スリザード・クラブ (蛇寮非魔法族出身者の会)   作:非魔法族

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「第4話 休暇 (8)クリスマス」からの続きです。


第5話 決闘と血統 (1)土曜の決闘クラブ

「シム。私は前に、決闘クラブでたまに遊んでいるという話をしたのを覚えているかな。ジェマとかペネロピーとかセドリックとか、後は他にも何人も、私にはまるで歯が立たないような人も含めているんだけど――いちど遊びに来てみない?君が彼らに勝つのはまだ難しいと思うけど、刺激になるはずだよ」

 

 ある二月の夜の2E教室で、シムはセラに一定の成長を認められ。翌週の土曜の昼、セラの宣言通り、シムは秘密の決闘クラブに行くこととなった。昼食後のスリザード談話室で、杖を片手で握りしめて片手で神経質に磨く、緊張の混じるシムの顔を見てセラは苦笑する。

 

「気の良い人ばかりだから、気にしなくて良いよ。君を今日連れて行くことも既に伝えてあるし、『登録』も済ませている」

 

 セラは羊皮紙を二枚取り出し、その一片(ひとひら)をシムに手渡す。羊皮紙にはただ、今年の組分け帽子の歌が雑な手書きで記されていた。裏側は白紙だ。

 

「失くさないでね。この紙の裏側を杖で叩いて、合言葉を指でなぞって書く。――『ドラゴンのくすぐりを眠らせろ』」

 

 すると羊皮紙が光り、上部に色とりどりの文字が躍った。

 

土曜14時 CG 赤樫 ヤマナラシ リンボク シカモア (あし) イチイ トネリコ 桜

 

「ここに、今日の場所と参加者の名前が記されている。オリバンダーさんが複雑な『変幻自在(へんげんじざい)術』をかけていて、書いた内容が他の羊皮紙にも反映されるから、こうやって連絡にも使える」

 

 セラが羊皮紙を指でなぞり、文字を(つづ)る。シムの手元の羊皮紙に、緑色の文字が浮かび上がった。

 

今行きます

 

 セラは既に右手を下ろしていたが、続けて緑色の文字がひとりでに記されてゆく。

 

今行きます :イチイ

 

 イチイはセラの杖に由来するコードネームのようなもので、誰が書いたのか示す仕組みになっているのだと合点(がてん)してシムが羊皮紙を眺めていると、緑色の文字の下に赤色の文字が浮かび上がった。

 

今行きます :イチイ

 早く来い :シカモア

 

「じゃあ行こうか。五階の南西の端にあたるけど、普通の道が無くてやけに遠いから、十五分は歩くかな」

 

 五階に上がって廊下を四回右に曲がった後、風景画と隠し扉を三度くぐり、隠し階段を七階ぶんほど降りて、隠し階段をまた七階ぶんほど上がり、廊下を六回左に曲がり、真冬の寒さもとうに感じなくなったところで、ようやくセラは立ち止まった。

 

「ここだ。『あったりなかったり部屋(the Come and Go Room)』とか『都合良すぎの部屋(Merlin's Room)』とか『必要の部屋(the Room of Requirement)』とか呼ばれている」

 

 シムが一度も立ち寄ったことのないその薄暗い廊下は突き当りになっていて、正面の窓から冬の曇り空が見える。左側の壁にはトロールにアルファベットを教えようとして棍棒で打ち据えられている男の絵が掛かっていた。

 

「入る人の要求に応えて中身を変えてくれる凄まじい部屋だけれども、いつでも扉が開くわけではない。ちょっと気分転換で自習しようと思っても入れてくれない。まさに『あったりなかったり』なんだ」

 

 セラが絵の額縁を軽く叩くと、トロールはこちらに注意を移し、棍棒をだらりと下げて睨んだ。絵の中のトロールは本物よりずいぶんと間抜けに見えた。

 

「それに入口の場所も『あったりなかったり』で安定しない。去年も一昨年も別の階にあってもう少し行きやすかった」

 

 そう言ってセラは絵画に背を向けると、祈るかのように両手を胸の前で組み、目をぎゅっとつむる。

 しばらくしてセラが目を開けると、磨き上げられた扉と真鍮の取っ手が、石の壁に現れていた。扉を開けると、その先は広大な部屋になっていた。

 

 

 ★

 

 

「やあみんな、久しぶり」

 

 セラは声を張りながら部屋に入る。白い壁で覆われた正方形の部屋だった。部屋の周縁には大きなクッションがいくつも置かれていて、四隅に四本の柱がそびえている。四本の柱より内側は一段高く、やはり白い正方形の舞台になっている。要するに「決闘場」なのだと、シムは直観した。

 扉の近くのクッションには、スリザリン監督生のジェマ・ファーレイが腰かけていた。その少し左には、落ち着いた雰囲気の巻き毛の生徒、レイブンクロー監督生のペネロピー・クリアウォーター。そして部屋の奥、ジェマと反対側の位置には、ドレッドヘアで浅黒い肌の、グリフィンドールの女子生徒が――彼女も「監督生」のバッジを胸に留めている――両手を頭の後ろで組んでいる。右側の壁には、人当たりの良い笑みを浮かべるハッフルパフの男子生徒がもたれかかっていた。

