黒鉄家の朝は早い……。
まだ日も昇りきらぬ早朝から、敷地内の道場では威勢の良い掛け声が上がり始めていた。
「それでは、素振り始めッ!!」
「はい!」
――『伐刀者でなければ黒鉄にあらず』
そんな時代錯誤とも言える不文律のもと、黒鉄の血に連なる者たちが老若男女問わず厳しい稽古に励んでいた。
時代が進み、戦闘畑以外に鞍替えする武家も多い中、個人の力を今もここまで重視しているのはこの黒鉄家ぐらいだろう。
「適当に回数を熟すんじゃないぞ! 一回一回、正しいフォームを意識しながら振るんだ!」
「はい!」
道場内を見渡してみても、いい加減な態度で鍛錬に臨む者は一人もいない。
『実力さえあれば身一つで栄達できる』という期待か、それとも『力が足りなければ見限られる』という不安か……。その理由は人の数だけあれど、皆負けるものかと言わんばかりに、一心に竹刀を振り続けていた。
なんとも感心な心掛け。日本の伐刀者たちの未来はきっと明るいことだろう。
「そ、そこぉ! じ、軸がぶれているぞぉ! ももッ、もっと集中しろぉ!!」
「はは、はいぃ! すみませええんッ!」
……否、どうやらそうではなかった模様。
別に彼らは、力を付けたいがために鬼気迫る顔になっていたわけではないようだ。
チラ……、チラ……、チラ……。
門弟たちは気もそぞろなままに、ある方向をチラチラと盗み見ていた。その理由は聞こえてくる素振りの音を
「さあッ……あ、あと50本! 各自、気合いを入れて振れ!」
「は、はい!」
ブン! ブン! ――――ブォオオオオン!!
ブン! ブン! ――――ズバアアアアン!!
ブン! ブン! ――――ドパアアアアン!!
ブン! ブン! ――――ゴガアアアアン!!
「「「………………」」」
――音なのに目に見える、とはこれ如何に?
そんな哲学的疑問を覚えるほどの凄まじい圧が、道場の端から吹き付けられていた。……何人かは物理的にひっくり返ってしまっている。
「……あ、あの、……師範」
「余計なことを言うな。……私は気にしていない」
「いや、まだ何も言ってませんけど……。で、でもやっぱり注意した方が――」
弟子の一人がおずおずと述べた瞬間、師範はクワッと目を見開いた。
「何も言うなと言ってるだろッ。私は全く気にしてないからなッ!」
「そのセリフがもう、気にしているって証拠じゃないですか!」
「う、うるさい! あんなの相手にどう注意しろってんだ!?」
「そりゃそうですけどッ!」
師範と弟子たちが蒼い顔で見つめる先――――道場の隅っこには、この場に似つかわしくない小柄な影があった。
身の丈130cmほどの白髪黒目の幼い子ども。新調した胴衣に身を包み、無表情で竹刀を振るうその姿は、彼らにとってもはや、確認するまでもない恐怖の代名詞。
――黒鉄家長女・黒鉄刹那は、相変わらず何を考えているか分からない佇まいのまま、暴風の如き素振りを繰り返していた。
「フン……フン……フン……」
――ブオオオン! グオオオン! ボシュウウウッ! ズンバラガアアアン!
