魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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魔族の少女①

 ギルド本部。

 

 

 

 ラナに連れられてきたそこは白い大きな建物が建つ場所だった。その広い敷地をあたしとラナは歩いていく。芝生の中に石畳の道が通っている。

 

 

 

 あたしが今まで何件か行ったことのあるギルドとは全然違う。

 

 

 

「このギルド本部は各地の支部から集まってきた情報を集約したり、大きな依頼に対処したりするためにあるのよ。あんたみたいにFランクの依頼なんかで来る意味はないから」

 

 

 

 ラナはそう教えてくれた。あ、そうだ、あの緑の頭のイオスもどこかにいるかもしれない。

 

 そう思ってきょろきょろしていると、ラナに「田舎者」って言われた。ち、違うし。人を探してただけだってば。

 

 

 ここに来た理由は昨日の水路探索の依頼をFランクの評価から上げてもらうためだ。確かにあれだけ命をかけた戦いをしたんだから正当な理由とは思うけどでもなぁ、ポーラ先生との勝負もあるから釈然とはしない。

 

 でも、反対するのも変な気がする。ロイを退けたのはあたしだけの力じゃないし。

 

「そういえば昨日のこと結構話題になっているみたいね」

「うん、そうだね」

 

 ロイとの戦いで街の中心に大きな穴が開いた。それも魔族がやったってことでこのギルド本部に来る前のいろんなところでその話をしている人がいた。

 

「うーん」

 

 悩ましいな。昨日の事件であたしたちがロイに出会ったのは単なる偶然なんだけどさ、そりゃあ、あれだけ暴れたらみんな反応するよね。まあ、でもカオス・スライムの危険性を考えたら先に討伐できてよかったと思う。

 

 

 

「それにしても魔族はろくなことをしないわね。あいつら」

「そんなことはないよ。そんな風に一概に言えるわけじゃない」

「え? あ、ああ、そ、そうね。……なんであんた魔族なんてかばうの? へんなの」

 

 

 ラナはそれだけで話題を変えてくれた。同じような話題で港町で一度ニーナとケンカしたこともあるから気を付けないといけない。

 

 その時ふと思った。いや、違う。ずっと思ってたけど言葉にすることを避けてきたんだ。

 

 あたしは足を止める。ラナに聞かれたくない気がしたんだ。

 

 

「……今の魔族ってどうなっているのかな」

 

 あたしの生きた時代は大きな国があった。……3勇者に負け続けて最終的にはほとんどの領土を失ったけど、あれから数百年経った今はどうなっているんだろう。

 

 正直確認するのは怖い。

 

 

「……あんた、早く来なさいよ。……? なに、あんた寒いの?」

「え? あ」

 

 気が付いたらあたしは自分の体を抱くようにしていた。

 

「い、いや寒くなんてないよ。へーきへーき」

「それならいいけど」

 

 今は考えても仕方ないや。……ラナに聞けば少しわかるかもしれないけど、言葉にすることはもう少し待ってほしい。……今度ミラに聞いてみようかな。

 

「そういえばさ、ラナ。あのおっきな塔は何なのかな」

 

 ギルド本部の中央に立つ大きな尖塔。白いそれの上部に目を凝らすと魔法陣が展開しているように見える。

 

「ああ、あれは…………あれはー」

「あれは?」

「知らない」

「え、えー……」

「何よその反応は! 優秀な私だって何でも知っているわけじゃないわよ! そんなに気になるなら行ってみるわよ。ほら」

 

 

 また、強引にあたしはラナに引っ張られていく。ああー。

 

 

 

 尖塔の前は円形の広場になっていた。噴水が水を噴き上げている。見上げると高い。あたしとラナは純粋に「おおきいな」と驚いた。上のほうにうっすらと展開した魔法陣はどういう意味があるんだろうか。

 

 

 

 

 

 誰かに聞いてみたいけど、広場には誰もいない。水の音だけが聞こえてくる。

 

 

 

 あ、違うな、一人だけいる。明るくて赤い髪を後ろで結んだ女の子。あたし達と同じ格好をしている。広場の中心で空を見上げている。フェリックスの制服は見分けるのは簡単だなぁ。

 

 

 

 その女の子はあたしたちに背を向けている。後ろからはどんな表情をしているかわからない。

 

 

 

 

 

「あ」

 

