キャストリアと行く聖杯大戦   作:ぴんころ

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HFを見に行くには一番近場で県を二つまたぐ必要がある勢です。


カリバーンも出番が欲しい

「──以上が事の顛末だ。君には魔術協会へと聖杯大戦の情報をもたらし、ユグドミレニアにスパイとして入った君の弟子でもある私の生徒と協力して()の一族の殲滅を行ってもらいたい」

 

 まず間違いなく、その触媒から召喚されるサーヴァントの力を実力以上に引き出してくれるだろう。

 まるでそれが当然、という様子で口にしたロード・エルメロイⅡ世に、獅子劫界離は疑問を抱く。

 

「そう言い切るということは、あのバカのサーヴァントの真名も?」

 

「ああ、すでに報告されている。思わず頭を抱えたくなるような内容だったがな」

 

 手がこっそりと触れたのは、先ほど彼に依頼をしてきた、エルメロイとはまた別のロードから受け取った触媒。

 かつてとある騎士達が集ったと言われる円卓、その木片。ここから呼び出される英霊はまず間違いなく一流のサーヴァント。

 だが同時に、その触媒はいくつものサーヴァントに縁がある。

 誰が呼び出されるかに問わず、呼び出された英霊のやる気をさらに引き出す、とまで言われるのならば──

 

「まさか……!」

 

「君の予想はわかるが、それは半分正解で半分間違いだ」

 

 渡された紙の束。びっしりと書かれた文字には、わかっている限りのサーヴァントとそのマスターの特徴。

 万が一にもユグドミレニアに知られるわけにはいかない、とその場で破棄することを求められたその資料の最後に、永宮憐という戦場での戦い方における弟子と、そのサーヴァントについて書かれていた。

 そして、それを見た途端、獅子劫は目を見開き、彼の様子に気持ちはわかると頷くエルメロイⅡ世。

 

「なるほど……」

 

 呻くように口にされた言葉には、納得の色が非常に濃い。

 

「こいつは確かに、円卓の騎士なら絶対にやる気を出してくれるな」

 

 魔術師のサーヴァント、アーサー。

 別の世界の、王にならなかったと思しきアーサー王。

 たとえ別の世界であろうとも、”アーサー王”からの信頼を受けて戦う円卓の騎士が、生前の恥を禊ぐ機会に奮起しないはずがない。

 

 少なくとも、この時点の獅子劫はそう思っていた。

 

 今では、全くそうは思えない。

 

「あー……その、だなセイバー」

 

「なんだ、マスター」

 

「一応、出会ったとしてもいきなり斬りかかるんじゃないぞ」

 

「自信はない」

 

 召喚した英霊の名はモードレッド。

 かつてアーサー王に反逆した騎士であり、彼……この場合は彼女か、その物語を終わらせた者。

 そして、協力者のことを聞いた時点で彼女の機嫌は急降下している。

 これは先に言わなかったら、出会い頭に斬りかかっていただろうな、と確信を持てるほどに。

 

「とりあえず、今日のところは向こうの本拠地を御目にかかる程度にしとくか」

 

 今の状態のセイバーを会わせるわけにはいかないな、ということも合わせて。

 彼らの聖杯大戦、その真なる意味での初日が始まる。

 ”魔術は秘匿されなければならない”という暗黙の了解を満たす、夜の帳が降りきった。

 

「ま、当然っちゃ当然だよな」

 

 直後、姿を見せる数々の人型。

 それがホムンクルスである、と気がついたのは獅子劫が先。

 魔術師、あるいは魔術使いとしてある獅子劫だからこそ、その存在には敏感だった。

 

「ホムンクルスにしちゃ、どっかイかれてんな」

 

「ああ? どういうことだよマスター」

 

 そして零した呟きに、セイバーは敏感に反応する。

 獅子劫の視界の先、ホムンクルスたちは己の主人の命令をこなすため、各々の武器を構えているのだが。

 

「あまりにも人間味がありすぎる」

 

 そこに立つのは、一瞬人間と見紛うほどに感情を発露する存在。

 最初からある程度の年月をかけて育成することを念頭に置いているならばまだしも、サーヴァントに当てて使い潰すような立場のホムンクルスに、感情などという裏切る要素を与えるか、という疑問が獅子劫の中にある。

 

「サーヴァント、だろうよ。胸糞悪りぃ。うちの魔術師を思い出す所業だ」

 

「へぇ……」

 

 アーサー王伝説で最も有名な魔術師といえば、おそらくはマーリン。

 死んでいないため召喚はできないが、それと近しい事ができる、という事ならば。

 

