キャストリアと行く聖杯大戦   作:ぴんころ

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(次以降は水着イベもあるので遅くなるような気がする)


TYPE-MOON wikiを見て思い出してからアストルフォを使いたかったと犯人は供述しており

 聖杯戦争とは、七人の魔術師が万能の願望機”聖杯”を求めて争う魔術儀式。

 サーヴァントという代理を立てて、魔術師では決して上がることができない闘争の位階で争う儀式。

 そういう意味では、先日のセイバーの一件は”聖杯戦争”とは呼べない、お粗末な代物だった。

 あれはあくまでもサーヴァント同士の戦いではなかったのだから。

 

 だが、今晩は違う。

 本当の意味での聖杯大戦の初戦。

 キャスターのスキル、”希望のカリスマ”による強化を受けたホムンクルスによる襲撃程度で済ませはしない。

 今回に関しては、それで失敗しては目も当てられないのだから。

 

 今、”王の間”に集ったのは合計五組。

 ”黒”が有するセイバーの英霊とそのマスター、ゴルド・ムジーク・ユグドミレニアはここにいない。

 代わりに、彼らのいる場所がキャスターの放った使い魔によって可視化されている。

 

「ふむ、敵はランサーか」

 

 そこにいたのは”赤”の陣営が有するサーヴァントが一騎。

 誰もが理解したそのクラスを最初に口にしたのは、本来の聖杯戦争ではありえない同一クラスにて招かれた”黒”のランサー。

 まず、彼が目を向けたのは”黒”の陣営が有する大賢者。

 

「大賢者よ、君はどう考える?」

 

「倒せない相手ではない、というレベルでしょうか。おそらくは最上位の英霊でしょう。此度は”宝具の性質がわかれば”というレベルではなく、そもそも”相手の宝具がどういうものなのか”を見た時点でこちらの損害は目を瞑れないレベルになる。そういう難敵だと私は思います」

 

「なるほど」

 

 当然、”黒”と”赤”が出会ってしまえば戦う以外に道はない。

 ”赤”のランサーと”黒”のセイバーの戦いは、すでに始まってから一時間が過ぎ去ろうとしていた。

 

 闇の中でなお鮮烈に輝く、二騎のサーヴァント。

 そのどちらも、闇の中でありながら表情が誰の目にもはっきりと見える。

 

 魔力を込めて剣の力を放つわけでもないただの剣技。

 魔力を乗せて槍に炎を纏ったわけでもないただの槍技。

 

 どちらも、音を置き去りとする絶技であり、だからこそ鋼がぶつかり合う回数は秒間100を超える。

 絶技を持つ英雄同士、互いに次にどう動くのかを頭の中で浮かべることができてしまう。

 お互いがお互いに、”この男ならばこの程度”という思いを浮かべ、それを暗黙の了解として一瞬前の自分を超えていく。

 散る火花が消えるよりもなお早く次の、また次の。鋼から無限に火花が生まれ、夜闇に包まれた街道を照らし出す。

 

 斬撃の嵐に巻き込まれ、開始数秒で消し飛んだ街灯よりもなお明るく、その空間は恒星のように光り輝いている。

 

「これが、聖杯戦争……」

 

 本当の意味でのサーヴァントのぶつかり合い。

 その多大な畏怖の混じった声を発したのは、この聖杯戦争の調停者にして、今現在の対戦カードが組まれるきっかけとなったサーヴァント、ルーラー。

 真名をジャンヌ・ダルク。救国の聖女と謳われた彼女は、この聖杯戦争の破綻を防ぐ役割を担う、何よりも重要な立ち位置。

 そんな彼女を”赤”のサーヴァントは狙い、それを”黒”が阻止するという構図が、この戦いの始まりだった。

 

 そうして始まった戦いは、徐々に推移しながら、戦況の天秤が傾くことなく均衡を保つ。

 剣が、槍が、己が絶対の信頼を預けている武技を超えて、肉体に鋼の冷たさと相手が積み重ねた研鑽に込められた熱意を叩き込んでくる。

 当たり前に考えれば傷は肉体性能の低下を招く一因。一つ一つは小さくとも、英霊同士の戦いにおいてそれは無視していい代物ではない。

 

 だが、二人のサーヴァントは、その傷など知ったことではないと言わんばかりに戦っている。

 理由は簡単、なぜなら二人は共に”不死身”であるのだから。

 けれど、二つの不死身は対照的。

 