「「「………………」」」
……控えめに言って、死ぬほど怖かったのである。
(フ、フフフ……。朝から、大勢で……一緒に稽古……。評判を……上げるための……布石なり)
恐怖の視線を向けられる怪物幼女は、無表情の下に不気味な笑いを隠しながら絶好調で竹刀を振るっていた。
王馬と戦ったあの日以降、刹那はこうして毎日、門弟たちの朝稽古に参加し続けていた。数年ぶりに家族以外と会話した結果、刹那は『自分でも事務会話程度なら可能!』と判断。これを機に他者との交流を再開し、自身の風評を改善しようと試みたのだ。
また、もう一つの目的として、自分より強いであろう師範クラス(※そんな奴はいない)に師事し、今以上に実力を高めようという狙いもあった。
……向こうからすればとんだ災難である。
「フン……! フン……! フン……!」
……とはいえ、生来のコミュ障はそう易々とは変えられず、いまだ積極的に話しかけるなどの行動はできていない。
その代わりに彼女が今行っているのが、コレ。
皆の目に留まるところで稽古し、『あわよくば年少者や初心者の指導役に抜擢されないかな?』という、迂遠かつヘタレ極まりない企みであった。……本人としては大真面目なのだ。
「ハッ……!」
力を込めて振り下ろす。
何度も何度も振り下ろす。
音速を超えて振り下ろす。
衝撃波が起きて穴が開く。
慌てて止めて周りを見る。
精一杯の笑顔を浮かべる。
(や、やり方……、聞きに、来ても……いいんだよ……? フフ)
「――ッ!?」
バババッ。
一斉に目を逸らされた。
(……な、なぜ?)
そんな、危険物を見る目に疑問を抱きつつも、刹那はめげることなくアプローチを続けていった。
竹刀の振りが間違っていれば、指摘しようと近付き――逃げられる。
足さばきを反復していれば、教えてあげようと近付き――逃げられる。
打ち込み相手を探していれば、お役に立とうと近付き――逃げられる。
指導方法に悩んでいれば、ちょっと意見を述べようと近付き――逃げられる。
逃げられる。
……逃げられる。
…………逃げられる!
……………………。
気付けば道場内は、刹那の視線から全力で逃げ回る戦場と化していた。
例えるならば――それは狩り場。
哀れな草食獣と化した門弟たちは、善意の捕食者に捕まらないよう死にもの狂いで稽古に励んだ。
実戦さながらの緊張感に包まれる道場内で、走力と野生のカンを飛躍的に高める門弟たち。傍から見ていた師範たちは皆一様に頭を抱えた。……一体何の訓練なんだ、コレは。
そしてやがて、
『あれ? もしかして私……避けられてる……?』と、刹那が真実の一端に達しようとしたところで、
「すッ、すみません、刹那様……ッ!」
「うぇ?」
「お……、お引き取り下さいぃぃい!」
「うぉえぇぇえ……?」
――グイ、グイ、グイッ!
――ガラガラガラッ!
――ポイッ!
――ピシャリッ!
一人の弟子の勇気ある行動により、猛獣は野へ返され、道場内に平和が戻ったのだった。
――ドッ!!
――ワアアアアアッ!!
――ヨクヤッタアアア!
――コノイノチシラズウウウ!
……。
…………。
………………。
「…………な、なぜ?」
共に稽古して仲良くなろう作戦、…………失敗であった。
◇◇◇
――トボ、トボ、トボ……。
「はぁぁぁぁ……」
数分後、道場から離れた雑木林の中を、刹那は溜め息を吐きながら歩いていた。
いかに彼女が重度のコミュ障とはいえ、十日も間近で接していればさすがに気付く。
どうやら自分は、稽古にも混ぜてもらえないほどに嫌われているらしい。……久しぶりにちょっと泣きそうだった。
桁違いの実力と無表情から勘違いされがちであるが、刹那はコミュニケーション能力が壊滅的なだけで、その内面はごくごく普通の女の子なのだ。
……ただちょっと目が死んでいて、表情筋がほとんど動かなくて、人との接し方が分からなくて、日常会話でどもってしまって、……でも戦いのときだけは急にテンション上がって饒舌になってしまう……、そんな普通の女の子なのである。
………………。
…………普通の女の子なのである!
ゆえに、大勢の人間から忌避されるような態度を取られれば、さすがにこうして落ち込みもする。
……ついでに言うとあの日以来、王馬とも一度も話せていなかった。
刹那としてはアレを切っ掛けに徐々に距離を縮めていくつもりだったのだが、弟の方にそんな気はサラサラないらしい。
姿を見つけて近付こうとしても、彼は苦々しい表情を浮かべてすぐに踵を返してしまう。ならば稽古のときに話そうと思っても、王馬はあれからずっと自主錬に励んでいるらしく道場などで顔を合わせる機会もない。
――もしや勢いで『お前を殺す』宣言などしちゃったものだから、顔を合わせづらいのだろうか?