 

 

 気が付いた。

 

 

 

 耳が長い。

 

 

 

「ね、ねえ!」

 

 

 

 そう思った時あたしは駆け出して、叫ぶように言った。ラナが静止してくれているような気がしたけど、耳に入らなかった。

 

 

 

「……」

 

 

 

 少女が振り向いた。深い赤の瞳があたしを見る。ウェーブのかかった髪を手で押さえている。あたしは固まってしまった。魔族だ。間違いない。

 

 

 

「……何か?」

 

 

 

 やわらかい声だった。優しそうだって最初に思った。

 

 

 

「い、いや、なにをしているのかなって」

「何を……そうですね。私はここで尖塔を眺めておりました。父を待っておりましたので。ああ、大変申し訳ありません。申し遅れてしまいました。私の名はモニカと申します。……失礼ですが貴女様は?」

「あ、あたしはマオ」

「マオ様……以後よろしくお願いいたします。それで私に何か御用でしょうか?」

 

 

 

 丁寧な態度だった。悪意も何も感じられるところはない。でもどことなく他人行儀……初めて会ったんだから当たり前かもしれないけどさ。

 

 

 

「……気になったから声をかけてみただけなんだ。突然ごめん」

「そう、ですか。いえ、謝られることはございません。マオ様も私と同じく学園にいらっしゃるんですね」

「あ、いや、まだ入学前だからさ。正式には入ってないよ」

「これは失礼いたしました。ご入学の後はどうぞご鞭撻の程よろしくお願いいたします……」

「あ、うん」

 

 

 なんかうまく話せない。何か話題が欲しいと思う。

 

 

 

「あ、あのさ、この尖塔はなんで立っているのかな」

「……この白い塔は各地のギルドからの情報を特殊な魔法で暗号に変換して集約するためと聞いております。まあ……これだけの巨大ものですからほかのことにも使えるとは思いますが」

「へー」

 

 

 あたしはモニカと並んで見上げる。モニカはそれをみて少し驚いたように離れた。

 

 

 

 

 

「あの」

「え? なに」

「いえ。マオ様は私が魔族だとお分かりになられていると思うのですが……」

「それがどうしたのさ」

「……え?」

「え?」

 

 

 モニカは目を丸くしてあたしを見た。

 

 

 

「なんでもございません。ただ、少し驚いてしまいました。……そういえば先ほどご一緒におられたのはラナ・スティリア様でございますね」

「ラナを知っているの?」

「尊敬すべき先輩としてお慕いしております」

 

 

 なんか、すごい『決められた答え』みたいに思う。であった頃のニーナっぽい……いや、本質的は少し違う気がするな。というかラナもあまり近づいてこないのはモニカが魔族だからかな。

 

 

 

 

「私はそろそろいきます。マオ様」

「マオでいいよ」

「いえ、そのような失礼はできません。それでは」

 

 

 

 モニカはあたしに深々と頭を下げて離れていった。

 

 そのあたしの後頭部にチョップが来た。

 

 

 

「いたっ!」

「あんたねー。なんでいきなり話しかけてんのよ」

 

 

 

 頭をさすりながら後ろを向くとラナがいる。

 

 

 

「話しかけるくらいいいじゃん」

「はああ、あんたさ……。あたしと歳が違うってことは学園に入った時には別の奴と一緒になるのよ? 友達は選ばないといじめられるわよ。みたらわかるでしょ。あいつは魔族なの」

 

 

「だからなにさ」

「だからって……あー。まあいいわ。あんたって変なところ鈍感よね。あ」

 

 

 

 あ、といってラナが固まった。なにを見ているんだろう。え? なんかこっちに走ってくる男の人がいる。すごい手を振っているしにこやかだ。

 

 

 

 金髪にコート、あれは……Sランク冒険者のウォルグだ。

 

 

「おーい! お前ら―! 関係者は集まるんだぞー!!!」

 

 

 関係者って何さ。ウォルグはすさまじい速さで近づいてきて、ラナが何か言う前にあたしたちの腰を持って担いだ。

 

 

「え? ちょっと、なによこれ!?」

 

 

 ラナの悲鳴に近い声。え? なんであたしも担がれてんの? どういうこと??