 ”黒”のセイバー、その真名はジークフリート。

 世界的にも有名な”不死身の英雄”であり、背中という明確な弱点を持つ、という意味でも”英霊の真名隠匿”の概念を語る上での代表例。

 竜殺しの名前をあげる場合、おそらくは最上位に来るだろう大英雄であり、当然霊格もそれに見合ったもの。

 今回の現界において彼はその不死身の肉体を宝具という形で持ち込んでいる。

 真名を『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』。その効果は、一定以下の攻撃の無効化と、基準値を超える攻撃に対しての一定の減衰。

 その基準は、Bランク。彼を傷つけるにはAランク……つまり英霊の中でも最高峰の力を持つ者の力が必須であり、彼が存在している時点で一部聖杯戦争では勝利が決まるとさえ言える英霊。

 彼が身につける鎧を超えたとしても、その肉体に施された概念的な守りを超えられるかどうかは話が別。

 

 では、そんな防御という面では目を見張る宝具を、宝具すら使わずに超えるこのサーヴァントは何者なのか。

 現代の魔術師如きの治癒魔術ですぐに消滅する程度とはいえ、傷は傷。このサーヴァントの一撃はまさしく宝具級である、という事実がそこにはある。

 それを成す”赤”のランサーの真名はカルナ。

 生まれ持った時より、父である太陽神から不死身の鎧をもらい駆け抜けたインドの大英雄。

 その黄金の鎧は、ジークフリートが竜殺しを成した武器である『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』を受けてなお揺らぐことはない。

 そして、何よりも重要なのが。

 

 ”赤”のランサーの鎧が破られた逸話はない。

 受けるダメージを全て十分の一にまで軽減する鎧は、神話の中においてなお、奸計を用いて奪われる、という形で排除されるだけだった。

 故に、その鎧を破るならば致死量の十倍のダメージを与える必要があり、そのような一撃を用意するのであればまず確実に宝具。

 だが、宝具の真名解放など、やっている余裕はない。

 

 ならば当然、二人の英霊はいつまでも戦い続けることになる。

 

 ”神秘の隠匿”の原則に従い、朝が来るまでは。

 

 

 

 

 

「あー、疲れました! ただの村娘に、王様の前とか辛いです!」

 

「お疲れ様、キャスター」

 

 戦いの中継を終えて部屋に戻った途端、誰の目もないのをいいことにキャスターはベッドに腰掛けた。

 その顔からは当人の言葉通り、疲労がうかがえる。

 そこにちょうどよく、部屋に残っていた愛歌が顔をだす。

 

「あ、チョコレート!」

 

「ええ、用意しておいたわ」

 

 彼女が手に持っていたのは、チョコレートクッキーを乗せた皿。

 それを見たキャスターが目を輝かせて、己のマスターに視線を向ける。

 苦笑しながらも頷けば、少女は愛歌に感謝を告げて、ひょいと一つ口に入れて幸せそうにはにかんだ。

 

「前回は王様の前でも平然としてたのにな」

 

「あの時はほら、マスターが侮られるのは我慢なりませんでしたから」

 

 今回はすでに実力を示した後だから考える余裕ができてしまったのだと、少女は笑う。

 その言葉が憐にはとても嬉しい。

 

「なら、余裕のある今日は息抜きでもしようか?」

 

 今日はサーヴァントは来ないんだよな、と尋ねる相手は沙条愛歌。

 この聖杯大戦の全てを牛耳っていると言っても過言ではない、根源接続者。

 

「ええ。予定では”赤”のバーサーカーの進撃が始まるのが明日ね」

 

「ってことは今日一日くらいなら、街中に繰り出しても問題ないわけだ」

 

「そうですね……えへへ、ルーマニアはほとんど周ったことがないので楽しみです!」

 

「一応、ライダーあたりと一緒に行こう。本当ならデートにできればいいんだけど、まーだ向こうは俺たちが魔術協会と繋がってるって考えてるみたいだからな」

 

 監視役がいた方がやりやすい、と。

 ライダー、その真名はアストルフォ。逸話の中で明言された事実をスキルとして持つ英霊の中でも、ひときわ目立つ存在。

 その最たる特徴は、ライダー特有の多数の宝具でもなく、どこか低めのステータスでもなく、スキル”理性蒸発”。

 ”理性蒸発”をスキルで明言されているサーヴァントではあれど、だからこそ自分の欲望のための裏切りは許さない人物であろう。

 真名を明かせば、蒸発した理性は勝手にそれを口にするかもしれないし、自分の感性に従う以上助けを求められたならば応えるかもしれない。

 だが同時に、かの騎士はそれゆえに行動基準がわかりやすい。

 裏切りのような行動を取らなければ、まず間違いなく彼がキャスターたちに敵対する理由はない。

 