(そんな……。お姉ちゃんは……気にして、ないのにッ。……また、真剣で……斬り掛かってくれても……全然良いのに……ッ!)
刹那は人とのコミュニケーションに飢えていた。
『……殺し合いってコミュニケーションだっけ?』とか言ってはいけない。
「…………もしかして……私、……一生……ボッチの、まま…………? うぅぅ……」
そんな傷心状態で歩いていたからだろうか?
刹那は至近距離に近付くまでその集団に気付けなかったのだ。
――オイ、お前! なに勝手にうろついてんだよッ!
「…………んんっ?」
不意に聞こえてきたのは剣呑な調子の怒鳴り声。その発生源はちょうど目の前の茂みの向こう側辺りだ。
発言者の姿は見えないが、声の高さから考えておそらく彼女と同年代の子ども。それが複数人集まり、何やら激しく言い争っている。
「俺たちの場所使ってんじゃねえよ!」
「そこに居られると目障りなの。早く消えてくれない?」
「そうよ! あんたみたいなのと一緒にされたらこっちも迷惑なの!」
「こんな奴いなくなってくれた方が世の中のためよねッ」
「そうだ、そうだ! 早く消えろ~~」
「きゃははははッ!」
……。
…………。
………………。
「……う……うわ……ぁ」
聞くに堪えない罵詈雑言に刹那は思い切り顔を顰めた。どうやら行われているのは“喧嘩”ではなく、所謂“いじめ”というやつのようだ。
刹那自身に経験はないが前に何かの本で読んだ記憶がある。確か――大勢で寄って集って一人を攻撃する迷惑行為――だったか? そのとき読んだ事例も大概には酷いものだったが、今向こうで展開されているコレも引けを取らないくらいには見苦しい。
子供時分からこんな行為をして楽しむなど、彼らの親は一体どういう教育をしているのだろう?
……それともまさか自分が知らないだけで、これが同年代における通常のコミュニケーションなのか? だとしたらなんと恐ろしいのだ、子ども社会とは……!
「おい、何とか言えよ! 無視してんじゃねえぞ!」
「弱過ぎて親にも見捨てられたくせに!」
「才能無くて稽古も付けてもらえないんだろ? かわいそ~!」
「あ、そうだ! だったら俺たちで鍛えてやろうぜ!」
「皆で殴って鍛えてやればちょっとは頑丈になるかもな!」
「無能を見捨てないなんて、俺たち優しい~!」
……そうこうしている内に事態は徐々に不穏な空気を漂わせていた。
最初は軽い悪口程度だったものが、反応の悪い相手に苛立ったのだろうか、今や虐めっ子たちは蹴ったり小突いたりと直接手を出し始めている。
「……ア……アワ……アワワ……ッ」
いけない、このままではもしかすると大きな怪我に繋がるかもしれない。
刹那は焦った。
見知らぬ子どもの喧嘩など関わっても気まずいだけだが、見捨ててしまうというのも少々薄情だ。できればどうにかして場を収めたいとは思う。
だがここで、彼女持ち前の“コミュ障”が立ちはだかる。言い争う子どもを仲裁するスキルなど刹那には皆無だ。
口下手な彼女に話術で落ち着かせるなどできるはずもなく、言えるとしたら精々『やめる? 死ぬ?』という控えめな忠告くらい。……これでは別の争いが始まってしまう。
かといって腕尽くというのもマズイ。
身体ができておらず、魔力防御もできない子どもに刹那が本気で拳を振るえば、彼らの肉体など容易く弾け飛ぶ。……“弾き飛ばす”ではない、“弾け飛ぶ”だ。文字通りのバラバラ、いじめ事件がたちまち猟奇事件へ発展するだろう。
「……や、やっぱり……、口で……なんとか、……するしか……ない……ッ」
総合的に考え、『話し合いで穏便に解決する他ない』という結論に達した刹那。
幸いコミュ障改善計画のために、人間関係のハウツー本は腐るほど読み漁ってきた。この手の争いのシミュレーションも何度か行っている。
……惜しむらくは実践経験がゼロである点だが、そこはもう気合いでなんとかするしかない。解放軍相手に三日三晩戦い続けたときと比べればまだマシだろう。
「よ……し……!」
そう考えた刹那が、決意を新たに立ち上がったときだった。
「オラッ、くらえよ、無能の一輝!」
「うぐッ!?」
「ッッ!!!?」
――ガッサアアアアアッ!!!
