今回は先に言っておきますとゼロ魔とのクロス。本編の合間の短編、と言う形でお送りします
ただ終盤書いていて大分詰まったので今後改訂するかもです……
ガリアでのタバサを巡っての戦いがひと段落してしばらく経ったある日
何時もの様にトリステイン魔法学園の庭にあるテラスに集まっていた才斗達、そこでルイズは昔から気になっていたことを才斗に尋ねるのだった
「俺が昔言った台詞?」
「ええ。召喚してすぐ位の時よ、私がふさぎ込んだ時に、貴方言っていたじゃない。才能があるかどうかは見方次第だ、って。貴方も何かあったの?昔」
そう言えば…と才斗は思考を巡らせる。確かに、授業で教室を爆破してしまったルイズに対してそんなことを喋った記憶があった
「まあね。昔の俺とあの頃のルイズは似ていたと思う…才能なんて何もない、ってふさぎ込んでた時期が俺にもあったんだ」
「ええ?ダーリンが?信じられないわ」
「まったくだね。文武両道、冷静沈着を地で行く君に才が何もないなんて」
ギーシュとキュルケが驚きの声を上げる。他の面々も口には出さないが、顔には驚きが浮かんでいた
「俺の母親は弓矢の天才でね。それこそ動かない的なら1リーグ先だって百発百中だ」
「…サイト『の』母親?それとも別の母親?」
の、を強調して質問したのはタバサだ。何せ才斗には70人以上の母親がいる、軽く話題に出してみたら内容が食い違っていたことも一回ではない
「ああ。俺の直接の母親さ。確かスマホに写真が……あった。この右側に立っているのが俺の母。北郷秋蘭だ」
スマートフォンを操作して表示したのは、才斗が大学受験に合格した時、大学の正門前で一刀と秋蘭の三人で記念撮影した写真だ
照れくさそうにはにかんだ才斗を挟んで左に、才斗の肩に手をまわして笑顔を浮かべる一刀が、右には涼やかにほほ笑む秋蘭が写っている
「うわあ……綺麗な人……」
「うむ、目が覚めるような美女だ。サイト、君の父君が羨ましい!……いやでも70人は流石になあ」
「この人が……確かに、髪の色と目元は貴方に似ているわね」
「……口元は、お父さんの方にそっくり」
それぞれがなかなか知りえないこの集まりの中心人物の両親の姿に興味津々な中、才斗は話を進めていく
「で。俺はそんな格好良くて綺麗な母に憧れていたわけだ。物心がついてしばらくして、母の様に弓の腕を鍛えたいと思ってそれを父と母に申し出たのさ」
才斗がその話を秋蘭たちにしたのは小学校低学年くらいの頃、自分の後を継がんとする息子は、冷静沈着を信条とする母も喜ばしかったのだろう
普段よりも笑顔に熱が入っていたのを才斗は覚えている
「だが、結論で言えば俺にはびっくりするくらい弓の腕はなかった。毎日毎日何時間、それこそ掌の皮が捲れても何回も弓を弾き、数えきれない数矢を射ったよ……どれもこれもへろへろと情けない軌道で地面に吸い込まれ、的に届きすらしなかった」
「サイトさんが……信じられません……」
「そうね。ダーリンって何でもできるって印象だから、ちょっと想像つかないわ」
「俺だって人の子さ。出来ることも出来ないこともある。ただ、それには思いが至らなかったんだ。まあ、小僧だったからな」
悔しかった、腹立たしかった、涙が止まらなくて、かんしゃくを起こしたように叫んで
両親を大分困らせてしまった。尊敬している二人の様になりたかっただけなのに
泣き疲れて父に背負われた帰り道、父の隣に並んで歩く母が俺の頭を撫でてくれていた
「その時、父さんに言われたんだ。俺が母に憧れているのは、どういう所だったのか。どういう自分になりたいのか、ゆっくり考えて結論を出せ、ってね」
もしあの時、自分がそのまま弓の鍛錬を続けると言っても、一刀も秋蘭もそれを否定はしなかっただろう。ただ、才斗には理解してほしかったのだ
生き方なんて千差万別、好きな道を進むべきだし、したいことをするべきだと
立場に縛られて苦しい思いをしていた妻を何人も救ってきた一刀だからこその配慮であり
後漢時代と違う自由な価値観の現代で生きているからこそ、秋蘭もそれをなおのこと望んでいた
「それで、君はあれを使う道を選んだ、と言う事かい?」
