狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif   作:睦月透火

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まだ続き。
そろそろ動き出すと思うの……

覚悟、できてる?
ウチはまだ出来てない……(ぇ?



第123話 語られない物語(4)

 現行のディビジョン艦では最も足の速いスサノオが地球へ降りて護を回収した後、火星圏で合流を果たしたGGG艦隊。

 

 合流後、大河は杞憂であればと思いリュシオ達に連絡を取ろうとしたのだが……

 

「……ダメです。量子通信ネットワークにも掛かりません……どうも、“例の現象”が主に量子空間へと揺らぎを与えているようで、通信用の波形が安定しない上、不連続波形によって完全に打ち消されています」

 

「何という事だ……!」

 

 既に宇宙へと旅立ったリュシオ達へ、応援を乞う通信を試した猿頭寺の報告に、大河は驚愕するしか無かった。

 

 通常の物理法則にはほとんど影響を及ぼされないとされる量子同士の共振作用を利用して情報の転送を行う量子通信──その空間自体へと、宇宙の片隅で起こるあの現象は影響を与えていた。

 その為、通常ならば誰も邪魔すら出来ないはずの量子通信は不可能となり、リュシオ達に連絡すら取れない……

 

 幸いな事に何故か物理的な影響は無く、地球とのレーザー通信は邪魔されず通じているのだが、コレは双方の位置が正確に掴めなければ繋がらないピーキーなもののため、現在位置が不明なリュシオ達を相手には使用不可である。

 

「うぅむ、これほどまでに影響があるとはな……」

 

 雷牙も“宇宙侵食現象”の詳細を知ってか知らずか、目の前で引き起こされる影響がこれほどまでに広範囲に及んでいる事実を目の当たりにし、唸るしかなかった。

 

「量子波形のサンプリングデータが有れバ、波形を修正して強める事は出来ませんカ?」

 

 スワンは通常通信と同じ解決策が通じるのではないかと提案するが、その提案を雷牙は否定した。

 

「幾らサンプリングを取っても、この嵐の様な波形の乱れでは調整は無理だ。僕ちゃんでも最低1日は掛かるなぁ……」

 

 世界十大頭脳に名を連ねる獅子王雷牙といえども、量子空間に起きる嵐のような量子波動の乱れを打ち消す方法に手は伸びても、時間が掛かり過ぎると弱音を吐く。

 

 科学の進歩は日進月歩なれども、未だに未知数が多分を占める量子空間の法則や現象などは、未だに雲を掴む様なもの……まさに現代科学の限界であった。

 

「そもそも量子通信技術は稀星くんが1人で組み上げたモノだ。僕ちゃん達には原理こそ理解できても、実際に詳細な設定まで扱うには前提や知識がまだまだ圧倒的に足りない……あの娘は、僕ちゃん達今の人類が理解出来る範疇でしか技術を教えなかった。()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()からね」

 

 そのままの形での利用はできるが、応用までは完全な理解が出来なければさせない……それが、稀星シオンが地球人類に技術を教える時の“鉄則”だった。

 

 “理解が及ばない領域は、まだ知らない方が良い”──

 

 多様な意味で、地球人類は()()である。良い意味でも、悪い意味でも──

 

 それを良く知るシオンだからこそ、技術を伝える相手が上手く扱えるかどうかを何度もテストし、厳しい条件を乗り越え合格した相手にだけその“叡智”を授けた。

 

 欲をかけば厳しい制裁が(多方向から)飛んでくるため、技術を学ぶ側も相応の覚悟を以て挑んだ。

 

 その為か、これ以上ない位にシオンの齎した超技術は悪用されず、世界は確実に変革を続けている。

 

 ……この変革をどう捉えるかはその人次第ではあるが、少なくともGGGに属する面々や多くの一般人の目線に於いては“良い傾向”であると捉えていた。

 

「……打診はオートに切り替えて続けてくれ。偶然でも拾ってくれれば、我々の直面する事態にも気付く筈だ」

 

