魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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少し短めです。本当は次のエピソードと合体させようと思っていたのですが、独立させたかったので投稿をしてしまいました。ご感想などいただければ励みになります。


ラナ・スティリアの在り方

 少し前に転がり込んできたマオという少女をこの数週間ずっとラナは見てきた。

 

 最初の出会いは最悪だったといっていい。思うところがあったとはいえ、人に指示をされたとはいえ、見ず知らずのマオという少女の邪魔をしたのだ。

 

 それからなし崩しに協力せざるを得なくなった。魔力のある人間は相手の中にある力を何となく感じることができる。ラナからすればマオは何の力もない、言ってしまえば何の才能も感じられなかった。だから学園に入っても苦しむだけだろうとは感じていた。

 

 だが、その考えはすぐに変わっていった。

 

 Fランクの依頼を一緒にこなすうちに気が付いた魔法に対する異常ともいうべき造詣。

 

 巻き込まれた戦闘の中で常に的確に判断する力。

 

 ラナは内心でマオを見る目をだんだんを変えていった。だから気が付いた、いやこのマオという小柄な少女の「力」を感じなければわからなかったこともラナにとっては自分が嫌になる気がした。

 

 ――こいつは誰にでも優しい。

 

 

 

 最初敵対した自分に対しても何もわだかまりなく接してくれることも、自分が距離を置くように忠告した魔族の少女とも……。そしてロイとの戦闘で壊れた街の人々にも、誰にも憎悪も敵意も向けない。

 

 

 

 逆に誰かの悪意に対してまっすぐに受け止める。

 

 ラナにはその意味が分からなかった。

 

 彼女は優秀だった。大抵のことは卒なく行うことができた。人との付き合いも「できた」。そんな彼女から見ればマオの在り方は不器用とも――うらやましいとも感じた。

 

 きっとどんな困難にあってもこのかわいい一つ下の『後輩』はやっていくのだろうといつの間にか無意識に信じるようになっていた。だからこそある日のお風呂の中で純粋に気持ちを話したこともあった。

 

 自然とこの向こう見ずで明るい、バカのくせにたまに鋭いなんてころころ表情を変えるマオという少女が好きになっていた。もちろん本人にそんなことは絶対に言うつもりなんてない。

 

 そんなマオが泣くところを見た。おそらく魔力の枯渇からだろう体調を崩したタイミングは最悪だった。その時に初めてマオが自分に弱音を吐いた。その前に……ラナ以外ほかの誰もいないことを確認してきたこともこの少女の本質に触れた気がした。

 

 本音をこぼすように自分にだけ見せたその光景にラナは自分のことを「世界一のバカ」と思った。きっとこんな形で誰かのことを気遣って苦しい時もほとんど言わないのだとわかった。ラナは胸が締め付けられるような苦しさに叫びだしそうになったが、その時に思ったのだった。

 

 ――こんな形で終わらせていいわけないじゃない。

 

 残された時間は少なかった。ラナは居ても立っても居られなかった。マオを魔法で眠らせた後、彼女はおもむろにフェリックスの制服に着替えて、上着を羽織った。

 

 マオには「出かけていない」と伝えた剣の勇者の子孫であるミラスティアや魔族の少女であるモニカと話して決めていたことだった。明日の最終日にマオが復活するとは限らない。魔力の枯渇からの体調不良なら一日で動けるようになるかもしれないが、何の保証もなかった。

 

 ギルドにも。

 

 

 

 街のいろんな人にも。

 

 走り回った。マオのことを助けてくれるように。

 

 ニナレイアにはミラスティアが話に行ってくれた。

 

 ラナは自分が他人のために頭を下げて回るなんてことをするとは思っていなかった。それでも不安は募った。今日のこともすべて意味がないのではないだろうか、焦燥が体を包んだ。

 

 ラナは自然と教会前の広場に立っていた。ここはマオと初めて戦った場所だった。頭突きで倒されるなんて情けない思い出しかない。彼女は思い出し笑いをしながら教会に入った。

 

 神父がいた。

 

 片手をあげて「やあ」という彼に、ラナはできるだけ冷静に話をしようとした。だが、彼の姿を見たときに心にあった不安があふれてきそうだった。どうしようもないかもしれない状況が心細かった。何よりもマオの悲しい顔を見たくなかった。

 

 自然と涙が出てきた。自分のことなのに驚いたラナはごしごしと袖で顔をぬぐうがどうしようもなかった。彼女は

 

「……先生。助けてください」

 

 泣きながら言う教え子に神父は驚いた顔をしたが、彼女の話を黙って聞いた。

 彼は快くラナの頼みを聞いてくれた。彼の人脈を使ってできるだけ多くのそして簡単な依頼をしてほしいということだった。ラナは泣いたことが恥ずかしかったのか、すぐに出ていこうとした。

 

「それじゃあ先生。お願い」

「ラナ。待ちなさい」

「なんですか? 私は忙しいんですけ、わっ」

 

 ラナの赤い髪を神父は掌でなでた。

 

「この数日、良い経験をしたのですね。ラナ」

「……い、いや、なんでいきなり頭をなでているんですか!?」

「子供がいいことをしたら褒めないとね。君は私が思っていたよりも成長しているようで安心しましたよ」

「……意味が分からないんですけど」

「人のために動くことのできるなんて前の君にはなかったことだからね」

 

「だって」

 

 ラナは手を振り払った。神父は怒るでもなくおどけて見せる。怖いなと両手を上げる。

 

「ほっとけないじゃない! 仕方ないじゃない!」

 

 ラナは叫ぶようにそれだけ言って教会を飛び出していく。

 

 

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