ガールズ&パンツァー 彗星の狼王   作:兵頭アキラ

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大体はその日に思い付いた流れで書いている。


操縦手はスピード狂

 装填手に一年生の坂田暁、砲手に二年生の百合若林檎を勧誘することに成功した私は、戦車道部の隊長を務めるみほに現状報告をした方がいいと思い立ち、彼女の住むとなりの寮室に向かった。

 インターホンを押してから、ポケットからみほの部屋の合鍵を取り出して鍵を開ける。

 

「邪魔するよ」

「あ、リクさん」

「現状報告しに来たよ」

「分かりました。適当なところに座ってください」

 

 ベッドに腰掛けていた彼女は立ち上がり、玄関とリビングの間にあるキッチンに向かう。

 お茶やら何やらを用意するのだろう。

 私はそんなみほの後ろを通って彼女が元々腰かけていたベッドと対面するように食卓に正座をする。しばらくして堅苦しすぎるか?と思い、正座を崩して横座りに変えた。

 そうして待っていると、

 

「リクさんってコーヒー大丈夫だったっけ?」

「全然大丈夫!ブラックでいいよ」

「へぇ~ブラック飲めるんだ。私、砂糖とミルクが必須だよ~」

「黒森峰出身だから平気だと思ってたんだけど、意外」

 

 ドイツ系の学校なんだし、と思っていたが、流石にステレオタイプが過ぎたらしい。味覚には個人差があるのだから、そんなのは当たり前か。

 しばし談笑していると、みほがコーヒー二杯とコンビニに売っているエクレアを二本食卓に乗せた。

 

「ちょうどコンビニで買ったエクレアがあったから」

「あぁ、みほってコンビニが好きなんだっけ?」

「うん!何時間でもいられるよ~」

 

 そう言いつつみほは私の前にコーヒーを置き、ベッドに腰掛けた後、自分の分に砂糖とミルクを入れてかき混ぜていた。

 

「とりあえず現状報告ね。私のチーム……オオカミさんチームだっけ?は、今現在装填手と砲手を勧誘することに成功。後は操縦手と機関銃手兼通信手だね」

「あ、そのことなんだけど、優花里さんが通信手ならアテがあるって言ってた」

「通信手?」

「うん。昔から仲のいい友達に向いてる子がいるんだって」

「へぇ……」

 

 通信手はコミュニケーション能力が問われ、その上に何か一芸があるのが個人的には好ましい。

 だが戦車マニアの優花里のことだ、そのあたりを考慮したうえで推薦していることに違いない。

 私は腕を組んでどんな子だろうか?と考えていると、みほがベッドから滑り落ちて私と同じ顔の高さで向かい合った。

 

「ねえ、砲手の子ってどんな子なの?」

「砲手?弓道部の子」

「弓道部?」

 

 みほが首を傾げた。

 

「そう、弓道部。手首を怪我したせいで弓を引けなくなったみたいでさ。ずっと弓道しかしてなかった所為で別のことをする勇気がなかったみたい」

「ふうん。……なんか親近感湧いちゃうね」

 

 みほは私の話を真剣に聞いていた。

 やはり、私と同じように林檎に対して親近感がわくらしい。性格や方向性が違うだけで、本質的には私達と彼女は似た者同士なのだろう。

 

「で、聞く限りではエースって呼ばれてたぐらいだから上手いみたい。ただまあ、私はその子の能力で勧誘したんじゃなくて、目に『変わりたい』って炎があったからなんだけど。性格は少し暗めで……寂しがり屋のかまってちゃん」

「寂しがり屋のかまってちゃん……猫?」

「うん、猫っぽい」

 

 動物とするなら、確かに林檎は猫だろう。因みに暁は犬。

 私の話を聴いて、みほが笑った。

 

「結構個性的だね」

「あんこうとさほど変わらないよ」

「どうかなぁ、でも、うん、なかなかいいと思うよ」

「あ、装填手を担当してもらうつもりの暁なんだけど、どう?上手くいってる?」

「坂田さん?」

「そう」

 

 暁は一足先に練習に参加している。

 私は林檎を勧誘しに行ってたから、彼女がどんな様子だったのかを知らない。

 自分のチームの装填手を担当してもらう子が上手くいっているのかは非常に気になるところだ。

 

