キャストリアと行く聖杯大戦   作:ぴんころ

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(水着アビーとイリヤのための素振り中)


聖杯大戦「帰って(沙条愛歌を見ながら)」

「マスター、ここが?」

 

「ああ、ダーニックのやつが選んだ会合場所だよ」

 

「あら、多少は淑女の扱いというものを心得てるみたいね。サーヴァントだからといってただの使い魔と同じように扱わないのは少し加点よ」

 

「まあ、本質的には魔術師だけど、取り繕うことはできるんだろう」

 

「うっ……部屋を汚くしてすみません」

 

「あーあ、キャスターを責めちゃダメじゃない」

 

 うっ、と憐が言葉に詰まる。

 彼らが訪れたのはロンドン郊外のとある施設。ダーニックが指定した会合場所。

 

 すでにフィオレとの会合からは数週間の時が流れた。

 

 この数週間、ユグドミレニアとの情報共有は全てフィオレを通して行われ、未だに一度も憐はルーマニアにあるユグドミレニアの本拠、ミレニア城塞には足を運んでいない。

 そんな中訪れたのが、八枚舌とも呼ばれるユグドミレニアの長、ダーニックとの会合。

 基本、時計塔の中での情報共有の相手はフィオレであり、ダーニックは動けない。一応は彼も冠位(グランド)の階位を抱く身。

 そんな男が、ただの生徒に話しかけていては目立つことこの上ない。

 

 そういうわけで詳しい話し合いのために訪れたのだが。

 

「サーヴァントがいるな」

 

「いるわね」

 

「確か、ダーニックのはヴラド三世だっけ」

 

 愛歌への確認。

 根源接続者である彼女は、当然一瞬でその確認の裏付けができるのだが。

 

「え、ちょっと待ってください」

 

 キャスターには、そのことはまだ伝えていなかった。

 突然、未だ見たことも出会ったことも、ましてや情報すらない相手のサーヴァントの真名を当然のように共有する二人への驚きが表情にはっきりと現れている。

 

「ああ、そういえばまだ話してなかったっけ」

 

「まさか、”こっち”のあなたを呼び出さずに、あなたを呼び出したことがただの偶然だなんて思ってなかったでしょう?」

 

「それは……そうですけど」

 

「まあ、詳しい話は後でな」

 

 建物の中に入る。

 空気が入れ替わったことが、誰の目にも明らかだった。

 その中心は、内部にて待つ若々しい姿をした、けれどどこか老獪な雰囲気を持つ男。

 そして、そんな男がまるで従者のように傅く相手こそが、サーヴァント。

 普通の魔術師が見れば嘲笑するような、使い魔を尊重する態度。

 

「はじめまして。ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。それとも、当主殿と呼んだ方が?」

 

「好きに呼んでくれて構わんよ」

 

「そしてそっちがランサーか」

 

 ほう、とどこか面白そうなランサーのサーヴァント。

 逆に、ダーニックは一瞬だけ不愉快そうに表情を歪めた。

 クラスは教えていない、武器も見せていない、宝具なんてとんでもない。

 そんな状況下でサーヴァントのクラスを当てて見せた存在への反応は主従で対照的だった。

 

 一瞬だけ愛歌へと向けられる視線。

 そこには魔術協会側か、という懐疑があって。

 けれど、わかりやすく魔術協会の人間を連れてくることはないだろう、と。

 

 表面上はにこやかに話し合いが始まった。

 

「では、話し合いを始めようかダーニック」

 

「ああ、我らユグドミレニアの栄光のために」

 

 会合そのものは終始穏やかに進んだ。

 ユグドミレニアの情報網。ミレニア城塞への帰還……憐の場合は訪問の際にはどのような手順を踏んでいけばいいのか。

 そして、なぜ彼が誰よりも早く令呪を手に入れることができたのかの推測も、二人で進めて。

 キャスターのアドバンテージ、”この世界では真名にたどり着く手段がない”という部分も開示する。

 

 どちらに取っても”致命的”とまではならない当たり障りのない情報の開示。

 ミレニア城塞の侵入手段は、自己強制証明(セルフギアス・スクロール)を使用していない相手に開示するのは危険な綱渡りとも呼ぶべきものだったが、それは憐が敵になる場合の話。

 裏切らなければまず確実に大聖杯を使用することができるユグドミレニア側の立場を捨ててまで、魔術協会に肩入れする必要がない、という魔術師として当然の思考が、わざわざ使用するほどの必要性を見出さなかった。

 

 そうして話し合いが終わり──最後に鋼の音が鳴り響く。

 

 戦うのは、ダーニックの用意した二体のホムンクルス。

 キャスターを用いた雑兵の兵力向上が可能であるかどうかの確認の一環。

 もともと召喚する予定だったゴーレムマスターを召喚する余地はすでになく、彼の代わりのキャスターがどれだけ使えるのかを確かめるのは当然のことだった。

 

