うぉぉぉぉぉ!(評価バーが赤から橙になったのは残念ですが、日刊にも乗れたのが嬉しいです!)
うぉぉぉぉぉ!(まだ投稿から二日目なのでちょっとだけ驚きました!)
「それで、何か弁明でもあるか?」
「ないよ師匠。ぶっちゃけ、先に伝えてたわけだし」
「お前はそういうやつだよなぁ……」
聖杯大戦二日目。獅子劫が起きた時点で、地下墓地の外には”黒”の陣営の一角、より正確にはキャスター陣営とでも呼ぶべき三人がそこにいた。
当然、獅子劫が会談の場所に選ぶのは地下墓地の中。自らのテリトリーであるということに加え、ここならば自らのサーヴァントが宝具を使えない、使ってしまえば自分も死ぬという、キャスターと出会うことも踏まえての場所。
では、その二人はというと──
「あなたが、その……この世界の私の子供、なんですか?」
「お、おう……」
お見合いで初めて出会った男女のようになっている。
”黒”のキャスターからすれば、なんだか突然生えた実子。
”赤”のセイバーからすれば、なんだか突然増えた父上(母)。
どう反応すればいいのか、困り方はお互いどこか似ていた。
「いや……ああ、うんそうか。あんたは、この世界のアーサーではないんだな」
どこか納得した様子のモードレッド。
この世界のアーサー王にはありえない、自らを子供と認める言動に何を思ったのかは、彼女自身にしかわからない。
けれど、最低限悪いことにはならなそうだ、と見ている誰もが共通して思った。
「もしかしなくてもあの子を私の娘にした方がアーサーとの結婚は簡単なんじゃないかしら……?」
「はーい、愛歌はちょっと落ち着こうなー。気が多い奴は嫌われるぞー」
一人、まったく違うことを考えてはいたのだが。
少なくとも、聖杯大戦における共闘はまず間違いなく実行できる、と。
「一応聞いとくけど、昨日のあれはなんだったんだ? セイバー曰くロンゴミニアドだってことだが」
「この父上は
「……父上? 私、男だったんですか……?」
「いいえ、あなたは普通に女よ、キャスター。お風呂にも一緒に入って確認は済んでるもの」
「は? お前、父上と一緒に風呂に入ったとか言ったか?」
「あら、”赤”のセイバー。一応言っておくけど、その子は王様でも騎士でもないのよ。女性として扱われて、男装する必要はない、ただの少女。求めるなら母性で、どっちかっていうと
「はい!」
「うぐっ……父上……」
モードレッドの呼び方に、キャスターが多少パニックになったり。
愛歌の発言にモードレッドがキレ散らかしたり。
そういう会話で、最初のよそよそしさは少しずつ抑えられていく。
「あれは魔術で再現したロンゴミニアドだよ。先に言っておいただろ? 一番疑われやすいのは俺なんだから、協力関係だってバレないために令呪か宝具を使わないとどうにもならないレベルの一撃は放つって」
「両方使わされるレベルだとは思わなかったぞ」
「まあ、能力がわかんなかったからな。その上で、セイバーがモードレッドってことはわかってて、キャスターもモードレッドって息子がアーサー王にいることは聖杯からの知識でわかってたから、息子ならなんか対抗手段持ってるだろってことでロンゴミニアドを使ったらしい」
背後で、息子なら超えられるだろう、と思われていたと知ったモードレッドがわかりやすい反応をしている。
が、どちらも触れない。この状況で触れてもいいことは何もなさそうだと。
「とりあえず、昨日のあれで俺たちがそっちと繋がってるって考えは下火になったみたいだ」
「令呪を消費させて、宝具の真名解放までいきなり使わせるような味方はいないってか」
「令呪一画と宝具の真名で敵対する全サーヴァントの真名とステータスが手に入るって、安い買い物なのか高い買い物なのか」
「ついでに内情も手に入るんだし、安いって言ってもいいんじゃない?」
「じゃ、こっちからも情報だ。
「ほーん」
シロウ・コトミネ。
愛歌曰く、前回の聖杯戦争でアインツベルンが召喚したサーヴァント、天草四郎時貞の現代の姿。
大聖杯を用いて、全人類に第三魔法を行使し救済するという理念を持った聖人。
「セイバーの直感が言ってるんだから、まず間違いねえ。スキルにまでなってるんだ、外れるってことはないだろう」