 

 セラの声に合わせて、全員の視線がこちらに突き刺さり、シムは反射的に肩をすくめる。しかし、その視線は軽蔑や隔意(かくい)の色のない、温かなものだった。

 

「前話した通り、一年生を連れてきた」

 

「シム・スオウです。初めまして」

 

 セラにあわせてシムも挨拶を返し、セラはシムと四人を交互に見ながら言葉を続ける。

 

「ジェマは良いとして、ペネロピーもシムは会ったことあるよね。それでそこにいるのが――」

 

 セラがグリフィンドールの生徒を示すと、彼女はドレッドヘアを揺らしてこちらに歩きながら口を開く。

 

「まーたスリザリンが増えるのかよ!やってらんねえな!」

 

 台詞の内容に反し、その監督生はからからと笑う。クリスマス休暇の前、ホグワーツ特急に乗るセラに声をかけた生徒だとシムは思い出した。

 

「まあ、(スリザリン)(マグル生まれ)味方(なかま)だから歓迎するぜ、よろしくな!あたしは五年のアンドレア・ジョンソン」

 

 ジョンソンは近寄って握手すると、シムの右肩をバシバシ叩いた。快活で無遠慮でまっすぐ。シムの中のグリフィンドールのイメージと(たが)わぬ生徒と見えた。

 

「ザリンのカスどもに虐められたらあたしに言えよどこでもシメに行くから。……セラもなぁ、グリフィンドールに来てればいつでも可愛がってやれたのによ。組分け帽子がトチ狂ったせいで」

 

 セラとシムを交互に見ながら、ジョンソンはしみじみ言う。

 

「セラは頭が良いのに、そんな寮に入るわけないでしょう、お前は馬鹿なの?ああ馬鹿だったか」

 

 あからさまに溜息をつくジェマを無視して、ジョンソンは続ける。

 

「つーかセラも一年の頃からここに来てたっけか?あたしも一年を誰か連れてこうかな?……つってもハーマイオニーは喧嘩上等のガラでもないし――クィディッチで日々お忙しいハリー・ポッター大先生を呼んだら(アンジー)箒馬鹿(ウッド)にシメられるし」

 

「まあ、グリフィンドールには今年も大した人材はいないんでしょうね」

 

 鼻で笑うジェマを、今度は無視せずジョンソンは声を尖らせる。

 

「んだコラ。今年のスリザリンも陰険モヤシとウスノロデカブツしかいねえーろ。あのマルフォイとか、グラッブとコイルとか」

 

「クラッブとゴイル。監督生がそんな記憶力ならグリフィンドールの程度が知れるってもの。――彼らはたしかに学習面で難があるけれど、きちんと私達がサポートしている」

 

「お、変身術のレポートを代筆してあげてるのか?意外と優しいな、さすがスリザリンの監督生、マクゴナガルも大喜びだ」

 

「は?私がそんなことするわけない私は純血連中の小間使いじゃないしそれに自分で力つけなきゃ意味ないしそもそも五年生が一年生っぽい文章を書けるわけないでしょう。……ああそうか、お前の代筆レポートはどうせ、一年生並の頭しかない五年生が書いたものだから、さすがのマクゴナガルも気づかないか」

 

「パーシーにテスト勝てない奴がなんか偉そうに言ってら」

 

「黙れあの赤毛しかまともに点取れる監督生がいないお前達の現状を恥じれウィーズリーの長男の頃とは大違いの現状を」

 

「あーはいはい仰る通りですねジェマ・ビル(にい)にベタ惚れしてた・ファーレイ・監督生様様。……つーかお前そんな偉そうに監督生を語るならよ、お前の方こそスリザリン監督生としてもう少しセラを――」

 

「……こっちの事情も知らないで気楽に言うなグリフィンドールが」

 

 ジェマとジョンソンが互いを睨みながらポケットに杖を手をかけた。そこで扉が開き、

 

「まったく君達、すぐに喧嘩をすることは、あまり良くないことだと俺は思いますよ」

 

 訛りの強い英語とともに、小柄な青年が現れた。二人は動きを止めて同時に挨拶する。

 

「オオニシさん!」

 

 青年は東洋系の顔だちで、人の好さそうな笑顔を浮かべていた。襟は黄色で、彼も胸に「監督生」バッジを留めている。腰からは木の棒を――おそらくは杖だが、非常に長く杖というより短刀のように見える――吊り下げている。

 

「ジョンソンさん、ファーレイさん、こんにちは。ストーリーさんも、こんにちは。そして――」

 

 部屋を見回していた青年は、シムと目が会い、目を細める。

 

「ああ、セラさんが連れてくると言っていた方だね。初めまして。俺の名前はオオニシ・コウイチ。ハッフルパフの七年生だ。……四年生と五年生ばかりの中に、何で七年生が居座っているのだろうか?ということを、もしかすると君は疑問に思うかもしれません。去年までは僕の上の年に何人もいたけれども、みな卒業してしまったのです」

