ー海岸で最悪な拾い物をした数日後ー
ある日、オーズを連れて海岸で釣りをしていた時のことだ。
いつものお気に入りポイントで糸を垂らしていたのだが、その日は釣果が芳しくなく、新たな場所を開拓してみることにした。
良さげな地形を探してしばらく歩いていると、ぐう〜とオーズのお腹から大きな音が鳴ったので、持って来た干し肉をあげるとオーズはすぐに干し肉に齧り付いて、見ているこっちまで嬉しくなるような満面の笑みを見せてくれる。まったく、可愛いヤツめ……。
そんな事を考えながら、オーズがおやつを食べ終えるまでボッ〜と水平線を見つめていると、何やらボロボロの大きな木材がこの島に向かって流れて来るのが見えた。
スーパー肉体(日に日に身体能力が増して行くので、便宜上そう呼ばせてもらう)に搭載された抜群の視力を持つオレの目は、次第にその大きな塊を鮮明に捉える。
あれは……、船か?
この島でも近海をうろつく漁船や、荷物を運ぶ川舟なんかは存在するが、オレの視界に映るのは見た事のない程大きなそれだった。島の外に別の島があるのか、もしくは大陸があるのか不安だったが、あの前世の教科書で見たロマンの塊のような帆船を見るに、やはり海の向こうから来たと見るのが妥当だろう。
もっともボロボロな船はほぼ横転していて、波に流されるままになっている様子で、乗っている人間が生きているとは思えない惨状だった。
……この辺の海は荒れるからな、運が悪かったと言えばそれまでだが。
外の世界や大きな船に対して思いを馳せていると、遥か彼方に見えていた船は波に揺られるまま、段々とこちらに近付いて来て、おれ達の近くの海岸に辿り着くと、浜辺に乗り上げた衝撃でバラバラに崩れ落ちてしまった。
ふと振り返ると、おれと同じ光景を眺めていたオーズが、目をキラキラと輝かせて興奮した様子でおれに話し掛けて来た。
おれだって今知ったのだから当たり前だが、オーズはこの島の外に大きな世界が広がっているであろう事など知る由もない。というか崩れ落ちたあの船が何に使う道具なのかも、理解が追い付いていないようだった。
前世の知識を振り絞って航海や貿易、海賊などについて語ってやると、オーズは尚更興奮して船の残骸に向かって駆け出して行った。
まあ中にお宝や食料が積んであるかもしれないし、生存者がいるなら助けてやるのもやぶさかではない。
使えそうな木材を選り分けながら船の残骸を調べてみると、武器や生活用品などの金属製品、外の世界の硬貨だと思われる金貨や銀貨、果ては紙幣だと思われる紙の束まで出てきた。
だが何より気になるのは、そこらに何体か転がっていた死体のサイズが、おれやオーズと比べてやたらと小さい事だった。外海は小人達の世界なのだろうか?
