キャストリアと行く聖杯大戦   作:ぴんころ

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水着イリヤに、水着アビー、だと……!!

(素振り開始)


フィオレちゃんは籠絡したい

「体調はどうですか、エルメロイ先生?」

 

「Ⅱ世をつけろと言っているだろう」

 

 キャスターの召喚から数日が経った。

 それはつまり、ロンドンに本拠を構える魔術師の大多数が発狂するような霊脈への干渉からも数日が経ったということでもある。

 そんな折、少年がやって来たのはとある邸宅。表札はないが、魔術師が見ればそこが誰の居城であるのかは一目瞭然。

 

 エルメロイ邸。

 

 半ば没落寸前の君主、エルメロイの一族が住まう場所。

 そういう意味合いで言えば、少年の眼前にいるこの男がいるのは正しいが、同時に何よりも間違っている。

 

 ロード・エルメロイⅡ世。

 

 エルメロイの血を継がない、間に合わせの君主(ロード)

 魔術師としての位階はそう高くない彼は、魔術協会である『時計塔』の講師であり、少年の属する現代魔術科(ノーリッジ)の中でも一等人気の存在だった。

 そんな男が、つい先日の霊脈干渉に対する奔走で疲れきったところに、少年はやってきている。

 

「それで、今日は何をしに来た。まさか、以前のように合計12人のアーサー王の幻影でジェットストリームアタック、なんてことではないだろうな」

 

「して欲しいならしますけど?」

 

「するな!」

 

 はーい、と言いながら少年が手の甲にかけた魔術を解除する。

 迷彩の魔術によって肌の色に溶け込んでいた令呪がⅡ世の視界に入り、彼は目を見開いた。

 驚愕は一瞬。エルメロイⅡ世は頼りになる講師として、彼がそれを見せた意味を複数浮かべ、その中から最も可能性が高いものを選出する。

 

「つまり、ここで……魔術協会のお膝元で聖杯戦争を起こすバカがいると?」

 

 ただし、それは前提条件が空白の状態で出された答えだが。

 だから当然、正しい答えにはたどり着かない。

 

「いいえ、俺たちはこれを、本当の聖杯戦争ではないかと睨んでいます」

 

 睨んでいるどころかそれが真実だと知っているが、それを知っているということを知られてはいけない。

 だから、こういった言い方になる。

 

「待て、話が飛躍している。そう思った根拠から話せ」

 

 眉間に皺を寄せるエルメロイⅡ世に頷き、口にするのは愛歌と示し合わせた通りの内容。

 

「まず、端的に。イギリス内部には聖杯が存在しません。愛歌にも確認してもらったので、これはまず間違い無いかと」

 

「亜種聖杯の参加者の選出範囲を超えている、ということか」

 

「はい」

 

 三度行われたという聖杯戦争では、御三家を除く参加者は冬木……行われる土地にいた人物から選ばれたという。

 今の聖杯戦争の主流は亜種聖杯戦争。どうあがいても劣化品でしかない、亜種聖杯が商品だ。

 そんなもので国の外にいる人間を、御三家のように探す手立てすらない状況で一人選ぶ、というのは考えにくい。

 

「あとは時期ですね。前回の聖杯戦争からは七十年近く。聖杯戦争を行う、という前提で見れば『霊脈に流れる魔力の量と質の違い』で開催時期が変化する年数としては十年はそうおかしくはないかと」

 

「大聖杯が失われたあと、偶然流れ着いたとは考えづらいな。人為的なものがある、そう考えるほうがいいな。そうなると怪しいのは……ユグドミレニアか。増やしている一族も、ユグドミレニアでマスターを揃えると考えればおかしなことではない」

 

「ユグドミレニアがどれだけ雑魚でも、聖杯があればサーヴァントは呼べますし、サーヴァントを呼べば魔術師は一掃できますからね」

 

