魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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少し短いですが、このエピソードは分割せずに更新したかったのです


ウルバン 剣とかいろいろやりたいひと~おいで~②

 

 フェリシアが連行されるのをぽかーんとみていたあたしたちにウルバン先生は一度振り返った。

 

 にっこり笑う。結構歳を取ってそうなのにそうすると本当に若々しく見える。いつの間にかフェリシアは小脇に抱えられている。あ、これ、あたしもラナと一緒にヴォルグにされたことがある。結構きついんだよね。彼女がはなせはなせ言っているけど、ウルバン先生は無視した。

 

「君たちまじめだねー。授業が始まるまでもう少しあるから、中で休んでいるといいよ」

 

 そういうと奥に歩いてく。

 

「だ、大丈夫かな、フェリシア」

「……大丈夫ですよ。いい薬です」

 

 モニカがふんと鼻を鳴らしながら言う。やっぱり本気で怒っていたみたいだ。なんとなくあたしは返事をすることができず、訓練場に入るように言った。

 

 訓練場の中は明るかった。

 

 ドーム状になっている天井はガラス張りだった。

 

 これ、すごいなぁ。空の青さがそのまま天井になっているみたいだ。

 

 上を見ているとニーナの背中に当たってしまってあきれた顔で振り返ってきた。

 

「ちゃんと前を見て歩け」

「うん、ごめん」

 

 声が響く。誰もいないからか反響しているんだ。あれ? 先生はどこに行ったんだろう。探してみるけどいない。

 

 訓練場の中はシンプルだ。整然と敷石の並んだ床。……よく見たら小部屋がいくつかあるみたいだ。訓練場の部屋の隅に扉が複数ある。あれに入ったんだろうか。

 

 ほかの生徒はまだ来ていない。言われた通り結構早く来すぎちゃったかもしれない。待ってれば来るよね。

 

「はー。でもフェリシアがいるってびっくりしたなぁ」

「すみませんでしたマオ様」

「いや、いや、モニカがあたしのことを考えてくれたってわかるよ。全然大丈夫! ありがと!」

 

 迂闊なことを言った。モニカを責めているともとれるようなのはよくない。あたしは慌てて否定する。

 

「おい」

 

 なに? ニーナ。怪訝な顔をしている。

 

「あの魔族は誰だ?」

 

 あ、そっか。ニーナはそもそもフェリシアを知らないんだよね。うーん。そうだな。なんて説明すればいいのかな。でも説明をする間にニーナはため息をついた。

 

「確か……職人街の方で戦闘があったとか言ってたような気がするな。お前が倒れた時にミラから聞いた。魔族と仮面の男から襲われたという話だが」

 

 ニーナは自分で答えを出す。

 

「まったく……水路の件と言い……王都に来るまでの猛獣使いの女と言い、魔族はろくなことをしないな……あ」

 

 ニーナはそこまで言って固まった。モニカが黙っている。少し悲し気な目をしているような気がした。

 

「ち、違う。そうじゃない……い、言い方を間違えたんだ」

「大丈夫ですよニーナ様。わかっています」

 

 それでもモニカの声には元気がなかった。ニーナに悪気はないってことはあたしにもわかる。でもそれを聞くのは辛いよね。

 

 ――「そこにいるお優しいお友達は人間ですよ? 私たちをあの寒い場所に追いやったね。そしてあなたの母親の……」

 

 フェリシアの言葉が頭に反芻する。そうだね。あたしはモニカについても現代の魔族についてもほとんど何も知らない。踏み込んでいい場所と踏み込んでいけない場所があるのは分かる。簡単に聞いて言いとは思わない。

 

 モニカを見ると、ただ黙っている。そうだ、ロイの事件の後に街の人に責められてもこの子はずっと黙ってそれを受け入れていた。……どういえば良いんだろう? あたしは必死に言葉を探した。

 

「モニカ」

「はい」

「あのさ……あたしは実は目標というか、やりたいことがあってさ」

「そうなんですね……それはどんなことですか?」

「一度魔族の自治領を見に行きたいなって……もし、もしさ可能ならその時一緒に連れて行ってくれないかな?」

 

 モニカはそれを聞いて目を開いて、悲しげに閉じた。

 

「いやです」

 

 え? 明確な拒否の言葉は頭に入ってこない。……一呼吸しないと本当に理解できなかった。

 

「マオ様は『そんなもの』をみても何も意味がありません。……マオ様は優しいから……余計なものを見る必要はないです」

「それは……」

「…………今日の私の目的を考えればお二人から離れていた方がいいはずですね」

 

 会話を打ち切るようにモニカは離れようとしていく。言葉は短い、でもきっとモニカはいろんなことを思ったはずだ。それを引き留める言葉があたしにはわからない。それでも、聞かないといけないことが一つだけあった。今、それが分かった。

 

「モニカ! 一つだけ聞いて良い?」

「なんでしょうか?」

「あのさ……もしもさ、本当にもしもの話だけど、人間との戦争に負けた魔王に何か言ってやることができるなら……なんて言う?」

「?」

 

 モニカは本当に困惑したみたいだった。確かに意味わからない質問だよね。でも『あたし』には意味があるんだ。彼女は少し考えてくれた。こんないきなりの話にもちゃんと答えようとしてくれるモニカは優しい。

 

「そうですね……魔王様にもきっといろんな事情があったんだと思います。昔のことに詳しいわけではありませんが……何か言えるなら――」

 

 モニカは少し作った笑顔をあたしに向ける。

 

「あなたのおかげで今の魔族は大変ですよって」

 

 ――――。

 

 ごめん。

 

 ごめんね。

 

 口に出しそうになった。モニカはやはり少し困惑したような顔で言った。

 

「あの……なんでマオ様が悲しそうな顔をするのですか?」

「いや、ううん。なんでもないよ。答えてくれてありがと」

「……?」

 

 モニカは一度あたしに頭を下げて離れていく。

 

「なんだあの質問は」

 

 ニーナが背中をぽんと叩いてから聞いてくる。気を抜くと、「だめになってしまいそう」な気がするから頭を振る。

 

「なんでもないよ」

 

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