魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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エトワールズ会議 

 

 ふーたべた、たべた。

 

 あたしは椅子に座っておなかをポンポンと叩く。みんなに作ったものを全部食べられたけど、よく考えたら量が少なかった。だからラナがあたしに簡単な料理を作ってくれたから満足満足。

 

 食器を片付けて、洗って、拭いて決まったところに置く。そろそろ寝ようかなと思った時ラナが近づいてきた。こっそりと耳打ちしてくる。くすぐったい。

 

「全員そろっているからあんた、あの『Sランク』の依頼書についてみんなに相談する?」

「あっ、そっか……。でもモニカも体調が悪いしどうかな」

「そんなこと言ってたら結局何も決まらないでしょ。……じゃあ、相談するかどうかはあんたに任せるから、今からがその場だけは作ってあげるわよ」

 

 そういうとラナがぱんぱんと手をたたいてみんなを呼んだ。

 

「あんたたち集まって、エトワールズがちょうど揃っているから今まで話し合いできなかったことがあるから……とりあえず座ってくれる?」

 

 ミラとモニカとニーナがそれぞれ椅子に座った。あたしも座る。それを見てラナが言った。

 

「今から会議を始めるわ」

 

 会議? みんなキョトンとした顔をしている。ラナは両手を組んで言う。

 

「私たちはマオの入学を手伝うためにパーティーを組んだからもともと冒険を一緒にしようとかそういう目的で集まったわけじゃないじゃない? だからいろんなルールというか、なあなあになっていることもあるからちゃんと決めておくことがあるのよ。ま、エトワールズ会議ってことね」

 

 ……ラナがあたしをちらりと見る。つまりこの場でイオスからの依頼書を話すか考えるように言っているんだね。当然依頼書に話すってことはその前の王都への『暁の夜明け』の攻撃も言わないといけない。

 

 ラナは言った。

 

「私からはマオとニーナにはすでに言った議題があるんだけど、その前にあんたらでエトワールズ内で言っておくこととかない? まあ簡単なことでもいいけど」

 

 ……あたしはずっと気になっていることがある。だから手を挙げた。

 

「はい!」

「えっ? あ、あんたから? もう? じゃあ、マオ。なに?」

 

 あたしは立ち上がった。みんなを見る。あたしはずっと、ずーーーっと気になっていることがある。目を見開いてあたしは片手を天井に挙げる。それから思いっきり振り下ろしてモニカを指さした。

 

「モニカ! そろそろ『様』付けやめよう!」

「えっ!?」

 

 あーってミラとラナが言っている。モニカは周りをきょろきょろして片方の手を口に当てる。

 

「えっ? そ、その、ま、マオ様」

「マオでいいよ!」

「そ、そんな。ラナ様こんなことが議題でいいんですか?」

「ラナでいいわよ」

「……う」

 

 モニカは黙ってしまう。でもここは引けない.。友達なんだから『様』なんていらないよね。モニカは助けを求めるようにミラとニーナを見るけど。ミラはふふんって顔をしている。

 

「ミラでいいよ」

「そ、そんなまだ何も言ってません」

「……モニカは模擬戦の時はさん付けになっていたよ?」

「あ、あれは気持ちが高まっていて」

 

 ニーナは腕組をしている。

 

「そもそも私の名前はニナレイアだ。あだ名に様をつけてニーナ様ってどうなんだ」

「……うう」

 

 モニカは一瞬うつむいて、悩んでいる。

 

「わ、わ、わかりました。そ、そのみ、みみら、ミラ、みらさん。ニーナさん。ラナさん。せ、せめてさん付けはいいですよね?」

 

 うーん。あたしはラナに目で問いかけると彼女は肩をすくめた。まあ、今日はこれくらいにしておこう。

 

「そのうち慣れるよね。モニカ」

「はい、マオ様」

「マオ!」

「……マオ様!」

「な、なんであたしだけ様付けなの!?」

「ま、マオ様はマオ様って言った方がしっくりきます!」

 

 なんで!? モニカは顔をほんのり赤くして「マオ様っ」ってもう一回言う。なんでさ!

