魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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性格の悪いあの子

 

 みんなの前であたしはちゃんと話せるように自分に言い聞かせた。でもどこから話せばいいんだろう? いきなり言われても面食らうというか……よくわからないかもしれない。それはそうだ、王都を襲撃する計画を知らずに阻止していたって話なんておかしいとしか思われない。

 

 ただ、ミラには絶対に通じる。それは間違いない。

 

「あの……マオ様。お話というのは?」

 

 小首をかしげてモニカが聞いてくれる。ごめんごめん。

 

「話っていうのは……うーん。正直言うとどういえばいいのかあたしもよくわかってないんだ。だからまとまりのない話になっちゃうかもしれない。……ただ、重要な話なのは間違いないんだ」

 

 それを聞いてモニカは「わかりました」って言ってくれる。そういえば魔族としてこの話を聞くことになるのはもしかしたら何か思うところがあるかもしれない。ますます難しいな……よし。あたしは口を開いた。

 

「あたしは王都から結構遠い田舎の村で生まれてさ」

 

 すごい遠い話からしてしまった。ええい! このまま話しちゃえ。

 

「ある日に村の近くで魔物が出てミラ達が来てくれたのがここにいる始まりなんだ。それから街のギルドマスターにフェリックスを紹介されて、ニーナと出会って、王都に来てラナともモニカとも出合うことができた……。偶然が積み重なったとおもうけど、それでも今があることはすごく大切に思っている。あたしはきっと幸運だったんだ」

 

 う……みんな、なんか真剣に聞いてくれている。……本当にそう思っているから。

 

「……でも、今から話すのは悪い話。魔族のことも関わる話」

 

 言葉を間違ったらいけない。ゆっくりと話す。

 

「あたしとミラとニーナ……それに知の勇者の子孫のソフィアは同じ船で王都に向かうことになってた。魔鉱石で動くって船」

 

 そこであたしはミラに目配せする。はっとした顔でミラはあたしを見る。何も言ってないけど、ミラが何の話をしようとしているのかわかったって心の中で言ってくれた気がした。それだけで安心する。

 

「その船は『暁の夜明け』に襲撃された」

「……なに?」

 

 ニーナが立ち上がる。

 

「いきなり何の話をしている? あの船には私も乗っていたんだぞ」

「そうだね。ニーナも一緒だった。ニーナはたぶん記憶があまりないと思う。強力な魔力にあてられたからね。ほら乗客のほとんどが意識を失った事件があったでしょ? 魔鉱石の異常な発動か何かだったんじゃないかって話」

「確かに……そうだったが。強力な魔力にあてられた?」

 

 そういえばソフィアは記憶があるのかな。あたしは続ける。

 

「襲撃してきたのは魔王を称している男だった。名前はヴァイゼン……すさまじく強い魔力を持った魔族」

「ま……おう?」

 

 モニカは困惑した顔をしている。

 

「竜に乗ってヴァイゼンはその船を襲った。目的は……ごめん。あまりいい言葉じゃないけど、三人の勇者の末裔……のその、命。それに聖剣と聖杖の破壊。ヴァイゼンは途中で引き揚げたからよかったけど……あいつの魔力にあてられてほとんどの乗客が気を失った」

 

 誰も一言も発しない。ミラとラナは沈黙して当然と思う。ニーナとモニカはいきなりのことだからしかたない。

 

「さっき話をした街のギルドマスター・イオスってやつがこれをすべて手引きした」

 

 その言葉でミラががたっと椅子から立ち上がりかけた。

 

「……3人がそろったのは偶然じゃなかった?」

 

 流石ミラ……。すぐにそんなことに気が付くなんてすごいや。

 

「そうだよミラ。あの場所にいたのはあたしだけがたまたまいただけ、イオスからすればあたしはおまけでミラとニーナとソフィアが狙いだった。イオスにはモニカも会ったことがあると思う。あいつは模擬戦の前にこの話をあたしにしてきたんだ」

 

 誰も何も言えない。だからあたしが続ける。

 

「そして、あいつは『暁の夜明け』のメンバー」

「ギルドマスターが!?」

 

 ミラが言った。

 

「そう、あたしに直接言ったから間違いないと思う。ただ……魔族と一緒にいるわけじゃないみたい。どういう立場かはわからない」

 