 ユグドミレニア。あるいは千界黄金樹。

 そう呼ばれる一族は、実際のところ血の繋がりを持たない、様々な理由で大成できないことが定められた複数の家系が集まったことでできた魔術師の集合体(コミュニティ)

 当然、彼らはユグドミレニアである前から、あるいはユグドミレニアになった後も周囲からはバカにされている。その恨みつらみ、というわかりやすい指針もある。

 

「最後にもう一つ」

 

 怒らないで聞いてくださいね、と口にした少年にエルメロイⅡ世は嫌な予感を禁じ得ない。

 けれど、聞かないというわけにもいかない。

 ここで知っておけば、もしものタイミングでの切り札になるかもしれないのだから。

 

「俺が召喚したキャスターが、これが通常の聖杯戦争だって言ってました」

 

「なっ──」

 

 それは、あまりにも想定外の奇襲。

 まさか、そんな怪しすぎることこの上ない聖杯戦争へと平然と参加しようとする少年への驚き。

 話を聞くにつれ、生徒に持たせていい令呪ではないと、手放すように言おうとしたところでのこの言葉。

 エルメロイⅡ世の口から言葉が出てこないのは当然のことだった。

 

「貴様、最初から聖杯戦争に参加する気だったな!」

 

「はい。ちゃんと全部根回しして、聖杯戦争に参加できなきゃ殺されるって状況にしてからきましたよ」

 

「きさ、貴様……っ!」

 

「ついでに言えば、先生のところに来る前にユグドミレニアに接触はしておいたんで、時計塔関連のことは先生にお願いしますね!」

 

 天を仰ぐエルメロイⅡ世。

 その隙に、少年は目の前から逃げ出すように走り出す。

 

「とりあえず、ユグドミレニア側にスパイってことで入ってきまーす!」

 

「貴様っ! 帰ってきたら課題は10倍だぞ……っ!」

 

「じゃあ、その時は『アーサー王顔について』ってタイトルの論文だしてパパッと卒業させてもらいます!」

 

「そのアーサー王への執着はなんなんだ……!」

 

 エルメロイⅡ世の言葉を無視して敷地の外に出れば、そこには迎えがすでにきている。

 

「あ、マス──」

 

 マスター、と続けようとして少女、キャスターは口ごもった。

 理由は簡単。マスターなんて呼んでしまえば、それがサーヴァントであることは魔術師からは一目瞭然。魔術師ではなくとも女の子にご主人様(マスター)呼びをさせている変態として名が広まる。

 

「れ、レンさん」

 

 少しだけ恥ずかしそうに、キャスターは少年──永宮憐の名を口にする。

 その姿だけで、憐は心臓が止まりそうだった。

 

「い、行こうか」

 

「はい」

 

 憐が差し出した手をキャスターは握り返し、二人が歩き始める。

 なんとなく何を話していいのかわからずに無言のまま歩く。

 その無言を断ち切ったのは少年の方だった。

 

「その服、愛歌が選んだんだっけ?」

 

「え、あ、はい。マナカさんがあの服だと現代には溶け込めないからって」

 

 召喚された時点でのキャスターの服は、どこかの学院の制服と言われるのがしっくり来る見た目。

 鎧姿に比べればマシとは言え、現代に溶け込むという点では少女自身の見た目もあって少し浮世離れしている面があった。

 だから、今の彼女は愛歌が用意した服装に着替えて、ただの美少女として歩いている。

 

「さすがに、初めて会った時にいきなり妹になってって言われたのは驚きましたけど」

 

「ああ、うん……それはな」

 

「確か、あの人の好きな人と私が兄妹みたいなものなんでしたっけ」

 

「そうそう」

 

 ”あなたがキャスターのアルトリアを召喚して、私がキャスターのアルトリアと姉妹になる。私がアルトリアの義姉(あね)になれば、それはもう実質アーサー(王子様)と結婚したようなものでしょう?”