 

「まあまあ、マオサマーはあとで何とかするとして、ほかの議題はないの?」

 

 マオサマーって何? ラナも変なことを言わないで。……あたしがそう思っているとミラが手を挙げた。ラナが指さす。

 

「はいミラ」

「こ、こういうことを言っていいのかわかりませんけど。普段お泊りしているときの食費とかみんなでちゃんと決めた方がいいかなって」

 

 ミラ……それたぶんラナが後で言おうとしたやつだね。ラナはふうと息を吐いた。

 

「それ、マオ達にも同じことを言われたのよね。ショージキその話をしようと思ってたけど、先に言われたから引き継ぐわ。とりあえず今までのことだけど――」

 

 ラナは今までの費用をどう出していたかあたしとニーナに言ったことをもう一度説明する。

 

「まあ、そういうわけで全員で稼いだお金でやってたからいいんだけど、これからはちゃんとカンパして別々に分けて『マオ基金』ってことしたいんだけど」

「まお、ききん……?」

 

 ミラが不思議そうに言う。言ってやっておかしいって、その名前。

 

「名前はそれでいいですけど……具体的にどうしましょうか?」

 

 名前が一番問題と思うんだけどなぁ。ラナとミラはそれから食費をどうするべきかとかいろいろとお金のことを話していく。モニカもそれに加わってすごい具体的な話になった。

 

 あたしとニーナは窓の外にいる虫を指さしてなんかこう、たわいのない話をした。もうすぐ秋だよね。

 

「それで一番の問題なんだけど」

 

 ラナが言った時あたしは振り返った。ちょうどニーナと村でやってた指遊びをしてた。

 

「誰がこれを管理するかってことよ。……私が少し年上といってもほとんど同世代なんだし」

 

 それが問題なの? あたしは普通に聞いた。ラナがじろって見てくる。

 

「あんたたちにいっておくけどマオにお金は預けないからね。こいつは絶対にダメ」

「あ、あたしは盗んだりしないよっ!?」

「そんなことあんたがするわけないでしょ。そんなことじゃないわ。ていうかあんたは私利私欲には使わないと思うけど……ある日突然困った人がいたとか言ってお金を0にして帰ってくるわよ」

 

 そ、そんなことしな……しました。ごめんなさい。

 

「だからあんたには任せない。家を出た時に人が倒れてたらこいつは全部使う」

「さすがマオ様です」

「モニカ……いまそういう話をしているわけじゃないから」

 

 ラナとモニカが少しずれた会話をしている。こほんとラナが咳払いをした。

 

「そういうことだから……はっきり言うけどお金は一番揉めることなのよ。あんたら誰もお金に執着しないから話してて自分が嫌になってくるけど……そんなくだらないことで仲が悪くなるなんていやだからね」

 

 …………もしかしてラナはだから誰にも言わなかった? あたしが気が付かなかったのが悪いんだけどさ。この一つ上のお姉さんはふんとそっぽを向いた。今のは本音だったのかもって少し思った。

 

「とにかく、お金はちゃんとしないといけないから、ミラかモニカに預かってもらうようするけどいい?」

 

 モニカとミラはお互いに顔を見合わせてそれから首を振った。ミラが言う。

 

「たぶんラナが持ってくれた方がいいよ」

「はあ? お金なんて一番揉めることって言っているでしょ? 貴族とか魔族のいいところの生まれの方が……」

「いえ、ラナ様……あ、ラナさんがいいと思います。ですよねっマオ様」

 

 え? 

 

「そうだね、ラナだったら安心だよ」

「あんたね……勝手に使うわよ私なら。そういうことだからここはミラとかに」

 

 あーもううるさいな、あたしは立ち上がった。

 

「ラナがいいと思う人手を挙げて」

「はーい」

 

 ミラが最初に手を挙げて、モニカとニーナも手を上げる。ラナは「……」って無言で肩を震わせている。

 

「どうなっても知らないわよ」

 

 顔をほんのり赤くしてふんってそっぽを向いたラナ。

 

 こんな感じでいろんな話をしていく。途中から最近の授業の話とか、魔法の話とか、あたしの課題の話とかになった。

 

 みんなで笑って、いろんなことを決めていく。

 

 ……正直居心地がいい。あたしは笑いすぎて涙が出てきたのを袖でこすり。その時不意に思った。

 

 もし、どこかで間違えて居たら。

 

 ミラもラナもモニカもニーナも

 

 ……言葉にしたくない。

 

 イオスのことやヴァイゼンのこと、魔族の王都襲撃、それに水路に潜んでいたロイの悪意。

 

 王都の人たちの優しさも、ここにいるみんなとの時間、学園のこともギルドの人たちのこと。

 

 それは全部一緒にこの世界にあることが不思議にすら思えた。楽しいことだけがあればいいのにって心の底から思う。でも……そうじゃないことは、あたしは知っている。いや……『私』は知っている。

 

 あたしは顔を上げた。

 

「あのさ」

 

 みんなに声をかける。ラナに一度だけ目くばせする。そうすると彼女は小さく、あたしくらいにかわからないくらい小さくうなづいてくれる。

 

「聞いてほしいことがあるんだ」

 

 あたしは一度息を吸う。それから話そうと思った。

 

 

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