5話くらいで終わります。短い間ですがよろしくお願いします。
定住の夜明け
ーやたら寒い島での生活に慣れ始めた頃ー
この謎の世界での生活も遂に二年目に突入した。
おれの名はジョージ。元の世界での名前だが、他に良い名前も思いつかなかったので、この世界でもそう名乗っている。
ある日、目が覚めたら子供の姿で、森の中で、しかも何処を見回しても、どれだけ泣き喚いても両親が現れる気配はなし。この野郎、どこのどいつだか知らんが育児放棄しやがったな。瞬時に悟ったおれは一人で生きていく事を決意し、怒りのままに纏っていた赤児のおくるみを破り捨てて、森の中をずんずんと二足歩行で進んで行った。
不思議な事に体は非常に幼い子供のそれだというのに、やたらとパワーだけは漲っていて、既に前世を凌駕しているようにさえ感じた。
更に不思議な事に自分の周りの木や岩、川、獣までも全体的にサイズが小さいのだ。前世での趣味だったジオラマなんかを思い出しながら、まずは生活の基盤を整えることに注力した。
木の実を見つけたら木をへし折り採取、獣を見つけたら追いかけて蹴り飛ばし獲得、へし折った木を銛がわりに魚を獲り、何本かの木をツタで縛り上げて掘っ立て小屋を建て、有り余るパワーと成人男性の知能でみるみる内に文明的な暮らしが完成していった。
それからは畑を耕したり、狩りをしたりで生計を立てながら、近くの集落(大人は普通におれよりデカかった)に余った食料を売りに行ったりとなかなかに自由気ままな暮らしを楽しんだ。
不思議な事にこの世界の人々が話す言葉は初めから理解できたので、少しでも自らの置かれた状況を把握するため、集落の大人達に積極的に聞き込み調査を行った。
集落の人間から聞いた話だと、おれが暮らすここは大小様々な都市国家が点在するウォーランドという大きな島で、訪れた集落はエルバフという国の一部だと言う。
この世界で初めて会った他の人間達に対する質問は尽きず、島の外にはまた他の島があるのか、森や獣達がとても小さいのは何故なのか、機械や魔法の類は存在するのか、などなど様々なことを聞いた。
しかし、彼らも昔からずっとこの島の中だけで生活しているようで、あまり島の外のことを知らないようだった。周りの物がミニチュアサイズなことや機械や魔法のことについても、首を傾げるばかりでなんら有益な情報は得られなかった。
まあ見た感じ、文明レベルが元いた世界の中世や近世のような雰囲気なので、多くのことを知らなくても仕方が無いかも知れない。
見た目が幼いおれのことを心配したのだろう、彼らに集落での生活を勧められたが、森の中での暮らしが中々に気に入っていたので、丁重にお断りした。
そしてそのまま気ままな暮らしを続け、今に至るという訳だ。こんな平穏な生活がいつまでも続けばいいなあ。
そんな事を思う今日この頃である。
ーあるエルバフの戦士ー
森の中からその子供が現れた時は驚いた。
まだ幼児にも満たないであろう年齢でありながら、流暢な言葉を話して森で得た食料などを売り付けようとして来た。
それにあの頭からツノが突き出した独特な見た目は、今はすっかり数を減らしてしまった、最早老人達の話でしか聞く事のない
古代巨人族は尋常ならざる力と寿命を持った、かつて全巨人族から神と呼ばれ崇められた特別な存在である。
彼がそこで生まれ、暮らしていると言っていたのは、我々の間で聖地とされ、聖職者や選ばれた戦士しか立ち入る事が許されていない神聖なる土地だ。
元々は古代巨人族達から[戦いの祝福]を受けるための祭祀場があったとされているが、今では伝承だけが残っており古代巨人族の血は既に絶えて久しいと聞いていたが、森の奥深くに生き残りがいたということか……。
あの幼さにしての飛び抜けた知性も、森で一人で生き抜く力も、我々の集落での生活を拒んだことも、彼は自分達とは違う存在であることを言外に伝えていたのだろう。
末恐ろしいものだ、いずれ全巨人族の王となるに相応しい力を身に付けるやも知れぬが、彼にその気はあるのだろうか?