 

 

「お前らなぁ!! 関係者はアホのアリーが集めたって言ってただろう。俺が窓からお前らを見つけなかったらどうするつもりだったんだ。ほら行くぞ!!!!!」

 

 

 やかましいぃ。声がでかいし言っていることがさっぱり理解できない。そもそもアリーって誰さ! あ、あー。すごい速さで走っていく。ぐ、ぐえぇ、おなかが痛い。

 

 

 

は、はなせー!!

 

 

 

 

 

 

 ウォルグがあたしとラナは両手にそれぞれ抱えたまま走る。

 

 正直なんてこんなことになっているのか全然意味が分からない。

 

 

 速い。ていうか怖いよ。あと、痛い! ラナの悲鳴も聞こえる。

 

 

 すごいスピードで敷地を駆け抜けていく。あ、あれ? なんか壁に向かってく……。あれはギルドの建物で。必死に見上げてみると。4階くらいの高さがある。

 

 

 

「あ、あのさ!! か、壁にぶつかるんだけど!!」

「おう!!!!!!!」

「いや、おうじゃなくて!!!!」

 

 

 

 ウォルグはあたしの話なんて聞いてない。

 

 

 

「ちょ、ちょっと。なにしてんの!?」

 

 

 

 ラナの声がする。ウォルグがさらにスピードを上げた。あたしの顔を風がたたくように吹き付ける。ああー。

 

 

 

 ウォルグが飛んだ! 壁に足をかけた。ぐえぇっ。おなか痛い。

 

 

 

 そんなあたしたちを全く気にかけずそのまま、ウォルグがさらに壁を蹴って飛び上がった。じ、地面が離れていく。空を飛んでいるみたいな浮遊感があたしたちを包む。

 

 

 

「おっしゃー!!!」

 

 

 

 ウォルグが叫ぶ。すごいうるさい。不意に魔力の流れを感じる。見るとウォルグの足元に魔力が収束していく。小さな魔法陣が展開して、こいつはそれを「蹴った」。反動をつけて今度は「建物へ」向かっていく。

 

 

 

「窓、窓にぶつかる!!!!」

「あ、あんたふざけないでよ!?」

 

 

 

 あたしとラナの叫ぶ声が響く。

 

 

 

「いくぜぇーーーーー!!」

 

 

 

 全然話聞いてないね!! こいつ!!

 

 

 

 ウォルグは窓を蹴り破って、中に入った。粉々に砕けたガラスが舞い、衝撃にあたしはうめき声をあげた。

 

 

 

 う、あ、ああ。げほげほ。なんだろここ。あたしはゆっくりと目をあける。さっきまで外にいたからかなんとなく視界がぼやける。ウォルグは部屋の中の長い机の上に立っているみたいだった。

 

 

 

 周りを見ると数人の影が見える。あたしは目をごしごしとこすってみる。そこでやっとわかった。あたしの目の前に心底驚いた顔をして、いや心配そうな顔をして見上げている少女がいる。

 

 

 

 銀髪に白い肌。それにフェリックスの制服に腰に聖剣を佩いた彼女、ミラスティアだ。あたしは手を挙げた。

 

 

 

「あ、へんなところで会うね」

「ま、マオ、ど、どうしてこんなことに?」

「あたしが聞きたいよ……! ぐえっ」

 

 

 

 いきなり離された。あたしはテーブルに倒れてしまう。ほ、ほんとめちゃくちゃだよ。ウォルグはさっさとテーブルから降りてしまう。

 

 

 

「あー重かったぜ」

 

 

 

 めちゃくちゃ失礼なこと言っているし。

 

 

 

「い、いたた。な、なんなのよ」

「ラナ……大丈夫?」

「あんたねぇ。これが大丈夫と思うの?」

「ふ、2人とも大丈夫?」

 

 

 

 あたしとラナにミラが駆け寄ってくる。何でここにいるんだろう、っていうのはむしろミラがあたしたちに聞きたいよね。

 

 

 

「あ、あんた。……ふん。手なんて借りないし」

 

 

 

 ラナはミラの手をはねのけてさっさと降りた。ミラが少し目を泳がせてから、あたしを降ろしてくれる。

 

 

 

「ありがと」

「うん」

 

 

 

 うーん。ラナからすればミラのことはあんまり好きじゃないってことを前から言ってたからね。そろそろ誤解、というか偏見みたいなのを取り除かないとダメな気がする。

 

 

 

