世界の歪みになろうとも   作:ジャギィ

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世界の歪みになろうとも

ずっと、この時を待っていた

 

 

「5年前に切り捨てた因縁がこうも付き纏うとはな…本当にしつこい愚弟に愚妹だ」

『兄貴…!』

『ヨハ兄ィ…』

 

コロニー型外宇宙航行母艦「ソレスタルビーイング」。小惑星を改造して建造された超大型艦であり、私の雇い主であるリボンズ・アルマークたち『イノベイド』の拠点…そこにソレスタルビーイングや地球連邦軍が、我々イノベイドの勢力に総力戦を仕掛けてきたのだ

 

そう、つまり……ソレスタルビーイングのガンダムマイスターであるミハエルとネーナが、リボンズの私兵である(ヨハン)と戦うことを意味する

 

「人類は我が主人(あるじ)、アルマーク様が正しく管理するのだ。それを受け入れない愚かな者たちなど消えるのが運命(さだめ)だ」

『兄貴、あんた、本当にダッセェよ。昔はクソ真面目だったけど、それでも俺たちのために1人でなんでもやろうとする所が、俺はカッコいいって思ってたんだぜ…今の兄貴、飼い犬そのものじゃねーか』

『私、昔のままだったら、ただヨハ兄ィを恨んでた。憎いから殺してやるって、本気でそんなこと考えてたと思う…でも、今は私もミハ兄ィもガンダムマイスターなんだ。……あんたたちイノベイターが世界を歪めるのなら!!』

『それを止めるのは、ソレスタルビーイングの俺たちしかいねーだろうが!!』

 

……本当に、2人は変わった

 

遊び半分で武力介入を行っていたミハエルが、自ら責任を持って戦いの場に赴いている

 

自分勝手だったネーナが、みんなの未来のために私を打ち倒そうとしている

 

どれほどの失敗があったのか。どれほどの敗北があったのか。どれほど、身近な死があったのか

 

「もういい。お前たちの愚かさを理解してやる道理などこちらにはない…死をもって償わせてやる」

『そりゃこっちのセリフだぜクソ兄貴ィ!!』

『あんたが私たちの未来の邪魔するって言うんなら、容赦なんてしてあげる気ないから!!』

 

眼前にて星の海を浮遊する、オレンジ色の光を放つ2機のガンダム

 

大型のスラスターとユニットと2本のGNバスターソードを背負い、腕部や脚部に計12機の大型GNファングを装備した刺々しいシルエット。私が強奪した“スローネ ツヴァイ”を正当進化させたような橙色のガンダム

 

ワインレッドカラーが特徴のそのガンダムは、背面を中心とした各部に大量のGNコンデンサーを搭載しており、スカートアーマーを装備したその見た目は柔らかいボディラインも相まって、どこか女性的に見える

 

そして私は“スローネ アイン”を基に発展させた、かの戦争屋が乗る“アルケーガンダム”の兄弟機である黒いMSに搭乗している

 

『“ミカールガンダム” ミハエル・トリニティ!』

『“アルマスガンダム” ネーナ・トリニティ!』

 

ミカールはGNバスターソードを手に、アルマスはGNビームサーベルとGNビームライフルをそれぞれ手に持ち…

 

『『世界の歪みを───破壊する!!』』

 

我が愛機に迫り来る

 

それに対して私は、背中のGNメガランチャーを両肩にジョイントさせ、3機の擬似太陽炉から生み出された赤いGN粒子を圧縮し…開放する

 

「いいだろう、お前たちに絶対的な死というものをくれてやる………

 

 

 

この“トリニティガンダム”でなッ!!」

 

強烈な粒子ビームが、先ほどまで2機のガンダムが存在した場所を貫いた

 

 

 

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『おぉらぁぁぁ!!』

 

GNメガランチャーの攻撃を回避したミカールは、GNバスターソードをトリニティに向かって横一線に薙ぐ

 

その大振りな一撃を見切っていたヨハンはトリニティをバク転するように躱させると、ビームサーベルを取り出し硬直したミカールに向かって切り上げる

 

(あめ)えんだよ!』

 

