DC COMICS × SCHOOL-LIVE   作:グレイソン

6 / 10
6

「いよいよもって日が暮れる。宿を探さないとな」室外機に寄り掛かって腕を組み、ナイトウィングが皮肉っぽく言った。「幸いにもここは宿場だ、選択肢は豊富な筈」

「こんなご時世じゃ、どのホテルも休業中ですよ」鉄柵にもたれかかるようにして身を乗り出し、直樹美紀は眼下にある看板達を見やりながら呟いた。以前は光り輝いていたそれらは、まるで命を失ったかのように暗く沈み、汚れと破損にまみれて朽ちかけている。「……或いは潰れているのか」

 廃墟の群れ。ゴーストタウン。かつて栄えていた文明の跡地。如何ようにも言えるこの光景を眺めて、美紀はやるせなく嘆息した。ここに至るまでにも見上げる形で目にしてきた筈なのに、今は闇の落とす影に包まれた世界を見下ろしている所為でか、より一層の悲壮感を抱かせる。同時に、管理する者のいない様は、世間が無政府状態である事も否応なく見せ付けてきた。先程襲い掛かってきた暴漢達のような奔放な自由は、生き残った者達の誰しもが手にしたであろうが、暴虐の魔の手から国や専門機関や法律によって守られる安心感は何一つとして得られない。恐怖の支配する世界の片鱗を表しているかのようだった。

「幸先いいですよね、これは」振り向きながら、美紀も皮肉っぽく言った。「一寸先は闇な上に、安全に夜を明かす場所すら見つからないなんて」

 思うように進まぬこの旅路には相応しいくらいの僥倖だ。喉まで出かかって、嫌味過ぎかと押し込める。

「そうさな……」彼女の内心を知る由もなく、ナイトウィングは穏やかなままに言った。「まぁ、安全でなくていいなら、そこら中に山程あるんだけどね」

 彼は先程まで居た通りのほうへと視線を移す。美紀も追ってそちらへ目を向け、耳を澄ませた。

 一ブロック先の交差点付近で、黒い波のような影が蠢いている。これが平時なら、賑わう人集りとも言えたろうが、今はそうではない。そしてそもそもあれらは、人の形をしていても、決して人ではない。何十体もの動く屍が、大口を開けて呻きを上げながら、あちらこちらを行ったり来たりとしているのだ。

 薄暗闇の中で目を凝らして見ると、放置された車両やひしゃげた扉を叩き続けるものもいれば、砕けた窓や開きっぱなしの入口にぶつかった事で、そのまま建物内部へと消えていくものもいるのが分かる。彼女らの足元のビル――どうやらカプセルホテルらしい――の中にも、既にそう言った連中が入り込んで闊歩していると考えるのが無難だろう。ナイトウィングも美紀も、屋上から階下に繋がる扉を開ける気になれないのはその為だ。逃げ場も無く狭い建物内で襲われては、太刀打ち出来ぬままに死ぬかも知れない。二人の間に、ここを利用すると言う考えは湧かないでいた。

「奴らと一緒に寝るのは勘弁願いたいよ。棺桶で眠るような趣味は無いしね」ナイトウィングが軽口を叩いた。どうやらコウモリの姿をした師をもっていても、ゴスやヴァンパイアへの憧れとは無縁だったらしい。

「私だって、二度と目が覚めなくなるなんてのはゴメンですよ」そう言って、美紀は項垂れた。「……もう少し余裕持って探索出来てたらなぁ」

「とは言えまぁ、急いで逃げなかったら、今頃命は無かったろうけどね」

 ナイトウィングの言う通りだ。美紀は思い返した。

 暴漢らとの戦いの直後、二人はすぐにでもその場を離れて身を潜める必要があった。表通りのそこら中に、彼女らを追う存在が山程現れたからだ。それは言わずもがな、食人鬼と化した元人間達――辛うじて人の形を保っただけの死の軍団だった。

 どこから来たのかは分からないが、その理由は分かる。今まで眠るように息を潜めていた所を、戦闘の騒音につられて目を覚ましたり、遠くのほうから生者の気配を察知してやってきたのだろう。それらが何十体と、通りのあちこちから姿を現して迫って来て、あっと言う間に彼女達は囲まれつつあった。最早地上のどこにも居場所が無いようにも思えるくらいで、すぐにでもその場から逃れなくてはならなかった。

 しかし別にそれ自体は、なんら叶わない訳でもない事だった。すぐに駆け出しさえすれば、グラップネルガンも必要無く解決出来ただろう。特に指揮官の元で敷かれた布陣でも無く、三々五々にそれぞれが突っ立っているだけなので、包囲網攻略のセオリーに則り、手薄な部分を一気呵成に突き抜けてしまえばいいのだから、至極簡単な話だった。

 ただ一つ、問題があったとすれば――それこそが彼女らの人間的な善性が保たれている証でもあり、時間を食って足を引っ張った要因でもあったのだが――二人には、足元で意識を失い突っ伏している連中を見捨てられなかった事だろうか。

