乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
お兄様の長年の恋が報われることもないということは、わたしの義姉にもなっていただけないということだ。、
そう考えるとすごく悲しくなってきた。お兄様はあんなに素敵な方なのに。あのエロ王子よりも絶対に素敵なのに。ちょっと先に婚約したからといってジオルド様ばかりずるい!と感じる。
今回のお城のお泊りも魔法省に入省してしまってなかなか会えないカタリナ様と接するチャンスなのにお兄様ばかり会えていない。ジオルド様は本来来ないはずの夕食やダンスの練習に来たりとかして、キース様は義弟の特権で会う機会が多い。お兄様だけ会えないなんて不公平。
お兄様にもカタリナ様と親交を深めてほしいけど、お兄様の性格から自分から動くことを躊躇するだろう。ここは妹のわたしが一肌脱いであげなくては!
そう決心するとわたしは作戦を考えた。
夕食の後、カタリナ様の部屋をたずねる。
ドアをノックすると、カタリナ様が直接いらっしゃった。
「ソフィア?さあ入って」
「突然お伺いしてすみません。」
わたしはぺこりと頭を下げる。
「別にいいのよ。ちょうどひまで本をめくっていたところなの。ところでソフィアは何の用事かしら。」
カタリナ様が微笑みながらたずねてくる。
「あ、はい。実はカタリナ様を朝のお茶会にお誘いしようと思いまして。」
「朝のお茶会??」
カタリナ様は小首をかしげて聞き返される。
「はい。実はお城に泊まらせていただいている部屋の近くにすごく素敵な場所をみつけたんです。朝日が差してくるとまわりの緑がきらきら光ってまるでおとぎ話の場所みたいなのです。なのでぜひカタリナ様にもおみせししたくて。朝のお茶会を楽しむにはぴったりだなあと思ったんです。」
「そうなの?じゃあぜひお願いするわ。」
カタリナ様は微笑み、二つ返事で来て下さることになった。わたしはうれしくて
「はい!準備はおまかせください。」
と元気にお答えする。翌朝が楽しみだ。お兄様にも来ていただこう。
翌朝わたしははやめにおきてうきうきとお茶会の準備をする。
準備が終わってまもなくドアをノックする音がする。
おそらくカタリナ様だ。
「どうぞ。」
言うとドアが開く。
「おはようございます、カタリナ様、今日は朝のお茶会に来ていただきありがとうございます。」
わたしはドレスのすそをつまんで淑女の礼をする。
「お招きいただきありがとうございます。」
とカタリナ様も答礼される。
「こちらです。」とお招きする。歩調がうきうきしてしまう。
朝日が絶妙に差し込み、きらきら輝くようだ。遠くに羊かやぎのような動物が数頭たたずんでいる。何度見ても美しい。カタリナ様もほおお...と見とれているようだった。
お誘いして正解だった。
たぶん私の顔には(いったとおりでしょう)という文字が書かれているんだろうなとおもいつつ微笑んでしまう。
「お茶会はここでしようと思います。」
テーブルの周りには椅子が3つある。わたしとカタリナ様、お兄様の席だ。
「お茶会のメンバーは3人なの?」
とカタリナ様がおたずねになる。わたしは少々小声になる。
「実は、お兄様をサプライズで招待しようと思っているのですけど、いいですか?。」
カタリナ様はほほえんで
「いいわよ。なんか逆に兄妹水入らずをお邪魔するようで、それこそわたしがお邪魔していいの?」
「お邪魔だなんてとんでもないです。むしろカタリナ様がごいっしょならお兄様も喜びますわ。」
わたしは首を強く横に振る。これは6割がたお兄様をおさそいする作戦なのだ。
「ところでなんでサプライズなの?」
「お兄様は、会合が迫ってお忙しそうなので、気晴らしにこっそりと喜ばせて差し上げたいのです。」
お兄様の部屋へ行きノックして声をかける。
「お兄様、ソフィアです。」と呼びかけるがお返事がない。
「いつもなら起きている時間なのですが...。」
「お兄様」
「ああ...開いている。」
ぼやっとしたお声だ。
しかし承諾をいただいたと考え、カタリナ様を部屋へ引っ張り込んでしまう。
お兄様は寝間着をお召しになってソファの上で背もたれにもたれている。目は閉じた状態でお休みになられているようだ。しかしいつもならこの時間お目覚めになられているのに...
「お兄様いつもならもうしっかり起きている時間なのです。だいぶお疲れなのかしら。」
わたしは不安になってお兄様の顔を覗き込む。
「う...まさかまだお休みになられているとは予想外です。せっかく中庭でカタリナ様と素敵なティータイムをと思ったのに....お兄様、起きてください。」
わたしは、お兄様に手を伸ばしかけてはっと気が付く。
「そうだ!カタリナ様、お兄様を起こしてあげてください。」
もともとは6割がたお兄様を喜ばせようと考えたことなのだ。本当に気が付いてよかった。
「え?なんで?」
カタリナ様は問い返される。わかってはいたけど本当ににぶい方だ。
「カタリナ様が起こしてくだされば、きっとお兄様も喜びますわ。お兄様はあまり朝が強くないのです。どうかお願いします。」
わたしは、カタリナ様をお兄様の枕元まで引っ張っていく。
カタリナ様はお兄様の顔をまじまじと見つめ、くすりと軽く笑みをうかべたが、やがて決心したように声をかける。
「二コル様、起きてください。」
カタリナ様は、腰をかがめてお兄様の肩へ手をかけて何度かゆすった。
お兄様の瞼が持ち上がって、黒い瞳がぼんやりした感じだ。
「あの二コル様、ソフィアがお茶会を...。」
カタリナ様がそう言いかけた時、お兄様の腕が伸びてきてカタリナ様の腕を引っ張る。
「ふえ?」
カタリナ様の身体がぐらりと傾き、カタリナ様とお兄様の顔が近づく。
「うひゃあ」
カタリナ様は驚いている。お兄様の両手がカタリナ様の身体を横倒しでダンスするかのようにつかんでいる。お兄様はぼんやりした感じなのにカタリナ様のほおにふれた、とおもったらやさしくなでる。
カタリナ様の顔は上気してあかくなっていく。
「いい夢だな」
お兄様は独り言、というかほとんど寝言をつぶやく。カタリナ様は
「二コル様、私はカタリナです。カタリナ・クラエスです。」
と訴えかけるように話す。カタリナ様は、妹や好きな女性ではなくカタリナ様ご自身だとなのることによってどうやら解放されると考えたようだ。カタリナ様はこういうところ本当に鈍い。お兄様は実のところ夢の中でカタリナ様と出会ったと考えているのだ。