ガールズ&パンツァー 彗星の狼王   作:兵頭アキラ

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ようやく仲間が全員揃います。


通信手は潜入上手

 放課後の練習を終えた私達、通信手を欠いたオオカミさんチームと、何故か装填手の優花里がいないあんこうチームは学校から帰るべく校門に向かっていた。

 チームリーダーである私は、別視点からの意見も聞くために隊長のみほに話しかける。

 

「どうだった?私のチーム」

「すごいよ!想像以上だった!」

「ならよかった」

 

 私の目から見ても、みほの目から見ても私のチームはいい出来らしい。

 みほが興奮したように腕をぶんぶんと振っている。

 

「ところで、ちょっと気になったんだけど、コメットってイギリス戦車なのにどうしてシュトリヒ式を使ってるの?」

「どっどういうことですか?」

 

 オオカミさんチームの砲手を務める林檎が驚く。

 確かに、先ほどまで覗いていた照準器が妙な代物だとなればこの反応も無理はない。

 彼女は私の袖をつかみ、上目遣いで私を見上げた。

 

「ああ、本来ならシュトリヒ式はドイツ系の物で、本来のコメットは別の照準方式なんだよ。なんだけど私がイギリス系よりもドイツ系の方がやりやすかったから、改造して取り換えたんだ。気になるなら元に戻すけど……」

「いっいいえ!大丈夫です!一度覚えた以上、変えるのは難しいと思うので」

「そういうことだったんだ」

 

 コメットの所有権は私にあるから、その気になれば変えることは出来るんだけど、林檎がそう言うなら別にいいだろう。

 みほも、私の話を聴いて納得したようだ。

 一瞬だけ笑顔になったみほだが、すぐに表情が暗くなった。

 理由は分かっている。

 その理由を華が切り出した。

 

「秋山さん、結局練習に来ませんでしたね……」

「秋山って誰さ?」

 

 誰のことかピンときていない颯に、暁が口添えする。

 

「あんこうチームの装填手ですよ!」

「ああ、一人少ないと思ったら、そういう事か」

 

 棒状のチョコ菓子を銜えた颯がポンと手を叩いた。

 彼女はこの中で唯一の三年生な上に、暁と違って全体での練習に参加していなかったから誰のことかとんと見当もつかなかったらしい。

 そもそも誰が誰かを知らないのだから、彼女を責めるわけにはいかない。

 しかし、私も今日彼女から通信手の友達を連れてくるといわれたので、会えないのは少し困る。これでは連携の練習が出来ない。

 

「メールは返ってきた?」

「全然。電話かけても圏外だし……」

「どうしたんでしょう……?」

「直接家に行くか」

「……そうだね」

 

 流石に連絡もつかないとなれば大事なので、私達は優花里の家に向かうことにした。

 一度職員室に行って優花里の担任から住所を聞き、彼女の家に向かう。

 私は住所をメモした紙を見て、

 

「うん。ここで間違いないかな」

「秋山さんち床屋さんだったんだ」

 

 沙織の言うように、少しレトロなにおいのする床屋だった。

 ドアを開けると、客が入って来たことを知らせるベルが鳴り、散髪用の椅子に座って新聞を読んでいる優花里のお父さんらしき人と、レジの横で座っているお母さんらしき人がいた。

 お母さんらしき女性が挨拶する。

 

「いらっしゃいませ!」

「すみません!」

「おぉ……」

「あの、優花里さんはいますか?」

「アンタたちは……」

「友達です」

「友達……友達ぃ?!」

 

 お父さんらしき人が慌てて立ち上がって新聞を手放した。

 空中で手をうろうろさせている彼を、優花里のお母さんがなだめる。

 

「お父さん落ち着いて」

「だってお前!ゆかりの友達だぞぅ?!」

「分かってますよ。何時も優花里がお世話になってます」

「お世話になっております」

 

 お母さんは綺麗に腰を折ってお辞儀したが、お父さんは何と土下座してきた。

 その様子から見るに、優花里には通信手候補の子以外の友達が少ない、もしくはいないのどちらか。

 いきなりの土下座にみほが狼狽えている。

 

「あ、あの……」

「優花里、朝早く家を出て、まだ学校から帰ってないんですよ。どうぞ、二階へ」

 

 私達はそろって顔を見合わせる。朝早くから学校へ行ったと彼女のお母さんは言っているが、戦車道の活動の際に会っていないので、お母さんの言っていることと彼女の行動のつじつまが合わないのだ。

 とは言え入り口で固まっているのも迷惑なので、二階にある優花里の部屋に行くことにした。

 そこは畳敷きの部屋で、戦車のプラモデルや雑誌、ポスターなどがすぐに目に入ってきた。特にプラモデルなどは電装が内蔵されているようで、かなりの迫力があった。

 座って待っていると、お母さんがお菓子を持ってきてくれた。

 

「どうぞ~召し上がって頂戴」

「あの~よかったら待ってる間に散髪しましょっか?」

「お父さんはいいから!」

「はい……」

 

 娘の友達が気になるのかお父さんが気を利かせてくれるが、お母さんに一喝されて肩を落として帰っていった。

 

「すみません。瑠香ちゃん以外の優花里の友達がうちに来たのなんて初めてなんで……。何しろずっと戦車戦車で気の合うお友達がなかなかできなかったみたいで、戦車道のお友達が出来て、ずいぶん喜んでいたんですよ」

 

 話の中で出てきた「瑠香ちゃん」というのが通信手候補の友達なのだろう。

 お父さんの狼狽え方を見るに、瑠香ちゃんとやらはかなりの仲のようだ。彼の仲では友達ではなくもう一人の家族のような立ち位置にいるのだろう。

 彼女以外の――少なくとも高校に入ってからの――友達は私達が初めて……と考えるのが妥当だろうか。

 