「言っておくけど、私はやることがあるから行かないわよ?」

 

「え、そうなんですか?」

 

「ええ。こればっかりは他の人には任せておけないもの。私のことは気にしなくていいわ。あなたたちが色々とやってる間に遊んでるから」

 

「うー……」

 

「ほら、そんな顔をしないで? また今度ショッピングでもしましょう」

 

「絶対ですよ?」

 

 そうと決まれば話は早い。

 マスターであるセレニケ・アイスコル・ユグドミレニアの愛玩から抜け出したライダーに声をかけ、二人も同伴する形で”息抜き”を開始する。

 

 そうして外に出てきた三人を、一羽の鳩が見ていた。

 

「確か、魔術師のアーサー王、だったかのう?」

 

 その鳩の視界を通して、彼らの様子を見ていたのは”赤”のアサシン。

 ルーマニア全土に広がった鳩の警戒網は、アサシン……セミラミスが”使い魔(鳩)”をスキルとして持つことを知らなければ警戒などできようはずもない。

 

「ええ。獅子劫さんがこちら側にくれた情報の通りのようですよ」

 

 そして、そのアサシンのマスターこそがシロウ・コトミネ。

 かつて起きた最後の真なる聖杯戦争、亜種でも大戦でもないその戦いで召喚された、アインツベルンのサーヴァント。

 その聖杯戦争におけるクラスはルーラー。その時の特権を未だ残す、”見ただけで全てのサーヴァントが何者かわかる”という反則級の力を持つマスターである。

 

「ジークフリートの対処はまだどうとでもなります」

 

 だが、その彼を以てしても”黒”のキャスターの対処には悩む。

 戦闘能力という点では、まず間違いなく”黒”のセイバー、ジークフリートの方が上であるというのに。

 とはいえ、それも当然のことだろう。

 

「彼は背中が弱点だということがわかっている。そこを狙えば、まず確実に倒せるでしょう」

 

「それを除いても、まずライダーが相手をすれば負けはせん。神性を持たぬ者では傷一つつけられないのが彼奴の特徴じゃからな」

 

「キャスターについても、そうであればいいのですが」

 

 逸話がある、ということは情報を得られる、ということだ。

 情報を得られる、ということは対策を練ることもできる。

 だが、”黒”のキャスターにはそれがない。

 わかるのはサーヴァントとしての情報だけなのだ。

 

「ステータスだけでは対策が全く取れない。ライダーを下手にぶつけた結果、神性特攻を持ち合わせていては、彼を失うことになるだけです」

 

 セイバー戦。そしてマスターとしての共通のステータス視認能力。意味をなさない真名看破。

 この三つだけが今の彼がもつキャスターに対する情報。

 アーサー王伝説を紐解けば予想はできるかもしれないが、それもあくまで予想にすぎない。

 ”アーサー王伝説にない何かが原因で魔術師になった”なんてことであれば、予想外に殴られる可能性もある。

 なぜなら、この世界で彼女の能力を知ることができるのは彼女がそれを行使した時だけなのだから。

 

 今のところ行使されたのは、キャスターがサーヴァントのスキルで言うところの『カリスマ』を持っていること。

 宝具にも匹敵する超大規模魔術砲撃を放つことができること。

 その二つだけ。

 

「初めてですよ。”普通のマスター”のような悩みを経験するのは」

 

「それも良い経験だろうよ」

 

 くっくっと笑いを漏らすアサシンに、困った顔の神父。

 普通に見ればサーヴァントに振り回されるマスター、と言う様子だが、これで二人の仲は良好なのだから不思議なものだ。

 

「ところで、もう一人のライダーの方の真名はどうなっておる?」

 

「そちらも情報通りですよ」

 

「確か……アストルフォ、だったか」

 

「ええ、よくある史実と性別が違うサーヴァントですね。全てが情報通りなら、”黒”のサーヴァントの中で空中庭園に入る手段を持つのは彼女だけでしょう」

 

 あなたの庭園が負けるとは思いませんが、と告げるシロウに当然と返すアサシン。

 シロウが願い、アサシンが興味を持った結末に至るため、二人の計画はじきに雌伏の時を終えることになる。




ルーラー(ジャンヌ)が騙されたのに、ルーラー(天草)が騙されないとか、そりゃないわな。
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