「こりゃ、あの情報もマジって事なのかもな」

 

 ぼやけば、セイバー……モードレッドがギロリと睨む。

 おおよそマスターに対する視線ではない。ないが、今のは自分の失言だった、と謝罪する。

 無論、声には出さずに。出しては、彼らが”黒”のキャスターの真名を知っているというところから憐がスパイであるとバレるかもしれないから。

 

 こいつはアーサー王が好きなのか嫌いなのか。

 アーサー王がマーリンの同属扱いされてキレるあたり、愛憎入り混じっていそうだがさて、と獅子劫も己の礼装を構えたところで。

 

「マスターは下がってな。これがもしも俺の予想通りなら、多分普通のホムンクルスじゃねえぞこいつら」

 

「……あいよ」

 

 セイバーからの戦力外通告。

 通告を出した当人は、固有のスキルにまで至った直感に腹を立てている。

 

 倒しきれないのか?──否。騎士王の継子たるセイバーが高々現代の魔術師の一品程度に負けるなどありえぬ。

 では、苦戦するのか?──否。これもやはり、騎士王の後継者たるセイバーが英霊相手でもないのに負けるなどありえぬ。

 

 ならば、マスターを殺される?──ありえる。

 

 直感は、そんな答えを導き出していた。

 マスターがヘマを打って殺される、という可能性もあるが、それではセイバーがマスターのドジを挽回できない程度の雑魚、ということではないか。

 

 何度でも言おう。我こそは騎士王アーサー・ペンドラゴンの正当なる後継者、モードレッド。

 故に当然、騎士として、王として、マスターと己に勝利を捧げるのみである。

 

 その宣誓を心の中で終えて、彼女は一気に飛び出した。

 

 地割れの如き踏み込みが生み出す弾丸を想起させる突進。

 セイバーのサーヴァントの特徴、最優と呼ばれる所以である全体的に非常に高水準の基礎性能(スペック)

 ただの身体能力ですらも、彼女のそれは人を殺せる凶器としては十分以上。

 

 ましてや、その手の内にあって振るわれる邪剣が宝具であるというのならば。

 

 高々魔術師の用意した程度の、礼装にも及ばぬ槍ごと、ホムンクルスの首を両断せしめよう。

 

 そんな気迫を乗せた一撃は、当然彼女の想定通り、ホムンクルスの首を武器ごと斬り飛ばす。

 だが、求めた通りの成果にもセイバーは顔を顰めたまま。

 

「雑魚が反応しやがって!」

 

 自らの剣術は、英雄、いいや戦士ですらないただのホムンクルス風情が反応できていいはずがない、と。

 防がれたことにももちろん、それがホムンクルスが自ら研鑽して身につけた技術でもなくただの後付けのドーピングによって為されたことにイラつきを零す。

 

 そうして燃える怒りが高揚させた戦意が、モードレッドの一撃をより力強く進化させる。

 一瞬ごとに意思だけで強くなる”赤”のセイバーは。

 獣性を宿した剣術を放つ”赤”のセイバーは。

 一体のホムンクルスを倒すまでに必要な時間を一体ごとに削いでいく。

 

「チッ」

 

 最終的にかかった時間は一分足らず。

 不機嫌そうに鼻を鳴らすセイバーと相対したが故に目立たず、成す術もなく殺されたホムンクルス。

 普通の魔術師であればこのホムンクルスをただの雑魚と判断するかもしれないが、獅子劫は違った。

 

「こいつら、低ランクのサーヴァントクラスはあったんじゃないか?」

 

「だろうな」

 

 セイバーの言葉に考え込む獅子劫。

 今、この戦場に出てきた数はそう多くはなかった。

 だが、もしもユグドミレニアに攻め込むとなると出てくる数は倍では済まないだろう。

 そうなれば、マスターを殺されるという可能性がよりはっきりと──

 

「心配すんな、マスター」

 

 そんな思考は、セイバーに背中を叩かれたことで強制的に終了させられる。

 咽せる己のマスターに、セイバーは俺を信じろと言い切った。

 こいつ、と思いながらも確かにセイバーの言う通り。

 

「まぁ、最初にお前を従えるに相応しい一流だって言っちまったもんなぁ」

 

 こいつが負けると考えるのはつまり、所詮自分はその程度のサーヴァントしか使役できない魔術師だと宣言するようなもの。

 

「頼むぜ、セイバー。一流の魔術師の魔力供給を受ける超一流のサーヴァントってのがどれだけ強いのか、この大戦で見せてくれよ」

 

「お、おう」

 