 

 はにかみながら青年は名乗った。英語は若干たどたどしかったが、しっかりした声量だった。

 

「シム・スオウです。スリザリンの一年です」

 

「ふむ。君、失礼で気分を害してしまったらたいへん申し訳ありませんが、セラさんによれば、君は日本人の血を引いているのですか」

 

「あー、はい、祖父が日本人でした」

 

 オオニシは顔を輝かせた。

 

「そうか!それは実に、嬉しいなあ。俺も、日本から来たのですよ。しかしながら、日本人も日系人も、日本に縁のある人はここには誰もいないです、前はスリザリンにミス・ハネダがいたけれども。もちろん、日本について分かる人も、ほとんどいません」

 

「いたとしても、スシ・ニンジャ・ハラキリくらいですよね。ニンジャもハラキリもとっくにないのに」

 

「いや、忍者はいますよ」

 

「え?」

 

「ところで、君は今までの人生で、日本に行った経験がありますか?」

 

「あー……実は日本は行ったことがなくて。生まれも育ちも英国です」

 

「そうか。一度は行ってみると良いです。日本のご飯が美味しいと俺は思う。――まあ、日本はここから遠いのが、面倒ですね。君はマグル生まれなのですから、飛行機を使って行くほうが良いかもしれません。さもなければ、『姿現し』や『移動キー』を何べんも繰り返し、君は使わなければならない」

 

「いつか行ってみたいです。……オオニシさんは日本からの留学生とかなんですか?日本にも魔法学校があったと聞いていますが」

 

「俺が8歳のときに、両親が仕事で英国に来ました。しかしながら、そのときに俺だけ日本に戻ることもできました。というのも、全寮制の西洋魔法の学校は日本にも小笠原諸島にあるし、西洋魔法と体系は異なりますが、本州の西には陰陽寮も、忍術学園もある。しかし、折角英国に来たのだから、名門ホグワーツに通うほうが良いと、両親は考えました。さらに、ホグワーツは非常に安全です。なぜならば、城に甚大に強力な魔法が施されている、かつ、ダンブルドア先生が守護しているからです。皆さんがご存知のように、ダンブルドア先生は世界で最も偉大な魔法使いの一人です。英国の魔法界も、秩序がとれていて治安が良好です」

 

 オオニシは杖を振って頭上に戯画化された世界地図を浮かべながら、しみじみと説明する。日本列島から巨鳥に乗ってブリテン諸島に向かうオオニシ一家。ブリテン諸島にそびえるホグワーツ城と、白い髭をたたえたアルバス・ダンブルドア校長。

 

「そうだったんですね。言葉とかは苦労しませんでした?」

 

「ええ、俺は本当に苦労しました。なぜならば、英語の発音、日本語ととても違いますので。俺は8歳になるまで、英語を読んだり聞いたりすることを、全く試みていませんでした。とりわけ、杖を使う授業では、苦労しましたよとても。でも、フリットウィック先生はとても優しい。ホグワーツの先生は、スプラウト先生もマクゴナガル先生もシニストラ先生もベクトル先生も、ほとんどすべての先生は優しい。したがって、俺は授業に何とかついてゆけました」

 

「オオニシサンはすーぐ謙遜するけど、こうやって立派に監督生やってるからな」

 

 ジョンソンはオオニシの背中をばしばし叩きながら笑った。

 

「なぜならば、ハッフルパフの生徒はみんな優しいですから。英語もほとんど話せなかった俺を、優しく助けてくれました。俺にゆっくり話してくれるし、俺の稚拙な英語を笑う人も少ないし、東アジアの文化の違いにも寛容な人が多く存在します。そのうえ、こうやって監督生をやる機会も、皆は俺に与えてくれる」

 

 オオニシは首を横に振った。

 

「おっとごめんなさい。つい長く話してしまった。また君とお話したいですね。今度お茶でも飲もう。君は緑茶が好物ですか?」

 

「あまり飲んだことは無いですが、好きです」

 

「それなら良かった。ハッフルパフ寮の近くには、お茶を飲める素敵な場所があります。俺は良い茶葉を持っている。今度君を誘うでしょう」

 

 オオニシははにかむ。何も偉ぶらず気取らないが堂々としたこの青年は、たしかにハッフルパフの下級生に慕われるだろうとシムは感じた。

 

「見ての通り、オオニシさんはとても素晴らしい方だよ。――そしてもう一人そこにいるハッフルパフ生がセドリックだ」

 

 セラが指し示すと、それまで微笑んで黙っていた青年が、立ち上がって口を開く。

 

「セドリック・ディゴリー、三年生だ。よろしく」

 

 シムは彼をまじまじと見つめる。三年生と思えないほど、彼は背が高く大人びていた。

 

「ザ・ハッフルパフと呼ばれていて、文武両道で眉目秀麗(びもくしゅうれい)で全校の半分をファンに持つ」

 

 セラは真面目くさった調子でおどけて語った。

 

「冗談はやめてくれよセラ。本気にしちゃうじゃないか」

 

