・P
・三峰結華さん
・その他の方々
です。
三峰さんは、急激に彼女を好きになるような、魔法か何かが使えるんだと思います。それくらい魅力的な彼女をどれだけ表現出来たかは分かりませんが、ありったけのパトスとポトフで書きました。
甘々です。コーヒーや紅茶と一緒にどうぞ。
「Pたん、ただいまぁ」
部屋の扉が開くと同時に疲れ切った声が小さく響く。
「おかえり、結華。今日は……そうか、体力づくりのレッスンだったか。どおりでお疲れのはずだ。初めてのあのトレーナー、どうだった?」
「そうなんだよPたん! 最初はよかったのに、コーチどんどん熱入っちゃってさー。さすがの三峰も、ちょーっちこたえたわ……」
そういいながら彼女はソファに横たわる。
基礎練習のあのコーチ、いつもけだるそうにしているが、そんな熱が入ることがあるのか。それだけ彼女に見どころがあったか……。
「……Pた~ん、もうみんな帰っちゃったの?」
ソファの陰から、気の抜けた声が聞こえる。
「そうだな、あとは会議室でお客様と話している社長とその付き添いのはづきさんだけだ」
「なーんだ。Pたんと二人きりじゃなかったのかぁ。ざーんねん」
「すぐそうやってからかうんじゃない。ほら、そのままだと風邪ひくぞ」
「はいはーい。すぐ着替えてきますよーだ。まったく、恋人みたいな注意しないでくださいー」
そういいながら彼女はなぜかこちらに近づいてくる。
「ほーら、プロデューサー。また猫背になってるよ?」
肩と背中を引っ張られ、背筋が伸びる。
「あ、あぁ。すまない。ははっ、結華だって恋人みたいなこと、してるじゃないか」
「──!! もうっ! 自分の担当アイドルに何言ってんの!」
「……最っ低!」
彼女は背を向けてそう言い放つと扉を強く締め、部屋からでていった。
「……はぁ。結華には、からかわれてばっかりだな……」
と思いつつ俺は、何故かこぼれる笑みを止められずにいた。
しばらくして結華が帰ってきた。
「Pたん、いっつもデスクワークばっかりで疲れない?」
そういいながら彼女は、俺の隣にイスを持ってきて、背もたれを前にして座る。
「うーん。疲れてないって言ったら嘘になるな。でも結華たちがこうやって帰ってきて、元気な顔見せてくれたら疲れも吹っ飛ぶってもんだぞ」
「……なーにかっこつけたこと言ってんのよ」
「っはは。ばれたか。けどみんな、うちの自慢のアイドルだしな。プロデューサーとして大きい顔もしたくなるさ」
「自慢のアイドル……ね。それ、私がG.R.A.Dに出るときも言ってくれてたよね」
彼女は少し俯き、小さな声でそう呟く。
「おいおい、その話はもう決着がついただろ?」
「うん……。……ふふっ。そうだね。ま、そういうことにしといてあげますよーっと」
そういって彼女は体を大きくひねる。
「イスでくるくる回ると危ないぞ?」
「むー、またそうやってー。Pたんは三峰のこと、何でもかんでもお見通しとでも?」
「そりゃぁ俺が結華のファン第一号だからな」
「……はぁ。よくもそんなことを恥じらいもなくまっすぐ言えるわね……。ほら、三峰のことは気にしないで。残ってる仕事、さっさと終わらせちゃいな? 三峰がちゃーんと見守っといてあげるからさ」
「おぉ、そうだな。……それは心強いんだが、暗くなる前にはちゃんと帰るんだぞ?」
「Pたんが早く終わらせれば、暗くなる前に帰れるんだけどなー?」
そう言うと、横向きのスマホにイヤホンをさし、片耳だけつけると動画を見始めた。
「まったく、研究熱心だな」
少しだけ皮肉まじりにそういうと、彼女は笑うような、睨むような顔でこちらに顎をくいっと向けた。
(いいから早くやれ)
とでも言いたいんだろうな。大体の意図を察した俺は、パソコンに向き直り仕事を再開した。
ほどなくして、はづきさんが部屋に帰ってきた。
「プロデューサーさん、おつかれさまです。今日も一段とたくさん、お仕事を抱えてらっしゃったみたいですね~。コーヒー、用意しましょうか?」
「あ、はづきさん。おつかれさまです。いえいえ、もう少しで片付くので結構ですよ。お気遣いありがとうございます」
「わかりました。じゃあ私は、次のバイトがあるので失礼しますね~」
と、彼女は手際よく荷物をまとめながら言った。その時ふと、疑問に思う。
「あれ、そういえば社長は? ご一緒でしたよね?」
「あ~。社長なら、先ほどの方とそのまま会食に行かれましたよ~?」
本当にせわしない……いや、忙しい人だ。
「それではプロデューサーさん、最後の戸締り、よろしくお願いしますね」
そういうと彼女は、失礼しますと一礼し、笑みを浮かべた。がしかし、その笑みに俺の視線が合うことはなかった。
なぜだ。俺は何か気に障るようなことを言ってしまったのだろうか。自分の言動を振り返り、はっとする。
やけに静かだ。
「……結華。おーい、結華?」
思えば、はづきさんが部屋に入ってきたときも結華は挨拶をしなかった。彼女が挨拶を欠かすなんて、考えられない。はづきさんが出ていくときに目線が合わなかったのもそのせいか。
「おーい、結華」
「結華……よだれ、垂れてるぞ」
近くによって呼びかける。
「んぅ……? えっ! よだれっ!?」
「嘘だよ。いつものお返しだ。おはよう結華。体、痛くないか?」
「……寝顔、みた?」
……は?