 そして、

 

「それでさ、あいつらの本当の目的は船でミラ達を狙った後……この王都に奇襲をかけてすべてを焼き払うつもりだった」

 

 口にしてあたしは胸が苦しくなった。変に部屋の中が静かに思えた。

 

「阻止できたのは偶然でしかない、そうなってたら今のこの場は全部ない。あたしは……あたしはそれを思うだけで怖い……。ごめん、楽しい時間にこんな話をしたら、いけなかったかもしれない」

 

 あたしは顔を上げる。

 

「イオスはそれを全部話してあたしも『暁の夜明け』に誘ってきた。もちろん入る気なんてないけどさ。でもあいつらの計画がうまくいったら、人間も魔族も昔みたいに戦争になってたかもしれない。それをやった理由をあいつは……」

 

 あたしは立ち上がって制服の内ポケットから黒いカードを3枚取り出し、机に置く。

 

「これはギルドの『Sランク』の依頼だって。中はまだ見てないよ。この3つの依頼をやれば『世界の真実』とかいうのが分かるってさ。それがあいつのやったことの動機なんだと思う。みんなに相談をしたいのは、あたしは……この依頼を受けるか……それともイオス対して今から何かするべきか。それを相談したい」

 

 あたしの話が終わり、みんな誰も声を出さない。うまく話せたどうかはわからない。でも少し胸の奥がずきずきする。ぼかして話をしたけどヴァイゼンと戦った時の『自分の姿』については語らなかった。嘘をついているようで、胸が痛い。

 

「いいか?」

 

 ニーナが言った。

 

「正直な話いきなり言われても、頭の整理がつかない……。あの船のことはぼんやりと何かがあった記憶はあるんだ。それは夢か何かと思っていた。船が全部壊れたり、竜の攻撃を防いだりした…………マオ、あれが事実だったとしてもおかしい」

「おかしい?」

「船は壊れてなかったし、誰も……けが人がいたわけでもない。お前の言う通りならなんでそうなる?」

「それは……」

 

 船はあたしが治した。そういうべきか悩んだ。それを話すとあたしは自分のことを語らないといけない。いや……本当はニーナにもあたしが『魔王の生まれ変わり』だと話をするべきかのかもしれない。ただ、たださ、すごく……怖い。

 

「そ、それは、ソフィアが防御魔法でみんなを守ったからだよ。彼女はあの時、聖杖を使っていたから」

 

 ミラが言ってくれてはっと顔を上げる。嘘というより断片的な真実を語っている。

 

 ニーナはミラを振り向いた。

 

「ミラはあの時の記憶がしっかりとあるのか?」

「……」

 

 ミラがあたしをちらりと見て、頷く。

 

「うん。あるよ」

「じゃあ、今の話は……本当なのか?」

「ギルドマスターの話企みだったとか魔族の王都の奇襲だとかついては初めて聞いたけど、あの船でのことは本当……」

 

 ニーナはそれを聞いて少しうめいてうつむいた。頭を抱えている。

 

「……そうか。私だけが……情けないな」

 

 そんなことはないよ。そういおうと思ってもなぜか言い出せなかった。ただニーナは言った。

 

「じゃあその魔族の……魔王というのはミラとソフィア……それにマオで撃退したんだな」

 

 あたしはどきっとした。ミラも目をそらしている。それをモニカが見ている。ただニーナはそれ以上は追及しなかった。

 

 ぱんと音がする。それはラナが手を鳴らした音だった。

 

「はい、それじゃあ。なんとなく事情は分かったと思うけど、私はそのイオスというやつの話の時たまたまそばにいたわ。それで、こいつの相談というのはエトワールズがちゃんと全員そろった時にするように言っておいたのよ。まあ、いろいろあったからね。……それはいいんだけど、これからどうすればいいかってことよ。あんたたちはどうすればいいと思う?」

 

 あたしは一度椅子に座る。なんか疲れた気がする。まだ話は続くけど体が重い。そんなあたしを見てモニカが言ってくれる。

 

「大丈夫ですか。マオ様?」

「うん」

「……その、今のお話は私はほとんど当事者ではありませんが、つまりマオ様がこれからどうするべきかというお話ですよね?」」

「そう、だね」

 

 モニカはあたしを見た。

 