その名が聞こえた瞬間、刹那は全力で茂みから頭を突き出していた。
「うわわッ!?」
「なっ、何だ! 誰だ!?」
「やッ、山姥!?」
他の連中になど目もくれない。
その中心に蹲る小さな人影を、彼女はただただ凝視する。
「………………一、輝……?」
「……え?」
地面に倒れている少年と目が合う。
……間違いなかった。
そこにいたのは正真正銘、彼女の弟・
こうして間近で顔を合わせるのはベビーベッドで対面して以来六年ぶりだが、遠くから偶に観察はしていたため、刹那にはすぐ本人だとわかった。柔らかな黒髪に綺麗な黒い瞳を持つ、相変わらず柔和で優しげな少年だった。
――その一輝がなぜこんな目に?
――争いの原因は何だ?
――何か悪いことでもしたのか?
考えなければならないことは多々ある。
しかし今の刹那の頭にそんなものが入り込む余地などなかった。
「な、なんだよ、お前! 邪魔すんなよ!」
「そうよ! 私たち大事な話をしてるんだから!」
「そうだ、そうだ! 関係ねえ奴は引っ込んで――――ヒィッ!!!?」
今、刹那の脳内を占める感情はただ一つ。
地面に引き倒され、血と砂に塗れる弟の顔を見た瞬間、
「…………今すぐ……、やめる? …………それとも――
――――死ぬ?
刹那の辞書から、“穏便”という二文字は消し飛んでいた。
「ひッ、ヒぃいいいいッ!?」
話し合いで解決する?
何を馬鹿なことを……。
撃って良いのは撃たれる覚悟のあるやつだけ。そしてこいつらは躊躇なく一輝を
自身に関しては言わずもがな。伐刀者の端くれとして、戦いの中で殺される覚悟などとうに済ませている。ゆえにこの場で戦闘を開始したとして、道義的にも倫理的にも一切の問題は生じない。
文句の付けようもない完璧な論理展開だった。
「……さあ、……お前たちの……、罪を……数えろ……ッ!」
――轟ッッ!!
刹那は大人げなく魔力を解放した。
「「「うッ!? うあ゛ぁああぁあ゛ああッッ!!!?」」」
「た、たたたッ、ダス、た、助けッ……ッ」
「ごめ゛んなざい! ごめ゛んなざい! もうじまぜんん!」
「し、死にだぐない゛いッ!」
「お母ざあ゛あああん!!」
「あ゛ああぁあ゛あぁあ゛ッ!?」
当然ながら、殺気を纏った彼女を前に、何の訓練も受けていない子どもが耐えられるはずもなく……。
半数は半狂乱のまま逃げ出し、もう半数はその場で卒倒していろいろなものを撒き散らかしていた。なんとか死傷者が出なかったのはギリギリで本人の良心が働いたからか……。
――ともあれ、こうしていじめっ子たちは退散し、事態は一応の解決を見たのである。
――――
「…………、ふ……ぅ……」
小さく息を吐きながら刹那は纏っていた魔力を霧散させる。
いろいろと気になる点は残っているが、ともかくまずは傷の手当てをしてやらねばならない。その上で何があったのか、少しずつ話を聞いていこう。
そう思いながら彼女は地面に跪く弟の前に立ったのだ。
――立った……のだが、
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「……………………」
「……………………ッ」
(……ど、どう……しよう……! なんて……声……かければ……ッ!)
