乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
今この医務室には、お兄様とジオルド様、アラン様もいらっしゃっているが、わたしたちと同じような理由で研修として来ているらしい。
しばらくして勤務時間も閉庁時間になったので、カタリナ様はキース様につきそわれてご自宅へ帰られた。
魔法省での二日目、カタリナ様とマリアさん、ソラさんは、新人の部署配置の試験もかねて明日から主張で狸退治にいくとのことで、三日目に支所へ出張されていった。
数日後、カタリナ様とマリアさんがその出張から帰ってきた。
無事に狸退治を終えたということだが、ただ狸退治だけでは済まなかったらしく洞窟にいかねばならなくなってたいへんなことがあったらしい。
「けがなどありませんでしたか?」
「もしものことがあったらと思って薬箱を持参しましたわ。」
わたしとメアリ様が口々に申し上げる。
「大丈夫よ、かすり傷ひとつないわ。」
カタリナ様はスカートまでたくしあげようとする。
それを見て驚いたキース様とアラン様が怒ってたしなめる。
カタリナ様はしゅんとして二人に謝る。
ジオルド様が
「まあ、けががなくて何よりです。しかし、はじめから泊りがけの任務とはたいへんでしたね。どんな任務だったんですか?」
「狸退治からのドラゴン退治です。」
わたしは絶句したが皆さんも同じようだ。
お兄様が
「狸はともかく....ドラゴンと言うのは強大なトカゲに翼が付いたような....例の伝説上の動物か?」
とたずねる。
「あ~はい、そうです。でかいトカゲと言うか大昔の恐竜に翼がはえたようなそれです。」
皆きょとんとした感じだ。
「?もしかしてあんまりいないものなのですか?」
カタリナ様は不思議そうな顔をして尋ねる。
「いないも何も....ほんとうにそんなものいたのかよ....。」
「さっきも言ったが伝説上のもので実在するとは驚きだ。」
アラン様とお兄様はそう答える。わたしもドラゴンが実在するのは驚きだというのは同感だ。
「で、義姉さん、どうやってそのドラゴンを倒したの?」
「あ、うん、それはね。ポチが大きくなって、えい、やあ、がぶりってドラゴンを倒したのよ。」
カタリナ様はここぞとばかり使い魔の犬のポチちゃんが巨大化してドラゴンを倒したと身振りを手振りでポチちゃんの活躍を熱弁する。
「え~と、カタリナ、ポチと言うのは君の影に棲みついている闇の使い魔のことだよね、それが大きくなったってどういうことですか?」
ジオルド様がやや固い表情で尋ねる。
「こういう虫眼鏡みたいな魔法道具を借りていったの。そうしたらその道具が熱くなってポチがドラゴンくらい巨大化したのよ。」
「....まあ、なんとなくわかりました。なんとなくですが...。」
ジオルド様が何かあきらめたような表情で話される。
「じゃあ、そのドラゴンはポチが倒したんだから義姉さんは危険なことはなかったんだよね?」
キース様が確認するように言うとカタリナ様は
「もちろんよ」と言うが同時にマリアさんが「とても危なかったんです。」と話されその声が被る。
「カタリナ様は、わたしたちを守るために石を投げてご自分のほうに引き寄せて下さったのです。偶然ポチちゃんが大きくなってドラゴンを倒したので助かりましたが、本当に危なかったのです。わたしたちのせいでカタリナ様がと思うと...」
マリアさんはその時のことをおもいだしたのか泣き出しそうになっている。マリアさんの気持ちはそのままわたしとメアリ様にうつっていく。親友の命が危なかったと思うとたまらない気持ちになる。
「マリアさん、その時の状況をくわしく話してください。」
「カタリナ様は石をドラゴンに投げつけてお逃げになったのですがドラゴンが大股にあるいてすぐに追いついてしまったようでした。そのときカタリナ様の影がうねってポチちゃんが巨大なオオカミのようになったのです。ドラゴンが前脚をあげるとポチちゃんががぶりと噛みつき、今度はドラゴンがポチちゃんにかみつこうとします。
ポチちゃんはそれをかわしますが、あの巨大なしっぽにたたきつけられてしまいます。ポチちゃんが倒れかかっているところをドラゴンが迫ってくるので、カタリナ様が石や枝をなげてドラゴンの気を引きます。そのすきに、ポチちゃんが立ち上がってドラゴンの首筋にかみついてドラゴンを倒したのです。結果としては、それで無事に戻れて狸退治をして終ったのですが、とても危なかったんです。」
わたしも皆さんも心配な気持ちで表情が険しくなっている。
カタリナ様は焦った感じで両手を顔の前で振りながら
「マリアたちが危なかったからとっさにね。無事に帰れたんだからいいでしょう。」
とおっしゃる。
キース様が口火を切った。
「義姉さん、あれだけ言ったのに....。」
「カタリナ様、もっとご自分を大切になさってください。」
「本の感動を分かち合うカタリナ様がいなくなったらわたしはつらいです。」
「カタリナ、僕はあなたをうしないたくないのです。」
「演奏会にお前がいないと思うとつらいんだ。もっと気を付けてくれ。」
「カタリナ、無茶はしないでくれ。」
カタリナ様は、「はい...。」と力ない返事をしてキース様と一緒にご自宅へ帰られた。
翌朝、わたしはお兄様の用があるので一緒に魔法省に出勤した。講堂でカタリナ様やマリアさんの職場発表があるはずだ。
わたしが荷物を運んでいるとカタリナ様をみかけたので声をかける。
「カタリナ様、おはようございます。」
「おはよう、ソフィア。今日もお手伝いする日なの?」
と聞かれた。
「はい。お兄様も用があるので来たのですが、こうして二日続けてカタリナ様にお会いできてうれしいです。」
「学園ではほとんど毎日会っていたのにね。働き始めてからなかなか会えなくなってさびしいわ。」
「わたしもです。ぜひ休みの日には遊びにいらしてください。またえりすぐりの小説を用意しておきますから。」
「ありがとう。」
カタリナ様はなにやらカバンをごそごそしている。なにか私にすぐ話したいことがありそうな感じだ。カタリナ様は、ようやくみつかったと安堵の表情になると一枚の紙を取り出して、
「あ、あのね。ソフィアに聞きたいことがあるんだけど...。」
「何ですか?」
「ソフィアに借りた小説の中にこんな紙がはさまっていたんだけど....。なんだかわかる?」
その紙には見慣れない文字のようなものが書かれていた。