 

 初めて出会った時、愛歌が憐に向けて発した言葉。

 二人の協力関係は、それを果たすためにこそ結ばれている。

 

「その……いきなりのプロポーズにも驚きましたけど」

 

「あ、うん……あれは、その……」

 

「嘘、ではないんでしょう?」

 

「うん、それだけは誓える」

 

「なら、あとは貴方達の言う聖杯大戦の中で見定めさせてください」

 

「……わかった」

 

 好きになってもらえるように頑張るよ、と戯けた様子で口にした憐。

 そんな彼にキャスターはくすりと笑みをこぼし──使用していた魔術を解除する。

 

 使っていたのは簡易的な結界。

 ただし、彼女の基準での簡易的なそれは、現代の魔術師にとっては目を見開くような神秘である。

 効果は、認識阻害。

 

 少なくとも、今空を飛んで彼らを探し回っている無粋なユグドミレニア程度では、彼らのことを見つけるのは不可能だった。

 

 そして、それが解けた今、小鳥を使い魔として二人を探し回っていたユグドミレニアも彼らを発見したことだろう。

 歩く二人の前に、ユグドミレニアの使い魔がやってくるのは数分後のことだった。

 

 

 

 

 

「やあ、いらっしゃい。フィオレ」

 

「……なるほど、そういうことでしたか」

 

 視線は、まず憐の手の甲にある令呪。次にキャスターへと向かい。

 カマをかけたわけですね、と怒りの片鱗を見せながら車椅子に乗った少女は口にした。

 

「まあ、そういうことだな」

 

 令呪があって。

 サーヴァントから亜種ではない聖杯戦争と告げられて。

 大聖杯の存在がいつ消えたのかという情報。

 万が一にも関係ない人間に令呪が宿らなければ、自ら公開しない限りは自分たちに都合よく進められるほどの組織力を持つ。

 

 そんな条件を一つ一つ考慮していけば、第三次にも参戦していた、そして魔術協会への復讐理由があるユグドミレニアが候補に上がってくることは当然だった。

 

 無論、それ以外の候補もいるにはいるのだが、そのあたりは全て愛歌が潰してある。

 まず確実に、誰であっても最後にはユグドミレニアに辿り着けるように。

 憐がたどり着けてもおかしくはないように。

 

「それで、ユグドミレニアとしてはどうする?」

 

「そうですね……」

 

 すっと、少女は指を顎に当てて考え込むような動作をする。

 見目麗しい少女がそんなことをすれば、普通の人間であれば見惚れることは間違いない。

 だが。

 

 ──やはり、これは悪手ですか。

 

 少女の動作が発動させた一工程の魔術(シングルアクション)は即座に抵抗(レジスト)される。

 これで相手の思考を誘導できれば御の字、と考えていた程度なので失敗は気に留めない。

 結論は、ユグドミレニアの内部ですでに決まっている。

 あとは、そこへとどう持ち込むのか、だ。

 

「私個人としては、学友であるあなたとは戦いたくありません」

 

「魔術師らしくないね」

 

「ええ、そう言われると返す言葉もありません」

 

 とはいえ、交渉が決裂したならば殺し合うことはできる。それが魔術師というものだ。

 何せ、目の前にいるのはあくまで親しい他人、自らの研究を後世に残す、何よりも維持すべき血筋ではないのだから。

 

「ですが、ユグドミレニアとしては一族の者ですらない魔術師がこの聖杯戦争に参戦することを厭います」

 

「まあ、それはそうだろうね」

 

「だから、マスターを篭絡しようとした、と? 控えよ、魔術師(メイガス)。一度目は軽挙として見逃そう。だが、次同じことをすれば、貴様ら一族の魔術師としての生命はそこで終わりを迎えることになるぞ」

 

