乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
もし生まれ変わることができるならもう一度あの子と友達になりたい....
私は佐々木敦子。小学校のころから、私は友達作りが苦手だった。家では、アニメを見たりまんがや本を読んでいるのが好きだったし、学校でもそれは同じ。運動が得意ではないし、将棋や囲碁にも関心がない。音楽が得意でもなく好きでもないから吹奏楽部にももちろんはいらない。結局クラブ活動はどこにもはいらなかった。その代わり学校図書館はわたしの楽園だった。
何時間でも誰もいない図書館で読書していられた。
読書に夢中になっていて気が付いたら橙色の西日が窓から差し込んできているなんてふつうにあった。
見回りの先生が
「佐々木さん、まだ図書館にいたの?下校時刻はとっくに過ぎてるわよ」
といわれて追い出されるのが珍しくなかった。
本の世界は素晴らしい。さまざまな物語、世界の様々な面白いもの、多くの偉人...わたしをいろんな場所へつれていってくれる。
読書のおかげで、成績はトップになることはなかったものの、5位~10位以内にははいるほどには、そこそこよかった。
しかし小学校のスクールカーストではとりたてて得意なものがないわたしは、下位だった。わたしは変り者あつかいで、気持ち悪いとか言われ続けた。
靴を隠されたり、笛やハーモニカ、はみがきセットなどいろんなものをいじわるで隠されたりした。ひどいときは好きでもない男の子の口にわたしの歯ブラシをつっこまれたことがある。
そういうことが繰り返され、わたしは、ますますだれとも話せなくなった。
そうして迎えた小学校の卒業式。下級生の
「もうすぐ中学、いいですね。6年生のお姉さん...。」
という送る歌を聴いていたときのわたしの気持ちはようやく終わったという安堵だった。
もしかしたら小学校区を超えた中学校ならわたしのような変り者がいて、気の合う友人ができるかもしれないとかすかな期待をいだいていた。
しかし、いよいよ中学校。1年3組になった。クラスメイトの自己紹介。覚える気がないからうわのそらで自分の番が終わると図書館に行くことや自宅に帰ってアニメやまんが、ゲームをやることばかり考えていた。
中学に入って数週間が過ぎる。ホームルームが終わると図書館に行く。小学校の時よりも高度な内容の、市立図書館にならぶような内容の本が並ぶ。
読書好きなわたしにとっては小学校の延長でむしろ喜ばしいくらいだ。
図書館から本を借りて玄関で靴を履き替える。
吹奏楽部の楽器の音が聞こえる。
(あ~この曲聞いたことがある。アニメの曲かな...演奏できたら面白いだろうけど...)
「何某中、ファイト...ファイト....。」
運動部の掛け声が聞こえる。
ポコーン、ポコーン
ラケットにはじかれるテニスボールの音。
それを聞き流して横目に見ながら校門へ向かう。
本当は部活に入ったほうが友人ができるのかもしれない。文学部、囲碁部、科学部などわたしが入ってもおかしくない文化部があっても、そもそも部室をたずねる勇気や気力がない。
帰宅部であっても放課後にファミレスや喫茶店に行こう、クレープ買いにに行こうという女の子たちの声を聴きながら、いいなぁ...楽しそうだな...と思っていた。
そんなときだった。
「うわあああああ....。」
女の子の声だった。その次の瞬間重いけどやわらかいものが体全体にぶつかる衝撃が走った。
一瞬意識が飛んだ。
気が付くと必死に
「ううう....ごめんなさい、本当にごめんなさい。死なないでえ~お尻で人を殺しちゃうなんて~」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな表情をした顔があった。
ぼさぼさなくせっ毛だが、どうやら女の子のようだった。
「だいじょうぶです....。」
「ごめんなさい。」
少女は深々と頭を下げる。
「あなたは...どうしたの??」
少女は恥ずかし気にもじもじしながら横向きにほおにゆびをあてて
「わたし、木の魅力に誘われてつい登りたくなっちゃって...はじめはうまく登れてたんだけど調子に乗って登ってたら...足を踏み外して...やっぱり靴をはいたままじゃ...じゃなかった...貴方を下敷きにしちゃって....本当にごめんなさい。」
「....わざとじゃないのだし...私は大丈夫なので....。」
よく見ると制服とスカートが汚れている。木から落ちた時にこすったんだろう、擦れた痕がある。
「あなたにけがは?」
と問い返す。
「ありがとう。佐々木さんは優しいんだね。」
ぐちゃぐちゃな顔がようやく笑顔になる。
「え...どうして私の名前を知ってるの?」
「え....知ってるよ。だってわたしたちクラスメイトじゃない。」
「....!?」
「わたし...同じクラスの子の顔も名前もあまり覚えていないの。ごめんなさい。」
「そうなんだ。わたしは同じ1年3組の内野真樹子。はじめはマッキーというあだ名だったけどいつのまにかモンキーになったりしてる。失礼しちゃう。確かにわたし木登りはすきだけどは猿じゃないのに...」
すこし口をとがらせ、かすかにほおをふくらませる。なんとも憎めない雰囲気だ。
その様子が愉快で、わたしは、おもわずほほえんでしまう。
「これからもよろしくね!」
笑顔で差し出された手を握り返すと、そのざらついた手はなんとも暖かく感じた。