「ああ。俺が憧れていたのは、自分の全力で世のため人の為、家族のために戦う母達や父の姿だったんだ。だから、何を使うか、何が出来るかの方法までは捕らわれるのは間違い。色んな武具を試し、一番俺にあってたのは旋根、トンファーだった。だからそれを使っている、無理に執着はしない。それだけの話なんだよ」
才斗が選んだ武器は、空手道の武具、トンファーであった。武器と防具両方の側面を持ち、自在にそれを変化させあらゆる戦況に対応できるその装備は、弓の才では及ばないながらも、戦術眼では秋蘭に匹敵する彼の取っては最適な相棒であった
元々は両腕に七星狼旋と名付けたトンファーを装備して愛用していた才斗だったが、ハルケゲニアに召喚されて間もなくの土くれのフーケとの戦いで右手で装備する側の七星狼旋が破壊され、間もなく入手したインテリジェンスソード、デルフリンガーの鍔の部分に七星狼旋の残骸を組み合わせ改造したインテリジェントブレードトンファー七星龍旋を使用している
「けっ、俺をこんな姿にしておいてよく言うぜ、相棒」
カタカタと鎺を鳴らし、才斗の足元でデルフリンガーがボヤく
「まあ…虚無の力がこの世界で持つ特別な意味合いを考慮すると、俺の言葉は無責任だったかもしれんが、な」
「いえ、そう言い切ってくれた方が、私は安心できます。サイトさん」
ルイズやテファニアが背負うものの重さは、一人の少女には荷が勝ちすぎるだろうと才斗は考えている
自分の存在が少しでも支えになればいいと思っているが、それだけでは不十分だ
かつて父が覇王の宿命に会った少女を介抱したような、宿命そのものを打ち砕くようなことが出来れば…と静かに悩んでいるのもある
「そう言う事だったのね。貴方にはお母様とは違う才能があって、私も虚無の力があった……」
胸の前で手を握りしめ、瞑目するルイズ
助けを求め、縋るように呼んだ才斗と自分にあった、自分では気づかなかった才能と言う共通点。運命的な出会い、と言えばロマンチックではあるが……
「まあ君の場合。少なくとも父君の才能だけはほぼ完ぺきに受け継いでいるとは思うけれどもね……」
「ぶっ!あ、あのなあ」
そう、ギーシュの言うとおりだ。と紅茶を噴き出して蒸せる才斗をじとりと睨んでルイズはうなづく
70人以上の女性を侍らせた才斗の父親の、その女たらし人たらしな所だけは見事に才斗は受け継いでいると言わざるを得ない
今や彼は学園内の中心的人物であり、ここに集まっている女性陣の殆ども今や彼の恋人だ。該当者はギーシュの台詞に顔を赤くして目をそらしている、無論ルイズ自身も
主人である自分を差し置いて、とか。そもそもなんでなし崩し的に一夫多妻状態になっているのだ、と言う突っ込みが胸に浮かぶものの
何だかんだで受け入れている自分もいる。少なくとも才斗は外見的特徴で相手をからかったり露骨に贔屓したりはしないし、優しいし、格好いいし
「君も大変だねルイぐへぅ!」
「ま、まあ私は寛大なご主人様なわけだし!?多少の目移りくらいはゆゆゆゆ許さないこともないわよ!?」
ギーシュに杖を食らわせて黙殺するルイズ、その顔は誰から見てもわかるとおりに赤い
「有難き幸せにございます、ご主人様……これから先何があろうと、俺はルイズを裏切らん。主従とかは関係ない、男として、絶対にだ」
「うっ……」
「まぁ。返り討ちですわね、ミス・ヴァリエール?」
「う、うるさ-い!」
「ははは。ルイズは可愛いなぁ」
才斗の真剣な表情にシエスタの口撃と言うコンボでルイズの羞恥心も限界に達してしまった
いつも通りに爆発するルイズの頭をいつも通りに才斗が撫で、周囲で笑う仲間たち。これからも続いて欲しいと才斗が願う風景がここにはあった
この風景を守りたい、だから自分は力を求めた。だから、あの時の選択は間違いなかったのだろう
青く澄んだ空を見上げ、その先で、母も父も同じように空を見上げているのだろうか
(いつか必ず帰ります。でも今はまだその時じゃない。こちらは何とかやっていますから、心配しないでくださいね)
届かぬと知りながら、心の中で、家族に届けと念じてみる
一瞬空に、筋骨隆々な漢女の幻影が見えた気がしたが気のせいだ。絶対に、多分、きっと