乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
お兄様は、そんな私に対して
「ソフィア、少し落ち着け。本の話はお茶会がはじまってからでいいだろう。」
とおっしゃる。合宿講義でとめられていたのでうれしくて暴走気味になっているのは認めるけれど...
お兄様は微笑んで
「本日は招待ありがとう。」とおっしゃると、カタリナ様の様子が見とれている感じになる。
(お兄様の魅力はすごいんだから。カタリナ様、お兄様を選んでください)
心の中でつぶやく。
「カタリナ様、お招きありがとうございます。これ少し作ってきましたのでよかったらどうぞ。」
マリアさんが自作のお菓子をお持ちになった。カタリナ様はうれしいだろうし、マリアさんのお菓子は美味しいので楽しみが増えた。
「ありがとう。さっそくいただくわ。」
「会合、お疲れ様でした。」
カタリナ様はカップを高く掲げる。
わたしは、不思議な懐かしさを感じる。後で聞いた話だがカタリナ様の前世の記憶でこのような習慣があったという話だ。
ジオルド様とキース様は苦笑してカップを掲げる。アラン様は、なんだそれと怪訝な顔をされる。
メアリ様とマリアさんは微笑みながらカタリナ様に習い、お兄様も無表情でそれに習う。
わたしは、うれしくて皆よりも高くカップをかかげてしまった。
「いや~でも大したことなく会合が終わってよかったわ。」
とカタリナ様がお菓子をほおばりながらおっしゃる。
それを聞いた皆さんは、マリアさん以外かたまる。
キース様があきれてぼやくように
「義姉さん、最終日の帰りの馬車で僕がなんて言ったか覚えている?お母様に叱られたばかりでしょ。」
カタリナ様は顎に指をあて思い出すように
「ドレスを破ってまで木に登ったのはっていう話?」
「覚えてくれて何よりだよ。」
「カタリナにとっては、そうまでして誘拐犯のところへ一人で乗り込んだのは大したことではないんですね。僕らの見解と大きな隔たりを感じます。」
ジオルド様が遠い目をしている。
「ああ、そこは同意する。ドレスを破ってまで木に登って誘拐犯のところへ一人で乗り込むのは充分大したことだからな。」
アラン様は大きく頷く。
カタリナ様はいろいろ考えを巡らせていたようだが、やがてばつがわるい表情になった。
「その節はみんなにたくさん心配かけてごめんなさい。」
するとマリアさんが
「わたしのせいでカタリナ様にまで危険にまきこんですみませんでした。」
といって深く頭をさげられた。
「マリアが、謝る必要なんてないわ」
カタリナ様は大きな声で否定する。そのとおりマリアさんは一方的な被害者だ。
「そうですよ、マリア。あなたは被害者なんですから謝る必要は全くありません。」
「そうだよ。マリア、君が気にする必要はないよ。義姉さんが勝手に暴走しただけだから。」
「ああ、その通りだ。このバカは一人で勝手に暴走したんだから自業自得だ。気にしなくていい。」
「その通りだ。」
ジオルド様、キース様、アラン様に続いてお兄様も同意する。
(マリアさん、謝る必要ないですよ)という意味でわたしとメアリ様はうなづく。
カタリナ様もマリアさんに全く非がないという意味でみんなにあわせてうんうんと頷いている。
うつむき気味なマリアさんは、顔をあげて
「ありがとうございます。」
とてれと嬉しさのまじった笑顔をみせてくれる。
「マリア~大丈夫よ。また何かあったらかならず助けに行くから。」
とカタリナ様がおっしゃると
「義姉さん、またそういうことを」
「もう危険なことはしないと言ったろう」
男性陣からブーイングだ。
わたしやメアリ様は両手をにぎりしめて
「くれぐれも危険なことはしないでください。」
と伝えた。
「それにしても合宿講義は、たいへんだったけどみんなと一緒に過ごせたのは楽しかったわ。」
「そうですわね。お勉強は大変でしたけど、一緒に過ごせたのは楽しかったです。」
「ええ、久しぶりにずっとカタリナ様とご一緒できてうれしかったですわ。」
「学園の寮生活みたいで楽しかったわね。」
「それはもう。」
「お城の大浴場にも入ったしね。楽しかったわ。」
カタリナ様がそういうと、メアリ様がかたまる。
あ、これは言ってはダメなやつだった。
「どうしたの、メアリ」
「いえ、ちょっとふがいない出来事を思い出してしまって。」
その様子をごらんになって思うところあったらしく、カタリナ様は今度はキース様に話をふった。どうやら頭をなでてもらったから頑張れたとおっしゃっている。キース様は恥ずかしそうに首を振ってまた別の時にしてくれとおっしゃる。
ジオルド様から黒くひんやりしたオーラが漂っているように感じるがおそらく気のせいだろう。
カタリナ様は、今度は、アラン様の演奏を聞いて感動したので、リクエストしたら気持ちよくなってねてしまってすみませんと謝っていた。
アラン様は、「ああ、あのことか、別に」とあっさりそっぽを向くが顔がやや赤くなっている。メアリ様がそんなアラン様をじっと見ている。ロマンス小説の挿絵なら左側に横を向いて顔を赤らめたアラン様を右側に正面を向いたメアリ様が見つめるような構図だ。
カタリナ様はしょざいなくなったという感じでわたしたち兄妹に話をふってくる。
「ソフィアには、お茶会に招待してもらったのに結局倒れてしまってごめんなさい。あんなに素敵な席を用意してもらったのに。」
わたしは一瞬どう答えていいかパニックになり、
「あの、いえ、あのときはすみません。」
と言って頭を下げる。下手なことを言ったらお兄様とカタリナ様の経歴に傷がつく。皆さんとは気の置けない友人関係にあるわたしたち兄妹だが、ことカタリナ様に関しては皆さんが大好きだという一点においては用心しないわけにはいかない。
「え、なんでソフィアが謝るの?」
「あ、いえ...。それはその」
わたしはいいわけを考えるがお兄様が静かな声で
「ソフィアは体調が悪いのに気が付かずにひっぱりまわしてすまないと言ってるんだろう。」
とおっしゃったのでほっとして
「そ、そうなんです。」
と答え繰り返し頷いた。
「そうなんだ、でもわたしも体調が悪かったなんて気が付かなかったし、気にしないで。むしろ元気だったと思うんだけど、倒れた時のこともよく覚えていないし、私、二コル様のお部屋にはいったんでしたっけ?」
「たしかに来たが開けた途端に倒れたんだ。だからあのときはびっくりした。合宿の疲れが意識しないうちにたまっていたんじゃないか。だからソフィアの部屋に運んだんだ。」
お兄様がそうおっしゃるとカタリナ様は納得した様子だった。