「じゃあ、決まっていますよ。危ないことにマオ様が関わることはありません。できれば……そう、しかるべき方に相談をして対処してもらうべきです。例えばギルド自体に話をしてもいいと思います」

「…………」

 

 モニカはあたしの手を握る。その赤い瞳はあたしを心配してくれている。

 

「人間と魔族の戦争になりかけた……そう聞いても現実感がありません。魔王という存在が今の時代にも生まれたということも……でも……それでもマオ様がおひとりで抱えていい話ではないはずです」

 

 ぎゅうって握ってくれる彼女の手は暖かい。

 

「そうだね」

 

 ミラの声にあたしは目を向けた。この中で唯一あたしの秘密を知ってくれている親友。

 

「……モニカの言う通りと思う。……それに、ごめんマオ。模擬戦の時もそんなことを抱えていたってことだよね」

「…………あたしが言わなかっただけだからさ」

「…………」

 

 ミラは顔を伏せる。あたしはそんな顔が見たいわけじゃないんだ。その時ミラにだけでも先に話をしておくべきだったかもって胸の奥がまた痛くなる。

 

「マオがそのことに関わる必要があるとは私は思わないよ」

 

 そうあたしの親友は短く言ってくれた。ミラはあたしの事情をちゃんと知っている。だから短い言葉の中にいろんな意味があるってなんとなくわかった。元魔王であるあたしが関わらない方がいいってことは、ただただミラはあたしのことを思ってくれているって感じる。

 

「お前は、どうしたいんだ?」

 

 ニーナ……。

 

「私は確かにあの場所にいたが、魔力にあてられたからといって記憶を失うような未熟者だ。お前にどうこうしないといけないなんて言えるような立場じゃない。……個人的にはミラとモニカの意見に賛成だが、そもそもお前はどうしたいんだ?」

 

 ニーナのいいところは自分のまだ足りない部分をちゃんと口に出せることだと思う。あたしは過去の経験からそういう人が一番強いし、そして手強いことも知っている。

 

「あたしは…………」

 

 一度目を閉じる。

 

 この王都に来てからの思い出をゆっくりと思い出す。そしてミラ達とのことも思い出す。ひとつひとつが大切な記憶だと感じる。もしこれがなくなったらあたしはもう立てないかもしれない。

 

 イオスのことを思い出す。告発をするならあたしの『正体』を話すということを言っていた。あいつはまだあたしの存在が何かわかってないと思うけど……疑われたらあたしが大好きなみんなとはもう一緒にいれないかもしれない。

 

 でも、それでもいいかもしれない……

 

 あたしの正体がばれようがなんだろうと………………たとえ、たとえあたしが処刑されても。みんなの平和がその先にあるなら。

 

「マオ様?」

 

 手が震えているみたいだった。

 

 はは、情けない。

 

 所詮魔王としてのあたしや勇者とか言われてる3人のあいつらも同じ。いろんな人や魔族に恨みと憎悪を巻き起こした災害みたいなもの。その報いはいつだって受けてもおかしくはない。……家族や村が被害を受けないなら、それでいいのかな。

 

 その時に思った。イオスは魔族に関わっている。

 

 イオスは神の摂理の否定をするって言っていた。それが何なのかわからない。……もし、あいつの言う『世界の真実』が人と魔族に関わることなら……逆にその真実が『神の摂理』が人と魔族が一緒に暮らせることに利用できるなら――

 

「――あたしは知りたい」

 

 あたしは目を開けた。そこにはあたしの大好きなみんながいる。

 

「あいつの言うことが何を意味するのかを……みんな、ごめん。みんなの言っていることとは逆のことをだけど、もしもその『世界の真実』って話が人と魔族に関わることなら……今の世界の何かを変えることができるなら」

 

 あたしはミラを見る。彼女はまっすぐにあたしを見てくれる。

 

「ミラとあたしのようにさ、人と魔族が一緒にいることができるなら。それを知りたいよ」

「…………マオ」

 

 ミラは一度目を閉じてからふっと優しく微笑んでくれた。すごく、すごくやさしく。

 

「仕方ないよね。マオだからね」

 

 そう、あたしだからさ。その時にぐっと手が痛くなった。モニカがぎゅううって握っている。

 