「まあ、俺が出会うことはないだろうし、そこはそっちに任せるよ」
「……師匠呼びするんならもうちょい敬えよ、お前」
「敬って、実力を信頼してるから任せてるんじゃないか」
「物は言いようだなぁ」
ははは、と笑う獅子劫。ただし目は笑っていない。
自己強制証明を結ぶかどうか、というところはまだ結ばない、ということで締結。
下手な内容で結んだ場合、一応は敵対陣営に属する二人がその自己強制証明を破らなければならない事態に陥るかもしれないことを危惧してのこと。
「うちの場合、ランサーが仕切ってるからな」
「ヴラド三世。確かにルーマニアではこれ以上ない英霊だな」
「結ぶにしても、ランサーとダーニックが倒れてから。その時も、陣営が崩壊した後の共闘関係についての締結、程度で済ませたほうがいいかもしれないっすね」
情報共有、同盟関係の締結。そういった、諸々のことを済ませて、憐は立ち上がった。
愛歌とキャスターの方に視線を向ければ、セイバーと何かを話している。
と思えば、セイバーが憐を睨む。英霊の気迫に少し後ずさりしながらも睨み返せば、不愉快そうに鼻を鳴らして外方を向いた少女。
「二人とも、帰るぞー」
「あら、話し合いはもう終わり?」
「はい、マスター。モードレッドさんも、また今度ゆっくり話しましょう」
「おう。父上もやられんじゃねーぞ」
そうして
ジーク、いずれそう呼ばれるはずだったホムンクルス。
”黒”のキャスターがアヴィケブロンではないことによる影響で、炉心として切り捨てられることのなくなったホムンクルスである。
とはいえ、”生きたい”という願いを抱いたのは変わりなく、創造主に逆らうほどの意思に興味を抱いたキャスターによって、魔力供給槽から取り出されたのだ。
「憐様、愛歌様、キャスター様。こちらにあの魔術師は?」
「ああ、いなかった。あの
「そうですか」
「とはいえ、昨晩のうちに用意はしていたのだろうな。わずかばかりの罠があった。どれもこれも魔術的な罠ばかり。破られた、というのはもう向こうにも伝わっているだろう」
「了解しました」
今、三人が行なっているのは地下墓地巡り。ジークはその監視役。
獅子劫は、先日令呪を用いての転移による撤退を行なった。
セイバーの戦闘能力は高いが、先日のダメージが残っているだろう今ならば、こちらのサーヴァントによる撃滅が叶うかもしれない。
それが叶わずとも、敵の本拠を発見できるというのはそれだけでも価値がある。
ダーニックが口にした内容を簡潔にまとめればそういう話。
そのため、現在はセイバーを倒し得るサーヴァント。
”黒”のセイバー、アーチャー、キャスターの三名がミレニア城塞付近一帯の墓地を回っている。
沙条愛歌の協力により、一部サーヴァントは本来に比べ強化が成されているのだが、それでもなお”赤”のセイバーを倒し得るのはこの三騎と、あとはそう簡単には動かせない領王のみ。
ダーニックは、今更になってその事実を不安視し始めたが、もうすでに賽は投げられた。
そのため、彼の思考は自らの不安をもみ消すような形で展開される。
あれほどのサーヴァント、魔術協会にとっても虎の子の触媒を使ったに違いない。
ルーマニアにおける領王とすら戦えるほどのサーヴァントなのだ。
そんなものが、何騎もいるはずがない。
六十年かけて見出した、この聖杯戦争における最強のサーヴァントなのだから、と。
「
体内の魔術回路を起動する。
武具を引き抜くようなイメージで、堰き止められていた魔力が流れ始めた。
かつての憐ならば、ここから魔術の訓練をしたのだろうが、今回に関しては鍛錬のための起動ではない。
というよりも、当たり前に考えれば聖杯戦争の最中に魔術の鍛錬を行うのは自殺行為でしかない。
なにせ、『聖杯戦争は夜に行う』というのは、あくまで魔術の大原則に則った暗黙の了解。
破ろうと思えば誰でも破れるものであり、街中に出た途端にサーヴァントに出会い戦闘に入る可能性だってある。
いつ如何なる時においてもサーヴァント戦に備え、常に自らのコンディションを最高にしておくのは、魔術師としての当然の義務だ。
それでも魔術の鍛錬を行う意義があるとするならば。
身につけた魔術がサーヴァント戦においても有用となる場合くらいだろうか。