 ディゴリーもおどけて笑い、セラはつられて微笑む。

 

「事実じゃないか。先週のデビュー戦も、とても良い飛びっぷりだったよ」

 

 そのときシムは、セラが男子と親しく談笑する場面をこれまで自分がまだ見たことがなかったからといって、セラに男子の友達がいないわけではなく、むしろいて当然だということに、今更気づいた自分がいかに愚かであったか悟った。

 

「あー、観てくれていたのか。本当に無様な姿を見せてしまったね。一瞬で叩きのめされた――それも一年生(ポッター)相手に、スネイプ先生の贔屓(ひいき)の審判があった上で」

 

 セラが寮内で孤立しているのは、ひとえに彼女がマグル生まれでありマグル趣味を公言しているからにすぎず、そんなスリザリンの事情は他の寮の男子からすれば関係がないということをシムは当然分かっていたし、

 

「ビーターの連携がまったくなっていなかったからだろう。ポッターと違って君はずっとブラッジャーに追われ続けなければならなかった。チェイサーもキーパーも、グリフィンドールとはレベルがまるで違う。たしかにシーカーのポッターは凄かったけれど、あれはどう考えても外れ値の存在だ。君はついこの前、代打でシーカーになったばかりだろう?それであそこまでポッターに食らいつけば十分すぎる。実際、どの寮も、ハッフルパフのシーカーを嘲る声は無いじゃないか」

 

 セラの性格がたとえ大半の女子と大きく異なっているというくらいでは、セラに近づきたい気持ちがそこまで減少せずむしろ人によっては増大しうるだろうということもシムは当然分かっていたはずだし、

 

「セラは優しいね。どんなに才能があるにせよ、ポッターも箒に乗って数ヶ月だ。仮にハッフルパフのビーターとチェイサーとキーパーがグリフィンドールと対等だったとしても、俺とチームは完敗した。そこに言い訳の余地は無い」

 

 セラは独りを好むタイプとはいえ他者との関わりも好むタイプであるということもシムは当然分かっていたはずだが、

 

「まあ、それは私もその通りだと思う。正直に言えば、もう少し粘ってほしかったとも思った。――でも、セドリック・ディゴリーがそれで終わるわけないだろう?」

 

 しかしそれを頭で理解することと、セラが他の男子に冗句や称賛や激励を笑顔で飛ばす様を実際に見聞きすることは、別だった。

 

「ああ。シーカーとしての腕を磨く。不本意であれ、一度引き受けたからには俺はやる。再来年には俺がキャプテンだ、絶対にチームを立て直す。ウッドとポッターのチームに完勝する」

 

 ましてセドリック・ディゴリーは――。人望に厚いらしく、学年一の好成績らしく、クィディッチのシーカーらしく、目の前で見るに、とても背が高く、程よく筋肉質で、どれだけ辛口に見てもハンサムと表現せざるを得ない顔をしている。横に並んで笑いあうセドリックとセラは、じつに()になっているように思われた。

 

「楽しみにしているよ――セドリックがクィディッチでも輝いたせいでますますファンクラブが拡大してしまう様子をね」

 

 シムは自身と彼を比べ、彼に勝っている点があるかを検分した。アーニー・マクミランはハッフルパフの模範生だとディゴリーを称していたが、実は腹の底では性格がどうしようもなくめちゃくちゃ悪いとかであってほしい。そうでなければ公平ではない。

 

「だからからかうのはやめてくれよ」

 

 セラとセドリックの談笑がひと段落し、ようやくシムは我に返った。

 

「彼とは――ずいぶん長い友達(フレンド)なんですね」

 

 シムはいたって何気ない風を装って声を出した。二人の会話の様子を聞くに、セドリックはセラの彼氏(ボーイフレンド)ではないはずだ。セラはセドリックを見て首を傾げる。

 

「二年前のちょうど今ごろ、オオニシさんとトンクスが一年のセドリックを連れてきてね。それ以来かな」

 

 シムはそこで三年のセドリックは四年のセラよりも学年が下であることに気づき、それはつまり、セラにとって初めての、下級生の男子という存在が、セドリックであることに気づいてしまった。シムがセドリックに勝っている点があるとすれば、ハッフルパフではなくスリザリンという点だった。勤勉(きんべん)利他(りた)の寮ではなく、陰険と利己の寮。

 シムがなおもぼうっとしていると、セドリックが声をひそめてシムに問いかけた。

 

「……スオウ、君はいつもセラと一緒にいるんだろう、毎日のようにセラの『指導』を受けているのか?」

 

 シムは声が力強くならないように気を付けながらも即答した。 

 

「そうです」

 

 答えると同時に、勝利のみならず不安の気持ちが湧いてきた。セドリックはもしかして――

 

「……それは大変そうだね」

 

 ――しかしシムの予測に反し、セドリックはシムに純粋な同情の視線を送った。セドリックがセラに向ける感情は、セラがセドリックに向ける感情と近いのかもしれない。……どちらも推測でしかないけれど。

 