しかし、ミカールは腕と脚にマウントした剥き出しのファングを操作する。するとファングに合わせて腕と脚が動き、有り得ない挙動でビームサーベルを回避する

 

『隙だらけだぜ!』

「そちらがな」

 

そのままバスターソードで攻撃しようとするが、GNメガランチャーの弾幕によりバスターソードでのガードを余儀なくされるミカール

 

『うお!?テッメェ!』

『ミハ兄ィ、離れて!!』

「ッチィ、こざかしい!」

 

アルマスが2挺のGNハンドガンで弾幕を張り、トリニティがその対応をしている間にミカールが距離を取る

 

『助かったぜネーナ!』

『すぐに突っ込まないでよもう!HARO、ファングの操作お願い!』

『GNファング展開!GNファング展開!』

『おう!出し惜しみはしねえぜ!』

 

ミカールとアルマスが背中合わせになると、ミカールは脚部の6機を、アルマスはスカートアーマーにある8機の牙を展開する

 

『『いけよぉ!(いっけぇ!)ファングゥ!』』

 

HAROが操作するファングはアルマスの周辺に漂いながら精密な射撃を繰り出し、ミハエルのファングはビームの嵐の合間を縫うように飛び交い、先端にビームサーベルを形成してトリニティを付け狙う

 

「クッ……この程度ォ!」

 

これに対してトリニティは、両肩のGNメガランチャーでアルマスのファングを、両手のGNビームライフルで周辺で飛び交うファングを次々と撃ち落とす

 

着実にファングの数が減っていくのを見て余裕ができたヨハン。だがあることに気づく

 

(!?ミハエルのガンダムがいない!?)

 

そう、離れたところにいるのはGNハンドガンを連射するアルマスだけ…

 

その瞬間、右にオレンジの粒子が煌めいた

 

「そこかァ!」

 

条件反射レベルの速度で腕を右側に伸ばし、GNビームライフルのトリガーを引き続ける

 

そしてビームは命中して、起こるのは2つの()()()爆発

 

「何!?」

『ファングだよぉ!!』

 

爆散したのは射出されていた2機のGNファングだった。そしてその瞬間を狙ったミハエルは真下からトリニティ目掛けてGNバスターソードを振り下ろした

 

バヂヂヂッ!!

 

しかし、振るわれたバスターソードはトリニティを覆う濃い赤色の球体に阻まれ、不意打ちを防がれる

 

『GNフィールド!?』

「この、若造がぁ!!」

 

GNフィールドはすぐに消えるが、振り切ったバスターソードを側面を蹴ることで()なし、返しのビームサーベルで両手を溶断する

 

手が爆発したことでミカールから離れたGNバスターソードをトリニティが右手で持つと、両手首から先を失ったミカールを威圧的に見据える

 

『クッソォ…!』

「これでもう1つの方も使えまい」

『ミハ兄ィ!』

 

ミハエルの危機的状況を救うべく、アルマスの残った5機全てのGNファングのビームサーベルを伸ばして、トリニティに突貫させるネーナ

 

「浅はかな!」

 

突撃してくるGNファングに対して、トリニティはGNビームサーベルを高速回転させて投げ飛ばす。そしてビームサーベルの刃に当たるようにGNメガランチャーの粒子ビームを撃ち込む

 

強力な粒子ビームはビームサーベルによって散らされることで拡散し、迫り来る5機のファング全てを破壊する

 

『嘘!?』

「その油断がァ!!」

 

そして4条のビームが同時にアルマスの方へ伸び、左の腕と脚を吹き飛ばす

 

『うああああっ!!』

「命取りとなるッ!」

『させるかよおぉぉ!』

 

半壊したアルマスを確実に破壊するため銃口を向けるトリニティに向かって、ミカールが右腕のファング3機で攻撃する

 

しかし擬似太陽炉3機分のGN粒子をふんだんに使ったGNフィールドは、大型ファングのビームサーベルでも貫くことはできない

 

『硬え!?…ならよォォ!!』

 

それを見たミハエルは左腕のファング全てを右脚に収納し、大型ファング3機のパワーを利用した蹴り下ろしでGNフィールドを攻撃する

 

ギャヂヂヂヂィィ!!