 社会システムが崩壊して司法が役に立たない以上、危険な人物を留置し、監視しておく役目を担う存在もいないので、悪党を引き渡す事も出来ない。悪さを出来ないようにと完膚無きまでに痛め付けたら、自省を促して期待しつつ、逃がす他に道は無い。ある意味では司法や公権力による救いや庇護が無いので、より残酷な仕打ちと言える。傷付いた身や万全ではない状態で死地に放置されるなど、遠回しに死ねと宣告しているようなものだから。

 或いは、戦いの果てに完全に命を奪えば、その悩みも綺麗サッパリに消え去るだろう。だがそれは、余りに人間性や良心を失いすぎていて、ナイトウィングの掲げるクライムファイトの信義に反するし、当然美紀の倫理観からしても受け入れ難い話だ。

 なので取り敢えずの処置として、二人は暴漢らを、彼らが乗ってきた乗用車に詰め込んで鍵を掛けた。亡者達は扉を開ける事は出来ないとは言え、念の為こうしておけば、故障や破損と言った何かの拍子に開放されて侵入される可能性も少なくなるだろうと考えたのだ。

 そしてその結果、自分達が歩むべき逃走経路や逃げ込む場所を探す暇を無くしてしまい、二人はやむを得ずグラップネルガンを使って、闇雲にビルの谷間を駆け上がり、幾つも屋上を飛び越えて、その場に集った危険の魔の手を躱したのだった。

 なんだかまるで、衝動的で身勝手な通り魔になったような気分だ。美紀は思った。複雑な心境だ。悪党とは言え人を傷付けて、生殺与奪にまで関与するだなんて。オマケにその所為で旅路は遅々として進まず、それどころか行き場を失ってすらいる。矢張り少しくらい嫌味ったらしくぶち撒けたい気分になったが、しかし相手が彼女以上に複雑な気持ちを抱いている人間である以上は、黙るしかない。

 逃走中のナイトウィングは渋い顔をしていたが、彼女が目を向ける度に、仕方が無いんだと笑みを浮かべて答えていた。それはそうする事によって、美紀に対してのみならず自分に向けても言い聞かせるように誤魔化していたと言う訳なのだろう。

――僕らも進まないと行けないしね。痛みと共に後悔と反省をしてもらうだけさねな。まぁ、無慈悲な天が裁く前に、彼らが慈悲を取り戻して改心する事を祈るよ。

 皮肉混じりな声が美紀の頭に蘇ってきた。きっと、いや、確実に本意ではなかったのだろうと思えた。正義そのものではないとは言え、正義の味方をする犯罪狩人・クライムファイターとしては、こんな惨く酷な仕打ちはやりすぎでしかないのだから。

 美紀は最後に見下ろした光景を思い返した。死者の群れが暴漢らの乗る乗用車の周りを取り囲んでうろついていた。もしあのまま目を覚ましても、一切のパニックを起こさずに音を出さずやり過ごせれば、無事に生きて帰れるだろう。だがしかし、生者である証を僅かでも気取られてしまえば……彼らはもう一巻の終わりだ。

 果たしてどうなるのか。惨たらしい未来の想像に気分を悪くして、美紀は首を振った。映画や文学の中でもホラーは好きではあっても、それはあくまで創作品のジャンルとしてだ。生きた人間が残虐に尊厳を踏み躙られて、いたぶられて死ぬだなんてのは、全く持って快くはないし喜ばしい事ではない。

 だが、襲ってくるような連中を守り助け続ける義理も無いし、そもそも彼らの行く末を最後まで見届ける暇も無いのは確かだ。なんせ、美紀達にもそれぞれ果たすべき使命があるのだから。

 行方知れずの友を探して合流し、無事に生き延びる。それが美紀の背負った使命だ。

 そしてそれを助ける事に加えて、この恐るべき死の病に対する治療法を見付け出して回収し、ジャスティス・リーグやバットファミリーと共に世界中へと届ける。それがナイトウィングの使命だ。

 つまり、出来るだけ多くの人々を救う為にも、先を急がねばならない旅路の途中なのだ。その瞬間に出来る限りの最善を尽くしたら、後は選ばなくてはならない……切り捨てるように離れると言う道を。後の末路は、関わり合いの無い事として捨て置くしかないのだ。脳裏にこびり付く光景と最悪の予想を振り払うように、彼女は頭を振った。

 遣る瀬の無い憤りにも似た苛つきを、奥歯を噛み締めて耐えていた時、不意に頬に何かが触れた。

「冷た……ッ」思わず美紀は声を漏らし、拭う。水滴が付着していたのだ。これは涙でも汗でもない。自らの溢した雫に凍える程、そこまで冷血ではない。つまり……。

 パタ、パタ、と辺りからも小さな音がする。鉄柵や室外機に跳ね返って金属質な響きが渡る。

「あーあ、降ってきちゃったな」ナイトウィングが溜息を吐いた。「参ったなぁ、医者がいないんだから風邪を引く訳にもいかないのに」

 しまった、雨だ! 深緑のアーミージャケットの下に着込んだ黄色いフーディを被り、簡易的な水濡れ対策をしながらも、美紀は空を見た。すっかり忘れていた。暗いのは夜に近付いてるだけじゃないって、そう話していた筈なのに!

