坂上清顕、15の春   作:藤沢 南

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第2話

「イーサン・セイラさん。それではその坂上清顕という少年が、あなたのお眼鏡に叶う逸材だということですか。」

「はい、閣下。清顕くんは先のメスス島の空襲で家族を喪っており、今はオデッサの孤児施設で生活しています。経済的にも困窮しており、進学も厳しいのですが、アルバイトを見つけて、学費を稼いでおるようです。」

「ほほう。」

 

クロノ・マゴスの定例会議が終わり、今回のオデッサ陥落で得た利益の配分について決定した後、ミオの父親のイーサン・セイラとウラノスの外交官ゼノン・カヴァディスは将来性ある戦災孤児について話し合っていた。

 

「孤児施設の職員の話では、清顕くんは後輩や小学校低学年の面倒見も良く、人望あふれる存在のようです。成績も優秀で。…余談ですが、彼はうちの三女と同い年で、メスス島に来た時から仲がいいのですよ。こないだうちの娘が孤児施設の小学生の女の子から石を投げられて、清顕くんがかばってくれたと言っています。うちの娘もなかなか人物を見る目があるようですな。誰に似たのでしょうな。ホッホッホ。」

イーサンはさもおかしそうに語り、葉巻の煙を吐き出した。

 

「ふむ。」

 

ゼノンは少し表情を沈め、感情を押し殺した。イーサンは続ける。

 

「で、清顕くんは中学3年です。家族を全員喪ったこのままだと進学費用も危うい。高校の入学金、授業料ぐらいは何とかなるかもしれないが、これから、高校、大学と進むにあたって、今のままでは何かと苦労するのは目に見えている。奨学金制度がいつ元通りになるかわからないですし。

 そこで閣下。清顕くんさえ応じてくれれば、うちの新たな養子に迎えたいのですが、いかがでしょうか。きっと将来ウラノスのエースとして輝かしい実績を挙げるのは間違い無いでしょう。」

 

ゼノンはなおも考えている。しばらくしてから、おもむろに口を開いた。

 

「私は飛空士の方については専門外でして。工作員として素質があるようであれば、是非にセイラさんの養子に迎え入れていただきたいものですな。」

「では。閣下の承認はいただけたという事でよろしいですね。」

「ええ。ただ。私としては、その清顕くんとやらが飛空士というより工作員としての才能が開けてくれるといいのですが。」

 

「閣下、それなら飛空士としての才能が優っているようであれば、セイラ家で生涯面倒を見て、ウラノスの優秀な兵士として育て上げましょう。工作員であれば、閣下の御意のままに。」

 

ゼノンは、無言で残酷な笑みを浮かべた。

 

イーサン・セイラと別れ、ゼノンはウラノスの執務室へ帰った。書類の整理を終えた後、彼は、工作員の一人を呼んだ。

「キリアイ」

「はっ!これに。」

パトリオティスに昇格したばかりの少女が足音もなく一瞬で姿を見せた。

「貴様に初仕事だ。メスス島へ飛び、イーサン・セイラと坂上清顕を見張れ。もし二人が接触するようなことがあれば、その会話を全て私に伝えよ。」

「かしこまりました。」

 

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