魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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ソフィアの話

 

 

 ソフィアと一緒にSランクの依頼をする。チカサナ先生が何を考えているのか知らないけど、必要って言ったらたぶん必要なんだろうな。

 

 あたしは学園を一人で歩きながらそんなことを考えていた。モニカのところに戻る前に考え事をしたかったから遠回りしている。3日後までに信頼できるメンバーを集めてって言われていたけど、エトワールズのみんなに一緒に来てもらうことなる……いやまてよ。

 

 危ないことになるならあたしだけで…………んん、でもそれは違う気がする。どうしようかな。

 

 そんなことを思っていると中庭についた。生徒たちが談笑しているところを通り過ぎるとベンチにぼーっと座っている人がいた。金髪を一つにまとめた細身の女性。近くには弓袋を置いている。彼女はぼーっと空を見ながらパンをむしゃむしゃ食べている。

 

 エルだ。最初はソフィアのたぶん命令であたしを襲ってきた女の子。この前の模擬戦ではいろんな意味で驚かされた。弓の腕はすごいって印象があるけど、それ以上に今は見えてないけどあの制服の下……胸元に魔石が埋め込まれていることが気になっている。

 

 あたしは正直そこで助かったと思った。エルに声をかける。

 

「こんにちは」

「……?」

 

 エルはぐいーって首を回してこっちを見る。

 

「ああ、こんにちは」

「隣いい?」

「いいですよ」

 

 エルの横に座る。聞きたいこともあるしね。ただエルはパンをかじるのをやめない。つ、つかみどころがないなぁ。

 

「いい天気だね」

「ええ」

「あのさ、聞きたいことがあるんだけどいいかな」

「答えられることなら別に」

 

 エルの言葉は短い。

 

「あのさ、さっきソフィアと喧嘩みたいになったんだけど……教えてほしいことがある。なんかソフィアってあたしのこと嫌いじゃん? なんで嫌われているのかなって」

「本人に聞けばいいじゃないですか」

「聞いても教えてくれそうにないんだよ」

「そうですか」

「今度一緒に依頼をすることになったんだよ。その時あたしの友達にも攻撃的になってもらっても困るし……もしあたしが何か直せばソフィアの気持ちも収まるならって思ったんだけど」

 

 エルはあたしを横目で見る。

 

「あれと一緒に依頼を?」

「あれって、ひどい言い方……」

「前も言いましたがソフィアは私の友達でも何でもありませんからね。私はただの道具です」

「道具って言い方もどうかと思うよ」

「……ふむ」

 

 エルは指をなめている。パンを食べ終わったあと。は、はしたないよ。そう言った。

 

「何でですか? 栄養は一部も残さずに摂取するべきです」

「そ、それでもほら。女の子だし」

「女? 男なら舐めていいんですか?」

「いや、別にそ、そんなことないけど」

「不思議なことを言う人ですね」

「そ、そうかなぁ」

 

 あたし不思議なこと言ったかな。そんなこと絶対……ぜぇーったいないと思うけど。エルはハンカチで手を拭いた後にあたしに言った。あ、ハンカチで拭くんだ。

 

「私は道具というのは別に良いとも悪いとも思っていません。貴方は知っているでしょう。私の胸には魔石が埋め込まれています。これがある限り私はソフィアには逆らえません」

「……その魔石って何かの拘束魔法なの?」

「拘束魔法というよりはただの生命維持のためのものですね。私は子供のころに死にかけて心臓が止まったことがありますから。この魔石が私の心臓を動かしているだけです。そして定期的に魔石の刻印に魔力を流してもらわないといけない」

「……そんな魔法があるんだ」

 

 あたしは何とも言えない気持ちになった。その魔法でエルを拘束しているのだろうけど、でもじゃあ――。

 

「ある意味ソフィアがエルの命の恩人ってこと?」

「いえ、全然。私はあれに殺されましたから」

「!?」

「話過ぎました」

 

 エルが立ち上がってどこかに行こうとする。あたしは「ちょ、ちょっとまって」って彼女の上着にしがみつく。

 