「いやいや、セドリック、君とはここでたまに決闘して遊ぶくらいじゃないか、私はセドリックに何も『指導』した覚えはいないよ。教えたことがあるとすれば、ハッフルパフ生が知らない隠し通路くらいのものだろう」

 

 さらりと言うとセラは、シムを気にもせず羊皮紙を取り出して言う。

 

「さて、そろそろ始めましょうか。あと一人来るはずだったけれど――遅れてくるみたいだし」

 

 ジョンソンはジェマの方を見ずに、ジェマに人差し指を突きつけてセラに言う。

 

「じゃあ早速、あたしはそこの陰険(いんけん)蛇女(へびおんな)とやるわ。シム、スリザリンじゃどうせこの監督生がいつも威張り腐ってんだろ?代わりにぶちのめしてスカっとさせてやるよ」

 

「シム・スオウ。日々下級生に模範を示す監督生が、グリフィンドールの馬鹿の野蛮の不良を優雅に片づける(さま)を、今後のために目に焼き付けておきなさい」

 

「……二人はなんだかんだ仲が良いんですか?」

 

「は?」

 

「っすぞ」

 

「何でもないですごめんなさい」

 

 声にドスを()かせてシムを射すくめる二人を、オオニシが立ち上がって手で制す。

 

「審判は、俺がやるよ。セドリックとペネロピーさんは、副審をお願いします。なぜならばセラさんは、シムさんに教えてあげることもあるでしょうから」

 

「気遣いありがとう、オオニシさん。――それではシム、この前も説明したけど、改めて。決闘というのは当然、危ない。非魔法族の現代の常識に照らせば、生徒達が教師の目を離れてコソコソ勝手にやるものでもない。非魔法族と違って魔法族は平然と鉄球をぶつけあうイカれたスポーツ(クィディッチ)で遊ぶくらい頑丈とはいえ、魔法戦闘に伴う危険はまた質が違うしね」

 

 セラは淡々と講釈を始めた。シムは神妙に頷く。セラは杖を取り出して壁に向ける。動く絵がそこに投影された。二人の魔法使いが相対し、華々しく呪文を打ちあっている。

 

「とはいえ、魔法族の間では昔から今に至るまで、これが一種のスポーツのように行われてきた側面もある。決闘は、互いが磨いた魔法の技芸を競い合い魅せ合う、競技にして演舞(えんぶ)であるともいえる。互いに刺激を与えあって魔法の腕を切磋琢磨(せっさたくま)する目的で、また授業だけでは不十分な、魔法で戦い身を護る術を身につける目的で、また他寮との貴重な交流の機会を設ける目的で、私達のクラブは活動している。今の七年生が入学するよりも前から連綿(れんめん)と、腕も人格も信頼できる友人に紹介してゆくという形で」

 

 セラは映像を消し、真剣な表情でシムに向き合う。

 

「もちろん、安全を図るためにルールを整備するのは当然だ。まず、使って良い術は慎重に制限する。具体的には、『基本呪文集・一年生用』から『七年生用』までに載っている呪文の一部と、『護身術入門』に載っている呪文のうちの一部と、試合前に予め申請をして認められた術だけ。そして『出現』系の一部の呪文を除いて『変身術』は基本的に禁止」

 

 セラの声と杖の動きに合わせて、部屋の隅の棚から巻紙が飛び、宙に広がった。「武器よ去れ(エクスペリアームス)」「石になれ(ペトリフィカス・トタルス)」などの呪文がリストになって書かれている。

(ジョンソンがそこで、「派手に『発火呪文(インセンディオ)』ぶっ放したくてもこいつら許してくんねえの。どうせこの部屋は火事にならねえしよっぽどペニーの放水呪文(アグアメンティ)の方が危険だっつってもダメ」とぼやいた)

 

「何の術を使ったのかを相手と観衆にはっきりさせるため、無言呪文も禁止。もちろん『武器よ去(エクスペリア)――』と唱えるふりをして無言呪文で『石になれ(ペトリフィカス・トタルス)』をかけるような技巧も禁止。それと、殴ったり蹴ったり杖で刺したりも禁止」

 

 セラが説明をするうち、ジェマとジョンソンは、段差を昇り、試合場に向かい合って立った。部屋の四隅の柱が白く光り、隣り合う柱と柱の間が、虹色の膜で包まれる。続いて柱の内側の試合場から、大小様々の柱が何本もせせり立ち、身をひそめ呪文をかわすための障害物に富んだ地形へと変化した。

 

「試合場には結界を何重にもかけて、魔法の効果を弱めて大けがをしないようになっている。床も障害物も『軟化呪文(スポンジファイ)』のように柔らかくなっている。最低三人以上が審判として試合を見守り、片方が片方に杖を奪われたり、片方が身動きをとれなくなった時点で試合を止める。場外に出たり、怪我を負った時点でも試合を止める。応急処置の薬のキットも部屋に備えてはいるけどね」

 

 オオニシが部屋の真正面の奥の壁に立ち、オオニシと二等辺三角形をなすようにペネロピーとセドリックが位置取り、その三角形でジェマとジョンソンが囲まれる陣形が作られた。