「いたいいたいモニカ」

「マオ様……。私は貴方と出会ってからいろんなことを思いました。ギルドの本部で声をかけてくださってからずっと、いろんなことを。……だから貴方の思うことはお手伝いをさせてもらいたいと思っています」

 

 モニカが小さく言う。

 

「危険なことは私が打ち払います。どこに行くとしても連れて行ってくださるなら……私は協力します」

「…………ありがとう、モニカ」

 

 あたしは心から「ありがとう」って言う。それからニーナに目を向けた。

 

「これが、あたしの思っていること」

「……そうか。私はミラとモニカに賛成っていうのは意味は変わったが、同じだ」

「ニーナ……」

 

 あたしがお礼を言おうと思った――ドン!!

 

 机をたたく音が響き渡る。ラナがあたしを睨みつけている。え? なんで。みんなもラナを見る。

 

 ラナは立ち上がって全員を見ている。

 

「あんたたち正気なの? こいつがまた妙なことを抱え込もうとしているのよ? 人と魔族の話を……なんでこいつが考えないといけないのよ?」

「ラナ……それでもあたしは」

「うるさい。みんなが最初からちゃんと関わるなって言ってくれているんだからそれに従えばいいのに! 『世界の真実』なんて知ってどうするのよ。ほおっておけばいいのよそんなこと」

「そ、そんなわけにはいかないよ」

「なんでよ! そこらへんの魔法が得意なだけの女の子がなんでそんなことまで抱える必要があんのよ?」

 

 ラナは指さす。

 

「私は反対する。前も言ったけど信頼できる大人を見つけて相談をするべき」

 

 ――そーの必要はありませんヨ。

 

「!?」

 

 天井から声がする。次の瞬間に天井の一部をつき破って人が落ちてきた。彼女は食卓の上に立った。あたしたちは茫然としてみている。

 

 フェリックスの制服。それにくすんだ金髪のくせ毛の女の子はあたしを見て「きしし」と笑う。その腰には大きなダガーを吊っている。

 

「きしし。美少女Sランク冒険者キリカちゃん参上!」

 

 指でピースを作って目元に寄せるポーズ。き、キリカ? いや、チカサナ。それを見てラナが言った。

 

「先生……? いや、まさか」

 

 キリカとラナが視線を合わせる。ラナはそれで黙った。あたしには、ラナが何か言葉を飲み込んだのがわかった。

 

「チカサナ先生!?」

「おやおやミラさん。この姿の時はキリカちゃんって言ってください。せっかく変装をしているのにだーいなしじゃないですか。よっと」

 

 ち、チカサナ、いやキリカは食卓から降りて。あたしの置いていたSランクの依頼書のカードを一枚とった。

 

「いやいや、皆さんの多数決の結論も出たようなので出てきましたガ。きしし。まあ話はさっさと進めた方がいいですからネ。ね、マオさん」

「えっ、いや……」

「まあ、ラナさんの言うことも一理ありますが多数決は素晴らしいことです。それに美少女とはいえ信頼できる大人として先生のチカサナを推薦しますね! さてさて、このSランクの依頼書ですが。皆さんギルドとフェリックスのルールがありますね。それぞれランク以上の依頼は受けられないということと現役の冒険者のパーティに生徒は加わるということでス」

 

 キリカはの手元でばちりと魔力が走る。そしてSランクのカードの一枚から黒い外装が取れていく。

 

「つまりSランクにはSランク冒険者が必要ということです。そ、こ、でこの美少女冒険者の出番ってことなんですねー。いやー人気者はつらい。さて、ということで皆さん。まず最初のSランク依頼は『遺跡調査』です」

 

 キリカはカードを前に出す。

 

「場所は星屑の丘。すべての始まりの場所ですね。きしし」

 

☆☆

 

 キリカは嵐のように去っていった。

 

 みんなあっけにとられたままだった。要するにSランクの依頼について一つ目を彼女と一緒に行くことなるってこと。期限は少し先だから、授業が落ち着いてからでいい。それにしても星屑の丘……どこなんだろうそれ。

 

 ていうか天井を修理しないと……。あたしはラナに話しかけようとして、彼女は先に立ち上がった。疲れた顔をしている。

 

「少し夜風にあたってくるわ」

「う、うん」

 

 ラナが外に出ていく。あたしはしばらくしてミラ達に言った。

 