「ね・が・お、み・た!?」
「俺が起こしたんだ。見ないで起こすほうが難しいんじゃないか?」
それを聞いた結華は目を見開き、背筋を伸ばしたかと思うと肩を落とし、俯いた。
しばらく静寂が続いたのち、結華が先に口を開いた。
「……けない」
「え?」
「もうお嫁にいけない! 家族にしか見られたことないのに!!」
「いやいや、そんなこと言われても……」
「あーもう! プロデューサーってばやっぱり最っ低! 無防備な女の子の寝顔見るなんてありえないからねっ?」
結華は顔を手で覆い、また俯く。
「うっ……。す、すまない……」
また、静寂が流れる。先ほどのよりも長く、重苦しい。霧に満ちたような空気が漂う。
「あの、ゆい……三峰、さん? 本当に……」
と、謝罪の言葉を言いかけた矢先、急にその霧が晴れる
「ぷっ、あははは!」
「Pたん、ふふっ。また三峰の演技力に騙されちゃったね? さっすが、演技派アイドルの三峰結華!」
涙をぬぐいながら結華は言う。
「あー、面白い。Pたんもまだまだだね? そんなんじゃこの三峰結華のプロデューサーは務まらなくってよ?」
「結華……。じ、じゃあ怒って……?」
「ないない! 第一、Pたんだってわたしにとっては家族みたいなもんだしね~」
言い切ったところで結華ははっとする。
と同時に俺は安堵していた。
「よかった……。ほんとに怒らせたんじゃないかってひやひやしたぞ」
「お、怒ってないから! ほんとに、全然!」
「……? 何をあせってるんだ? あ、もうこんな時間か。外も真っ暗になっちゃったな」
「ほんとだ……。ごめんね? わたしが寝ちゃってたせいで……」
「いやいや俺こそ、仕事が長引いたせいで待たせてしまった。申し訳ない」
お互いに謝りあっていたが、結華が提案をする。
「うーん……。じゃあPたん、晩ご飯、一緒に食べに行こ? もうこんな時間だし、どうせコンビニ弁当にするつもりだったんでしょ? おごってよね」
どうせ、は余計だが大方当たっていた。
「……分かった。それで手を打とう。だから、寝顔を見たことはみんなには言わないでくれ。頼む」
「……ふふっ。……えー、どうしよっかなー?」
外に出た二人に冷たい風が吹きつける。車通りの少なくなった大通りを街灯が照らす。
「そういえばこれ、誕生日プレゼントだ」
「えぇっ! 今? このタイミング? ふつー朝イチとかで渡しません??」
「いいだろ、今日中に渡せたんだから。レッスン頑張ったご褒美でもあるぞ」
「まったくもう……。ってこれ、わたしが欲しかったやつ! しかも限定色……! なんで……!」
「なんでって、結華は俺にとっても家族みたいなもんだからな」
今回も読んでくださってありがとでした。
最後のセリフだけで終わる感じ、個人的にはすっごい好きなんですけど、どうなんだろうなって少しどきどきしてます。
またパトスで書き上げた時は、読んでくださると幸いです!
ありがとでした!