乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
2年に一度の学園祭の季節が来た。
生徒会メンバーは美男美女が多いこともあって人気があるので、演劇をしてほしいという署名がかなりあつまっている。
「これは、無視できる数じゃないですね。やるしかないですか...。」
ジオルド様は思案顔だ。貴族の生徒でも平民であるはずのマリアさんを疎ましく考える人ばかりではなく、美人で優秀だからと潜在的に敬意や好意をもっている人はかない多い。ときどき男性に口説かれることもあるらしく、カタリナ様が追い払っているそうだ。またカタリナ様のクラスメートでマリアさんにも好意を持っている人は普通にいる。またカタリナ様が生徒会室に出入りすることについて、疎ましく思っている人以上にその人柄から聖女として慕っているファンも多いので出演することを期待されているのは間違いない。
だから無視できない数の署名があつまるのは自然なことだった。
私は手を挙げる。
「わたしが、シナリオを考えます。カタリナ様も参加しませんか?」
「そうです。ぜひ一緒にやりませんか?」
わたしとメアリ様は目を輝かしてしまう。
「え~私はセリフ覚えられないから、木か石の役とかないかなあ...。」
「え~、そんなあ」
「舞台にあがるカタリナ様を見てみたいです。」
「じゃあ、いつも入り浸っているから裏方ならやるわ。畑仕事で鍛えてるし、大道具係とか、掃除とか黒子とか。」
「そうですか...。」
「生徒会メンバーは人気があるので分散配置しましょう。」
わたしは、ジオルド様の指示でお兄様といっしょにあるイベントの呼び込み要員としていったのだが...。
(あれ....皆さんお兄様しかみていない??)
「すみません。皆さんニコル様しか見ていないのでこちらへいらっしゃいません。」
もっともな苦情が来た。
「お兄様、すみません、場所移したほうが良いようです。」
「そうだな...何かかえって迷惑かけてるようだし...。」
わたしたちは、なるべく人目のつかない場所に移動した。
しばらくするとカタリナ様が生徒会メンバーの次に仲の良いクラスメートたちとやってきた。
「ソフィア~ソフィアどこ~」
わたしを探しているようだ。
「こちらです、カタリナ様。来てくださったのですね。」
「久しぶりだな、カタリナ。」
気のせいかカタリナ様の視線がなんとなく明後日の方向、お兄様をさけるように泳いだ感じになっている。
「どうしてこんなところにいたの?」
実は...とお兄様の魅力でお客様がお兄様しかみなくなるので...と説明するとカタリナ様は苦笑する。
「そうなんだ、ソフィア。おなかすいてない?差し入れ持ってきたわよ。けっこうおいしいお店でているから。」
そう、魔法学園の学園祭は、サンドイッチ、パン、お菓子、軽食の一流店が廉価で新作を出す場所になっているのだ。今後の売り上げにつなげるために各店自信作をだしていて、食の祭典ともいわれている。
「ありがとうございます。でもカタリナ様。どうしても演劇はでていただけないのですか?」
わたしは、ほんのりほおをふくらませる。
「わたしは、生徒会メンバーじゃないし...。」
と判で押したような言い訳がかえってくる。
「舞台でのカタリナ様を見たいです。」
「カタリナは出ないのか....。」
お兄様の美しさにカタリナ様はよろけているようだ。
「ニコル様が出た方がお客様が喜ぶと思いますよ。」
とおっしゃるけど致命的な問題がある。
それはその表情の変化が微妙すぎて家族とごく一部の人間、たとえばラファエル様くらいしかお兄様の表情の変化を読み取れないということだ。
「俺には、演技ができない。」
「お兄様は身内からのひいき目を差し引いても魔性の伯爵といっていいほどの魅力をおもちですけれど....顔の表情が誰にでもわかるように動かせないのです。カタリナ様が1年生の夏休みのボート遊びの時、皆様がお兄様の表情がわからなかったので、あれ皆様は分からないんだということがわかりました。」
「でも相手がカタリナ様なら笑顔を浮かべることができるかもしれません。」
「え~ソフィアが出ればいいじゃない。ニコル様は、シスコン級と言っていいほどの妹想いだし...。」
「たしかにそうですけど、カタリナ様だけは特別なのです。そうだ!お兄様にあの劇のせりふを言ってもらいましょう。」
わたしは台本を取り出す。
「相手役がカタリナ様なら、お兄様も笑顔でせりふを言えるはずです!」
「お兄様、台本はこちらです。」
カタリナ様はなにやら覚悟を決めたようだ。嬉しいことに顔に(ソフィアは、大好きなお兄様の演技が見たいのね。わたし親友の願いを叶えられるよう頑張るから。)と書いてある。
お兄様は
「ソフィア、やはりまずくないか?カタリナはジオルド王子の婚約者だし。」
「形だけの婚約ですし、お兄様は卒業してしまって不利なのですからこんなときこそアプローチしないと!」
お兄様は覚悟を決めたようで、台本を手に取ると
「それでは...。」
と演技をはじめる。
「貴女を愛している。」
それはそれは素晴らしい魔性の笑みを浮かべて、カタリナ様がふらついている。
「わっ、私もです。ニコル様」
これは頭からせりふがとんでいるやつだ。
お兄様もかたまっている。
カタリナ様はようやくせりふの誤りにきがついたようだが、お兄様は王子様の演技を続けてカタリナ様をだきしめる。
この場面を一瞬を絵にできないだろうかと一瞬考える。
むかしそんな道具があったような...
魔法省だろうか...
わたし佐々木敦子はこの場面をスチールにしたいと思った。Fortune Loverにはなかった画面だ。内野さんが幸せそうな様子を見たいのだ。しかしこの世界にはカメラはない。ただもしかしたら魔法省で開発されるのではないか...そんなことを考えた。
「カタリナ....たとえあなたが別の人のものになっても、俺はきっと...」
(お兄様、やりましたね。)
わたしはうれしくなって思わず満面の笑みをうかべてしまう。
クラスメートの皆さんもお兄様が微笑んだときにその美しさにくらくらしたようで、瞳がうつろで顔を桃色に染めて千鳥足になっている。
ようやく正気に戻ると、カタリナ様は、マリアさんのお店にいくけどと話している。クラスメートの皆さんは刺繍の展示を見に行きたいようだ。
しばらくして生徒会劇の時間が近づいてきたので、わたしは、舞台のある場所へ移動した。
「義姉役の人が腹痛と頭痛でとてもやれないということです。ジオルド様どうしましょう。」
という声が聞こえた。