「薬はあるけど、そう簡単には使いたくないよなぁ」などとナイトウィングは空を見上げて呟いている。何を呑気な事を、と美紀は更に焦った。

 マズい、マズい、マズい! 美紀は段々と血の気が引いていくのを感じた。このままではヤバい!

「ナイトウィング、急いで隠れましょう!」美紀はナイトウィングに駆け寄り、彼の腕を引いて言った。

「え? どうしたって言うんだ急に」ナイトウィングはマスク越しにも分かるくらいに驚いた表情をしている。「そりゃあ濡れるのが嫌なのは分かるけどさ、まだそんなに慌てふためく程の……」

「そうじゃなくて! あ、あの、奴らが……!」焦って呂律の回らない舌を無理矢理働かせて、美紀は続ける。「襲ってくるんです、大量に!」

「……なんだって?」瞬時にナイトウィングが真剣な表情に切り替わった。「本当なのか?」

「はい! モールに居た時に下層階に雪崩込んできた事が何度かあって……だから危険なんです、雨の日は!」

「雨の日に凶暴化するのか? そんな情報は初耳だな、リーグの報告にも無かったが……まさかバットマンもレッドロビンも知らなかったって言うのか……?」ナイトウィングは訝しむように顎をさすったが、すぐに分析する思考をやめ、言葉を返した。「いや、現地の人間が言うんだ、確かなんだろう。とにかく今は、すぐに動くべきだな」

 ナイトウィングはそう言うと、マスクの脇に指を添えて辺りを見回した。レンズが輝いて、捜査モードを使って闇夜を見通していると窺える。

「となると背に腹は代えられないな。取り敢えずは手近な部屋に籠城する方向で行くか」それからふと気付いたように彼はバッグに手を入れ、美紀に何かを差し出して言った。「見える範囲でいい。これを使って飛び込んでも安全そうな場所を探してくれ」

「これって……!」

 それは彼の装着している物と同型のドミノマスクだった。恐らく予備として、ガジェットと共にバットウィングから持ち出していたのだろう。よく見ると、既にレンズが青白く光を帯びているようにも思える。しかし、と美紀は思う。

「使い方分かりませんよ!?」

「大丈夫だよ。既に捜査モードを起動してあるから、後は装着者の脳波を読み取ってズームやスキャンも出来るし、ナイトビジョンでこの暗闇でも難なく見通せるさ」ナイトウィングはそう言いながら美紀の手にそれを握らせた。そして、張り詰めた気配を和らげ、口元に笑みを浮かべて続ける。「やったな、美紀。相棒(サイドキック)デビューだぞ。そうだ、ロビンって呼ぼうか? 服もそんな色合いしてるしさ」

「え、ちょ、あの……!」

 明るく言うナイトウィングに対し、美紀は少したじろいだ。彼が自分の事を差し置いて、緊張感や恐怖を解そうとしてくれているのは、一応理解出来ている。だがそれでも少し突飛過ぎて、何かを言い返したくもなったのだ。ただ、今はそれどころではないし、わざわざ自分のカーゴパンツのポケットに仕舞ってあるフラッシュライトを取り出して、照らしながら辺りを検索するよりも、遥かに効率的なのも確かだ。それが分かっているからこそ、口が上手く回らなくなる。混乱しかけながらも、美紀はとにかくなんとか答えた。

「わ、分かりました、取り敢えずやってみます!」

 頷き、マスクを装着して、周辺へと目を走らせる。青白い色の濃淡で表現される世界が、目の前に広がった。これが捜査モードか。ミリタリー映画やゲームでよく見る暗視機能とは雰囲気が違う気がする。確かに見通しはいいし、自分の思考を読み取るように拡大縮小が出来て、遠くまで確認も可能だ。しかし同時に、美紀は慣れない世界に体がまだついて行けてない事も自覚していた。視覚に負荷がかかるのが原因でか、少し頭痛がする。

――余り長くは出来ないかも……それに、そんなに早くもやれない……。

 マスクの下で顔をしかめながら、美紀は思った。

 そうこうしている内にも雨脚はどんどん強くなり、呼応するように、けだものの悶えるような呻き声が激しくなる。足元をうろつくものの吐息が重なって、まるでおぞましい合唱のようだ。疲れた頭を少し休ませる為に項垂れたついでに階下を覗き込めば、蠢く影が押し寄せる波のようにあちこちの建物へと流れ込んでいくのが見えた。そしてそれは、美紀達の居るビジネスホテルも例外ではない。急がねば、と首を振り、襲い来る死の恐怖と痛み、そして雨に濡れる寒さに震えながら、美紀は必死に辺りを見やった。