「そ、それってどういうこと……あ、言いたくないなら……やっぱりいいんだけど。というかあたしはあたしが嫌われている理由が知りたいんだよ。そ、それだけ答えてほしいんだけど」

「あれは誰でも嫌いですから」

「そ、そんな答え」

「世の中のすべてを恨んでいるんじゃないですか。ああ、やっぱり話過ぎた。もう行きますね」

 

 エルはそれだけ言ってすたすたと歩いて行ってしまった。

 

「世の中全て恨んでいる?」

 

 あたしはその言葉を口に出してみた。

 

☆☆

 

「3日後か」

 

 学園の授業でニーナと合流した。授業が終わった帰り道であたしはニーナに対して3日後のことを話をしたら彼女はそれだけ言って「わかった」って言ってくれる。……結構ニーナって頼りになる気がする。最近。

 

「それはいいがお前またソフィアとぶつかったのか?」

「あたしは好きでぶつかっているわけじゃないよ」

「……ソフィアは私も模擬戦の時に戦ったが、おそらく本気で戦ったら相手にならなかっただろう。挑発でラナが気を引いている間に何とかしたが……」

「ニーナってすごく冷静に自分のことを見ているよね」

「別にそんなことはないが……」

 

 驕りだとか油断だとかは強い人は普通にするからね。そういうのは戦場ではいい『餌』になる。ニーナは逆にその手のことがない。前からそうだけど事実と現実的な話だけをしている。きっともっと強くなる。

 

「なんだその目は。むかつくからやめろ」

 

 ひどい、期待をしているのにさ!

 

「ところでマオ様は今回はエトワールズとその、ソフィア様だけで行くのですか?」

 

 後ろからモニカが聞いてくる。ニーナと合流する前から一緒にいるけど今日はあまり話ができてない。ソフィアとのいざこざもあったし……。

 

「ソフィアのさ、『様』はいらないと思うよ」

「それは、いいじゃないですか。マオ様とは少し違いますし」

「?」

 

 あたしにも『様』いらないんだけど。それにどっちも同じ言い方なのに。

 

「あとはチカサナ先生が来るだろうけど、ほかに誰も連れていくべきじゃないと思うからさ」

「そうですか。もしかしたらまたフェリシアも連れていくかと」

「フェリシア……連れて行ってもいいけど」

「いえいえ。いいです」

 

 モニカははっきり言うときは言う。はっきりしすぎている時もあるけど。

 

「フェリシアならウルバン先生に連れられて山に連行されてたぞ」

「へー」

 

 かわいそう。でもそれ以外何も言えない。まあ、ウルバン先生なら大丈夫でしょ。

 

「あれ? なんでニーナがそんなこと知ってるのさ」

「ん、まあ、いいだろ」

 

 ニーナは少し目を背けた。なんだろ。

 

 途中晩御飯の買い物をしてから家に帰る。最近は近くのモニカを連れて行っても何も言われなくなった。……たまに近所の人たちに挨拶をするとモニカにもしてくれる。

 

 魔族であることよりも先に見てくれる人がいるってことはあたしもうれしい。

 

 ……だんだんと変わっていると思いたいけど、世界全体からすればちっぽけな変化なんだろうな。

 

「みんなそうならいいんだけどな」

 

 ぽつりとあたしが言うのをニーナとモニカが不思議そうに聞いてくる。

 

「何がですか? マオ様」

「……なんでもないよ」

 

 そんな感じで家に着いた。あたしは「ただいま。ラナ」って言いながらドアを開く。ドアを開いた瞬間にそれは目に飛び込んできた。

 

 地べたに座ってうなだれている黄緑の髪をした少女がいた。その横にはツインテールで青いローブ着た少女も座らされていた。メロディエとアルマだ。

 

 その前にラナが両手を組んで怒っている。近くには割れた皿がある。

 

 ナニコレ。

 

 あの騒動の後にどこに行ったのかわからなかったけどメロディエとアルマがなんで怒られているの?

 

 

 

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