達がいなくとも、あるいはいない方が、少数の純血の皆様で、楽しく元気に魔法界を営んでいけるでしょう。魔法界の問題を全部解決できる、シンプルでベストな方法ですね!魔法界の過去を知り未来を憂う純血の皆様は、さすが聡明でおられる」
セラはやんわりと、殺気をシムから自分の方に受け流した。そのうえで、首を傾げて、痛烈に皮肉を放つ。
「ですが――仮に私達が皆、ホグワーツから出たとしたら、魔法界からいなくなったとしたら――。この中の本当に全員が、本心から喜ぶのでしょうか?困る人も少なくないのではないでしょうか?『魔法族の血が濃い』ということしか、心の拠り所がない人は」
これはいくぶん挑発的に過ぎた。無言の怒気で熱くなる空気を肌で感じ、ジェマの頬を汗が一筋伝ったところで――
「ミスター・ヴァルカン・フリント」
ここで初めて、ホグワーツ
「あなた、いつまでそちらに構っているのかしら?困っているでしょう?早く寝床に通してあげなさい。談話室の秩序を、和やかな雰囲気を乱していますわ」
この、成績優秀で品行方正で富貴栄華で魔力莫大で統率力があるだけの女がホグワーツ首席とは、まったく嘆かわしい限りだが、他に首席たりうる人物が七年生にいない以上は、仕方ない。オリバンダーなどは性格が問題外だ。その点、いまの五年女子は、首席決めに苦慮しないから、教師も安心だろう。
(もっとも、クリアウォーターに首席バッジを取られる可能性も十分ある。腹立たしくも彼女に筆記試験では勝てないということをこの四年間で理解させられつつあるし、そのハンディを埋められるほど実技試験で勝っている確信も持てない。それにあいつは真面目だから教師にバレて困るようなことを普段あまりしていないはずだ)
「――そもそも、談話室は
ロウルはフリントを痛烈に罵る。彼女も生粋の純血主義者だが、「『穢れた血』とは関わろうとせずただ無視すべきである」という姿勢を徹底している。その後も皮肉と罵倒の応酬をフリントと続けながらも、ロウルは穏やかに紅茶を啜る。
「――そうであれば残念ですが、いくら血が清らかといえど、フリント家の継嗣といえど、偉大なる我らがサラザールの寮に相応しいとは言えませんわ。『純血』のヒトたるもの、常に強く賢くなくては」
家柄しか拠り所のない能無しならばジェマの敵ではないが。ロウルもフリントも能無し
「俺もこれ以上、サラザールに相応しくない奴らと同じ空気を吸いたくないところだが――その前に相応しくない所業に然るべき処分を下してからでないとな。――お前達、門限を過ぎただろう?」
そしてフリントはロウルとの舌戦を切り上げ、再びセラとシムに難癖をつけ始める。罰則を与えるだの何だのと嫌がらせを始め、セラは相変わらず冷静に退屈そうに受け流す。
「ミスター・フリントはそもそも監督生じゃないだろう?罰則を与える権限は無いはずだ」
「ああ、そうだな。俺は監督生ではない。しかしだからこそ、わざわざ掃除などという軽い罰で、寮生の不満を和らげてやろうとしたのに、断るとは。よほど重い罰がお望みらしい」
「十年以上昔は、生意気な下級生には『逆さ吊り』の呪いで礼儀を教えこんだらしい」「爺ちゃんは管理人に『寝れない土牢』に叩き込まれたのが今でもトラウマだって言ってたぜ」「フィルチの部屋にある『傷つかない鞭ムチ』も一世紀前は現役だったって聞くがな」「そんなものここに無いだろ。ここで出来るのは精々、『レタス喰い虫フローバーワームダービー』くらいだ」「『くらげ足ロコモーター・ウィーブル』やら『足縛りロコモーター・モルティス』やらをかけて『鬼火の呪い』に追わせて、どっちが速く這はえるか賭けるゲームな」「この前のハッフルパフ二年は『足縛り』の方が勝ったっけか」「あれはお前の『くらげ足』が下手だったからだ」
無性に
「……ただ残念なことに、そこの『穢れた血』の言う通り、俺達は罰則の中身を決めることもできなければ、罰則を与えることもできない。では、幸運にもその両方の権利を持っておられる、偉大なるスリザリン寮の監督生にして、
案の定、端からフリントは本気ではなかった。仮にもスリザリンの権力者である彼は当然、この衆目の場でセラ達を虐めようとするほど馬鹿ではない。ただのロウルへの意趣返しにすぎない。
「罰則ねえ――そうね――」
そして、はるか遠くでかすかに聞こえていたロウルの声が、急に、耳元で響いた。
「ねえジェマ、聞こえているでしょう?宿題で忙しいかもしれないけれど、少しよろしいかしら?新米監督生としてのあなたの意見を聞いてみたいわ。じきに卒業する七年生が、いつまでもスリザリン寮を仕切るのはよろしくないですもの」
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驚きを顔に出さないようにするのに注意を要した。ロウルの侍女が杖を真っ直ぐこちらに伸ばしている。指向呪文と拡声呪文を組み合わせているのだろうか。
ジェマは本を閉じて立ち上がる。スリザリンの原則、一。強者に無為に歯向かうべからず。
