魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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エトワールズ

 作戦会議をするってラナ言ったけど、すぐに出ていった。

 

 あたしたちはベッドのある部屋でどうしようかって思う。この部屋もそんなに広くはない。ベッドと机とそれにいつもあたしが寝ているソファーがあるだけ。

 

 しばらくしてからラナが戻ってきた、ドアを肩で開けながら。手にはおぼんとそこに並んだコップ。湯気が立っていて。いいにおいがする。

 

「ホットミルクくらいしかないけど。ほらマオ配って」

 

 あ、うん。作ってきてくれたんだ。コップの中にはあったかいミルク。ミラ、ニーナ、モニカに渡す。あたしももらってちょっと飲む。うん。おいしい。

 

「それじゃあ、改めて作戦会議をするわよ」

 

 ベッドの上に座ってラナが言う。手にはお気に入りのマグカップ。

 

 ミルクを配り終わったあたしとミラはソファーに座っているけど、なぜかモニカは立っている。だからあたしはその肩をぐっと押して無理やりあたしの横に座らせた。そうしたはいいけど3人は結構狭い。

 

「ごめんニーナは入らないや……」

「……いや、意味の分からないことで謝られても困るんだが」

 

 ニーナはそういって椅子を引き寄せて座った。

 

「こほん」

 

 わざとらしい咳払いをラナがした。

 

「あんたたちもわかっていると思うけど、そこの馬鹿。……マオがフェリックスに入学するためには、3日で100件のFランクの依頼をしないといけないわ」

 

 ……あたしの横でミラが目を閉じた。

 

「いや。待ってほしい。私は今初めて聞いた」

 

 そっかニーナはほんと成り行きでここに来ただけだったね。あたしは手短にポーラとのやり取りを説明した。

 

「…………なるほどな。それで100件……か」

 

 ニーナは少し考えるような仕草をした。そういえば、ニーナもあたしと同じく試験中だよね。

 

「今日はさ結構偶然ニーナも来てくれたけど。ニーナも試験中だから、無理して協力してほしいなんていわないよ」

「私たちの試験期間は数日延びた。むしろお前だけ期間がそのままなほうがおかしいだろう……それに、ちゃんと協力くらいはしてやる。私とミラについてはポーラ先生から許可が出たんだろう?」

「……ニナレイア……ありがと」

「……お、おまえ。こ、こんな時だけ名前で呼ぶな!」

 

 少し顔を赤くしてニーナが横を向く。

 

「とりあえず話はまとまったかしら?」

 

 ラナ……うん。

 

「単純に言って一日33件は押さえていかないといけないわ。あ、最後にはプラス1件ね」

 

 そうだね。

 

「5人いればできそうな気がするけど。それでも多い。そもそもFランク依頼って何があるか全然わからないし。草むしりとかお買い物とか、掃除とか子守りとか……ああー。はした金でなんでこんなことをやってたんだろ!」

 

 ラナが一人でうなっている。でも、この一週間以上手伝ってくれたのはラナだ。感謝してるよ。

 

「あ、あの。よろしいでしょうか? ラナ様」

「いいわよモニカ」

「私も協力することには全然かまいません。ですが、街での一件で見られた通り、もしかしたらむしろ私の存在は邪魔になってしまうのではないでしょうか?」

「はい、却下。次」

「え、ええ?」

 

 ラナが手を振った。それであたしに目を向ける。

 

「でしょ? マオ」

 

 ! あたしはにやっと笑うと。ラナも歯を見せて笑った。

 

「うん。そう、却下却下」

 

 ミラも頷いている。モニカだけ困惑しているけど、いいんだよ。その意見は却下!

 

「いいでしょうか?」

 

 ミラが手を挙げた。ラナが指さす。

 

「何?」

「まず考えるべきことがあると思います」

「へえ、それは何?」

「ええ、100件の依頼を5人で一緒に行うよりもパーティーとしてそれぞれに振り分けたほうがいいと思います。さすがに全員ですべての依頼にあたっていたら終わりません」

「そうね。ミラスティアの言う通りだわ」

 

 え?

 

「で、でもさラナ。これはあくまであたしの試験だから。全部あたしがかかわってないといけないと思うんだ!」

「バーカ!! 無理に決まってんでしょ!! いい? パーティーを組むってことはそれぞれが足りない分を補うの、それは能力とかだけじゃなくても時間とか、効率とかも全部」

「そ、そんなものかな」

「そうよ。でもそうね、ポーラ先生の陰険な考えなら、少なくともマオ。あんたはそれぞれの依頼を受けるときはその場にいて、私たちを振り分けていくことをするべきと思う。あんた自身が手伝うかどうかも含めてね」

 

 振り分ける?