「オイオイ、どこもかしこもギッシリだな。別にシーズン真っ盛りの観光地でも無いだろうによ」反対側を見ながらナイトウィングが吐き捨てる。「死体だらけの部屋なんて、どんな三流スプラッターだよ。ハロウィンでも選ばれないぞ、全く」

 変わらず軽口を叩いてはいるものの、余り余裕さは感じられない。むしろ逆にそれを誤魔化そうとしてか、なんだか余計に口が回っているようにも思える。少し耳障りに感じてきて、それが美紀を更に焦らせた。

 ガツン、と一度扉が鳴った。二人はハッとしてそちらを見やる。何かが内側からぶつかっているようだ。その後再び同じく響き、一定の間隔で繰り返される。

 美紀は冷や汗が流れるのを感じた。決して開きもしてないし、酷く壊れもしてないが、僅かに歪んだ部分を目にして、恐怖が全身を支配するように沸き起こる。開けずに、声も掛けずに、延々と叩き続けるだなんて……そんな事をする相手など、容易に想像が付くからだ。

「オイ、マジかよ……ッ! もうここまで上がってきたのか!」ナイトウィングが青白く光る眼で一瞥して舌打ちする。恐らく、そのマスクのレンズには恐るべき光景が映し出されているのだろう。そしてそれは間もなく美紀の視界にも表示される。無意識に思い浮かべた内容を読み取って、マスクが建物内部の動体反応その他諸々をスキャンし、ワイヤーフレームだとかを用いたAR(拡張現実)表示として描画するのだ。しかしそれを見ずとも、美紀にも既に理解出来ていた。

 まるで渋滞を起こした高速道路のように、階下までギッシリと詰まった死者の群れ。美紀とナイトウィングの僅かな生の気配を感じ取ってやって来たのか、はたまた建物のキャパシティを超えたが為に行き場無くして辿り着いただけなのか。どちらかは分からないが、どちらにせよ全くもって歓迎出来ない来訪者達である事には変わらない。

「美紀、悪いけど部屋探しは任せたよ!」ナイトウィングが苦々しげに言いながら、素早く押さえに走った。「オイオイ、そんなに行列作る程、ここで夜景が見たいのか……!? だったら生憎、今日の天気は最悪だぜ、明日にでも出直してきなよ……!」

 彼が居れば少しは時間稼ぎになるだろうか。美紀は思った。でも急がないと。スーパーマンではない彼が何時までも耐えられる訳は無いのだから、決して安心しきる事など出来ない。疼くように痛むこめかみを押さえ、視線を戻す。

「まぁ、生き血を啜る事しか考えられないような頭にゃあ、何もかもが些細な事かね……!? まるで気にしてないって感じだな!」ガタガタと揺れ動く扉にへばり付きながら、ナイトウィングは苛立った声で言った。「美紀、ごめん! ちょっと……いや、あんまり余裕無いかも!」

「分かってますよ……!」美紀は顔をしかめて呟いた。しかし、何度探そうが手付かずのままに無事である部屋など見当たらない。どこにも必ずこびりついた血の跡が有り、中で死者が蠢いている。

「クソ……ッ! どうすれば……!」吐き捨てるように言う。

 それからふと、考えを改めた。取り敢えず今を凌げればいい訳だから、部屋の中に敵がいても、手に負える規模でさえあれば、なんとか間に合う筈ではないか。そう考え直して、手近な建物にもう一度目を走らせる。正面は駄目だ、すし詰め状態だ。飛び込めば袋叩きに遭うだけでは済まない。きっと微塵も残らず引き千切られてしまう。斜向いも同じだ。今居るカプセルホテルよりも少し背の低いテナントビルだから、内部は占拠されきっている。ではその隣の集合住宅はどうだ? 駄目だ、一家が丸ごとやられてしまっている場所ばかりだ。じゃあその隣は? その隣、その隣……。四軒右に移った所でようやく視線が止まった。どうやらベランダ付きのビジネスホテルらしい。地上階に近い部分は他と変わらず軒並み駄目だが、同じくらいの高さにある高層階なら果たして……?