 あ、それはそうとここはどこだろう。あたりを見回すとミラのほかに数人いた。そのうちの一人は黒い髪の女の人だった。綺麗な人だ。整った顔立ちは女の子のあたしもすこしうっと思うくらい。

 

 

 

 でも、苦虫をかみつぶしたような顔をしている。ま、まあ、こんな風に窓から飛び込まれたら怒るよね。

 

 

 

「あ、あの。その。なんかごめんなさい」

 

「…………いえ。あなたが誰かはわかりませんが。どうせそこの常識のない男が悪いことはわかっています。それよりもけがはないですか?」

 

 

 

 黒髪の女性は優しくいってくれた。

 

 

 

「私の名はアリー。そこの男と同じSランク冒険者、その筆頭です」

「! あ、あたしはマオ」

「マオさんですか。よろしく……ああ、今回のカオス・スライムの討伐に参加した冒険者見習いですね。たしかF……いえ、失礼」

 

 

 

 FFランクと言いかけてやめたアリー。たぶん優しい人なんだろうな。さっきウォルグが言ってた人だ。

 

 彼女はくるりと振り返った。そこではウォルグが近くにあった椅子に座って足を組んでいる。

 

 

 

「ウォルグさん? いいことを教えてあげましょう。あそこに見えるのはドア、と申しまして人間は普通あそこから入ってくるものですよ? ご存じでしたか?」

「はあ? 当たり前だろ? 馬鹿かお前?」

「…………獣には人間の言葉が通じないようですね」

「そこのガキども2人は今回の魔族の野郎が暴れたところにいたんだから関係者だろうが、連れてきてやったんだから感謝しろ」

「…………彼女たちのことは報告書で見ていました。そのうえでミラスティアさんにあの事件の事情を聴こうとしていたのですよ。会議中に叫んだかと思うといきなり窓から出て行って、窓から戻ってきたあなたに感謝をするいわれはないですね」

 

 ウォルグはきょとんとした顔で言った。

 

「恩知らずな奴だなぁ」

 

 

 

 アリーの腰に白い柄の剣がある。彼女は一瞬それをつかんで、1秒くらいで離した。あたしとミラはちょっとびくっとした。

 

 

 

「まあ、あれは放っておきましょう。あなた方もせっかく来たのですから、お話を聞きましょうか」

 

 

 

 優しくいってくれるアリーの後ろでウォルグは椅子に座ったまま寝始めた。両手を組んで、足を広げて……すごいなぁ、こいつ。

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 アリーのこめかみがぴくぴくしてる。そんな彼女にミラが助け舟を出した。

 

 

 

「あ、あの。と、とりあえず場所を変えましょう。窓も割れてしまって危ないですから」

「ミラスティアさん……そうですね。あの野獣はここに置いていきましょう」

 

 

 

 ミラの提案にアリーは手をたたいた。

 

 

 

「それではマオさん、ミラスティアさん。それに赤い髪のあなたも」

「は、はひぃ。わかりました」

 

 

 

 ラナがすごいきょどってる。

 

 

 

「あなたのお名前は何でしょうか?」

「ら、ラナ・しゅティリアです」

「ラナさんですね。シュティリアとはいい響きの家名ですね」

 

 

 

 スティリア。じゃなかったっけ。

 

 

 

「え、えへへ」

 

 

 

 あ、だめだ。ラナが壊れてる。そっかアリーはさっきSランク筆頭って言ってたから有名人なのかもしれない。

 

 

 

「それではみなさんもすみませんが移動をしましょう、準備もありますので一度ロビーでお待ちください。すぐに部屋をとってお呼びします。」

 

 

 

 あたしたち以外にも何人かいた。一人は細い目をした青い髪の男。それに……あたしに小さく手を振ってくるふんわりした桃色の髪の女の人……げっ、ポーラ先生だ。反応に困る。

 

 

 

 それに奥にいるのは耳の長い、ワインのような深い紅に少しくせのある髪をした男性だった。

 

 

 

 あたしはどきりとする。どうみても魔族だ。丸い眼鏡をつけて柔和な表情をあたしに向けてくる。ただ、どことなく冷たい。長身で黒いコート。胸元に小さな宝石を付けたシャツ。魔族の正装……見るのは久しぶりだけど。昔から変わってない。

 

 

 