 

「無駄だ!!このGNフィールドを破ることなど…」

『もうちょいパワーがありゃあできんだろうがよ!』

 

蹴りとGNフィールドが拮抗する中、ミハエルはそのキーワードを叫んだ

 

『──TRANS-AM(トランザム)!!』

「何ィ!?」

 

その時、ミカールが放出する赤い粒子の量が爆発的に増幅すると同時に全身が赤く染まる。一瞬で拮抗は破れ、神速のスピードでトリニティの左腕を蹴り砕く

 

『HARO!GN粒子の残量は!?』

『46%(パー)ダゼ!46%(パー)ダゼ!』

『ッ……上等!TRANS-AM(トランザム)!!』

 

すると遠くで援護射撃をしていたアルマスもより赤みを帯びて輝き、先ほど以上の火力でトリニティを狙い撃つ

 

「ぐううッ…おのれぇ!!TRANS-AM(トランザム)!!」

 

トリニティは無事な右腕で握ったGNバスターソードを構えて、赤い残像を残しながらビームとミサイルの雨を捌く

 

赤い3つの流星が暗黒の宇宙を駆け巡る

 

トリニティのGNバスターソードとアルマスの2本のGNビームサーベルが鍔迫り合い、光を散らす

 

「お前たちに、ガンダムなど必要なかった!!」

 

ヨハンの血を吐くような叫びがネーナの鼓膜を震わせる

 

『何ッ…?』

「ガンダムになど乗らなければ良かったのだッ!!なのにィ!!」

 

GNメガランチャーがアルマスに狙いをつけるが、ミカールのファングが両肩のGNメガランチャーを抉り潰す

 

「ぐぅ!…なぜそうも昔から!!」

 

チャンスを潰されたトリニティはファングを全機失ったミカールにバスターソードを突きつけるが、横から行動をカットしてくるアルマスの姿に断念する

 

「お前たちは聞き分けが悪いんだッ!!」

『自分から捨てといて、今更兄貴ヅラしてんじゃねえ!!』

『もう私たちは命令されるから戦うんじゃない!私たちの意思で戦うんだ!!』

「ッ!お前たちは…本当に…」

 

絞り出すような小声。しかし、それを塗り潰すような怒声でヨハンは2人の弟妹に告げる

 

「ならば……私を殺してみせろォ!!」

 

3機の擬似GNドライヴをフル稼働させ、一瞬でビームとミサイルの弾幕を抜け、ミカールの前まで迫る

 

「うおおおおおおおっ!!!」

 

GNバスターソードが…ミカールの胴体を貫いた

 

『ミハ兄ィ────!!!』

「───」

 

抵抗すると思っていたはずが、あまりにあっけない感触に、ヨハンは一瞬思考を手放し…

 

ガキィン!

 

その直後、ミカールの手を失った両腕がトリニティの胴体を右腕ごと抱き締めた

 

『へ、へへ…!コックピットに当たってねえぜ…!』

『ミハ兄ィ!!』

 

聞こえてくる兄の声に、ネーナが破顔する

 

よく見れば、GNバスターソードはミカールのコックピットの真横に深々と突き刺さっていて、かろうじてミハエルは無事だった

 

『今、助けるから!』

 

ネーナはアルマスを操作してミカールに当たらないよう粒子ビームを撃つが、それは赤い粒子の壁によって阻まれる

 

『ッ!GNフィールド!』

 

一方ヨハンは拘束されていながらも冷静だった

 

『これで動けねえぜ』

「私を拘束するのが目的か…しかしネーナのガンダムではこのGNフィールドを破ることはTRANS-AM(トランザム)をしていようと不可能だ。唯一破る可能性があるGNバスターソードもこのトリニティとお前の機体ごとフィールドの中にある。手が破壊された状態で…」

 

ガコンッ

 

その時、ミカールの背部のユニットから音が鳴る。折り畳まれたユニットの()()()()()が背中にある両手剣の柄を握り、内側からGNフィールドを突き破りながら、上段の構えを取る

 

「バ…バカな…!!」

 

それを見てヨハンは驚愕した

 