 

「そういうわけで、幸い今まで誰も、マダム・ポンフリーのお世話になるようなことになっていない。先生のお咎めを喰らうことにもなっていない。誰かが重傷を負うようなことがあれば退学も免れないかもしれない。ルールは絶対に守ること。良いね?」

 

「分かりました。……でもそういえば、ここで派手に決闘やって、他の生徒とか先生は来たりしないんですか?たしかに城の僻地ではありますけど……」

 

 シムは扉をちらりと振り返りながら言ったが、セラは羊皮紙をひらひら振った。

 

「この羊皮紙に登録した人以外を入れないように『必要の部屋』にお願いしているからね。それは大丈夫。音も漏れない」

 

「便利なものですね。……それにしても、ここにいるのがルールを守らせる立場の監督生ばかりというのは意外でしたが」

 

 シムが小声でセラに言うと、ジョンソンが耳ざとく聞きつける。

 

「おいおい、十二人もいる監督生がみんなパーシーみたいだったら、生徒は窒息しちまうだろ。あいつみたいな真面目君(まじめくん)は一人いれば十分なの。パーシーとあたしと両方いるから、グリフィンドール監督生はバランスがとれてるってわけなんだよ」

 

「グリフィンドールの監督生は極端なのしかいないんだな」

 

「るせえスリザリンの監督生も人のこと言えねえだろ。……ところでよ、パーシーといえばあれが傑作だったな、十一月のクィディッチの何日か前に、ウッドの馬鹿が授業で鍋を溶かしちまったときがあって、そんときスネイプに向かって『こんな簡単に底が抜ける鍋が売られているなんて!何で市場に流通している鍋底の厚さが統一されてないんですか!?』って本気で言っててよ――鍋底の、厚さだぜ!?鍋底の厚さ!……あたしがブン投げたサラマンダーの血ボタボタ流してヤバい顔になってるスネイプまっすぐ見ながら、鍋底がどうって――」

 

「アンドレア・ジョンソン」

 

 腹をよじりながら言うジョンソンに、ペネロピーが鋭く声を出して遮った。

 

「あなた、やっぱり今日はジェマでなく私とやろう。良いね?」

 

 有無を言わせぬ調子だった。ジョンソンはきょとんとして、ジェマとペネロピーを見やる。

 

「……まあ、良いけどよ。こいつとはいつでもやりあえるし」

 

「私も別に構わないけど。いくらグリフィンドールの馬鹿であっても、一年生のスオウの前で無様に負けを晒させるのは可哀想だし」

 

「無様を晒すのはお前の方だろ?」

 

 軽口を叩くジェマと入れ替わってペネロピーが試合場に降り立ち、ジョンソンと相対する。ペネロピーは目をつむって一度大きく深呼吸をすると、目を開いた。ジョンソンはリラックスした表情で、首と肩を軽く回す。互いに準備が整ったのを見て、オオニシが杖をまっすぐ向ける。ペネロピーはローブの裾をつまみながら、片足を引いて膝を曲げた。ジョンソンは何気なく頭を下げる。「始める前に、相手に敬意を表してお辞儀をするのが、魔法使いのマナーだ。――ちなみに私達はオオニシさんの意向で、決闘が終わった後にもお辞儀をすることにしている」とセラはシムに(ささや)いた。

 

 そしてペネロピーとジョンソンが杖を構えると、オオニシが杖を掲げて声を張り上げた。  

 

「三――二――」

 

「――それとジョンソン。鍋底の厚さの規格をきちんと作って品質低下を防ぐのって、私は画期的だと思う。非魔法界と違って、魔法界はあらゆることにルーズすぎるの」

 

 ペネロピーは杖をまっすぐ伸ばしたまま、冷たく言い放った。

 

(いち)――はじめ!」

 

 

 ★

 

 

水よ(アグアメンティ)

 

 開戦を告げたオオニシの杖からホイッスルのような鋭い音が響くと同時に、ペネロピーの杖から勢いよく水流が(ほとばし)った。水流を横跳びにかわし、ジョンソンは杖を鞭打つようにふるう。

 

(四隅の柱の間に張られた見えない結界に阻まれ、水は試合場の外に飛び出さずに消えた。自分に直撃していたらと思うと、シムの背筋が冷たくなった)

 

縛れ(インカーセラス)

 

 ジョンソンの杖から長い縄が飛び出す。同時にペネロピーは杖をジョンソンの方に向け――槍のような水流がジョンソンに向き、ジョンソンは再び驚異的な反射神経で横に跳び――ペネロピーは叫ぶ。

 

氷河となれ(グレイシアス)

 

 縄を包みこんだ水流は、熱力学を(わら)うこの呪文を浴びてたちまちに凍りついて割れ、三本の太い氷の柱となり床に落下する。息を切らした瞬間を逃さず、ジョンソンは杖を突きつける。

 

麻痺せよ(ステューピファイ)

 

 失神呪文の赤い閃光がジョンソンの杖から(ほとばし)り――

 