 ちょっとした不満に100点満点中120点の回答を返されて、少しどもるセイバー。

 主従仲の良い、よっぽどのことがない限りは良好な組み合わせであるということをはっきりと示し、今日のところは一旦地下墓地(カタコンぺ)に帰ろう、とそういうことになったその瞬間のことだった。

 

 

 

 

 

「これで終わりだと思いましたか?」

 

 ミレニア城塞にある”王の間”と呼ばれる部屋。

 そこで、敵のセイバーがホムンクルスを撃破した瞬間を見届けた”黒”の陣営。

 キャスターの強化したホムンクルスに対する反応は対照的。

 戦場をまるで知らないマスター達は、所詮はサーヴァントには及ばぬ雑魚でしかない、と思い。

 幾千もの戦場を越えてきた英霊達と、すでにその実力を見たダーニックはサーヴァント基準で上等な兵士レベルに至ったホムンクルスを歯牙にかけないセイバーを脅威と見る。

 

 そんな折のことだった。

 キャスターがその言葉を発したのは。

 

 それが魔術だ、と気がつけたのはいったいどれだけいたのか。

 宝具だと。そう考えた方が当然の一撃を少女はすでに用意している。

 

 自らに対する嘲笑の視線は我慢するけれど、マスターに対する侮蔑まで許した覚えはない。

 とりあえず、まずは軽く牽制の魔術でも放って、即座にその侮蔑を取り消させなければならない、とキャスターはその魔術を展開する。

 

 セイバー、モードレッドの対魔力は宝具によって隠されているがBランク。詠唱が三節以下であれば無効化するレベルのもの。

 それがわからずとも、あのサーヴァントの高水準のステータスを見て、普通の魔術が通用するとは思えない。対魔力は、セイバーのサーヴァントであれば、誰もが持っているのだから。

 あの二人がその場を去るまでに用意できる程度の魔術で、彼らを倒せる可能性のある魔術など、普通は作れない。

 しかも、ミレニア城塞から街中に向けてなど、なんて。

 

 そんな魔術師達の予想を、キャスターは正面から撃ち抜いていく。

 

「先ほど、あとはあのセイバーの宝具がわかれば、と言いましたねアーチャー」

 

「ええ……まさか、あなたは」

 

「いいえ、宝具は使いません。ですが向こうの宝具を、それが叶わずとも令呪を使わせましょう」

 

 マスター、許可を。

 そう告げるキャスターへと憐も頷く。

 

「ああ。切り札の魔術を一枚切ることを許可する」

 

「感謝を」

 

 取り出したのは一つの槍。それを触媒に、一つの魔術が稼働する。

 術式は、精緻にして複雑。

 その術式の名は、『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』。

 魔術にて再現された、モードレッドを殺したという聖なる槍。すなわち宝具。

 

 終末とはいえ神代にあってなおも”独自魔術(オリジナル)”と称されるキャスターの砲撃。

 放たれた一撃は、ミレニア城塞を光の速さで飛び去って、モードレッドの元へと向かう。

 視認した彼女から爆発的な魔力が漏れ出す。が、その魔力は迫る黄金に比べればあまりにも貧弱だった。

 

 振り下ろした剣もまた、迫る光と等しく宝具。

 その威容がはっきり見える、とまでは黄金の光量が強すぎていかないが、それでも剣から莫大な魔力を赤雷の光線として放っていることがわかる。

 爆撃じみた一撃は音を消し飛ばし、爆風が視界を遮ったことでその真名までは読み取れない。

 ”黒”のアーチャー……ケイローンならば、あるいは読唇術と推測を重ねることでその真名を暴いたかもしれないが、今はそれよりもセイバーの安否だろう。

 セイバーが倒せていなかった場合のみ、彼が読み取った真名にも意味が生まれる。

 

 魔術で再現された聖なる光と赤き稲妻を纏う剣光の激突。

 徐々に、徐々になれど聖なる光が押し込み始め、それを押し返すようにアーサー王を殺す光が雷鳴を奔らせる。

 

「では、もう一度」

 

 そして、その奥でキャスターが再度、同じ魔術を装填し終えた。

 キャスターを見つめるマスター達の視線に宿ったのは畏怖。

 そうして、あとは瞬き一つで放たれる、そんな瞬間のことだった。

 

 赤い剣光の奥で、一際輝く赤い紋様。

 それが令呪の光であると悟るのに時間はいらない。

 

 この場で行われる命令は二つに一つ。

 すなわち、宝具の強化による押し切りか。

 あるいは、セイバーの空間転移による撤退か。

 

 果たして、獅子劫が選んだのは──

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