ー初めての友達と暮らし始めて数ヶ月後ー
言い訳じゃないんだが、どうもこの体になってから頭が鈍くなったような気がして仕方が無い。常に寝ぼけている感じというか……。
こんな適当な生活でも病気一つしない頑丈な今の体ではあるが、その分のしわ寄せが脳ミソ方面に来ているというのだろうか?
まあ、集落の人間(最近おれに対して何故か様付け)によるとおれの寿命は数百年とかいうバケモノらしいので、前世ほど時間に追われておらず非常にリラックスした精神状態なのが大きいのかも知れない。
そんなおれだが最近、愉快な出会いがあった。
海岸で釣った海獣(前世の魚やクジラとは違うし、そうとしか形容できない謎生物)を焼いて食っていると、木陰から覗いているおれと同じくらいの背丈の少年と目が合った。
頭に立派なツノが生えており(言い忘れてたが、おれの頭にも同じようなツノが生えている。寝るとき凄い邪魔)、血がよく通っていて健康そうな赤い肌が目立つ少年だった。
よだれを垂らしてこちらを見ていたので、一緒に食うよう誘うと凄い勢いで走って来て、海獣の肉にがっつき始めた。
おいおい、おれの食べる分が無くなっちまうぞ。と一瞬不満に思ったが、数年間一人での食卓というのもそろそろ寂しくなってきた頃だったので、何も言わず一緒に巨大な海獣の肉を食べ進めた。
お互いに凄い食欲で、肉はあっという間におれ達の腹の中に消えてしまった。
食事を終えて残った海獣の骨をつまようじ代わりにしながら、何も言わず森の中へ立ち去ろうとすると、身に付けている毛皮で出来た腰巻を摘まれた。
振り返ると先程一緒に食事をした少年が、捨てられた子犬のような目でこちらを見つめている。
少年はあまり言葉が達者ではないのか片言で、まずは食べ物に対する感謝の言葉をおれに伝えると、身寄りがないことや、一人で暮らすのが寂しいことを伝えて来た。
なんだか話を聞いている内に、おれと似た境遇だったことに対する親近感と、涙目でおれに訴え掛けてくる純粋さに庇護欲を掻き立てられ、ここ数年でグレードアップした我が家に連れて帰ることにした。
今ではすっかり兄弟同然の関係となったその男の子は、名前をオーズと言い、あれからどんな時でもおれの後ろを着いて来るようになってしまった。
まあ狩りや畑仕事も飲み込みが早かったので、彼との暮らしはそれほど不便ではない。
ただ問題が一つ……、彼は成長が早過ぎるのだ。
出会った時はおれと同じくらいの背丈だった癖に、今ではおれより一回り以上大きくなってしまっている。
成長期って言葉で片付けて良いものなのか、これは……。
ーおれ、オーズ。アニキとの暮らしー
アニキは何でも知ってる。おれの知らないこと沢山、知ってる。
それに凄い良いやつ、初めて会ったおれにご飯くれた。
生まれたときから一人で、寂しかった。おれの、初めての家族。
アニキとおれ、ずっと一緒。
これからも、ずっと。
……お腹空いた、アニキを探そう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジョージ:この作品の主人公? ある朝起きたらワンピースの世界にいたというなんとも強引で適当な設定の男。ワンピとかいう修羅過ぎる世界で生きることになってしまったが、元々の細かいことは気にしない呑気な性格ゆえか、本人に危機感はあまり無いようだ。頭にツノが生えてる、彼としてはかっこ良くて気に入ってるらしい。古代巨人とかいうロマン溢れる種族の血を引いてるらしい。すごく体が頑丈。ちなみに前世ではワンピースの内容をまったく知らない激レアな日本人である。
オーズ:この作品のマスコットキャラ。原作の設定では
ウォーランド:新世界にある島。点在するいくつもの集落がそれぞれ首長国を形成している、エルバフもその中の一つ。ジョージとオーズが暮らす森はエルバフの近所で、昔は古代巨人達がひっそりと暮らす神聖な森だったようだ。今もジョージとオーズがいるから間違いではない。余談だが原作の巨人達が噛ませ犬だらけなのは何故だろうか? リンリンちゃん怖い。
評価、感想お待ちしております。