乙女ゲームに登場する文学少女である伯爵令嬢に転生していた.....   作:Brahma

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第7話 続くカタリナの危機

期末試験の前日だった。

わたし佐々木敦子は、転生したわたしであるソフィアにカタリナに危機が迫っていることを自分の思い出を通して語りかける。

カタリナの前世である内野真樹子は母親にたたき起こされる。

ゲームに夢中になっていたカタリナの前世内野真樹子は、遅刻すれすれの時間に自転車で登校することが続いていた。夜遅くまで俺様王子(アラン)、腹黒ドS王子(ジオルド)攻略に励んでいたようだ。選択肢を選ぶと好感度が上がるのだが、好感度の組み合わせがよくてもそれぞれの選択肢による好感度の上がり方がランダムなためになかなかクリアにならなかったりする。その日は、腹黒ドS王子(ジオルド)攻略が中途であったにもかかわらず、見通しの悪い通りで運悪く出合い頭にトラックにはねられたのだった。

お葬式が終わって数日後、スマホに未読メッセージがあることに気が付く。

時刻は、事故の前日の深夜。困り顔のマリアのアイコンに吹き出しがあり

「あっちゃん、腹黒ドS王子が攻略できない~」

と書かれていた。わたしは、吹き出すほどお笑いした後にその10倍以上の時間をしゃくりあげて泣いた。

 

わたしソフィアは非常に悲しい夢をみた。

その夢をみたとき、ふと夜空を見たくなった。空には三つの「かすみ」のようなものが見えた。一番大きな「かすみ」は、光の速さで230万年かかるという「マゼラン棒渦巻銀河」、そのちかくにみえるものの、光の速度で16万8千年かかる距離に隣り合っている「大マゼラン雲」と「小マゼラン雲」。「マゼラン棒渦巻銀河」を見ていると、子どものころよりもずっと昔にあそこにいたような気がした。星までの距離は、風の魔力で空気の揺らぎを抑える望遠鏡と巨大なお椀状の電波を発する魔法装置でその大きさや距離がわかると授業で習ったことを思い出していた。

 

一方で夢の内容はほとんど覚えていないのに大切な人カタリナ様にかかわる夢のような胸騒ぎを覚えて、学園の畑で作業しているカタリナ様に会いに行った。試験が近いから緊張しているのよ、とカタリナ様はおっしゃったが、トゲのように心に引っかかる不安はぬぐい切れない。

 

期末試験は、主に魔法の習熟度をみるものだった。大魔法使いが魔法道具を盗まれないようにトラップを仕掛けたダンジョンで魔法の石を見つけるものであった。3~4人のグループで協力し合いながら進むようにという試験だった。

凍り付くような回廊をジオルド様の火属性魔法ファイア・ボルテックスでくぐり抜け、巨大な主のいる幅20mはあるだろう地下水路をキース様の土属性魔法アーセン・ブリッジとアーセン・ポストで渡る。

矢が襲ってきたときだった。ジオルド様がハンド・フレイムで矢を焼き払い、キース様がアーセン・ゴーレムでわたしたちの盾になってくれたほんの少しの間に、カタリナ様が行方不明になった。あとでわかったことだが隠し扉で別の通路に滑って投げ出されたこと明らかになった。お兄様とわたしは、風の魔力でカタリナ様の声を拾い、「キノコ」という言葉を拾って、その声の方角を目指してすすんだ。

最初にカタリナ様を発見したのは私だった。

カタリナ様は、崖から足を踏み外して落ちようとしている瞬間だった。

カタリナ様を喪いたくない私は必死だった。全身全霊でカタリナ様の腕をつかんだ。もう限界かと思ったときに下から竜巻のような風が起こってわたしたちを包み込んでくれた。

後でわかったことだが、ラファエル様(その時点では事情があってシリウス・デイーク様と名乗っていた)が救ってくれたのだった。

カタリナ様の危機はさらに繰り返して訪れる。その日はお昼休みの直前に生徒会役員が全員学内の困りごとの相談に駆り出されていた。

それを解決して、さて昼食と食堂へ行くと、そこは異様な雰囲気につつまれていた。

カタリナ様を普段から煙たがっていた令嬢たちがカタリナ様を取り囲んでいた。激しい口調からなにやら糾弾しているようだった。

ジオルド様が「こんな状況証拠で...。」、キース様が、「あなたたちは、本当に義姉さんがこんなことしているのをみたのか」と二人ともそろって令嬢たちを目の笑っていない笑顔で見すえた。マリアさんがカタリナ様をかばうように令嬢たちの前に割って入って「こんなのはすべてでたらめです。カタリナ様は何度もわたしをかばってくださいました。わたしの大切な方を侮辱しないでください。」と肩を震わせて憤慨していた。

証拠書類は、根拠から状況の描写など非常に具体的で、そのまま訴訟文書に使えるほどの完成度だったが、事実からはあまりにもかけ離れた描写にマリアさんが感じたのと同様な怒りを覚えた。「カタリナ様にこのような器用さや狡猾さはありません。」とわたしは証言した。

 

これでカタリナ様の危機は去ったのかと思っていたところ、マリアさんが用事があるといったので、あわてて皆でこんなことがあった後だからと止めたものの、たいしたことありませんからとおっしゃってたので止めずにそのまま行かせてしまった。

わたしたちは、このときにマリアさんと一緒に行動しなかったことを非常に後悔することになる。

 

マリアさんが行方不明になって4日後今度はカタリナ様が中庭のベンチで倒れた状態で発見され、身体に異常はないもののいくら音を立てても揺さぶっても起きない状態になっていた。

 

わたしソフィア・アスカルトは、ベッドでカタリナ様が目を覚まさない悲しみに打ちひしがれていた。

「絹のような美しい髪ね。さわってもいいかしら」

あのエメラルド王女とソフィアに出てきた名セリフ。

「ソフィア様の絹のような美しい髪もルビーのような瞳もすてきだとおもいますよ。」

「私とお友達になってくれませんか?」

明るい太陽のもとへ連れて行ってもらえたあの楽しい日々を、カタリナ様を喪う...

耐えられないと思った。そのとき

「そうよ、もう一度失うなんて耐えられない」

と聞いたことのあるような少女の声が脳裏に響いた。

 

ソフィアのなかにいる私佐々木敦子は叫ぶ。

「せっかく出会えたのにまた失うなんて絶対に嫌」

「こんなところでめそめそしていないでわたしをあの子のところへ連れて行って」

ソフィアに脳内会議があるならわたしはその一員だ。

大人しくて弱気な彼女、まさしく前世のわたしの生き写しのような彼女に行動を起こさせるのはわたし佐々木敦子だ。

ソフィアは決心してくれたようでカタリナのベッドのもとへ向かっていった。

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