『手なら…』

「──隠し腕だとぉ!?」

『まだあんだよォ!!』

 

GNバスターソードが、トリニティの胴体を袈裟斬りに斬り裂いた

 

 

 

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「た、倒した…ん、だよな…?」

 

ミハエルの問いかけに誰も答えない。GNバスターソードがトリニティガンダムを内部まで破壊したのか、2機を覆っていたGNフィールドはすでに消えている

 

「兄貴……」

 

5年前、裏切ったヨハンによって妹もろとも殺されかけ、それでもなんとか生き残ったミハエルは、ネーナと共に壊滅しかけたソレスタルビーイングに集い、ガンダムに乗った

 

そして5年の月日と共にソレスタルビーイングの活動が再開すると、その戦いの過程で、かつて裏切った兄がソレスタルビーイングを壊滅させた敵…イノベイターの組織にいることが分かった

 

なぜヨハンが裏切ったのか?

 

結局それも聞けずじまいのまま──

 

ガキィン

 

その時だった

 

「な…!?」

 

静止したはずのトリニティが動き出し、千切れかけている右腕でミカールを掴んでいた

 

「テメェ…!」

『抜かったな!!ミハエルゥゥゥゥ!!』

 

そして無理やりトリニティの擬似太陽炉をオーバーロードさせ、臨界点に達した擬似太陽炉が限界を迎え…

 

バキャァ

 

───自爆する寸前、トリニティの胸部からGNビームサーベルの刃が飛び出した

 

 

 

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左肩が熱い。下半身の感覚がない

 

私は…負けた、のか…

 

「ゴボッ!」

 

今の私の体は、トリニティガンダム以上に酷い状態だ。左腕が消し飛び、下半身は蒸発し、ヘルメットが割れて右目が見えない。しかもコックピットの破片で喉も潰れているという死に体だ

 

最後の擬似太陽炉を暴走させる自爆を阻止したのは、おそらくネーナだろう。GNフィールドが消えてる以上、トリニティにそれを防ぐ手立てはない…

 

『ひ…ひっ、ひっぃ、うぅ……』

 

その時、頭の中に、誰かのすすり泣く声が響いてきた。残った左目でよく見れば、キラキラと光り輝く粒子がコックピットを……いや、この周辺の宇宙空間全てを包んでいた

 

『なんで…ひぅ、ヨハ兄ィ…なんで、ネーナたちと、戦わなくちゃ、ならなかったの…?』

『クソ…!勝ったってのに…なんで、なんでこんな気持ちワリィんだよ…!』

 

この声は…ミハエルとネーナ…

 

そうか……無事にイノベイターへと覚醒したのか、刹那・F・セイエイ…

 

『え…!?今のって…』

『兄貴の…声…?』

 

しかし…遅かったか…こうなると分かっていたから、早く決着をつけたかったものを…無意味な自爆をしてまで、トドメを刺させたのだが…

 

『トドメを刺させた…?』

『どういうことだよ、兄貴!!』

 

…不思議な空間だ…墓場まで持っていくと決意していた秘密を、ここなら話しても大丈夫という安心感がある…

 

全ての事情を話した

 

チームトリニティが世界統一のための捨て駒として生み出されたこと

 

このままでは私たち全員が殺されてしまうこと

 

ミハエルとネーナを生かすために、イノベイターを利用して、裏切り者となり、世界の敵となり、お前たちに討たれようと計画していたこと

 

そして今…ようやくその願いが叶ったことも

 

『嘘だ…んなデタラメ信じられるか!!んなこと…!』

 

ミハエル…あの時、お前を死ぬ寸前まで撃ってすまなかった…謝って済むことではない、許されたいと思わない……ただ、謝りたかった

 

『…!あ……あに、き…』

 

ネーナ…お前にも撃ったな…それに必要以上に脅しつけた…怖かっただろうに……

 

『うぅ…そうだよ…物凄く怖かったんだから!!それに、女の子の体に傷をつけるなんて、ヨハ兄ィ、最低だよッ!』

 

そうだな…私は…最低の兄だ…

 

