乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
お兄様はなにやらお疲れのご様子だ。
「だいじょうぶですか?お兄様」
「ああ...。」
力のない返事だ。わたしはほんの少し罪悪感を感じた。
さて今晩は、メアリ様のお部屋でパジャマパーティーだ。
しかし、カタリナ様の姿が見えない。
廊下でぼうっとあるいていたところをメアリ様が声をかけられたようで全員そろうことができた。
「どこか具合がお悪いのですか?」
「あ、いいえ、卒業式、パーティと続いたから少し疲れたみたい。」
「「カタリナ様、お菓子ありますよ、召し上がりますか?」」
マリアさんとわたしの声がはもる。
「お茶もジュースもありますよ。」
メアリ様が付け足す。
「ありがとう。」
「うん、おいしい!元気が出たわ。」
カタリナ様が元気になってうれしい。
「確かに今日は予定びっしりでつかれましたわ。」
わたしがそういうとみんな頷く。
マリアさんも
「そうですね。わたしはこのようなパーティは出たことがなかったのでくたくたになりました。」
「あ~そうか、マリアは学園以外のパーティは初めてだったものね。」
「はい。皆様に教えてもらったように気を付けてふるまったつもりですたけど、たくさん失敗していたのかもと心配で...。」
そう顔を曇らせる。
「いえ、とても素晴らしい立ち居振る舞いでした。本当にパーティが初めてとは思えないくらい完璧でしたわ。」
メアリ様がほめていた。
「そういっていただけると嬉しいです。思ったよりたくさんの方に声をかけていただいて、いっぱいいっぱいでしたので。」
「本当にすごい人数が声をかけてきてましたね。」
マリアさんはうなづく。
「でも、どの方のお誘いもお受けにならなかったのですよね。」
メアリ様がそういうと、カタリナ様が問い返す。
「え~そうなのマリア?」
「......はい、ちゃんと踊れる自信がなかったので。」
マリアさんは恥ずかしそうに答える。
「え~私もダンスは苦手だけど相手がリードしてくれるからそれなりになるわよ。」
「カタリナ様のお相手はジオルド様やキース様で上手でいらっしゃるからですが、男性の方のリードにゆだねればそれなりに踊れますわよ。マリアさんも学園でのレッスンには参加なさっているはずですから。」
「はい、おっしゃることは確かなのですが....やはりよく知らない方に身をゆだねるのは....。」
「確かにそうですわね。わたしも面識のない方はお断りしますからわかりますわ。その気持ち。」
「でも、素敵な方なら一度くらい踊ってみてもよかったのでは?そういう方はいらっしゃらなかったのですか?」
わたしはマリアさんをみつめてしまう。ロマンス小説のような出会い、うっとりしてしまう。こんな素敵なマリアさんだ。だれかそれに釣り合うほどの方が声をかけてもおかしくない。
「素敵な方ですか....。」
マリアさんは考え込む。
カタリナ様が
「マリアはどういう人が好みなの?」
とお聞きになる。マリアさんは、
「好みの方ですか?」
と問い返してしばらく考えると
「いつも笑顔で太陽のように明るい方がいいですね。それからわたしの作ったお菓子をおいしそうに食べてくださる方、でしょうか。」
「そ、そうなの?」
「わたしも明るくて元気な方がいいですわ。髪は茶色で瞳は水色の方がいいです。」
メアリ様が便乗してそう答える。え....もしかしてカタリナ様?アラン様は??
「カタリナ様はどのような方がいいのですか?」
「わたしは....。う~ん、具体的に考えたことがなくて.....そうだ、ソフィアはどうなの?」
「わたしですか?わたしはですね~失われた国の元王子様とか、ペガサスにのった金髪の騎士、たとえばこの小説のフェルデイナンド様なんかすてきです。主人公の少女がローゼリッテって言ってわたしのように大の読書家なんですよ。それから....」
わたしは夢中になって話していた。
「最近、恋する振り子時計(オシスラトリ)の新刊がでましたわ。」
「どんなお話だっけ?」
「平民の少年ナオトー・タキを巡ってミスティ家の令嬢サッフォーとサガラー家の令嬢マユが恋の駆け引きをする話です。マユの性格がよすぎるのでサッフォーがマユのことも友人として好きになってしまうんです。」
「へええ、おもしろそうね。」
このときわたしは小説の話をかなり力説していたようだ。
何冊かカタリナ様、メアリ様、ソフィア様、マリアさんにお貸しした。ロマンス小説を語る会が近いうちにできそうで楽しみだ。魔法学園に2年も通学するとその周囲の地理に詳しくなる。あそこのお菓子屋さんは、そうそう、あのお菓子がおいしい、あの雑貨屋さんは、イアリングが、ヘアピンが、ブレスレッドが、ネックレスが...という話になってもりあがる。
しかしみんな話疲れてくる。
「そろそろ眠くなったわね。」
「そうですわね。」
そしてメアリ様の部屋で寝てしまった。
わたしは、夢を見た。かなり後になって知ったのだが、どうやらカタリナ様と同じ夢をみたようだ。
薄いピンク色の壁。黒いテーブル、金属製と思われるパイプを組み合わせたベッドがあって水色のカバーがかかっている。ベッドの上に青いクッション。
そこには、あの茶色い長髪の少女。
「あの子が最後にやっていたゲームの続きだからクリアしたら報告に行かなきゃな」
知らない言葉で話しているのにわたしにはその意味がなぜかわかる。
目の前には長方形の板のようなものがあり、マス目が交互にあって文字のような記号のようなものがマス目の上に書かれている。その道具は、円盤のようなものを横から入れると動き出す。
魔法の道具みたいだ。
ウィーンという音がしてヒューヒューと風のような音がする。その円盤を読み取っているようだ。
長方形の板の表面には絵が表示される。そこにはなぜかよく知っている人物が映し出される。
これってジオルド様?キース様....メアリ様、それに私?マリアさんもいる。クラエスご夫妻やうちの両親....これはいったい何だろう??
見たことのない文字、Fortune LoverⅡと長方形の板に表示される。
え?これはラファエルさん、それにキースさん救出に協力してくれたソラさん、それから見たこともない壮年の男性と少年。
再びFortune LoverⅡの文字と「魔法省の恋」という文字が映し出される。
わたしには、初めての文字で読めないはずなのに、それがまさしく魔法省での恋物語であることが瞬時に分かった。長方形の板の上に→のようなものが動いている。
※ウィーンという音がしてヒューヒューと風のような音=パソコン、もしくはゲーム機の駆動音とファンの音
※長方形の板=デイスプレイ
※マス目が交互にあって文字のような記号=キーボード、アルファベットのキー
※→のようなもの=カーソルの表示