クロスオーバー…でありながらクロス先を出オチにするという暴挙
そしてそして短くてごめんなさい!もしかしたら後々加筆するかもしれません!
私はゲームが好きなのです
小さいころ体が弱かった私は、兄や姉や妹たちと一緒に外に出て遊ぶことは中々できませんでした
そんな私が、皆と思い出を共有できたのは、ゲームがあったからなのです
家族と、友達と、毎日のようにゲームをしました
旅をして、戦って、仲間を集め、強くなり、世界を救いました
喜びも、悲しみも、怒りも、ゲームは教えてくれる
それでいて、ゲームは安全なのです。何度負けて全滅しても、また立ち上がり、やり直すことが出来る
誰もが安全に、笑顔で、現実ではありえない冒険を、物語を、世界を楽しめるもの
それがゲーム
かりそめのデータだから、と言う人はいます。でも、例えば映画や絵画と、ゲームは何が違うのでしょう?
作り手の思いが籠った作品であることに変わりはないはずなのです
だから私は、ゲームクリエイターの人達を尊敬していたのです。須らく
……その時までは
命を弄び、ゲームを穢し、欲望のままに神を気取ろうとする男
大恥をかかせてやろうではありませんか
VRMMORPG『ソードアート・オンライン』
発売前から高い期待値を持つVRMMORPGのニューフェイス。予約開始からわずか数秒で初期ロット1万枚が完売したそのゲームがようやく発売され
幸運に選ばれた1万人のユーザーが、その世界を存分に堪能していた
その時までは
「幸運にもソードアート・オンラインの初期ロット購入を果たし、ログインしてくれたプレイヤーの諸君。まずはおめでとう、そしてありがとうと言わせていただこう。私の名前は茅場晶彦」
チュートリアルの村に集められたプレイヤー達が向ける先、夕暮れの空にローブ姿の巨人が浮かび上がっていた
「諸君等は、既に、メニューからログアウトボタンが消滅している事に気付いていると思う。しかし、これはゲームの不具合ではない。これは紛れもないソードアート・オンライン本来の…仕様である」
どよどよと、プレイヤー達のざわめきが大きくなっていく
個々人の不安は集団の中で共鳴・増幅されて一つの大きなうねりになる
それを見て、ローブの内側で茅場は満足そうに頷き、同じように口を開いた
「これはゲームであって遊びではない。諸君等は自発的にログアウトする事は出来ない。そして外部の人間の手によるナーヴギアの停止、あるいは解除も有り得ない。諸君らがこのゲームから解放される条件はただ一つ。このゲームをクリアすれば良い。各フロアの迷宮を攻略し、フロアボスを突破、第百層にいる最終ボスを倒せばクリア…それが出来ず、HPがゼロになってしまえば、ナーヴギアからマイクロウェーブが放出され、諸君等の脳を焼……」
「くわけないじゃないですか~」
突如として、ローブ姿の巨人にノイズが走り、あわてて周囲を見回すような動きをした後に空中から姿を消した
代わりにそこに現れたのは、何とも奇妙な何か、であった
金色の胴体に白い楕円形の顔、頭の上には三角帽子が乗ったそれは、幼い子供がつたないままに作った人形の様にも、大阪万博で有名な太陽の塔を横に広げたような姿をしている
腕をぱたぱたと振りながら、その像、おそらくアバターは少女らしき声で急展開についていけないプレイヤー達に語り掛ける
「え~テステス、テステス…皆さんどうも、知っている方はお久しぶり、知らない方ははじめまして。私S.S.サン・サポーターと言う名前のおせっかいなしがないハッカーなのです」
「サン・サポーター!?」
「あの、ヘルバの後継者か!」
ネット事情に詳しい何人かのプレイヤーは、人形が名乗ったその名前に驚きの声を上げる
サン・サポーター。太陽を支えるものと自称するそれはは、ここ数年の間にネットの噂話に登場するようになった正体不明のハッカーの名だ
だがハッカーと言っても、電子世界において犯罪を行っているわけではない
企業や公的機関の不正のリーク、何らかの事件を引き起こそうとする人間の行動を阻止するなど、ホワイトハッカー的な活動しか行っていないとされ、自称通りのおせっかい焼きだ
かつてのイモータルダスク事件やGU事件等の背後でも活躍し、解決に貢献したとされている
「さっき茅場さんが良くわからない事をぺちゃくちゃと喋っておりましたが、皆さんはどうぞ気にせずこのままお好きになさって構いませんよ~。今ちょちょっと手を加えたので、消えているメニュー画面のログアウトボタンも復帰していると思うのです。私だけないんだけどーって方はヘルプデスクにメッセージを送ってくだされば適時対応いたしますのでご安心を~。まあおそらく警察の方がご自宅にお伺いする可能性もありますので、一度ログアウトしたほうがいいかもしれませんね~」