 ややあってから、彼女はナイトウィングへと振り向いた。

「ナイトウィング、あそこは!?」指で指し示しながら言う。同時に、その意思を汲み取ったマスクの捜査モードが、短距離通信機能を通じてスポットした建物の位置をナイトウィングのマスクへと共有した。

 そのホテルは、大半の部屋がベランダまで血まみれだったり、窓ガラスが赤く染まっている上に砕けて散っていたり、中で蠢く大勢の影が見えていたりする中で、最上階付近の部屋には幾つか、派手な損壊や大挙している敵影が見受けられない箇所が確認出来た。そしてその中でも、彼女の示したフロア中央の部屋は損傷も少なく比較的綺麗で、内部でうろつくのは一体のみ。妥協するにはまたとない好条件に思える。

「数があれくらいなら、なんとか掃討出来ませんか!? ベランダに着地すれば、体勢を整えるくらいの余裕もありそうですし……!」

「さてさて……!」ナイトウィングが素早く視線を向け、そしてすぐに頷いた。「OK、いいね、採用だ! それじゃあ早速チェックインと行こうか! 飛び込み客を断る宿では無さそうだしね!」

 言うが早いか、ナイトウィングは猛烈に駆け出して美紀に迫り、その体を左腕に抱き抱えた。有無を言わさず、すぐ飛び立つつもりなのだろう。思わず、ひゃっ、と声が漏れ出たが、切迫している状況では気にしている暇も無い。なんせ、ナイトウィングが離れてから、扉の歪み方が著しくなっているようにも思えるのだ。ロック部分以前に、扉の蝶番自体がもちそうにないようにも見えた。留まるだなんて余裕は無く、選択肢も無さそうだ。

「さぁ行くぞ、掴まってて!」ナイトウィングが言い、グラップネルガンを構えた。

 美紀も胴に腕を回して抱き着くと、その瞬間にはもう、彼女達の体は鉄柵を乗り越えて宙に躍り出ていた。未だに慣れない浮遊感と、恐怖と、耐え難い頭痛と、疲労感に苛まれながら、美紀は必死に、ナイトウィングの体にしがみついていた。

 

 日の暮れた頃、ブラックライトニングことジェファーソン・ピアース率いる学園生存者一行は、ランタンの薄明かりだけが照らす恵飛須沢家のリビングに集っていた。胡桃の両親が脱出する際の混乱で、家屋内は荒れ放題ではあったが、物資確保の探索やその他の作業と並行して簡単に片付けをしていたお陰で、今では全員が腰を下ろしてくつろぐくらいの余裕と清潔さは取り戻せている。食卓を兼ねたローテーブルの周りに集まり、グリーンのランタンの灯りを囲むように座って、彼らはバックパックやボストンバッグに纏めたそれぞれの成果を持ち寄っていた。

「流石に校長先生の体格にマッチする服はありませんでしたね」部屋着を借り受けて着替えた佐倉慈が言った。

「ウチのパパ、身長一八〇も無かったし、ガタイは良かったけど校長に比べれば細身だったから……」と、申し訳無さそうに胡桃が続ける。

 その言葉に、丈の合わないルームウェアに身を包んだジェファーソンはやるせなく苦笑した。

「いやいや、二メートル近い筋骨隆々の日本人男性がそう簡単に見付かるのなら苦労はしないさ。これはアメリカ人ですら難しいのに」半袖やハーフパンツのようになっている服を見つめて答える。因みに、アメリカの成人男性の平均身長は、二〇〇一年調査で一七五センチ。以降、小数点以下の変動はあれど、大きく増減はしていないと言うのが一般的なデータだ。その点を踏まえれば、身長一九六センチのジェファーソンはその筋肉量も相まって、平均よりも遥かに巨躯と言える。おいそれと似た体躯の人間が見付かる訳もないだろう。

「モールに行ったら大きめなサイズもあると思うよ」少しオーバーサイズな服に身を包んだ由紀が言った。胡桃の物なので、些か体格に合っていないようだ。「まぁでも、あそこの服って大体どれも大きめなんだけどね」

 かなり小柄な彼女が言うとなんの洒落だろうと思えるが、確かにこの街の中心部にある一番の商店なら、それくらい対応していてもおかしくない。特に、多様化が進む近年では、趣味嗜好のみならず、病気や障害で体型が変化してしまったり、敢えてボディラインを隠したいと言った人々の事情を踏まえてか、大型服の専門店の普及率も上がっているのだ。期待は持てそうである。

「ふむ」とジェファーソンも頷いた。「立ち寄ったら、是非とも幾つか調達しよう」

「それまでは、着回しで我慢してもらうしかありませんね」慈が言った。「その服と、二つのスーツで」

「まぁ、やむを得んな」そう答え、ジェファーソンは左手首の腕時計を見やる。政府機関による最新鋭のナノテクで作られ、協力者達と共に改良したこのスーツは、彼の稲妻に反応して起動する度に、修復と再生を兼ねた分解と再構成を繰り返すので、一応常に清潔さは保たれてはいるが、それでも解除する必要はある。その間に着られる衣服が心許ないのは、割りと深刻な問題ではあった。しかし今、ようやく解決出来そうな光明を見出せている。

「もう少しの辛抱だな」ジェファーソンは答えた。そして同時に、それがどれだけ皮肉な事かと思って、笑えない冗談だと吐き捨てたくもなった。

――辛抱だとさ。いつまでも耐え続けなければならない世界に置かれているのに、よくもまぁそんな呑気な発言も出来たものだな、ジェファーソン。

 まるで、侵略軍の占領下に置かれた街で暴虐を受け入れているかのようだ。いつしかそんな世界こそが普通になりつつある。常軌を逸しているのに、それに気付かなくなっている異常さを感じて、彼は少し背筋が寒くなった。その内、死体が隣を歩いていても平然としていそうだし、それらを焼き払う事にも後悔や悲しみを抱かなくなりそうだなと、そう皮肉るように思う。