弟と妹を生かすという自らのエゴでお前たちを傷つけ、多くの人々を殺し、心さえ踏みにじってきた…

 

お前たちと共に生きる資格など、とうの昔から私にはなかったのだ…

 

『そんなことないッ!私、なんでヨハ兄ィは私たちを捨てたんだろうってずっと思ってた…でも、ヨハ兄ィは、ずっと、私たちのために…』

 

そんな綺麗な話ではない…美談にしていい話でもない…

 

己の欲望のために世界を破滅させようとした裏切り者で最低最悪の兄を討った…それが1番、お前たちのためになる…

 

『そんなの…そんなのって!!』

 

そろそろ…時間だ…

 

『!! やだ!こんなのってないよ!ヨハ兄ィが優しくなくなったのが凄く嫌で、でもずっと優しいままだったってやっと分かったのに…また優しいヨハ兄ィがいなくなっちゃうなんてやだぁ!!』

 

…全く…いつまで経っても、わがままな妹だ…

 

ミハエル…ネーナ…お前たちがやった行いは正しいのだ…私が認める…他ならぬ私が許す…だから自分を責めないでくれ…

 

『兄貴…』

 

こんな私を…まだ、兄と呼んでくれるのか…?

 

『そうだよぉ!ヨハ兄ィは、ヨハ兄ィしかいないんだもん!』

 

…ならば…兄として最後の命令だ…

 

行け、ミハエル、ネーナ。生きて未来を切り開け

 

フフ…最後くらい、こういったこと(原作ネタ)を言ってもバチは当たらないだろう…

 

『ヨハ兄ィ!早く脱出して!』

『…行くぞ、ネーナ…』

『ミハ兄ィ!?離してミハ兄ィ!ヨハ兄ィがァ!』

 

…もう目は見えないが、どうやら、ミハエルがネーナを無理やり連れていっているようだ…

 

いい子だ…

 

『ヨハ兄ィ!!ヨハ兄ィッ!!』

 

ありがとう、ミハエル、ネーナ

 

お前たちの兄でいられて、お前たちと共に過ごせて───

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

『!!』

『ヨハ──』

 

 

 

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高純度のGN粒子が煌めく宇宙空間で、ヨハン・トリニティが乗るトリニティガンダムは爆発した

 

『ァ───』

 

ミカールに羽交い締めにされる形で連れ出されたアルマスが右手の伸ばし、虚しく虚空を握る。大切なものを掴み損ねた手は、搭乗者の心を表していた

 

『ウ…ウゥ…!』

 

肩を震わせながらヘルメットを取る

 

そして、目の前の赤いGN粒子が、兄の命の輝きなのだと分かった瞬間

 

『──ゥワアァァアアアァァァァァッ!!!!』

 

感情を堰き止めていたダムが決壊し、枯れ果てんとばかりにネーナは泣き叫んだ

 

『ヨハ兄ィッ!!!ヨハ兄ィイィィッ!!!』

 

妹の慟哭と嗚咽がミカールとアルマスのコックピットに反響する。悲しみに満ち満ちてもなお足りない心が涙となって宙に浮かぶ

 

「……ロウ……」

 

アルマスの機体をミカールが抱き締める。泣き叫ぶ妹を慰めるように強く、優しく

 

それでもなお、最後の最後にヨハンの本心を聞いてしまったミハエルは、自分の気持ちを制御できず…喉を震わせた

 

 

 

「兄貴の…兄貴のバカヤロオオオオオオ!!!!」

 

 

 

2人の弟妹(きょうだい)の絶叫が、輝く宇宙に溶けていった

 

 

 

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0000000

 

 

 

───2年後 西暦2314年

 

 

「フェルト、ミレイナ、出撃準備は?」

「サバーニャ、ハルート、ツヴァイ、ドライ、アイン、出撃準備完了」

「いつでもいけるですぅ!」

 

 

「皆さん、気を付けてくださいです!」

『まっかせてミレイナ!これ終わったら、みんなとショッピングに行くって約束してるんだから!』

『それ、死亡フラグって奴じゃない?』

『縁起でもねえこと言ってんじゃねえよアレルヤァ!』

『…ったく、緊張感のカケラもねえぜ』

『フフ…でも、変に緊張するよりはいいわ』

 