フムフム、とうなずくようなしぐさでサン・サポーターは言う
「まあ今回の事は、変な夢でも見たと思って忘れた方がいいと思います~。ゲームはゲーム、ゲームは遊びであるべきですからね~。魅力的なゲームが一つ減るのは残念ですが、しっかりと返金には対応させていただきますので。それでは皆さんさようなら~」
パタパタと手を振り、サン・サポーターのアバターは消えていく
そこには静寂だけが残った、さっきの茅場を名乗ったローブ姿のアバターも、二度と現れることはなかった
「なんだったんだ…結局」
剣を背中に担いだ黒髪黒装束の剣士が、呆れたようにつぶやいた言葉は、誰に聞かれることもなくデータの海に消えていく
殺人容疑、準備罪で茅場彰彦が逮捕され、ソードアート・オンラインの全ソフトが回収されるというニュースが世界を駆け巡るのは、その数時間後の事である
「……ふぅ、こんな感じですかね~」
「お疲れさん。
夕方の心地よい風が通る自室の中で、北郷伊吹はHMDを顔から外し、一つため息をついた
やれるだけの事はやった、サービス開始直後の回線混乱の最中、ソードアート・オンラインの内部に潜入、ありとあらゆるデータを総ざらいし、プレイヤーキャラクターのHP残量が1から減らないように細工し、そこから経由して全プレイヤーのナーヴギアのプログラムを正常に書き換え、自己顕示欲に推されて現れた茅場彰彦の長野県にある隠れ家を見つけ出し、自殺させないように拘束する
ギリギリのタイミングだったが、自分と、仲間たちの尽力のお陰で何とか間に合った
脱力する伊吹のはちみつ色の髪を、隣に居た銀髪の青年が少しだけ乱暴に撫でる
「おお~、亮お兄さんの手は大きいですねー。撫でられるとやはり癒されるのです」
「功労者だからな、お前が……もうちょっとこっちが気付くのが早かったら、先に俺達が潜り込んで何とか出来て、お前に危ない橋わたってもらうこともなかったんだけど」
ネットワークの中で起きるトラブルや悪事に対応するだけの力を青年、三崎亮は手に入れている。巨大企業CC社の中にいる仲間たちと協力すれば、今回の事件にもゲームの中に文字通り突入して対応することも可能ではあった
だが事態を知るのが遅すぎた。「歪み」を生み出さずに、自身の持つ力を別のゲームの中に入れるには時間がかかる、一人の犠牲者も出さないようにするには、伊吹の力を借りるしかなかった
もう四日も伊吹は寝ていない。元から細く白いその体が、猶の事透き通ってしまったように見えて、亮の顔は暗い
「いえいえー。出来ることを全力でする、関わったなら最後まで、が伊吹の性分ですから。それに、ネットワークで貢献できたぶん、千草ちゃんや智香ちゃんや志乃ちゃん、ニナちゃんに一歩リードできましたしね~」
「そ、そうかよ……でも、それだけじゃねえだろ?事情を知った時の伊吹の顔、凄かったぞ」
こう言う女性心を擽る妙な鋭さが、四六時中母に撃沈させられているくせに、大事な時にはしっかりと母の気持ちを察する父親にそっくりに思えて伊吹は心中で苦笑いを浮かべる
「……伊吹は、ゲームは安全安心でなければいけないと思っているのです。レーティングの話じゃないですよ?昔のThe worldのような、そして今回のソードアート・オンラインの様な、人の命を危機にさらすゲームなんて、あってはならないのです。ゲームは遊びで十分。そこから先に意味を見出すのは、ユーザー個人個人の人生ですからね」
安全で、それでいて心躍る大冒険を繰り広げた幼い日の思い出が、己が知で多くの人の命を奪う立場にあり、そしてそこから解放された母の姿が
伊吹の今を作り上げ、そして行動させる
ゲームを穢すもの、人の命を弄ぶ者への怒り。それが北郷伊吹をサン・サポーターに変身させる原動力
武芸で戦う力も体力もない自分にできる、自分だけの悪との戦い方。お人好しが、お節介をすることが出来る、誇るべき手段
知で、多くの人の夢を、憧れを、居場所を護る事
彼女もまた、母と同じく、知で人を救う軍師なのである
「……普段からそんな顔してりゃいいのによ。ったく」
「おやおや~?惚れ直しましたか?亮お兄さん」
「ばっ!そ、そんなんじゃねえよ!」
そして、一人の男を想い、多くの女性としのぎを削り、そして最終的には全員で……と考える策士でもあるのだ
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