「食料や医薬品はともかく、日用雑貨や衣料品はかなり補充出来ましたね」悠里が帳簿を確認しながら言ったので、ジェファーソンは意識を引き戻して彼女を見た。暗い室内でもペンを走らせ、新たな物資を書き留めているようだ。家庭的な部分に一番長けていると自負するように、その才を存分に発揮しているが、本来ならここで使われるべきでは無かったんだろうなとジェファーソンはしんみり思った。それこそ彼女の家で――そしてこれから彼女の築く筈だった家庭で、使われるべきものだったのだろう、と。

「学校の物資で間に合わなかった部分も、少しは手が届きそうです」

「そうか……確認ありがとう、悠里くん。助かったよ」ジェファーソンは頷いて、切り替えるように胡桃へと目を向けた。「胡桃くんとご両親にも感謝しないとな」

「え、アタシ? よせやい、照れるぜ」暖色LEDに照り返されて尚分かる程に頬を赤らめて、胡桃が言う。「まぁ、こんな事くらいしか出来ないしな。これでみんなの役に立てるなら……嬉しいよ」

 彼女は恥ずかしがり屋である以上に、傷付いた心の影響で後ろ向きになる部分が生まれてしまったのだろう。ジェファーソンはそう思っていた。恋い焦がれる気持ちと共に相手を自ら粉砕させられ、家族とは離れ離れになり、胸の内から沸き起こる憎悪と憤怒をぶつけるように戦いに没頭するが、平時では何も出来ない空虚感すら抱いている。そう言う陰鬱とした思考に陥る相手に対しては、行いを明確に肯定してやるべきなのだ。

「いつでも助かってるわ」同じ考えだったのか、慈が先に口を開いた。真っ直ぐに見詰め、しかし穏やかに告げる。「私達を守ってくれてる上に、分け与えてもくれる。あなたは素晴らしい人間よ。こんな世界になる前からも、なってからもね」

「そうだな。それに、『分け与える』と言う行いを『こんな事』で済ますには、中々勿体無いんだぞ。色々な意味で余裕の有無が関わってくるが、それでも誰しもが容易に出来る行いでは無いんだからな。それを君は出来たんだから、誇ってもいい」

「よせやい……マジで照れるぜ」胡桃が赤らめた顔を反らして言った。

 照れ笑いを隠そうとする様を見て、ジェファーソンは少し安堵した。笑えるだけの余裕が心にあるなら、まだ砕けるまではいかないだろうな。家族の行方を知れず不安になっていても、今は飲み込まれはしないだろう。一時凌ぎの痩せ我慢になるかも知れないが、やらないよりはマシだ。年不相応なまでに慈悲深い笑みを浮かべた悠里が、優しく胡桃の肩を抱き寄せる様を見ながら、ジェファーソンは思った。

「さて……もう暗いですし、この物資は明日の朝、車に積みましょう」悠里が言った。「暗い中の作業は事故の元ですし」

「そうだね。それになんか雨も降ってきそうだし」そう言って、由紀が立ち上がり、板を打ち付けた窓のほうへと寄った。

「由紀ちゃん、明かりが……」悠里が言った。塀があるとは言え、一応通りに面した側だ。見通しがいい分、漏れた明かりを見付けられる心配もある。その危惧は、死者だけに限った話では無い。助けを求める生存者ならいざ知らず、危険性を秘めた暴徒やサイコパスだとかソシオパスの連中を呼び込む餌になっては堪らない。

「大丈夫だよ」親指を立てて見せながら、由紀が答えた。言動的に幼く見えがちだが、実の所は察しがいいのだ。彼女はカーテンの隅を捲り、少しだけ開いた隙間から外を覗いた。「あ、って言うかもう降って来てる」

「マジか」と胡桃が漏らした。

「うん。そろそろ外の『みんな』が騒ぎ出しちゃいそうだよ」

「こりゃ、バリケードしといて良かったな」胡桃が苦笑した。「お陰で結構忙しくて、正直疲れちまったけどさ」

 ある程度の探索が終わった後、一行は手分けして、一階の窓全てにテーブル等の家具を崩した板材を打ち付け、玄関と階段の上下にも戸棚を配置した。これで屋内に侵入される可能性を減らし、万が一入り込まれたとしても、寝床とする二階にまでは容易に侵攻出来なくしたと言う訳だ。その上で、表通り側を覗ける窓に見張りを立てれば、侵攻を目論む脅威に対しての備えとしては充分だろうと言える。これは、雨天時の襲撃の激しさを既に経験しているが故に事前に取り決めておいた、言わば防衛プランの一種であった。