「……素晴らしい」

 

 呟いたのは、ダーニックだったのか。

 いいや、おそらくは彼ではなくサーヴァント。

 彼のマスターは目の目に繰り広げられる光景に呆然としている。

 

「なるほど、これならば正面からの戦闘でも平均的なサーヴァントが相手であれば数秒は保つであろうな」

 

「なら、期待しないほうがいいってことかな」

 

「でしょうね、魔術協会がコケにされて平均的なサーヴァント、なんて呼ぶはずがないもの。蹂躙のために全力を尽くす未来が目に見えるわ」

 

 サーヴァントからの評価は非常に高いが、それでも現実を考えれば評価できるようなものではない。

 ダーニックは魔術協会側が用意するであろうサーヴァントを想像し、けれど首を振って否定する。

 思い浮かんだのはアキレウスやヘラクレスなど、世界最高峰の英霊や、これまでの亜種聖杯戦争で見つかったインド神話の強大な英霊達。

 とはいえ、そんな触媒はダーニックの六十年でも見つかっていない。ならばたかが亜種如き、そこまで注視するべきでない聖杯戦争のために触媒を集めた人間などいないだろう。

 あったとしても、ルーマニアでのランサー……ヴラド三世ならば劣ることはない。

 六十年かけて見繕った、最高峰の知名度補正を受けられる最強の英霊なのだから。

 

『なんてことを考えているんでしょうね』

 

『いきなり念話してくるなバカ』

 

 憐の脳内に響く愛歌からの念話。

 ポーカーフェイスを貫いているが、本心は顔を顰めているのが丸わかり。

 

「では今日の会合はここまでとしようか」

 

 その言葉と同時、キャスターの強化を受けた二体のホムンクルスの片割れが槍を弾かれた。

 弾かれた槍は地に刺さり、ランサーが立ち上がる。

 それに追従するようにダーニック、そして二体のホムンクルスも動き出す。

 

「此度の会合は有意義なものだった。次に出会う時が処罰の時でないことを祈ろう」

 

「魔術師とは、己が利のために道義も道徳も持たぬ者だよ、ランサー」

 

「なるほど、こちらが利を用意する限りは裏切らぬ、と」

 

 義によって助太刀、というわけではないのが不愉快ではあるが、わかりやすく裏切らない理由があるのはいい。

 魔術協会を裏切ってはいるのだが、それはダーニックも同じこと。味方になるというのであれば彼も容認しなければなるまい。

 笑うランサーがその場を去ったことを愛歌が確認して、歓談のための結界が解除される。

 

「行ったわよ」

 

「愛歌の情報通りのサーヴァントだったな」

 

 聖杯戦争のマスターに与えられるステータスの透視能力。

 それは、マスターではない沙条愛歌は当然持たないはずであり、持っていたとしても一度も見たことのないサーヴァントを相手に先に知っている、というのはあまりにも不自然。

 先の、すでに真名を知っていたということも合わせて、いくらなんでもおかしいと言える。

 そんな疑問が顔に出ていたのか、キャスターが何かを口にする前に憐はその理由を口にした。

 

「こいつ、根源接続者なんだよ」

 

 聞いたことないか、と言われて。

 ふと思い出したのは冠位……あらゆる時代を考慮しても最高峰に位置する彼女の師匠。

 

「マーリンの言っていたあれですか」

 

 ”君はこれから先、僕よりも魔術の腕が立つ、とんでもない邪悪と出会うだろう”

 

 あの時は『あなた以上の人でなしなんてそうはいないでしょう』と返したが。

 数日間も共に過ごしていれば、沙条愛歌が人間を人間(同類)とみなしていないことは発言の節々から感じられる。

 まあ、その上で邪悪(姉)にしかなっておらず、恋心に一直線なこともわかるので、特別何があろうと殺さなければならない邪悪だとは思わないが。

 

「マーリンがなんて言ったのかは知らないけど、多分それであってるよ。こいつは昨日の献立を語るように未来で召喚されるサーヴァントの名前を口にして、未来のことを語るように過去の聖杯戦争の結末を語る。この世界のことだと思ったら別の世界のことを語ってて、空想を語ってると思ったら未来の話をしてる。そういう、時間も空間も関係ないのがこいつなんだ」

 

「……なるほど、マスターとマナカは仲がよろしいんですね」

 

「……なぜそういう結論に?」

 

「だって、そういうことって普通言えませんし信じられませんよ?」

 

 それが言えるし信じられるっていいことじゃないですか、と。

 

「私は所詮、期待できない程度の魔術しか使えないサーヴァントですから……」

 

 あ、これはまずいな、と聞いていた二人が悟る。

 いじけているな、とも。

 どうやら、先ほどのホムンクルスへの強化の時の話が、後を引いているらしい。

 