「坂田さんは三突のカバさんチームに色々教わってたよ。筋があるってエルヴィンさんやカエサルさんが言ってた」

「ならよかった」

 

 何で歴女チームに教えを乞うたのかは知らないが、問題ないのなら上々だ。

 明日からは林檎も練習に加わってもらうつもりだし、仲良くしてくれるとありがたい。……林檎が他の人とうまくコミュニケーションをとれるかどうかは不安だが。

 と、私がみほに今日の練習のことを聞いていると、隣の部屋、つまり私の部屋のインターホンが鳴った。

 

「リクさん、今日誰か呼んでたの?」

「いや、知らないけど」

 

 とは言え出ないわけにもいかない。

 私は立ち上がって扉を開け、私の部屋のインターホンを鳴らしている人を扉越しに確認する。

 その人は同じ大洗の生徒で、金髪にカチューシャをした、棒付きの飴を銜えた子だった。耳には銀色のピアスが揺れている。

 金髪なので、恐らく染めているのだろう。ピアスも含め、明らかな校則違反だが、今は無視することにした。

 その女子生徒が、私の存在に気づいた。

 

「なあ、ここに住んでる奴、どっか出かけてんの?」

「いや、そこが私の部屋なんだけど」

「じゃあ何で隣にいんの」

「遊びに来ただけだけど」

「そ」

 

 何と言うか、さばさばした性格のようだ。

 私の背後からみほがやって来た、

 

「大丈夫?リクさん」

「大丈夫だよ、みほ」

 

 彼女は銜えていた飴の棒をもって外に出した。そしてその飴を私の顔に向ける。

 

「ってぇことは?アンタが黒畑リクって事か」

「そうだけど……君は?」

 

 再び飴を銜え、口の中でころころと転がしている。そのことは棒の動きで分かった。

 彼女はニヤリと笑い、

 

「アタシは竜宮颯。ところで、アンタ今戦車道の勧誘やってんだろ?」

 

 彼女は自分の名前を名乗った。

 竜宮颯。

 広報のモノクルから受け取ったリストの中にあった名前だ。今見ている顔と名前を脳内で照らし合わせる。

 私が黙っていたからか、颯が笑みを引っ込めた。

 

「ん?もしかすれば、もう期限切れってか?」

「いや、まだやってるけど」

「なんだ、そうなら早く応えてくれよ」

 

 彼女は急かしてくるタイプらしい。

 ピアスや髪を染めたりしているが、竹を割ったような性格と見ていいだろう。

 颯は私の肩を掴んで、

 

「一つ質問なんだが、アンタの戦車って速いのか?」

「……最大速度で時速47~50キロくらいだから、同クラスの巡航戦車と比べたら速い方だけど。少なくとも、遅くはない」

「安定性は?」

「二つじゃないか……。履帯が脱落しにくいか否かだったら、しにくい」

 

 コメットは転輪の数を増やしたから、少し重くなって速度が落ちた代わりに安定性が上がっている。攻防速が揃い、故障の少ない信頼性の高さ。最良の名は伊達ではない。

 悔しいことにクロムウェルに速度は劣っているが、攻撃力と防御力、安定性を考慮すればコメットの方が上だとコメット乗りの私は自負している。

 二つの質問に答えると、颯は顎に手を当て、目を瞑っていた。

 そして得心したとばかりに頷き、

 

「よし。操縦手として乗らせてもらおうか」

「は?」

 

 思わず変な返事をしてしまった。

 

「は?じゃないよ。まさかもう決まっているとか?」

「え……いや、そんなことないけど」

「じゃあいいじゃないか。いろんなモンに乗ったけど、戦車だけは乗ったことなかったんだ」

 

 にかっと颯が笑った。

 戦車に乗ったことなかったから……という理由らしいが、それなら別に普通に戦車道を履修すればいいだけじゃないか。

 そのことを彼女に聞くと、

 

「履修してるぞ」

「……みほ、知ってる?」

「ううん、知らない」

 

 みほが首を横に振った。

 意味が分からない。

 颯は履修していると言ったが、隊長を務めるみほは知らないと言う。

 私が首をかしげていると、

 

「まあ、履修はしたけど、出てはいないってやつだ」

「はぁ?!」

「いや、何と言うか、めんどくさくて未記入で出したら戦車道になっててさ。……で、一応は真面目にやろうにも戦車はもうどれも定員オーバーと来た」

 