「いいご両親ですね」

 

 華がそう言った瞬間、二階にあるはずのこの部屋の窓がガラリと開いた。そしてそこからコンビニの制服を着たと優花里と、短めのサイドテールが特徴的な、同じくコンビニの制服を着た眼鏡をかけた子が入ってきた。

 

「ゆかりん?!」

「あれ?皆さんどうしたんですか?」

「秋山さんこそ……」

「どうしたのか聞きたいのはこっちだぞ」

「連絡がないんで心配して……」

「すみません、電源を切ってました」

「つか、何で玄関から入ってこないのよ!あと、後ろの子誰!」

 

 沙織が常識的なことを言及した。

 

「こんな格好をしていると父が心配すると思って……」

「「「「あぁ……」」」」

「あ、この子が通信手候補の……」

「兎山瑠香、よろしく。貴女が優花里の言っていた黒畑殿?」

「君が優花里の言っていた子か。よろしく」

 

 眼鏡をかけた少女、瑠香は一歩前に進み出て私と握手した。

 よく見ると、眼鏡には度が入っておらず、伊達であることがわかった。

 

「伊達なんだね、その眼鏡」

「ほう……よく見ていますね。意外と眼鏡をつけるだけで顔は隠せるんです」

 

 瑠香がニヤリと笑った。

 その拍子に、ポケットに入っているペンが不自然に光を反射した。

 なんとなくだが、彼女の一芸を理解できた。

 

「優花里、この子、スパイオタクか何かでしょ?」

「!」

「ポケットのペン。そこにカメラが仕込んである」

 

 聖グロのGI5、その長官を務めた私ならこれくらい見抜くことは容易だ。

 瑠香の胸ポケットに刺さっているペンに小型のカメラが仕込んである。いや、ペン型のカメラと言った方がいいだろう。これを自作したとするなら、とても手先が器用なようだ。

 

「良く分かりましたね!黒畑殿は通信手に一芸がある方がいいと言っていましたので。彼女なら、問題ないと思うんです」

「で、私は合格?」

「合格も合格。あ、メンバー紹介ね。あの背の高い子が一年生の坂田暁、装填手」

「よろしくお願いします!」暁が勢いよく頭を下げた。

「メカクレの、背の低い子が二年生の百合若林檎、砲手」

「よッよろしくお願いします……」林檎がおずおずと、しかし礼儀正しくお辞儀した。

「で、最後に金髪の子が三年生の竜宮颯、操縦手」

「よろしくな」颯が左手だけを上げて返事した。

「以上と君が私のチーム。オオカミさんチームね」

 

 ようやく、私のチームが完成した。

 これで明日からのチーム練習、更には直ぐ目前まで迫っているサンダースとの試合に万全の布陣で挑むことが出来る。

 私が何とか間に合ったことに安堵していると、瑠香が胸ポケットのペン型カメラを抜き、優花里に手渡した。

 

「西住殿も黒畑殿もいらして丁度良かったです!」

「「?」」

 

 ようやく、何故二人がコンビニの制服を着ているのかの理由が明かされるらしい。

 瑠香からカメラを受け取った優花里は、その両端を引っ張った。すると、真ん中から引っこ抜け、USB端子が顔を出す。

 

「ぜひ、見て頂きたいものがあるんです!」

 

 そして、その撮影してきたデータが入っているらしきUSBメモリを私達の顔に向けてきた。

 なんとなく、何のデータが入っているのか分かった気がした。




 兎山瑠香(とやまるか) 性別 女

・プロフィール
 所属校―県立大洗女子学園
 学年―2年生(普通二科C組)
 所属チーム―Fチーム(オオカミさんチーム)
 担当―通信手
 身長―159cm
 出身―茨城県土浦市
 現住所―自宅である兎山電気(大洗女子学園艦上)
 家族―父(兎山重三)・母(兎山佳奈美)
 誕生日―10月26日(蠍座)
 年齢―16歳
 血液型―AB型Rh-
 好きな食べ物―おむすび・缶詰のコンビーフ
 嫌いな食べ物―唐辛子
 好きな教科―科学
 嫌いな教科―古典
 趣味―小道具づくり
 日課―英新聞の購読
 好きな花―スミレ
 好きな戦車―KV-1

・概要
 戦車道を始める前の秋山優花里の唯一の友達。彼女は戦車ではなくスパイに興味を持っているが、仲は良く、一緒に映画を見たり、手先の器用さで優花里の戦車プラモに電装を組み込んだりしている。
 トリリンガルであり、日本語の他に英語、ロシア語を話せる。また、スパイに憧れて各種暗号を暗記している。(優花里と暗号で会話したりする)
 優花里の紹介でオオカミさんチームに最後に加入した。

・性格 
 スパイ映画の真似をして性格がころころと変わる。その為別に暗くはなく、その気になれば友達が多く出来るはずなのだが、スパイは深く友好関係を持たない。という信条から、幼馴染の優花里以外とはほとんど付き合わなかった。
 戦車道を始めてからチーム全員と仲良くなっているが、オオカミさんチームの面々と特に仲がいい。
 基本的に名字の後に『殿』をつける。

容姿
 黒髪で短めのサイドテール。瞳は黒。小柄なうえにツルペタである。視力は2.0あるが、なぜか伊達メガネをかけている。

特技
 アマチュア無線二級をさも当然のように持っている。
 手先の器用さを利用して煙玉やボールペン型ビデオカメラなどのスパイアイテムを独自で開発している
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