背筋を伸ばし、顎をわずかに上に向け、周りには一切視線を向けず、広い談話室を静かにまっすぐ歩く。軽んじられない程度には遅く、さりとて無礼にならない程度には速いペースを保ちながら。こういう所作は、目の肥えてない者を誤魔化せる程度には板についた。
しかし表情には出さないが、内心げんなり溜息をつく。セラへの攻撃に加担するつもりはないが、嫌な雰囲気が醸成されている。
そしてロウルと取り巻きの座るテーブルに近づくと、ロウルの従者が杖を振り、銀色の美しい椅子と小机がジェマの横に「出現」した。従者の魔法の腕に、今更驚きはしない。ジェマは、絡み合う蛇の装飾が施された背もたれを引き寄せて、座った。ロウルに向き直り、にこやかに
「ごきげんよう、ミス・ロウル。あいにく、ベクトル教授の情け容赦ない課題に苦労していたもので、きちんと状況をつかめていないのですが。二人が門限に遅刻したから監督生が何らかの罰則を与えるべき、と
ロウルは青い目を細め、穏やかに口を開く。ロウルが座る椅子は、黒一色で、一切の装飾がなく、周囲の銀色の華美な椅子の中にあっては、かえって存在感を醸し出している。むろん、背もたれに嵌っている大きなエメラルドを見れば、その椅子がいちばんの高級品であることは明らか。
「ごきげんよう。あなた『数占い系』女子なのかと思っていましたけれど、あなたでも苦戦するほどなのですね。
ロウルの今の意向は、「そこの『穢れた血』と一緒にお前が生贄になれ」ではなく、「そこで『穢れた血』とくっちゃべっているフリントが不快だからお前が黙らせろ」で合っているはず。それならラクだ。まあ、もともと大した危機ではなかったが。スリザリンでもさすがに、「『穢れた血』を抹殺しろ」と唱えなければ
「わかりました。それでは、口頭の注意で済ませても良いと思いますが。罰則は、原因と改善策を反省文にまとめてもらう形式で、羊皮紙二巻が妥当でしょう。スネイプ教授には私から報告しておきます。高々五分かそこら門限に遅れただけなら、教授はそれ以上の罰則や減点は望まないでしょう。……そもそもストーリーとスオウは何分遅れたのですか?正確に分かっていないと、報告書にまとめられませんけど」
不満の声が飛ぶ。セラは一礼をする。
「スリザリン監督生にあなたが選ばれたことはここ数年のスリザリンで最も名誉あることです、ミス・ファーレイ」
ロウルも微笑んだ。
「あなた、監督生になったからかしら、あの真面目な『ミスター・監督生』にちょっと似てきましたね」
「……あんな堅物眼鏡と一緒にしないでください」
ジェマは我を忘れて反射的に七年生を睨んで吐き捨てた。
(ジェマはグリフィンドール監督生のパーシー・ウィーズリーが心底苦手だ。彼のどこまでも実直で独善的で猪突猛進で融通無碍な気質は、ジェマの根っからのスリザリンの気質とはとてもそりが合わなかったからだった。それでいて彼は
しかしジェマはすぐに冷静になり、パーシー・ウィーズリー如きのために、目の前の権力者に向かって無礼な態度をとるのは愚か極まりないと気づき、頭を下げた。
「失礼しました、ミス・フレヤ・ロウル。私はスリザリン生であることを心から誇りに思っているもので、あんなのと並べられるのは心外でしたので」
言いつつも、ジェマの心は冷えてゆく。ウィーズリー家の名を引き合いに出すということは、「血を裏切る」と揶揄することであって、それは「穢れた血」の次くらいに強い侮辱だ。ロウルが虐めを望むと思ってもみなかったが、意向を読み誤ったのだろうか。しかし、ロウルは涼やかに笑う。
「いえ、私こそごめんなさいね。勘違いさせてしまったかもしれませんが、
ロウルはわざとらしく会釈すると、立ち上がってジェマに歩み寄りながら言葉を続けた。ジェマもつられて立ち上がる。
「私は四年前からずっと、ジェマを高く評価していますのよ。あなたはとても優秀で狡猾で機智に富んでいて向上心が強くて、同族愛に満ちていてときに柔軟に規則を解釈し、そして決して魔法族としての誇りを忘れない、まさにスリザリンの模範だと思ってます。私だけでなく、これはスリザリン生の総意でしょう」
そしてジェマの前までくると、突如、蛇のように、ロウルは右腕をジェマの肩に巻き付けた。ジェマが反応する間もなく、耳元で囁く。
「――だからこそ、当然、そんなあなたが、ヒトでなしやら他寮のはみ出し者やらなんやらと杖を交えて仲良くしてるなんて場面は、私達が間違っても目撃することはありませんよね」
キリがとても悪いのですが2万字を越えているのでここで区切ってます。スリザリン寮のあれこれを描きたかっただけの回。監督生とスネイプの距離感ってこんな感じだったろうなとか、スリザリン生同士の距離感とか(英国の学校における学年の差の感覚が日本とどの程度違うのか分からないうえに、スリザリンは何代遡れる純血かということが大きくかかわってきそうでややこしいですが)。
九月には投稿するつもり、十一月には投稿するつもりで、気づけば半年以上経ってしまいました。更新が不定期極まりないですが、感想やここすきなど毎度本当にありがたいです。第4話の残り3回と、おまけの話3回(ジェマが一年生の頃の話)のストックを連日投稿予定です。お付き合いくだされば嬉しいです。