――コミュ障が、発動していた。
気まずい沈黙が場を包み、刹那は再びアワアワと慌て始める。
その姿からは、先ほどいじめっ子を蹴散らしたときの頼もしさなど微塵も感じられない。
(な、なんで……いじめられてた、か……聞く? ……い、いや……ダメ。……いきなり……そんなこと、聞いても……傷付ける……だけ。…………じゃ、じゃあ……自己紹介? 『初めまして~、お姉ちゃんですよ~』……みたい、な? ………………ダ、ダメだ……気持ち、悪い。これじゃ、事故紹介。……ほ、他の話題……他の、話題…………。………………なッ、何も思い付かない……!)
なんとか会話の糸口を探すが、何の案も出ずますます混乱する駄目姉ちゃん。
しかしそれも無理のない話であった。
なにせ二人が顔を合わせるのは一輝が赤ん坊のとき以来。つまり、彼らの会話はガチでこれが人生初なのだ。
数年間同じ敷地で過ごしてきて一度も話したことがないという、嘘のようなホントの話。必然、初対面における刹那のコミュ障は遺憾なく発揮され、彼女は不安げに自分を見上げる弟を前にただ硬直するしかなかった。
「……ぁ」
「――ッ! わっ、と……と……ッ」
不意に一輝の身体が傾き始め、刹那は慌ててその身を受け止めた。
『すわ重傷でも負わされたかッ?』と腕の中を確認してみれば、そこには目を閉じたまま浅い呼吸を繰り返す一輝の姿が……。
どうやら疲労と安堵からか、意図せず眠りに落ちてしまったらしい。
「――ほっ。……よ、良かった……」
喋らなくて済んで安心したような……、でも少しばかり残念なような……。
そんな複雑な気持ちを抱きつつ、刹那は一輝の頭を膝に乗せ、地面へ横たわらせた。そして持っていたハンカチを水魔術で湿らせると、顔の汚れをゆっくり拭き取っていく。
「……ん、しょ、…………ん、しょ……」
久しぶりに触れ合うからか、その手付きはおっかなびっくり……、恐る恐る……。
しかしそこには確かに、弟に対する深い思いやりが溢れていた。この光景を一目見れば、彼女を怖がる者たちの印象も一発で変わると確信できるくらいには……。
――そうしてそのまま弟の頬をモチモチすること数分、
「? ……でも……こいつら……、なんで……一輝を……?」
ふと、刹那の頭に疑問が過ぎる。先ほどは頭に血が上って気にしていなかったが、この連中の一輝への態度……よくよく考えれば少し不可解にも思えるのだ。
こいつらの性根がネジくれているのは先の会話からも自明であるが、だからこそ浮かんでくる疑問。
――果たしてこんな小物どもに、本家の息子をいじめる度胸があるものだろうか?――と。
なにせ本家の長といえば……。
「………………」
刹那の脳裏に、とある男の顔が思い浮かぶ。
相も変わらず記憶の中でさえピクリとも笑わない仏頂面。
……自分だって人のことは言えないはずだが、……まあそれはそれ。
「…………、あの人……なら……、……何か……知ってる……かも? ……いや……でも、…………う~~~ん……」
……。
…………。
………………。
そのままたっぷり数瞬は迷った後……、結局刹那は、眠る一輝を背負ってトボトボと歩き出した。
……仕方がない。あまり積極的に会いたい相手ではないが、コミュ障ボッチの彼女に聞き込みなど不可能な話。何かしらの情報を得るにはあの男を頼るしかなかったのである。
「………………、はああああぁぁぁぁ……」
澄み切った青空を見上げながら、刹那は今日一番の長い溜め息を吐いたのだった。
――――
そして、弟を医務室のベッドに寝かせてから……一時間ほど後。
――コン、コン、コン……。
「……父、上……? …………今……いい……?」
刹那は、父・
▼ 刹那は “人に話を聞く”を おぼえた!
しばらく社会生活を送ったおかげで、刹那の賢さとコミュ力が少しだけ向上しています(当社比)
……といっても元々がアレなので、まだまだ余裕でポンコツです。ご安心ください。