そして、憐ではそのレベルの魔術には未だ到達する兆しすらなく。
故に当然、わざわざユグドミレニアで魔術回路を起動し、魔力を生成する必要性はない。
「ありがとうございます、マスター」
それを知るから、キャスターは感謝の言葉を告げる。
生成した魔力は一滴残らずキャスターの身へと。
魔力供給用のホムンクルスは、ユグドミレニア全体の共有品。キャスター個人で全て使っていい代物ではない。
そうして流れ込んだ魔力を用いて、キャスターはユグドミレニア……とりわけ、己のマスターの私室の工房化を進める。
己が身につけた魔術。師匠譲りの幻術。あとは対霊体用の魔術をいくつか。
その全てが、最低限サーヴァントを相手にしても令呪を使う程度の時間は稼げる代物。
急ピッチでの用意に一つ二つ宝石を消費してしまう事態にはなったが、命には代えられないだろう。
ついでに言えば、あの宝石は愛歌が用意したものなので、憐の懐は全く痛んでいない。
「あ、あなたのカードを使って購入してるわよ」
「おい待て、いつの間に掏り取った」
「失礼ね、ちゃんと許可はもらったわ。暗示を使って」
「それは許可とは言わねぇ……」
心を読んだかのような発言に驚くことは、キャスターももうなくなった。
代わりに、憐に背中を預けてくることが多くなった。
そしてだいたい、そういう時には何を求めているのか。召喚から数ヶ月も経てばある程度はわかるようになる。
「キャスターの方も助かった。こういうのは、ユグドミレニア側が何を仕掛けてるのかわからないからな。対処できるお前が一から工房化してくれるのは安心できる」
「そうやって褒められると、ちょっと恥ずかしいですね。魔術なんかでそこまで褒められるのは」
少し、顔を赤くしてキャスターは口にする。
その発言に、ちょっとだけ気がひけるが憐が口を出そうとすると。
「あ、こういうのはダメなんでしたっけ?」
「俺も愛歌も別にいいけど、他の魔術師に聞かれたら、ちょっとまずいことになりそうだよなぁ」
直後、コンコンとノックの音が室内に響く。
どきり、と心臓が跳ねたのは憐とキャスターのみ。
愛歌は、平然とその何者かを招き入れる。
「永宮、ちょっといいか?」
そこにいたのはカウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア。
フィオレの弟であり、彼女には遠く及ばない程度の実力しかない魔術師であり、この聖杯戦争におけるバーサーカーのマスター。
仲がいいわけでもなく、悪いわけでもない。そんな相手。
「別にいいけど、どうしたんだ?」
尋ねれば、口にするべき答えにカウレス自身困惑している様子。
けれど、事実としてそこにある以上は受け入れなければならない。
聖堂協会、並びにユグドミレニアが持つ霊器盤に、とある霊基反応が同時に出た。
すでに黒が七騎、赤も七騎。聖杯大戦の許容はもうない。けれど──1つだけ、召喚される可能性のあるクラスがある。
「ルーラーが召喚されたらしい」
「ふぅん」
「ふぅんって、お前なぁ……もうちょっと驚けよ」
「世界に類を見ない規模の聖杯戦争なんだ。それくらいのイレギュラーはあってもおかしくないだろ」
「まあ、それはそうなんだけどさ。とりあえず、ダーニック叔父さんはルーラーをこっちに引き入れたいらしくてな、今日の夜にでもゴルド叔父さんが接触することになりそうなんだ」
「あのおっさんが? どう考えても人選ミスだろ」
「そう言ってやるなって。そういうわけだから、今日の夜も”王の間”に集合するように、ってさっきあったダーニック叔父さんに伝えるように言われたんだ」
「りょーかい」
そう返答して、夜までは陣地の強化を行うと告げたことでカウレスは去っていく。
彼が完全にいなくなったことをキャスターと愛歌が確認をしたところで。
「今日、ようやく聖杯戦争が始まるのか」
「サーヴァント同士の戦い、という意味ではね。前哨戦ならちょくちょくやっていたでしょう」
「ちょっとだけ、不安です。私がどこまで戦えるのか」
そんな、わずかな不安を吐露するキャスターの手を握った。
この主人公は衛宮みたいなサーヴァントと戦える人間ではないのじゃ。