金属製品は集落の鍛冶屋に持っていったら、溶かして再利用できるだろうが、大量にあった外の世界の通貨はこの島では、何の役にも立たない。まあ何かの機会に使えるかも知れないから、家の中に大事に保管してあるけどね。
目下の問題は……、オーズが見つけた宝箱に入っていた
オーズが嬉しそうに抱えて来た小さな宝箱、金銀財宝を期待して開封したその箱の中には、不気味なうずまき模様の果実が二つ入っているだけだった。
金目の物を期待していたおれとしてはガッカリだったが、宝箱に大事にしまわれていたのなら、とても美味しい果実なのかも知れない。オーズもおれも非常に頑丈な体をしているので、毒か何かだったとしても滅多なことにはならないだろう。
そう思ってその日の夜にデザートとして、オーズと一緒に一人一個ずつ、果実を食べてしまったのが運の尽きだった。
……次の日、朝起きると我が家は全焼していた。
この日記を書いている今は丁度、オーズと二人で家の再建作業に明け暮れているところである。
ーおれ、オーズ。アニキは溶けるし、おれはボカン‼︎なるー
きっと、あのマズい木の実のせいだ。
アニキは真っ赤でアッチッチな水になって、家、燃やしちゃった。
おれも歩いたり、何かに触ったりする度にボカン‼︎なる。
外の世界のビョーキ、もらっちゃったんだ……。
でもアニキと一緒に練習したら、ボカン‼︎ならないコツ覚えた。
ちょっと、狩りに便利。あなを掘るにも、便利。
でも、アニキもおれも海、泳げないなった。川、泳げないなった。
ちょっと、便利じゃない……。
でも今日も山にあなを掘ってビョーキの練習してたら、キラキラ光る物がいっぱいでてきた。
とってもキレイ、アニキにも見せてあげよ。
ー能力と家の改築ー
信じて貰えないかも知れないが最近、おれの体はマグマになった。そしてオーズの体は爆発する。恐らく先日、難破船で拾った果実の影響だろう。それを食ったらまるで前世のマンガの世界のように、おれとオーズは超能力が使えるようになったという訳だ。
しかし……、二人揃ってよくもこんなに役に立たない能力を手に入れたものだ……。
空を飛んだり出来たら気持ち良さそうだし、食べ物を生み出せたら食料に困ることはなかっただろう。だがおれ達が身に付けた能力では、せいぜい火を起こす事が簡単になったくらいである。
もっとも二人とも火力がド派手過ぎて、慣れない内は辺り一帯を吹き飛ばしてしまう事も多かった。お互いに頑丈な体で良かったね、と慰め合うおれとオーズであった。
元の家が全焼して家を改築(というか新築)するハメになった訳だが、実はかなり良いタイミングだったかも知れない。何故かと言うと、おれとオーズの体がデカくなり過ぎて、元々の家が少々手狭になって来たと感じていたからだ。
昔は見上げる程の大きさだったそこらの樹木も今では目線を並べるようになり、オーズに至ってはおれより更にデカく、身長はおれの約1.5倍にも達する。
おれ達がまともに暮らせる家となると……、正直自分達で建てるのはそろそろ限界かも知れない……。これからも自分達がデカくなることを考えれば、掘っ立て小屋に毛の生えた程度の物では強度が致命的に足りなくなって来る。ここは集落にいるプロに頼むべきだろう。
しかしなあ……、金が無いんだなあ……。
なんて感じで悩んでいたらオーズが遊び疲れて帰って来たようだ。両手にいっぱいの黄金を抱えて。
ファッ⁉︎ 黄金……⁉︎
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海:すごく広い。ウォーランドでは現在、外洋への航海がまったく行われていないようだ。まあ危ないしね。外の世界では世界政府なる組織が主導して、段々と島と島との間での交流が盛んになって来ているらしい。実際の航海って調べれば調べるほど過酷、でもワンピースはファンタジーだしね、水も食料も何とかなっちゃうもんよ。
難破船:ナンパ船ってカタカナで書くとすごい陽キャっぽい。ダンスホールとかありそう。荒れ狂う新世界の海では、きっと遭難も珍しくない。運が悪かったらウォーランドの海岸に漂着してバカ二人に死体をあさられる。小人達が乗ってる‼︎ 外の世界には不思議な種族がいるものだ……。
不気味なうずまき模様の果実:宝箱の中に大事に保管されてたゲロマズな果物。ゲロマズ(大事なことなので二回言った)。ジョージとオーズは、もし美味しかったら分け合って二つとも味見しようと思っていたので、何気にそのマズさに命を救われていたりする。こんな怪しい物を食うのは正気じゃないと思うのだが、古代巨人の二人は滅多なことではお腹を壊したり、ケガをしたりもしないので少々頭が鈍っているようだ。外海にて[悪魔の実]と称されている海の秘宝。ジョージが食べたのは[マグマグの実]、オーズが食べたのは[ボムボムの実]とそれぞれ呼ばれているらしい。……まったく、役に立たない能力だぜ‼︎
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