 大河はいずれ連絡も付くと信じ、自動送信で続けるように指示する。

 

「原因の宙域への到着時間は?」

 

「今の地球の科学力では、スサノオ以上の速度は出せん。それに我々の知る最も速い船であるジェイアークは、リュシオ君と共に宇宙の何処かだ。連絡が付かん事には連携も出来ん」

 

「……でも確か、セレスティアⅠの航路は追跡出来るんですよね?」

 

 命の疑問に、雷牙は難しい顔で返答した。

 

「確かにあの船には航路追跡用の電波発信機構はあるが、発信間隔は6時間に一度だけ。しかも高出力とはいえレーザー通信だ、宇宙空間では光とて、距離による遅れが生じる」

 

 ましてや、セレスティアⅠはジェイアークによる曳航で太陽系を脱出するルートに乗っているのだから、その速度は推して知るべし。

 

「……彼女の方でも、この事態を把握している事を信じるしかない」

 

 僅かな望みではあるが、同じ現象を観測していれば、動かない彼女ではない……GGGはリュシオ達を信じ、前に進むしかないのだった。

 

──────────

 

 ──そのリュシオ達はと言うと……

 

『……気になりますか? 地球の事……』

 

 ジェイアークのブリッジから宇宙を眺めながら、幾巳とリュシオは語り合っていた。

 

「……違う、と言えば嘘になる……僕は生体兵器として生を受けたが、完全な兵器にはなれなかった……」

 

 幼い身で地球へ逃れ、戒道夫人に拾われ育てられた幾巳にとっても、地球は護と同じく“第二の故郷”と呼べる場所だ。

 

 もちろんリュシオにとっても、地球は両親やシオンと再び出逢えた奇跡の星であり、自分にとっても守るべき星だと感じている。類稀なる奇跡の果てに、宇宙の片隅で生まれた青の星──

 

 この星と人々がリュシオや幾巳に影響を与えたのは言うまでもなく、今の2人は地球を“失いたくないもの”の一つとしていた。

 

《じぇい、あるま、銀河系中心ニ異常ナ反応ヲ感知シタ》

 

「……何?」

 

「解析出来るか?」

 

《分析中……何カガ宇宙ヲ侵食シテイルヨウダ……光、電波、重力、アラユル反応ガアノ先カラハ観測デキナイ》

 

 トモロの解析により、銀河中心付近で起きた“謎の現象”は、宇宙そのものを侵食し、あらゆる反応を掻き消していると分析された。

 

『……スペクトルの乱数調整は試しましたか?』

 

《ソチラモ解析結果ハ同ジダ。アラユル反応ガ“喰ワレテイル”》

 

 トモロ曰く、どんな方法であろうとあの“黒いモノ”は発せられた全てを喰らい尽くし、“自身”を広げるための“糧”にしているのだと言う。

 

「……トモロ、“アレ”が宇宙全てを覆い尽くすとどうなる?」

 

 幾巳の問いに、しばし沈黙するトモロ……だがその後トモロが予測した結末は、全員を驚愕させるには十分なものだった。

 

《最終的ニハ全宇宙ノ消失……全テガ存在シテイルカモ分カラナイ、“虚無”ノ世界ヘト成リ果テルダロウ》

 

 全て何もない、感じられない……光も、音も、そして隣人の温もりすら感じられない、()()()()()()になる。トモロはそう答えたのだ。

 

「……そんな……」

 

『それは……あまりにも、哀しすぎます……』

 

「……………」

 

 この解答には、さすがのJも言葉を発せなかった……原種との長き戦いをようやく終え、赤の星の戦士として、彼らはようやく一区切りのケジメを付けられた。だが新たに現れた脅威は、自分達を支えてくれた隣人らの存在そのものから消し去ってしまう。

 

(……やはり、俺達はもうあの星に囚われてしまった、と見て良いのかもしれんな)

 

 ふと、Jはそう思った──思い返せば、かつて機界四天王であった頃からJは、何かしらの違和感を地球という星に感じていた。それが一体何なのかは見当もつかないが──

 