 

「サバーニャ、ハルート、出撃したですぅ」

「ツヴァイ、ドライ、アインの出撃シークエンスを、ミハエル・トリニティ、ネーナ・トリニティに譲渡します」

 

 

『おう!“ガンダムトリニティ ツヴァイ”、ミハエル・トリニティ!』

『“ガンダムトリニティ ドライ”及び独立支援機“ガンダムトリニティ アイン”、ネーナ・トリニティ!』

 

 

『『未来を切り開く!!』』




これにて『世界の歪みになろうとも』完結です。何気に短編含めキッチリ話を完結させたのはこれが初めてです

元々1週間前にハーメルンで被殺願望杯なんてのがやってることに気づいたので、前から温めてたネタの解消と執筆熱再燃のために書いたのですが、案の定1週間じゃ書ききれなかったので少し変更しつつ投稿させてもらいました

ちなみに1期から2期までの間の話はいくつか考えてまして、兄貴繋がりのヨハン(憑依)とロックオンが戦ったり、ブレイクピラーでアヘッドに乗ったヨハン(憑依)が正体を隠してミハエル、ネーナと最後の共闘をしたり、復讐に来たルイスを逆に返り討ちにして嬲り殺しにする寸前に刹那と沙慈が助けに来ることで沙慈とルイスが決戦前に和解したり……などなどです。色々補完しきれる自信がないので、今回はすっ飛ばして書きましたが

それではまた別の作品で会えたら会いましょう。サラダバー

《人物紹介》※裏設定あり

ヨハン・トリニティ

本作の主人公にして憑依者。チームトリニティ長男
原作と違い精神年齢がおっさんレベルで積み重なってるので、とても思慮深く、妥協ができ、叱る時はしっかり叱る性格になっている
平和な前世と争いが絶えない今世の世界を知っていたがために、弟と妹の未来のために人類の敵となることを決意する。その過程で弟妹や多くの人々を傷つけ殺したため、最後にミハエルとネーナに殺されるべきだと考えるようになっていく
ある意味、世界によって歪められた人間の1人なのかもしれない

ちなみに最終操縦レベルはアリー・アル・サーシェス並。歴代ガンダム知識頼りの奇策を使うことで生き延び、経験を積んできた

ミハエル・トリニティ

チームトリニティ次男
喧嘩っ早くて短気な性格。兄のヨハンは、純粋に強くて頼りになるため尊敬していた
ヨハンの裏切りの際に重傷を負ったこととネーナを傷つけたことから、最初はヨハンを憎んでいたが、5年間ソレスタルビーイングで行動するうちになぜヨハンが自分たちを裏切ったのかが気になり、憎むに憎めなくなった。ネーナのために我慢をすることを覚えるなど、作中1番成長した人物といえる
ELSの最終決戦も生き延び、常人と比べれば遥かに短いが、確かに天寿を全うした

ネーナ・トリニティ
チームトリニティ末妹
わがままで自分勝手な性格。わがままを許してくれる優しいヨハンが大好きで、結構なお兄ちゃん子
最初にヨハンに裏切られた時は、初めて兄から向けられた殺意や冷酷な態度(無論全て演技)、優しい兄がいなくなった経験がトラウマになり、周囲に対し疑心暗鬼になっていたが、プトレマイオスメンバーの強い心と刹那の真っ直ぐでガンダムバカな性格を見て、悩んでるのがバカバカしいと感じて立ち直る。甘えん坊な妹キャラだが、ミレイナと出会ってからはお姉さん風を吹かすようになり、恋バナをしたりするなど精神的に大きく成長する
イノベイター戦後、ヨハンの死が新たなトラウマになるが、ヨハンの遺言とミレイナの存在によって、予想以上に早く立ち直った
ELS最終決戦の最中にイノベイターとして覚醒したことで戦いから生還し、作られた命ゆえの短命が完全に解消された
ミハエルの死を看取った後は、新たな人生の出発として他のイノベイターたちやELSと共に外宇宙航行艦「スメラギ」に乗り、外宇宙へと旅立った
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