踊れ(タラントアレグラ)

 

 ――だがペネロピーもジョンソンと同時に呪文を唱えており、氷の柱が一斉に動き出した。ペネロピーの目の前の氷塊が跳ねて、失神呪文の赤い閃光を弾く。ジョンソンの目の前の氷塊がくねり這い寄り、彼女を襲う。ジョンソンはそれを軽やかに跳躍して避け、

 

昇れ(アセンディオ)――ったくあぶねーな」

 

 自らに杖を向け唱えると、障害物の柱を駆け上り、頂に立つ。杖を鞭打つように横に振るい、ジョンソンは叫ぶ。

 

灼熱(フラグランテ)!!――こっからあたしのターンな」

 

 すべての氷塊が赤橙色(せきとうしょく)の光に包まれて蒸発した。立ち込める熱い白い湯気に、ペネロピーは反射的に目をつぶり片手で顔を覆う。それを逃さずニヤリと笑うと、二メートルの高みからジョンソンは杖を振り下ろす。

 

掘れ(ディフォディオ)掘れ(ディフォディオ)

 

 しかし杖の先端が向く先は、ペネロピーではなく足下。試合場の床が二か所、爆ぜて穴が空いた。ジョンソンは改めてペネロピーに向けて呪文を浴びせる。

 

武器よ去れ(エクスペリアームス)

 

 湯気が晴れ体勢を立て直したペネロピーは、「武装解除術」の赤い閃光をかわすと、即座に応戦する。分が悪いのは、地上にいる自分ではなく、足場の狭い柱に立ったままの選択を取ってしまったジョンソンの方だと冷静に判断しながら。

 

水よ(アグアメンティ)――」

  

 水流がジョンソンに向けてまっすぐ伸びる。柱の上にいては、回避するために飛び降りるか『盾』を張るしかない。そしてジョンソンが柱から飛び降りたところを狙い、本命の呪文で追撃する。――魔法使いも重力から逃れられないのだから、飛び降りる時も飛び降りた直後も呪文をかわすことなどできやしない。

 

「――妨害せ(インペ)……っ!……」

 

 しかし、床下を進む「穴掘り呪文(ディフォディオ)」がペネロピーのすぐ近くで地上に突き上げ、床が盛り上がって弾けたことで、彼女はバランスを崩す。音に注意を払って二発目の「穴掘り呪文」を警戒するも、今度は足下の床が弾け、回避が間に合わずに彼女は横に倒れ込む。

 床に両手足をついて着地したジョンソンは、そんなペネロピーを見ながら、悠々と立ち上がって唱えた。

 

武器よ去れ(エクスペリアームス)

 

 しかしペネロピーは「武装解除」の赤い光を浴びる寸前、杖を()()()()()。彼女は赤い光に包まれて近くの障害物の柱に叩きつけられるが、杖は「武装解除」の影響を受けず、重力のみに従ってまっすぐ下に落ち、ペネロピーの手元に納まる。

 

麻痺せ(ステューピ)――

 

石になれ(ペトリフィカス・トタルス)

 

 杖が自らの手元に飛来しないことに気づいてジョンソンが「失神呪文」で追撃するも、既にペネロピーは呪文を唱え終わっていた。青い光を浴びたジョンソンは、硬直して倒れた。

 

「そこまで!」

 

 オオニシの声とともに、鋭い音が彼の杖から鳴り、試合の終わりを告げた。

 ジョンソンはオオニシに「全身金縛り」を解かれて立ち上がり、ペネロピーと向かい合ってお辞儀をした。

 

「いやー、負けた負けた。っぱ頭じゃペニーに敵わねーわ、運動神経の勝負に持ち込みたかったけどよ」

 

 快活に笑い、ジョンソンはペネロピーの肩をばしばし叩きながら言う。それを聞いてセラがシムに(ささや)く。

 

「……違う、謙遜だ。たしかにペニーは頭脳で戦うタイプで、アンドレアは身体能力と直観で戦うタイプだ。けれど今回はアンドレアが策で場を支配していた。放水呪文(アグアメンティ)が来るのを見越して実体のある捕縛呪文(インカーセラス)を放って氷結呪文(グレイシアス)を誘ったのも、上昇呪文(アセンディオ)掘削呪文(ディフォディオ)で注意を上と下の両方にそらしたのも。ただ、ペニーの最後の凄まじい機転に対応できず、ペニーが勝った」

 

 シムは言葉が出なかった。目の前で繰り広げられた上級生同士の決闘に、ただ圧倒されていた。これが()()()()()()()()()、と。

 ジョンソンはにやにやしたまま、ペネロピーに手を合わせる。

 

「さっきは悪かったな、あたしは別に大親友(マブ)のパーシーを馬鹿にするつもりはないんだわ、ちょーっと頭固くて笑えるだけで、良い奴だよあいつは、多分。…………つーかペニーも冷たいよなもっと早くあたしにも相談しろよパースの奴この頃毎日『クリアウォーター君の言うところには』とか『少しは君もクリアウォーター君を見習ってだな』とか無意識に口走っててうるさくてよ、どーせお前ら両方奥手だからあたしが店セッティングしたるわ来週のホグズミード予定空けとけよ」