 瞬間、眼前より溢れ出た殺意に、少女は英霊というものを理解する。

 いいや、理解は未だ遠く。百分率ですら表すことを躊躇われる、天文学的な数値であろう。一端と呼ぶことすら憚られる、ほんの一欠片の怒気。

 だが、それだけでもサーヴァントの、己の人生を伝説と昇華するほどに鮮烈に駆け抜けた者達の偉大さは理解できるはず。

 脂汗を浮かべながら、半ば過呼吸に近い状態になりながら、受け継いだ魔術刻印は勝手に駆動し少女を平静へと近づける。

 

「ええ、今の言葉で十分に」

 

 一度、息を整えて。

 

「私たちが提示するのは、あなたをこの聖杯大戦の間、ユグドミレニアの一員として迎え入れたい、ということです」

 

 そもそも、目の前の人物は異常なのだ、とフィオレは当主の言葉を思い出す。

 本来ならば、ユグドミレニアの一族しか令呪が宿らないはずの聖杯戦争。

 そこに、ユグドミレニアの誰よりも早く、しかも大聖杯のあるルーマニアではなくロンドンにいる人物に令呪が宿った。

 これが異常事態ではなくなんという、と。

 

「ユグドミレニアに? なぜそれを俺が受け入れると? 気分を悪くするかもしれないが、我が家系は」

 

「存じております。そもそも、現代魔術科の講師、ロード・エルメロイⅡ世が目にかけている、というだけで十分に大成することが保証されているようなものでしょう。こちらが用意できるカードは悉くが無意味」

 

 だが。

 

「ですが、今回に至っては一つ、こちらから切れるカードがあります」

 

「大聖杯」

 

「ええ。勝利すればどんな願いでも叶う万能の願望機、聖杯。世界中に散らばった亜種聖杯の真物(オリジナル)。ユグドミレニアの同胞になるのであれば、あなたもその一端に触れることが叶うでしょう」

 

 何よりも。

 

「令呪が宿った、ということは貴方にも叶えたい願いがあるのではないですか?」

 

 そしてそれは、魔術協会で亜種聖杯を虎視眈々と狙うよりも、魔術を極める道を進むよりも。

 

「聖杯ならば、確実に願いを叶えられますよ」

 

「そして、聖杯戦争が開始すれば、君たちが全員で手を組んで俺たちを殺しにくる、と?」

 

「あら、ユグドミレニアの同胞にそんなことはしませんよ。聖杯に焼べる魔力も、聖杯の予備システムを用いて、魔術協会側にサーヴァントを呼んでもらう予定ですから」

 

「なるほどね」

 

 少しの沈黙。

 瞳を閉じての考え事。

 フィオレの行った自然な魔術行使とはまた違う、ただの仕草。

 

「じゃあ、最後にもう一つ」

 

「なんでしょう?」

 

「俺がこの場で君を殺して、君たちの企みを全て魔術協会にバラすっていうのはどうかな? そうすれば、七対七のチーム戦から八対六になってしまうし、そうじゃなくてもユグドミレニアには君レベルのマスターはいないんじゃない」

 

「あら、そんなことをしても聖杯が手に入る可能性が小さくなるだけですよ。なにせ、我々一族の血脈の繋がりとは違って、魔術協会の陣営はお粗末な同盟でしかないのですから。我々を殲滅したとて、後に待ち受ける光景は容易に想像できるのではありませんか?」

 

「……うん、そこまでわかっているのなら」

 

 少年が手を差し出す。

 

「いいだろう。君達と手を組ませてもらうよ」

 

「ええ、あなたが力になってくれるのでしたら、千人力にもなった気分です」

 

 それをフィオレが握り返し、ユグドミレニアとの協力関係が締結された。




実は一番生き残りやすい聖杯戦争はApoだと思っている作者氏。

赤の陣営で天草四郎とセミラミスに毒を盛られてしまえば、確実にカルナさんが生きて返してくれるからね! 50%の確率で生き残れるよ!

なんか愛歌ちゃん様に向けての罵詈雑言とフィオレちゃんとの会談のイメージが合わないでござる。
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