乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
メアリ様のいうとおり、ジオルド様はいざとなれば手が早いだろう。わたしはこれまで読んできた小説のせいでいろいろな妄想がうかんでしまう。王女と護衛騎士の禁断のラブロマンスがある。王女のそばになにくれとさりげなく護衛する騎士、街中で王女と知らずからむ酔っ払いや盗賊などさまざまな輩から王女を守る騎士。旅が終わると一緒にいられない二人。王女は旅が終わりに近づいたある晩に騎士のもとへいく。
わたしはおもわず「ダメ~」と叫んでしまう。すると「なにがダメなんだ。寮の中で大声をだすな。」とお兄様にそのたびにたしなめられてしまう。
「生徒会から頼まれた仕事をもってきたんだ。お前は、いくら呼んでも返事はないし、気が付かない。いいかげんその空想に入る癖を治せ。」
「ごめんなさい。」
わたしはシュンとなってうなだれる。たしかに空想に入って周りが見えなくなったり、その結果なにも聞こえなくなることがある。
「それでお前はなぜ部屋の中をぐるぐる回っているんだ?」
とたずねられる。
「カタリナ様がおられないのでとても寂しいです。ジオルド様ともっと親しくなるとこの旅から帰ったら結婚してしまう思うととても不安です。」
お兄様は、「カタリナがいなくて寂しいのは分かるが、ジオルドとカタリナは婚約者なのだから仲が良くなるのはいいことだろう。」と正論をいってくるが、顔に浮かぶ表情はつらそうだ。生まれてこの方妹をやっているわたしはごまかせない。
「本当はお兄様も心配なくせに。意地を張って。もっと素直になればいいのに。」と言い返す。
「何を言ってるんだか。」と反論するが、その顔はやはりつらそうだ。
そのとき来訪者がいらっしゃる。
「こんにちは。」と挨拶するのはメアリ様。
「カタリナ様からの手紙ですわ。」
「どれどれ」
「旅が楽しい?」
「ジオルド様との仲が進展したことをうかがわせるようなことは書いていないようですね。」
わたしはほっと息をはいてお兄様をみつめる。
お兄様はなにか安心しているように見えた。お兄様素直じゃないなあと感じた。
そしてキース様が無事に保護され、お屋敷で目を覚まされたという報告を受けたので、クラエス邸へ行くことにした。
クラエス邸には先客がいた。ジオルド様だ。メアリ様やキース様と口論になっている。
「キース、何勝手に告白しているんですか。カタリナは僕のモノですよ。」
「ジオルド様、なにをおっしゃってるんですか?カタリナ様はあなたのものではありません。」
わたしも思わず叫ぶ。
「そのとおりです。カタリナ様はだれのものでもありません。カタリナ様お見舞いにおすすめの小説を持ってきましたわ。」
「ソフィア、具合が悪いのは、カタリナではなくキースだぞ。お見舞いの品の選び方がおかしくないか?」
「わたしは喜んでいただけるようにお菓子をもってきました。」
ジオルド様はカタリナ様の枕元に近づいて耳元で何やらささやいている。
カタリナ様はほおを赤く染められている。
キース様はカタリナ様をひきよせる。
「ダメです。ジオルド様に義姉をお渡しするわけにはいきません。」
「へえ~言うようになりましたね。キース」
「わたしは自分に正直になろうと思っただけです。」
そのときあの不思議な少女の声とうれしそうな表情が脳裏に浮かんだ気がした。
それはどうやらカタリナ様へ向けて語られた言葉と思われた。
(キース・クラエスの攻略おめでとう。)
わたし佐々木敦子は、カタリナとソフィアの脳裏に語りかける。
(ついにキース・クラエスも攻略したね。おめでとう。)
と。
さて魔法学園のわたしたちの卒業式だ。ジオルド様が卒業生代表、生徒会長としてあいさつをしている。7割近くの女生徒たちは、頬を染めて見つめている。
卒業式はわりとあっさりだったが、例によって卒業パーティの盛り上がりはすごい。ジオルド様なんかどこにいるかわからない感じだが圧倒的な女子生徒のひとだかりが目印になっている。アラン様の場合、2割ほど男性が混じるがその周囲から漏れてくる話の内容はその演奏をたたえる声が多く聞こえてくるのが大きな違いだ。メアリ様、マリアさんの周りのにも多くの生徒たちが取り囲んで卒業を名残惜しむ会話が聞こえてくる。わたしとメアリ様は、男女半々くらいだがマリアさんのまわりは、男性3:女性1という感じだ。わたしをはじめ前生徒会メンバーは人気で、その周りには多くの後輩やクラスメートがあつまってきていて会話を楽しんでいた。
「読書家でいらっしゃるので尊敬していました。」「知識と教養が深くいらっしゃるので尊敬していました。」「なんであの難しい詩をご存じなのですか?」
「ダンジョンの魔石探索試験であの詩をお読みになられるなんてすごいです。」
「○○のロマンス小説面白いですよね。わたしも読んでいます。」
後輩の男の子や女の子に尊敬のまなざしで見つめられて気恥ずかしい感じだ。とくに男の子については、尊敬と多少の恋愛感情が混じった視線で見つめられるから気恥ずかしさ倍増だ。
そんなときにどうやらカタリナ様と次期会長のフレイ嬢と副会長のジンジャー嬢が話している。ジンジャーにフレイのドレスが本人のプロポーションが良すぎて着れないとかいう会話の後、
「わたしのドレスをかしてあげるわよ。」
というカタリナ様の声が耳に飛び込んできた。
「え~カタリナ様の??」
「ジンジャーなら私のサイズで問題なく入りそうだし...。」
「パーティが終わったらドレスを合わせましよう。」
どこから聞きつけたのかメアリ様が
「カタリナ様、今ドレスを貸すという話が聞こえたのですが...。」
3人のもとへ息を切らしながら走っていく。
「わたしにも、わたしにもドレスを貸してくださいませ。」
うわあ...これは...わたしもお借りしたい、という気持ちが頭をもたげる。
気が付いたら私も息をきらして
「メアリ様ばかりずるいですわ。わたしもお借りしたいです。」
思わず叫んでしまっていた。するとほかの女生徒たちも
わたしもわたしもと言い出しパニック状態になってもみくちゃの状態になった。
それを見たのかキース様、ジオルド様、アラン様、ニコル様がいらっしゃる。後輩のフレイ嬢もいる。
「どうか皆さん落ち着いてください。」
「メアリ、落ち着け。」
「ソフィア、落ち着いてくれ。」
「どうか皆さん冷静になってください。」
「皆さん、わたしはパーティに来ていくドレスがないんです。すみません。」
「ジンジャーは努力して生徒会副会長になったんです。マリア先輩と同じです。」
フレイもなだめる側に加わる。
「それにわたしのが合わないので...」
恥ずかしそうにうつむいた。