魔王やってましたけど勇者に負けて転生しました ~FFランク冒険者候補からの成り上がってやる~   作:ほりぃー

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『ポーラ・ジャーディス 3大元素について』……のはずが

 

知の勇者の末裔。

 

 力の勇者の末裔であるニーナとも、もちろん剣の勇者の末裔のミラとも違う。そんな女の子……ていうか、初対面から喧嘩を売ってきたのがソフィアだ!

 

「……」

 

 ソフィアのそばに金髪の女性が立っている……弓使いの人だ、前になんか襲撃されたことがある……んん? まてよ。ラナも最初そうだったし、あたしの周りってなんか最初あたしを攻撃してきた人ばっかりなような……。ま、まあいいけどさ。

 

「ごきげんよう」

 

 ソフィアは見下すような表情だった。あたしはとりあえず「ひさしぶり」って言っておく。……うう、なんだかすごい敵意を感じる。そもそもソフィアに恨みを持たれることなんて何もしてないのに……。でも彼女はそれ以上何も言わずに顔をそむけた。ふー。

 

 襟を後ろから掴まれて引きずられる。

 

「ら、ラナ」

「なんだかわからないけど、とりあえず離れた場所にいくわよ」

 

そ、それにしてもこの連れて行き方はひどい、たまに思う……いや、正直何回かあったけど、猫と思われているんじゃない? にゃーってするよ、いや、しゃーってするよ! にゃーなんていってもなんもならない。

 

 座る席は自由だからあたしとラナとニーナはソフィアと離れた場所に座る。またなんだけど、周りの生徒からは遠巻きされている気がする。微妙に。

 

「あんたさ、知の勇者の末裔とは仲悪いのね?」

「ラナ……あの子は最初からああだからさ。正直原因が何かわからないよ」

「初対面で攻撃的っていやね……ぐっ、自分で言ってて胸を抉られた」

 

 ラナが頭を抱えている。き、気にしなくていいのに。

 

 そういえばニーナは誰か知り合いを見つけたみたいだ。

 

「ニーナ。あの男の人は誰?」

「…………」

「じ、じっとあたしを見てこなくていいけど」

「…………あれはキース。キース・ガルガンティアだ」

「ガルガンティア……へえ、じゃあ力の勇者の」

「いや……遠い分家……。これ以上はやめろ」

 

 なんか複雑そうだ。やめるよ。

 

 そんなこんなで時間を潰していると、来た。

 

 ポーラだ。ゆったりとしたローブとふわっとした桃色の髪。見た目はおっとりしているのに、その実は……けっこう腹黒い。なんかあたしのことを目の敵にしているし。……うーん。この教室の中にあたしと仲悪かったり戦ったりしていた人が多い……。

 

 ポーラはこちらを見てふっと笑った。何とも言えない笑い方だ。いやらしいってわけでもないし、純粋な笑顔ってわけでもない。陰のある感じ。でも彼女は何も言わずに教室の前方にある壇上に立った。

 

「みんなこんにちは~。今日からよろしくね。私は先生のポーラ・ジャーディス~」

 

 ゆったりとしたしゃべり方だ。何も知らなければおっとりしているって誤解しそう。

 

「魔法における3大元素を中心にみんなの魔法を強化する授業にしたいと思っているわ~。でも、最初の授業だから難しいことは抜きにしてちょっとしたレクリエーションをしましょ~」

 

 れくりえーしょん? ポーラが手を上げると、教室に数人の職員さんが入ってきた。台座とそして布を被った何かを持っている。

 

 教室の中心に台座を据えて。そしてその上にゴトって音を立てて何かを乗せる。

 

 ばっと職員さんが布を取るとそこには、きれいな球体の水晶があった。

 

 ポーラはその近くにいく。あたしを見ながらにこにこしている。

 

「これはねぇ。魔力を測るための魔石を加工したものなの。ここに魔力を流し込むとねぇ~」

 

 彼女が手を触れると水晶の中にきれいな螺旋上の魔力の渦ができる。

 

「こんな具合の持ち主の魔力の性質が色や形になって現れるの~。みんなこれで自分の魔力がどんな性質を持っているかひとりひとりはかってみましょうか? ああ、でもねちゃんとイメージをもって魔力を流し込まないとうまくいかないわよぉ。そうね。じゃあ、まずソフィアちゃん」

「……ちゃんはやめてくださる?」

 

 ソフィアが立ち上がってはあとため息をつく。そしてみんなの前で水晶に手を触れる。

 

 白い光が教室を包み込む。すごい魔力量とそして乱れのないその流れ。水晶の中には白い魔力が絡み合って満たされていく。

 

「はい、みんな拍手~。さすが知の勇者の子孫~」

 

 教室中で拍手が響きわたる。あたしもしとこ! 