 颯が嫌んなっちゃうよなぁ。と、肩をすくめ、首を振るジェスチャーをした。

 

「どうしようかと悩んでたら、アンタがメンバー探してると聞いたんで来たってわけだな」

 

 私の肩を大笑いしながらバシバシと叩く。痛い。

 だが気になるのは、それならそうとなぜ学校で言ってくれなかったのかだ。

 

「じゃあ、学校で言ってくれればいいのに」

「アンタが何年でどのクラスなのか知らなくてな?寮に帰ってきたらアンタの姿を見たもんだから、今来たってわけ」

 

 この寮に住んでるのか。

 みほが目を輝かせて、

 

「この寮に住んでるんですか?!」

「おう。ここから二階ほど上だな。アンタが戦車道の隊長だろ?これからよろしくな」

「はい!よろしくお願いします!」

「こんな夜分遅くに来た詫びもある。アタシに言ってくれればヴィーちゃんを使ってもいいぜ」

「ヴィーちゃん?」

 

 なるほど、駐輪場にある馬鹿でかいVMAXの持ち主が誰か分かった気がした。

 前期型か後期型かどうかはよく見ていないので――詳しくは知らないので恐らくよく見ても――分からないが、あのモンスターマシンを学園艦で乗りこなせるのだから動体視力とテクニックはかなりのものだろう。

 

「駐輪場においてあるあの馬鹿でかいバイクのことだよ」

「管理人さんのかな?って思ってたけど、竜宮さんのだったんですね」

「カッコイイだろ」

 

 颯は嬉しそうに笑った後、

 

「ってぇことだから、これからよろしくな」

 

 といって私たちの前を通って階段を上っていった。

 後は機関銃手兼通信手。優花里にアテがあるというので聞いてみることにしよう。




 竜宮颯(たつみやはやて) 性別 女

・プロフィール
 所属校―県立大洗女子学園
 学年―3年生(普通一科B組)
 所属チーム―Fチーム(オオカミさんチーム)
 担当―操縦手
 身長―162cm
 出身―茨城県結城市
 現住所―大洗女子学園女子寮
 家族―父(竜宮流星)・母(竜宮須美)・妹(竜宮風)
 誕生日―3月17日(魚座)
 年齢―17歳
 血液型―B型Rh-
 好きな食べ物―ファストフード(早く食べられる奴全般)
 嫌いな食べ物―鍋(食べるのが遅くなる奴全般)
 好きな教科―数学
 嫌いな教科―音楽
 趣味―タイムアタック
 日課―バイクやロードバイクの整備
 好きな花―アサガオ
 好きな戦車―M18 ヘルキャット

・概要
 常にポッキーや棒付きの飴を銜えている3年生。スポーツカーにバイクやロードバイクで爆走し、走るのも速いというスピード凶。もともと戦車道部に入っていたが乗れる戦車がなく、リクがメンバー探しをしていると聞いて加入した。
 レオポンチームとは顔見知りであり、たびたびどちらが最速か競争している。
 卒業した後の彼女の後釜には来年入学する妹が入るらしい。
 リク曰く、「聖グロに来た赤い髪の子に似ている」とのこと。

・性格
 竹を割ったような性格であり、速いものが大好き。乗る物だけでなく、自分も速くなければと足も速い。
 乗っている乗り物には安直だが名前を付けており、車には『豆腐ちゃん』、バイクには『ヴィーちゃん』、ロードバイクには『エアちゃん』。チーム車両のコメットだけは『コメットさん』とさん付け。曰く、「ちゃんと言うよりもさんと言った方がしっくりくる」らしい。
 そんな彼女であるが、お菓子も大好き。

・容姿
 染めた金の短髪にカチューシャをしている。アホ毛。瞳は黒。スレンダー体系であり、非常にスポーティー。無駄なものが全くない。スパッツを履いており、スカートの端から少しだけ見えている。普段はピアスをつけているが、何かに乗る時は外している。
 首からゴーグルを下げている。
 運転時には革のグローブをはめる。

・特技
 簡単なものは整備や修理が出来、好き好んでコメットのメンテナンスを進んで担当している。
 リクの無理難題に応える腕を持つ。スピード凶のため操縦が荒く見えるが、実際にはすさまじく正確で丁寧。たまに戦車に話しかけて発破をかける。
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