 雨雲が近付いている気配を感じたので、念の為そう指示したのだが、矢張り正解だったようだ。ジェファーソンは静かに頷いた。あとは息を潜めて、生存者の居る気配を悟らせないようにすればいい。

「明かりとか匂いとか怖いから、早めに食事を済ませて上がりましょう」悠里が見回しながら言った。同意する者は居ても、反対するような人間は誰もいない。

「上がったら、諸君は先に休んでくれ。最初の見張りは私が果たそう」ジェファーソンは言った。

「ありがとうございます、校長先生」慈が答える。「でも、交代時間はちゃんと守って下さいね。前みたいに、全部一人でこなそうだなんてのはやめて下さいよ」

「守ってくれてる分、アタシ達だってアンタの役に立ちたいんだよ」胡桃が真っ直ぐに見詰め返して続く。

「ちゃんと休んでね、校長」由紀も案じるような声で言った。

「あぁ、分かっているさ」

 長年の癖か、ついつい守護者として在らねばと振る舞ってしまうので、それを指摘するような言葉にジェファーソンは遣る瀬無い苦笑いを浮かべる他無かった。

 

 雷鳴が鳴り響く豪雨の中、ナイトウィングはベランダに立っていた。

「そら、よっと……!」雷に合わせて、動かない死体を階下投げ落とす。先の宿泊者の成れの果ては、闇に吸い込まれて消えていった。

「これでようやく少しは休めるな。風邪も引かずに済む」

「連中に襲われなければですけどね」マットレスに横たわりながら、扉のほうを見やって、美紀が言った。頭痛対策にと濡らしたタオルを額に乗せて、外したドミノマスクを弄びながら呟く。「これを通して見なくとも、どうなってるのかは大体分かりますし」

 取り敢えずと言った感じでベッドやスツールを積み上げて、バットロープで固く縛り上げて作られたバリケードによって、ドア自体は全く姿が見えなくなっている。しかし、その向こう側から響く呻きにも似た唸り声は、全くもって抑える事が出来ない。そしてそれは、侵攻自体もそうだろう。もし間近を跋扈する人食いの怪物達が押し寄せれば、数秒ともたないのは明白だ。

「今は仕方無いさ、出来るだけ息を潜めて隙を待とう」ナイトウィングは溜息を漏らし、部屋の隅に腰を下ろした。「まぁ、どうせ短い滞在だし、寝てる間は会話も必要無いんだ。丁度いいさ」

「まぁ、そうですね……」美紀はどこか寂しそうに答え、それから軽く起き上がってバッグから二人分の水と食料を取り出した。

 ペットボトルとブロック栄養食を受け取りながら、ナイトウィングは彼女を見詰める。会って間もないにしろ、なんだか妙な感じがする。いつもの彼女ではないみたいだ。

「どうしたんだ?」

「何がです……?」

「様子が変だな」

「そりゃ……具合が悪いですからね」

「そうかもだけど、それだけじゃあないように見える」

「分かるほどの仲じゃないですよね」

「そりゃあそうだけど、それでもだね」

 美紀は黙って水を一口飲み、俯いた。

 ナイトウィングはこれまでの人生で長い間、沈黙を利用して心を閉ざしたり、他人の意見を跳ね除けて自分の意思を押し付けてくるような男を師として過ごしてきた。その為に、相手が黙りこくる事には些かの不安を覚えてしまうし、少し重圧も感じてしまう。その点、出会ってからこれまでの美紀は、妙に皮肉る部分はあれど、何かしらの言葉を明確な意思を持って返してくれていた。なので、会話をしている安心感を抱けてはいたのだが、ここに来てそれが途絶えてしまったように感じられて、少しだけ不安が生まれつつあった。

「美紀、一体……」彼は、声を掛けて聞き出すべきかなと考えて、口を開いた。だがその時、ふと、この沈黙は彼女が言葉を紡ぐ為に整理をしている間なのではないかと言う考えが頭をよぎった。それは、彼の師――バットマンにも言える事だったのだ。

 バットマンは世界最高の探偵と呼ばれる程に、誰よりも頭が回る。だが故に、一つの事象に対しても選択肢や情報量が多すぎて、端的に言い表しては相手に誤解を生みかねないからと、言葉を選ぶ沈黙を作る事も多い。それでも結果は、受け取り手次第で誤解やトラブルは生まれかねないが、なるだけ伝えるべき事は正確に伝えられるようにと、仮面の内で常に苦心しているのだ。それを誰よりも分かっているから、今ではバットマンの沈黙を仕方の無い事だと許容出来るようになったし、必要があればフォローも出来るようになったと、ナイトウィングは思っている。