 その男はあたしに軽く会釈をした。どことなくモニカに似ている気がする。あたしが何か話しかける前にポーラ先生たちと一緒に外へ出ていった。

 

 

 

「……うーん」

「どうしたの? マオ」

「いや……なんでもない」

 

 

 

 ミラにそう言った。ていうか、それしか言いようがない。なんであの魔族の男性がここにいるかもわかんないし。

 

 

 

「んだ? 移動すんのか? めんどくせぇことするなぁ。あーあ」

 

 

 

 そんなあたしの横をウォルグが歩いていく。体を伸ばして外に出ようとするのをアリーが呼び止めた。

 

 

 

「あなたはここにいてゆっくりお昼寝でもしていたらどうですか? ウォルグ・ガルガンティア」

「あーねむ」

 

 

 

 アリーに反応せずにウォルグは出ていった。アリーは笑顔のまま固まっている。

 

 

 

「さ、3人もロビーで待っていてくださいね。ここの片付けの手配と、新しい部屋の用意をしてきますから」

 

 

 

 それだけ言って出ていく。最後に「剣の錆に……」とか聞こえた気がするけど、聞こえなかったことにしよう。

 

 

 

「じゃあ、とりあえず出ようか。ラナ」

 

 

 

 と呼んだラナがあたしを怪訝そうに見ている。

 

 

 

「そいつ、知り合いなの?」

「え?」

 

 

 

 あ、もしかしてミラのことかな。

 

 あたしは一度ミラを見る。困ったような顔をしている。ミラもそろそろ正体を言えばいいのに、なんか少しあたしの後ろに隠れている気がする。まあ、いいや。こほん。

 

 

 

「うん。友達」

 

「へー。ふーん、そうなんだ。ちょっと来なさい」

 

 

 

 ぐいっとラナがあたしの首に腕を回して引き寄せてくる。小さな声で耳元ではなしてくる。少しくすぐったいんだけど。

 

 

 

「あいつは剣の勇者の末裔よ? あんたなんかとかは格が違うんだからね。めんどくさいことにならないうちに付き合うのやめておきなさい」

「…………ラナ」

「何よ」

「ミ……ミラスティアとちゃんと話したことある?」

 

 

 

 ミラって言ったら、まだ駄目だよね?

 

 

 

「……ないけど。いい? あいつの先祖が学校を作ったんだから露骨に贔屓されているんだからね。嫌な目に合う前に……」

「そんなの関係ないじゃん」

「関係あるわよ。現にそういう目にあったやつは」

「だからそんなのミラスティアに関係ないじゃん!!」

 

 

 

 あ、叫んでからしまったと思った。思ったよりも大きな声出しちゃった。ラナがあたしを離す。ラナの顔は少し赤くて、むっとあたしを見ている。

 

 

 

「せっかく……せっかくあんたのためを思って言ってやってんのに……そいつとFFランクの奴が付き合ってもいいことなんて絶対ないから! 絶対、そいつの父親が出てくるから!」

 

 

 

 父親? あたしが反応するよりも前にラナが踵を返してドアをばぁんと閉めて出ていった。

 

 

 

「ニーナの時の同じだなぁ」

 

 

 

 あたしはため息をつく。港町でもニーナと口論をして喧嘩しちゃったんだ。つくづく成長がないなぁ。少し落ち込むよ。

 

 

 

「マオ……」

 

 

 

 振り向くと、ミラが少しおびえたような目であたしを見ていた。なんか泣きそうな。そんな顔だった。

 

 

 

「大丈夫だってミラ。ラナがいいやつだってことはわかっているでしょ?」

「う、うん……でも、私のためにマオとラナが喧嘩して……それにお父さんのことも」

 

 

 

 ミラが剣の勇者の末裔としてじゃなくて、覆面をしてあたしを助けてくれた時にラナと仲良くできたんだ。じゃあ、大丈夫だよ。……それに剣の勇者の末裔とか、父親とかミラ本人のせいじゃないじゃん。

 

 

 

 それにさ。あたしは両手を腰につけて、下から見上げるようにミラににやりと笑いかける。

 

 

 

「へーきへーき。だってさ、あたしは魔王様なんだから、何があっても、負けやしない」

 

「……っ……ふふ」

 

 

 

 あ、やっと笑った。ミラはそっちのほうが絶対いいよ。

 

 

 

 

 

 

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