 

「今回のことは言ってしまえばあんたがリーダーみたいなもんだから。依頼によってあんた含めて5人を振り分けて仕事をする。振り分けたらあんたは別の場所に行ってとにかく依頼を受けるってことをする」

「で、でもそれじゃあ、あたしが楽をしてるみたいじゃん!」

「だから! あんたが全部やってたら! おわんないの!」

 

 う、うう。そ、そんなのいいのかな。

 

「むしろ適材適所で振り分けるのは難しいと思うけどな」

 

 ぼそっとニーナが言った。そ、そうかもしれないけど。

 

「大丈夫だよマオ。マオが考えるなら信頼できるから」

「ミラ…………釈然としないけどわかったよ」

「それに100件もあるんだから、マオは依頼の仕事をしながらみんなの指揮をするのは大変だと思うよ」

 

 指揮……んん。なんか偉そうでやだなぁ。

 

「それにラナさんもマオが信頼できるから、振り分けるのはマオって言ってくれて……きゃっ」

 

 ぼすんとミラの顔に枕が飛んできた! ラナ! ものを投げたらだめだよ。

 

「うっさいのよ。まあどちらにせよ、あと数日あるから作戦は練っていけばいいと思うけど。……今日は精神的には疲れたから眠たくなってきた。そろそろ寝ようかしら? 一応あんたらの寝床をどうやって作るかなんだけど……」

 

 ミラが枕を抱くように持って、ラナを見ている。

 

「何よ。なんか文句あるの?」

「い、いえ。文句はありませんけど……その……一つ決めておくことがあるような」

「はあ? 細かく決めても依頼すら受けてないからあとで変更するだけなんじゃないの?」

「い、いえ。そういうことではなくてですね」

 

 ミラがもじもじしている。なんだろ。決めておくこと? そんなのあったっけ。

 

「あの、ミラスティア様……決めておくべきこととは何でしょうか?」

 

 モニカが聞いてくれた。ミラはやっぱり恥ずかしそうだ。

 

「……パーティーの名前」

 

 …………。あ! い、一瞬惚けちゃった!! みんなも同じみたいだけど。

 

「ど、どうでもいいでしょ。そんなの」

「どうでもよくないですよ!」

 

 ラナに妙に熱が入った反論をするミラ。

 

「じゃ、じゃあさミラはどんな名前がいいと思うのさ?」

「……私が決めたらだめだと思うから。ニーナはどうも思う?」

「!! 私にいきなりふるな。そんなこと今の今まで考えてない」

 

 そりゃあそうだろうね。あたしはラナに言う。

 

「ラナはなんか案がある?」

「は? ラナ団とか?」

「だめだー」

 

 最高にダメだね。

 

「何よ! いきなり言うのが悪いんでしょ。じゃあ、モニカはどうなのよ」

「え、ええ。ええ? あ、えの、あの、ぇ」

 

 すごいきょどっているし。モニカは頭を抱えて。真剣に悩んでる。いや、そこまで真剣に悩まなくても。

 

 モニカは窓の外を見てる。両手を組んで考えてる。窓の外、今日は夜空が広がっている。

 

「エトワールズ……ではだめでしょうか」

 

 モニカがぼそっと言った。……ほ、星たちって、す、すごいこそばゆい名前。あたしが黙っているとモニカがまっすぐな目で見てきた。

 

「ど、どうでしょうか?」

「…………い、いいと思うよ!」

 

 言っちゃった! だって、モニカの目がまっすぐだったから。

 

「い、いいよね! ミラ、ニーナ」

「うん」

「……本気か? まあ、いいが」

 

 ミラはなんか頷いてくれた。……そういえばあたしの村でミラと一緒に星空を見たことを不意に思い出した。もしかしたら、ミラも同じことを考えてくれているかもしれない。

 

「ラナもいい?」

「ラナ団は?」

「その最高にダメな名前は却下」

「冗談よ、まあー、別にどこに出すなんてこともないし。いいんじゃないの? パーティー名なんて」

 

 とりあえずOKってことだよね。

 

「じゃあ、パーティー『エトワールズ』で行こう!」

 

 あたしが腕を突き上げると、

 

「おー」とミラが小さく手を挙げてくれて。

「大丈夫か?」なんてニーナが心配そうにして。

「本当によかったのでしょうか?」そんな風にモニカが言って。

「あーねむ」ってラナがあくびをした。

 

 ばっらばらだね! でもいいや、とりあえず今日は寝よう。あたしも疲れたからさ。

 

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