 

「あんた、仲悪い奴にも全然気にしないのね」

 

 ラナも拍手しながらあきれ顔だった。でもすぐに真剣な顔をする。

 

「でも、あれ。もしかして……」

 

 そうラナが続けようとした時だった。ポーラが言った。

 

「それじゃあ、今期の首席合格のマオちゃんにやってもらおうかしら~」

「え? あ、あたし」

「そうよー。簡単だから。魔力を流し込むだけよぉ~」

 

 裾を掴まれる。みればラナだ。

 

「しまった……これ、あの人の」

 

 なるほど。……うーん。でもまあ。死ぬわけでもないし。

 

 あたしはとりあえず水晶の前に立つ。みんなが見ている。魔力を流し込む……イメージをもって……かぁ。とりあえず手を水晶に触れる。冷たい。

 

 魔力を流し込む!

 

 は、反応なし!

 

 たぶんあたしの魔力が弱すぎて反応しないんだと思う。手をぐーぱーしてもう一度水晶に手を触れる。……両の掌に魔力を集める。集めるって言ってもかなり弱い。体中の力を掌だけに集めた。

 

 水晶の中にほんの小さなお星さま……みたいな光がともった。それはきらきらと弱い光を灯している。どうせなら遊んでしまえ。魔力の流れを操って小さな小さな魔方陣を描く。はあはあ、これだけなのに疲れた。

 

 どこからかくすって笑いが起きた。それは段々と大きくなっていく。

 

 教室の中があたしの魔力のなさを笑っている。うー、まあ、仕方ないんだけどさ。あたしは両手を組んだ。水晶の光はすでに消えている。ポーラを見るとにこにこしている。

 

「こすいことするね」

「なんのこと~?」

 

 いいや。とりあえずこれで終わり。まだ笑われているけど、席に戻る。

 

 ふと思ったんだけどさ。ソフィアも笑ってるのかな、うーん笑っているだろうなぁ。なんとなくそっちを見る。

 

「……」

 

 ……! ソフィアは笑いもせずにあたしを睨んでいる……な、なんでさ。

 

敵意のこもった目で見てくるんだけど、理由はぜんぜんわからない。魔力を測る水晶はソフィアの方が断然反応したし……? なんでそこまで敵視されるのだろう。そう思いながら席に戻るとラナとニーナが怒りを抑えた顔をしている。

 

「気にしない気にしない」

 

 あたしがなんでかなだめた。

 

 そんな感じで最初の授業はすぎていく。全員が魔力を測っていくと、それぞれの魔力の性質は違って見えて面白かった。ニーナは炎のような光、そしてラナはいろんな色を伴った渦。ソフィアの次に魔力がありそうなのはラナかな。

 

 とりあえず一番魔力がないのはあたしだ。それは間違いない。卑下しても仕方ないからむしろ踏ん反りかえってやろうかなって思ってやめた。

 

 最初の授業はそれだけで終わった。正直拍子抜けな気もする。ポーラのことだからもっとこう、なんかいっぱいしてくると思ったのに、次の授業の日取りだけ言っただけ。

 

 

「むかつくあいつ」

 

 ラナが怒っている……。ニーナはなんだか元気がない。やっぱりあの男の人のことだろうか。

 

「まあ、いいじゃん。今日は簡単に終わったし。ここ数日いろいろなことがあったからゆっくり休めればあたしはいいな」

「あれ、どう考えてもあんたのことを狙ってやってたはずよ」

「水晶のことだよね、みんなの魔力の形を見るのは面白かった」

「…………ある意味、あんたは強いわよね。泣き虫のくせに」

 

 !!!!!!!!!! 泣き虫じゃないし!!!!!

 

 からかってくるラナは紅い髪を揺らしながら軽く逃げる。あたしは追う。

 

「へへーん、泣き虫マオ」

「……ち、違うし」

 

 少し走ると突然ラナが止まった、なので! あたしは! その背中に激突した!

 

「いてて、急に止まらないでよラナ」

「……あんたに用事かしら」

 

 学園の中庭。噴水のある庭園。

 

 そこにソフィアは立っていた。彼女は両手を組んであたしを見ている。なんだろ。

 

「どうしたのソフィア」

「…………」

 

 彼女は片手を前にだす。掌を広げて、そのまま呪文を詠唱する。ウンディーネをたたえるその言葉を紡ぐ。

 

「アクア・クリエーション」

 

 噴水の水がうねり、彼女の前に集まる。それはだんだんと人の形を取った。

 

 あたしは驚愕した。

 

 『クリエイション』は魔王である自分が編み出したものだ。他の誰も使えない。……正確には誰にもその使い方を教えたことがない。それをソフィアは使った。そして『アクア・クリエイション』を使ったのは最近では一度しかない。

 

 仮面の男との戦いだ。

 

 あの時彼女はそこにいた……? そしてあたしが使ったのを見ただけで真似をした? 

 

 天才。

 

 その言葉が頭に浮かんだ。

 

 ソフィアの近くに人間の形をした水の人形が現れる。彼女の紫がかった透明な髪が魔力の流れで揺れた。まっすぐにあたしを見ている。

 

「マオ。あなたに魔法による決闘を申し込みますわ」

 

 彼女の瞳には敵意が満ちている。

 

 

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