 今の美紀にもそれが当て嵌まるのではないか、とナイトウィングは感じた。なので少しの間、彼も黙って、彼女を待ってみる事にした。

「少し……少しだけ、予想と違っていたんです」

「予想?」

「もっと早く、もっと簡単に、事を運べると思ってたんですが……中々進まなくて」ポツリポツリと話していた美紀は、深い溜息を吐き出してから、続けた。「それに、久しぶりに一緒に過ごせる生きた人と、もっと話せると思ってたんですけど、あんまりそう言う感じじゃないってのが、勝手になんだか寂しくなって……圭が出ていく直前もそんな感じで会話が無くなってて、ちょっとそれを思い出して、なんかいきなり怖くなったと言うか……」

「ふむ」ナイトウィングは頷いて唸った。「もっと交流すべきだったかも知れないな」

 マスクを外すべきかと手を掛けて、迷う。ナイトウィングとしてではなくディック・グレイソンとしての自分を見せて話せば、もっと近付けるかも知れない。しかし、仮面を外す事にはリスクもある。そしてそれを払うのは、常に自分ではなく他の誰かになる。今はまだだと思い直して、ナイトウィングは続けた。

「きっと君は、僕がクライムファイターでヒーローだからと、全てが上手く行くように思えたんだろうけど……僕はどうあがいても君と同じ人間だから。ゴッサム生まれでサーカス育ちの、ブルードヘイヴンに住んでるアメリカ人でしかない。どんなにガジェットがあって、それを使えても、かなわない事のほうが多いのさ。なんせ敵のほうが遥かに強いからね」

「そう、なんですよね。分かっている筈なんですよ。あなたはスーパーマンでもフラッシュでも無い、ナイトウィングだから。無限の力とか最速のスピードとか無いんだし、一気に好転しきる筈も無いなんて」

「うーん、そう言われると不甲斐なくて中々辛いが……残念だけど、そうなんだよね」

「分かっている筈なのに、何故か勝手に望み過ぎてしまってるんですよね、私」遣る瀬無い自嘲の笑みを浮かべて、美紀は言う。「わがままなだけですね」

「仕方無いさ。悩んでたり苦しんでる時に光明を見出せば、誰だってそうなるさねな」

「かも知れませんけど……」

「まぁ、それでも、その上で言うのなら……」ナイトウィングは彼女を真っ直ぐに見詰めて言った。「着実に前には進んでいるし、これからも進ませてみせるからさ。気は急くかも知れないけれど、少しだけこのスローペースを受け入れてもらえないかな? なるだけ急ぐからさ」

「……努力してみます。すぐには、出来ないかもだけど」まだ迷っているようではありながらも、美紀は笑みを浮かべて頷いた。

「ありがとう、美紀」ナイトウィングは微笑み返して、手を差し出した。「改めてよろしく、相棒」

「はい……相棒」

 握手を交わし、二人は互いに少しだけ安らいだ表情を浮かべた。

「あの、出来ればもうちょっとだけ、話していたいんですけど……」

「いいよ、眠くなるまで付き合うよ」

「それじゃあ、バットマンの話を……」

「それよりロビンの話、聞きたくない?」

 

「まだ、まだだ……ッ!」少女は唸るようにそう言いながら、折れ曲がったゴルフクラブを振り被った。前分けにした短い黒髪を振り乱しながら、眼前の死体が二度と動かなくなるまで殴り付ける。「死ねない……! 私は、まだ……死ねない……!」

 肩先から滲み出る赤い水をどうにか押さえようと手をあてがい、痛みに悶絶しながら、彼女は暗く沈んだ通路を歯を食い縛って歩く。

「助けを呼ばないと、いけないんだ……! こんな所では……!」

 明かりを失った電光掲示板の下、誰も居ない改札口へとやってくると、その脇に備えられた駅員の待機室へと入り込み、鍵を掛けて、慣れた動きでバリケード代わりのデスクを戻す。

 激しい痛みと吐き気を堪えながらソファに雪崩込み、彼女は呻いた。

 死者に生者にと追われる中で、ほうほうの体でがむしゃらに逃げ込んだはいいが、まさか出られないとは思いもしなかった。コンコースを見渡せば、左右に出入り口は見えているものの、そこに至るまでに屯する敵の数たるや。では入ってきた時と同じように別の通用口からはどうだ、と探せども、狭い通路の角や店先の影に潜んだ死人が起き上がって迫るもんだから、やっぱり辿り着けない。

「こんなのどうしろって言うのよ……!」彼女は喚きたい気持ちを抑えながら泣いた。諦められれば楽なのに、残念な事に彼女の中には死を望む気持ちは一切無いので、身悶えする程に苦しめられている。

「誰か、助けて……」天を仰ぎ、少女は荒い吐息の中で呟いた。「……美紀」

 

 

 




 読み直してみたら気付いた事。

 ……くるみちゃんの家、平屋の一戸建てじゃね?

 立派な門構えから勝手に二階建てのモダンな住宅だと勘違いしてた奴。多分学園黙示録とか混じってんだろうなって。
 でも現代家屋の大半が二階建てなんで、別にこれでいっかと開き直る。
 どうせこれ、俺のアースだし!(やけくそ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。