乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた..... 作:Brahma
「大丈夫よ。....に会えるから...。」
何が起こるのだろう。
わたし佐々木敦子は現世のわたしであるソフィアの潜在意識にはなしかける。
「大丈夫よ。前世のあの子に会えるから...。」
と。しかしソフィアには途切れ途切れに「聞こえている」ようだ。
ジオルド様とアラン様のお茶会が9歳のときにあった。
辛いのは、会場の外側の大木の下で運悪くアスカルト家の親戚筋なのにお父様と私を嫌う人々やお父様をねたむ貴族の令息や令嬢にかこまれて「呪われた娘、縁起が悪い、気持ちが悪い、なんでお前がお茶会に参加するんだ」、とののしられることで、予想通りわたしは会場の大木の隅によびだされた。
また不愉快な思いをするのかとおもったらその木の上から降りてきた人がいる。
びっくりして貴族の令息や令嬢たちは逃げるように去っていく。
そして思いがけなく私を助けてくれた紺のワンピースを着た令嬢?は、
「お花を摘みに...」と立ち去っていくが、お茶会の終わりに再会する。
彼女は私の髪を「絹のようなきれいな髪ね、一度さわらせてもらってもいいかしら」
とつぶやいた。
「エメラルド王女とソフィア」の一節だ。
エメラルド王女は、平民の娘ソフィアに出会い、楽しく町の中で休日をすごし、別れ際にソフィアの髪を「絹のようにきれいな髪ね。一度触らせてもらってもいいかしら」
ソフィアに話しかけるのだ。
わたしは、再会したその人に
「『エメラルド王女とソフィア』ですか?」
と尋ねた。その人は
「あなたは、『エメラルド王女とソフィア』をご存じなのですか?」
問い返してきた。わたしは、
「はい、好きな作品のひとつです。」
と応えるとその人は目を輝かせ大いに喜んでくれた。
その人は、
「カタリナ・クラエスと申します。」
と名乗った。公爵家の令嬢ではないか...
私は一瞬おどろいたが、
「ぜひ、うちへ遊びに来てください。」と手を握って懇願された。
「はい、わかりました。お伺いします。」
と答えた。それが運命を大きく変えるカタリナ様との出会いだった。
お茶会が閉会寸前であったこともあり、カタリナ様は、幼いながらも赤い髪をもつ気品のある令嬢や弟をなのった少年に連れ去られていかれた。
帰りの馬車の中でお兄様に友人ができて、それがクラエス公爵家の令嬢カタリナ様だと伝えると、魔性の美顔と呼ばれる顔の表情を緩めて
「よかったな」と言ってくださった。
その日の夢は、ソフィア本人は記憶から飛んでいるが、もう一人のソフィアである私佐々木敦子は知っている。木から降りてきたくせっ毛の少女がカタリナに変身して友人になった夢だ。すなわちカタリナこそ前世の友人内野真樹子であることを潜在意識に語りかける。
わたし、ソフィアは、その日から数日後、『エメラルド王女とソフィア』を読み返していたら、王女がソフィアにお忍びで会いに来る場面になって、わたしは、なぜか窓を開け、バルコニーから外を見たくなった。
そうしたら窓の正面にちかい木に登ったカタリナ様がなにやら合図をしてくるではないか。しばらくすると土人形が現れ、野菜を持ったカタリナ様が土人形に抱きかかえられて私の所へ来た。
「はい、ソフィア、うちの畑でとれた野菜よ。新鮮なうちに食べて」
野菜束を受け取る。
「あ、ありがとうございます。カタリナ様」
「うん、また約束の日に。」
メイドが野菜束をみてたずねる。
「お嬢様、その野菜束は?」
「エメラルド王女があらわれてプレゼントしてくださったの。」
と答えた。
その後、わたしとお兄様は、何度かクラエス家へ行き、
楽しい時間を過ごした。
アスカルト家の蔵書を見たいというカタリナ様の要望で、カタリナ様がアスカルト家にいらっしゃることになった。
両親がカタリナ様にソフィアと友人になってくれて感謝します、とお礼を言っているようだった。両親のあいさつが終わったタイミングをみはからい、わたしはカタリナ様に会いたい一心で駆け出していたようで息切れしていた。
「ようこそおいでくださいました。」とあいさつしたときになぜか顔が少々ほてっていたようだ。
そろそろ帰宅する時間になったということで、玄関口であいさつしているときに、わたしは思い出した。
「先ほどお話しした本を部屋に置いてきてしまいましたわ。」
「ああ、さっき話していた本ね。」
「そうです。すぐにとりに行ってきます。」
「ソフィア、また次の時でもいいわよ。」
「いえ、本当に素晴らしい本なのでぜひとも早く読んでいただきたいのです。待っていていただけますか?」
わたしは、ドレスをみっともなくない程度にたくし上げて早足でかけのぼる。
そのときに私自身であるソフィアとともにカタリナの心の中にわたし佐々木敦子のフラクトライトを感じた。彼女のなかにわたしがいる....
カタリナがソフィアとわたしを重ねていることが感じ取れたのだ。
わたしが戻ってきたときに、カタリナ様は兄の魔性の魅力にやられているようだった。
(お兄様は本当に「魔性の伯爵」みたいだわ...。)という思いがかすかに頭をかすめるが、それどころではない。
「カタリナ様、この本です。」
「ありがとう、ソフィア」
カタリナ様はお兄様の笑顔の呪縛から解放されたようだった。
その後、わたしはクラエス家にお兄様となんどかお伺いし、カタリナ様もキース様と一緒にアスカルト家にいらっしゃることが魔法学園時代まで続いた。
クラエス家には、ジオルド王子、アラン王子、メアリ・ハント様もいらっしゃることもあってすぐに親しくなった。
とくにメアリ様は四女で後妻の子であることから、先妻の娘である姉たちにいじめられていたという。
「わたしも、この茶色の髪も瞳は、姉たちに身分の卑しさが出ているとけなされてきてあまり好きではなかったのです。でも、カタリナ様がそんな私の髪も瞳もことを素敵だと、可愛いとほめてくださいました。それからハント家の庭園の花を絶賛してくださり、畑を手伝ってほしいとおっしゃったのでお手伝いに行きました。そしてみごとに野菜がいきいきとよみがえると、「メアリは『緑の手』をもつ素晴らしい存在だ」おっしゃってくれました。だから、きっとソフィア様も大丈夫ですわ」
メアリ様はそう言って私に微笑んだ。
私はとても驚いた。
堂々として、とても立派な令嬢にしかみえないメアリ様がご自分を嫌いだと思っていたなんて...
こうしてメアリ様とも大親友になって本の話をするようになると興味をお持ちになられた。
そして本をお貸ししたら感想を聞かせてくださり、カタリナ様とともに読書の楽しみを分かち合う友人をさらに得ることができた。
カタリナ様の15歳の誕生日パーティも招待された。パーティの終わりがけにメアリ様と一緒に「カタリナ様と踊るのが殿方ばかりで悲しい。」と話したら踊ってくれた。
次話と字数調整して魔法学園の記述を次話は持っていきました。