「あ、あたしも少し散歩してくる。みんなは先に休んだりお風呂入ってていいよ」

 

 外に出る。ふう。

 

 少し早足になる。

 

 ラナを探す。どこにいるのか走って探す。

 

 彼女は王都の水路が見える場所に立っていた。そこにあたしは抱き着く。

 

「うわっ!? なに? ま、マオ?」

「…………」

「変態かと思ったわ。暑苦しいんだけど」

「……」

「何?」

「わかったよね……キリカのこと」

「……………あいつ。見張ってたのね」

 

 ラナを離す。彼女は振り返らない。

 

「ずっとあそこにいたのか、全員がそろったから来たのかわからないわ。ただ、私たちが最終的にあのギルドマスターを告発する方に結論をつけていたら、あいつ」

 

 ラナの肩が震えていた。あたしは言った。

 

「…………あたしはそれでもあの話を受けようと思う。知りたいって思うのは本当だよ。ラナがちゃんと反対をしてくれたのに。ごめん」

「…………あいつらに比べて私は性格が悪いからね」

「それさ、前からラナは自分で自分のこと性格が悪いっていうことがあるけど、あたしはそうは思わないよ。だっていつもちゃんと考えてくれて――」

「わかってない!」

「!」

 

 ラナは振りかえった。悲痛そうな表情をしている。なんだからその顔を見たら悲しくなる。

 

「教えてあげる。なんでエトワールズ全員揃うまで待てって言ったのか」

「え?」

「あのイオスってやつの話を聞いた後から、あんたが受けることになりそうだって思ってたわ。だから否定をする気だった。でも、私ひとりで否定をしても角が立つからあいつらも巻き込んでやめさせようと思っただけよ。別にあんた話を聞くためにそれをしたわけじゃないわ」

「……そうだったんだ」

「そうよ。私はこういう人間なのよ。……お金のことだってそう。下手に誰かにお金の話をして、エトワールズの誰かがそれに汚いところがあったらってあんたらのことを疑ったから何も言わなかっただけよ。……それなのに何にも疑わずに私を……。ああ、頭が痛い」

 

 ラナは頭を抱えていた。

 

「私は疑い深いのよ……。あんたらがお人よしなの知ってても、私がいい人みたいに勘違いして」

「ラナ」

「…………今、何も聞きたくないわ」

「じゃあ勝手に言うね! あたしはそれでもラナは性格が悪いなんて思ってないよ」

「…………」

「みんなのこと一番思ってくれているのがきっとラナなんだよ」

「……うるさい、うるさい。うるさい! あんたみたいなお人よしに何が分かるのよ。疑った後に全然そんなことなくて、全員疑って、それで……そんなことぜんぜん起こらなくて。ただただ自分だけが相手の悪いところを探しているって見せつけられるのが……惨めになることがあるのよ……」

 

 あたしはラナの目をまっすぐ見た。それから言った。

 

「ラナはあたしの悪いところどこだと思う?」

「は?」

「いいからさ」

「……あんたは、いつも向こう見ずで、それに自分よりも他人だけを優先したりするところがあったり、お金に無頓着で、あと洗濯物のたたみかたが下手……」

 

 せ、せんたくもの、そっかそれは治さないとね。

 

「ラナはあたしの悪いところが分かっているから、先にいろんなことを言ってくれるんだよね。……悪いところを探して、悪いことを想像して、そうならないように怒ってくれるし反対してくれる」

「……っ!」

「ラナがいてくれないときっとあたしは困る、というか今頃野宿してるし。あたしはひとりじゃなにもできないし」

「…………」

「あたしは、ラナが嫌いかもしれない性格を含めて好きかな」

「…………あんたは、たまには表面も見なさいよ」

「そ、そんなこと初めていわれたよ。普通本質を見ろ! とかじゃないの?」

「……あんたは栗の中身がおいしいそうだから棘に自分から刺さるバカよ」

「何そのたとえ!?」

 

 その時くすくすと声が聞こえてきた。見れば物陰にミラ達3人の姿がちらっと見える。それを見てラナもはあとため息をついた。おーきな溜息。

 

「はあー。今日は疲れたからお風呂入って寝ましょう。ほらマオ」

「うん?」

「帰るわよ」

「うん」

 

 あたしはラナは一緒に帰る。

 

 

 

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