『ちょ、ちょっとどうにかしなさい。あなたのサーヴァントでしょう!』

 

『は、はぁっ!? 俺のサーヴァントではあるけど、まだサーヴァントでしかないしー? むしろ、姉になりたいって言うのならお前が姉らしいところを見せて慰めるべきだろうがっ! 姉……あ、そっかぁ……お前一回失敗してたっけ。妹に王子様寝取られたとかなんとか』

 

『殺すわ』

 

『ここで俺を殺せば、お前は絶対に姉になれなくなるぞ』

 

『ぐぬぬ……』

 

 この間、5秒もない。

 念話を通して互いに押し付け合いながら、お互いキャスターへかける言葉を探す。

 そうして──

 

「なら、あいつらの期待をはるかに超えて、見ただけで度肝を抜いて心臓が止まってしまうような魔術を作ってしまおう」

 

「え?」

 

「ほら、そこに愛歌もいるし。俺も俺で色々と魔術で遊んでるし」

 

 エルメロイⅡ世へのアルトリア’sジェットストリームアタックとか。

 

「なんか良さげなアイデアとか、一人で全員殲滅することができる魔術とか、そう言うのだって作れるだろ」

 

 その言葉に、ようやくくすりとキャスターは笑った。

 

「あ、どうせならマーリンを殺せる魔術も作りたいですね」

 

「あいつ、今も生きてるんだっけ」

 

「ええ、聖杯の知識が、生きてるって言ってます」

 

 なら、と放置されてどこか不満げな愛歌に視線を向けて。

 

「そういうのは、やっぱり愛歌に手を貸してもらうか」

 

 

 

 

 

 今現在、彼らが住んでいるのは時計塔が保有する寮の一室だ。

 基本、魔術師という生き物の生態を考えれば住まうのは一人。そのため、部屋そのものはそこまで広くないのだが。

 こと、この一室に限っては話は別。

 

「さて、今日はどうするの?」

 

 いつのまにか座敷童の如く住み着いた愛歌が口にする。

 彼女が空間置換で繋げてあるのは、聖杯戦争で発生することが考えられるあらゆる事態に対応するための礼装が置いてある空間。

 根源接続者の考えるあらゆる事態とは、すなわち真実”全て”の可能性。

 逆に多すぎて、取捨選択をしなければとっさの判断で使えないだろう、と言われるほどに膨大な対策がそこにはある。

 

「まずはキャスターの礼装だろ。俺が狙われた時のものは作ってあるけど、基本的には城塞の中にいるだろうし、愛歌の作った礼装があればユグドミレニア側の裏切りについては、まあどうとでもなりそうだからな」

 

「うーん、そうなるとあなた用は宝石とかで十分よね。あなた、一応後継者として一族の秘奥は使えるけど、キャスターを全力で戦わせながらっていうのはまだ難しいでしょう?」

 

「だな。亜種聖杯を使って願いを叶えることに全能力を費やしてる家系ならともかく、うちは聖杯戦争より前に生まれた家系だから」

 

「うわ、出たわ御家自慢」

 

「事実を言ってるだけだろうがっ!」

 

 憐の礼装はあっさりと決まった。

 ユグドミレニアの六十年には遠く及ばない準備期間ではあるが、質という面ではこの世の誰もが追いつけない準備が彼らにはある。

 沙条愛歌が王子様と結ばれるためにはどんな手段も容認している以上、数年ほどもあれば、ユグドミレニアの準備を彼らの装備が超えるのは当然のことだった。

 

 だから、気にするべきはキャスターの方。

 彼女に関しての用意は、全くと言っていいほどに進んでいない。

 

「それで、キャスターは何か欲しい礼装はある?」

 

「……そうですね。今のままだと近接戦が心許ないので、その辺りのカバーができるものはありませんか?」

 

「あるわよ」

 

「あるんですか?」

 

「あるのよ」

 

「諦めろ、キャスター。こいつはそういうやつだ。何も言ってないのに気がつけばこっちの考えを完全に理解しているのも、その上でとぼけたり、不気味なぐらいに気が利いたりするのも日常茶飯事だ」

 

「後で文句言われるの面倒だもの」

 

 そして、その礼装を見せられて。

 

「ああ、なるほど。確かにキャスターに渡す礼装としてはこれ以上のものはないな」

 

「これは……いったい……?」

 

 キャスターの疑問に愛歌が応えて。

 その礼装を思わずまじまじと見つめるのだった。

 





割とマジで、愛歌ちゃん様、お嫁さんになったらめっちゃ気がきくと思うんですよね。
根源を利用して、相手の望むことを完璧にする。気がきくというレベルではなくて、そんなに理解されてるのが嬉しくなって、自分が何も返せないのが辛くなって、旦那が自殺する。あるいは気が利きすぎるせいで怖くなって逃げ出す旦那。
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