──────────

 

 ……一方その頃、シオン達もこの状況に動き出していた。

 

「全く……禁忌も禁忌よ、“アレ”は次元改変……よりも凶悪なヤツ。私達でも触れたら終わりね」

 

 アトラスはため息交じりにそう告げた。

 あの黒い力の奔流は次元そのものが持つ情報因子を書き換え、“何もない”という状態に書き換える……有無を言わさぬ“絶対消滅”のエネルギー。

 

『対抗手段は……?』

 

「……無いわよそんなの。触れたもの全てを“無”に書き換えるんだから、対抗なんて不可能よ」

 

 取り付く島もない……アトラスも申し訳なさそうだが、事実である以上、シオンも反論すらできない。

 

「対抗……とまでは行かないでしょうけど、もしかしたら侵食を遅らせる事なら……」

 

『何をすれば良いの?!』

 

 アトラスの呟きに、即反応するシオン。この状況を座して待つなど、彼女には出来ない……やれる事があるのならとことんやるだけ。出来るか出来ないかではなく、やるかやらないか……

 

 動かなければ、未来は潰える……ならば不可能を可能にするべく動けば良いだけだ。

 

「目には目を……よ。“アレ”は次元の狭間から漏れた宇宙開闢のエネルギーを利用したもの。なら、コッチも同じ力を借りれば良い……たぶん貴女なら、侵食も受けないだろうしね」

 

 アトラスは、木星とは違う場所で漏れた“ザ・パワー”を利用したものだと黒いエネルギーの事を指して言った。

 ならば、同じ“ザ・パワー”を利用すれば、均衡くらいは保てるのではないだろうか?

 

 理論はどうあれその推測が正しいのなら、少なくとも侵食を遅らせるくらいは可能かもしれない……

 

『……あまり頼りたくは無いけどね……』

 

 シオンも“ザ・パワー”の本質は身に染みている。新たなる宇宙を生まれさせる……その為に、既存の世界全てを滅ぼす事すら厭わないもの。

 

 純粋にして混沌、全能にして無知なる“力”(エネルギー)──

 

 ──だがアトラスは、“今のシオンになら扱える”と言い切った。

 

『……それ、どういう意味?』

 

「言葉通りよ。貴女の魂……精神はこの世界の外から来たもの。だからこの世界の法則、今回は“ザ・パワー”の力にも影響されないわ。それに、貴女が生み出したあの子(アビストレイデス)は、“ザ・パワー”そのものすら苗床にして生まれた……最初から持っているモノに、影響されるほどヤワな存在では無いでしょう? あの子は」

 

 心底初耳であった。自分の魂は何となく分かるし理解も出来た、だがアビストレイデスの事は本当に初耳──そもそもシオンは、アビストレイデスの誕生には関与が薄い。

 

 確かに“切り札”としてコアを木星に隠しておいたのは自分だが、その後はほぼ感知していないのである。

 

 シオンからすればあの時、突然目の前に現れて懐かれ、従ってくれていると思っていたのだから……

 

『……えぇ……』

 

 アトラスの言葉に、辛うじてシオンが取ったリアクションは──ドン引きだった。




アビストレイデス誕生秘話(簡略版)──
簡単にいえば、シオンが“切り札”として隠していた最後のコアが勇者王時空の木星の影響とか“ザ・パワー”の力を糧に成長した存在。
……そもそも、これまであまり時間を掛けられず急成長するしか無かった他の子達に比べて、アビストレイデスのコアは木星に隠されるまでの間じっくり成長していたものであり、そのお陰でシオンの魂の性質もしっかり受け継いでいる。

そういう訳で、アビストレイデスは“ザ・パワー”に()()()()()()というチートの極みを知らずに手にしていたのでありました……いや禁止チートだろオイぃ?!



……まだまだ続きます。

アレをやるべきか……やらざるべきか……?

  • 良ければやるべし
  • シナリオ次第
  • まだだ、まだ慌てる時間じゃない
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