 

「私は別にそんなんじゃ――それどういうこともっと詳しく聞かせて――というかそんな勝手なことするのはやめて――私は私のペースで距離を――」

 

 早口になるペネロピーを見て、シムはようやく、以前会ったときに不可解だった彼女の言動の意味を悟った。

 

「……『パーシー・ジョーク』をうっかり口に出していなくて良かったです」 

 

「そんな真似をしそうになったら私がちゃんと黙らせ呪文(シレンシオ)で止めてあげたよ」

 

 セラはずっと前から知っているようだった。セラの察しが良いのでなければ、ペネロピーとセラはその手の会話をするのだと、シムは気づいた。セラはシムの前でこの手の会話をすることは今まで一度もなかった。セラもペネロピーみたく誰かに焦がれたりするのだろうか。そうだとしても、相談する先は一年男子ではなく同年代の女子(ペネロピー達)なのだろうけれど。

 

「あんな試合を見せられては、私も早くやりたくなってくるね」

 

 ペネロピー達やシムをそれ以上気にすることなく、セラは腰を叩いて立ち上がる。

 

「じゃあ俺は、ストーリーさんと手合わせ願おうかな」

 

 オオニシがセラの方を見る。セラは腕を組み眉をひそめる。

 

「勝ってシムに格好良いところ見せようと思ったけど、オオニシさん相手だとちょっと厳しいな……。他ならともかく」

 

「なぁおいペネロピーにファーレイ、競争しようぜ競争、先にこいつ泣きながら謝らせた方が勝ち」

 

「賛成」

 

「お前たぶん今年初めてまともなことを言ったと思う」

 

「ほんの冗談だよ」

 

 殺気を飛ばすジョンソン・ペネロピー・ジェマの三人に、セラは両手を挙げて降伏のポーズを取ると、そのまま試合場に向かった。オオニシは丁寧に一礼をしてから、試合場に入場した。ジョンソンが主審に立ち、ジェマとセドリックが副審に立ち、ペネロピーはシムの隣のクッションに腰かけた。そこでオオニシはふと、シムに顔を向けた。

 

「――ところでシム・スオウさん。俺は今から三歳も下の女子に本気で戦います。しかし、失望しないでください。なぜならば、そうしなければ失礼だから。そして、そうしなければストーリーさんに勝利できないから。魔法使いの戦いを左右するのは、年齢や性別や筋力ではなく、ただ魔法の力と技のみなのです」

 

 四年生の女子にしては長身のセラと、七年生の男子にしては幾分小柄なオオニシが相対し、お辞儀を交わした。シムは思わず息を呑む。オオニシのそれは、背筋の伸びから腰の角度から手の位置から間の取り方から何から、完璧に均整が取れていた。セラもまた、英国の女性がするようなそれではなく、オオニシと同じく東アジアの流儀に沿ったお辞儀をした。ジョンソンが声を張る。

 

(さん)――()――(いち)――」

 

 腰から吊り下げていた、五十センチはあろうかという木の短刀を抜いて構えると、オオニシのまとう穏やかな空気が一変した。セラもオオニシも脱力して自然体のようでいて、全身には魔力が充溢(じゅういつ)していた。シムは再び息を呑む。試合場の緊張が最高潮に達した段階で、

 

「はじめ!」

 

 ジョンソンの声が響き、同時に二人は地を駆けた。

 

 




相変わらず久々の更新になってしまいましたが、一月中のどこかにまとめて五話を投稿する予定です。

・初出のキャラはいませんが、今話オリキャラが色々出てしまってるので、上級生達を一応再掲します。

グリフィンドール
アンドレア・ジョンソン(五年):妹のアンジェリーナ・ジョンソン(三年)は原作キャラでクィディッチチームメンバー。

レイブンクロー
ペネロピー・クリアウォーター(五年):出番と台詞は限られるが原作キャラ。マグル生まれの監督生。

ハッフルパフ
セドリック・ディゴリー(三年):二次創作でオリキャラと絡む割合九割超と思われる。
コウイチ・オオニシ(七年):コウタ・オオニシ(本作に登場しない)はゲーム版アズカバンの囚人とゲーム版謎のプリンスに登場するよう。

スリザリン
ジェマ・ファーレイ(五年):原作キャラではないが、Pottermoreでスリザリン寮の歓迎挨拶を述べている監督生(学年不詳)。
ヴァルカン・フリント(七年):従弟のマーカス・フリント(五年)は原作キャラでクィディッチキャプテン。
フレヤ・ロウル(七年):父のソーフィン・ロウルは原作キャラで死喰い人。
シーナ・シンクレア(十年、卒業済):セラの六学年上のマグル生まれ。
ソフィア・ソールズベリー(十年、卒業済):セラの六学年上のマグル生まれ。


・武装解除:
 原作世界だと、たぶん食らった瞬間に杖を手放していても無効にはならなそうな気もしますが、そこはご愛敬ということで
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