ガールズ&パンツァー 彗星の狼王   作:兵頭アキラ

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大学が秋学期から対面になるので、その時は更新頻度が遅くなります。


今度は私達が

 優花里は部屋においてあるテレビのUSBポートに瑠香から受け取ったメモリを挿入し、電源を入れた。そして彼女はリモコンでチャンネルを操作し、外部入力チャンネルを指定する。

 すると黒バックの画面に戦車のシルエット、『実録!突撃!!サンダース大付属高校』という直球なタイトル。そしてちゃちなBGMが流れてきた。

 

「まさかとは思うけど……」

「そのまさか」

「はい!直接行って撮ってきました。帰る途中にちょこっと編集しただけなので、テロップとかまだ仮なんですけど」

 

 カメラをもってサンダース校に向かう優花里の顔が映り、その横の少し離れたところに素知らぬ顔で瑠香がサンダースの制服を着て歩いていた。

 生徒数の多い学校だからか、始めて登校しているはずの彼女は違和感なく潜り込み、それだけでなく近くを歩いている子たちと談笑すらしている。この手腕はなかなかのものだ。

 

「瑠香さんはもう制服なんだね……」

「ええ。事前に体に慣らしておけば違和感を持たれることは少ないので」

 

 瑠香の言動を見るに本質は冷静沈着なこちらの方で、カメラに映っていた姿が演技なのだろう。ただ、にこやかにしゃべっていることに違和感のないことから、別に苦ではないことがわかる。

 そんなことを考えていると、メインのカメラを持っている優花里も上手く潜入し、制服に着替えたようだ。

 

『これでどこから見ても、サンダース校の生徒です。ハァイ!』

『『ハァイ!』』

 

 優花里が声をかけると対面を歩いていた女子生徒も明るく返事した。

 やはりアメリカの様な校風のサンダースは大体がフレンドリーな生徒のようだ。

 映像が少し飛んで、今度は戦車を格納している格納庫が映った。流石は高校最大の戦車保有校。一望しただけでは映り切らないほどにシャーマン戦車が並んでいる。

 戦車を前にしているからか、優花里のテンションが少し上がっていた。

 

『すごいです、シャーマンがずらり!あれはM4A1型!あっちはM4無印!あっ!わずか75両しか造られなかったA6があります!』

 

 あまりにテンションが上がりすぎて声が大きくなったため、A6を整備していた3人の女子生徒が振り向いた。

 優花里はここが一回戦の対戦校であることも忘れたのか、それとも場を切り抜けるためか、

 

『一回戦!頑張ってくださーい!』

 

 と、エールを送っていた。

 すると、振り返った生徒たちは三人そろってサムズアップで応えた。

 変なテンションだったが、如何やらバレなかったようだ。

 画面が切り替わり、今度は瑠香の方のカメラの映像のようだ。カメラそのものが小型なため、少しばかり映像が悪いが、問題なく見ることが出来る。

 彼女はペンとメモを片手に、他の生徒たちにサンダースの主要人物の情報を集めているようだ。

 

『ハァイ!戦車道部部長、おケイさんについて聞きたいのですが』

『部長のこと?どうして今更……』

『私、一年生なもので。偉大な先輩であるおケイさんやナオミさん、アリサさんのことを聞いて、私も立派な選手になりたいんです!』

『OK!そういう事なら喜んで協力させてもらうわ!』

 

 瑠香はサンダースのフレンドリーな空気を利用し、チームを支える主要メンバーの情報を聞き出していた。

 リーダーであるケイは大胆不敵かつスポーツマンシップに優れ、基本的に前線に出て陣頭指揮を執る。ナオミは豪胆でさっぱりとし、正確無比な砲手の腕を持つ。アリサは条件を満たすためなら手段を選ばない。

と、なかなかにうれしい情報を手に入れていた。

 性格は戦車の動き、戦術の方向性を決定することが多いからだ。

 そして入手した情報を総括すると、アリサがフラッグ車を担当しているという。

 聖グロ時代は情報が自動的に手に入っていたから気にならなかったが、こうしてみると再発見できるところがあると感じられた。

 私は食い入るように画面を見つめていた。

 林檎は目の前にいる瑠香と、テレビから聞こえてくる瑠香の声のキャラの違いに困惑しているようだ。

 

「なっ何かキャラが違くないですか?」

「状況に応じて性格を変えていますので」

「さっさすがはスパイを目指しているだけあります!」

「でしょう?」

 

 林檎が目をキラキラとさせて瑠香を見つめ、見つめられている瑠香はふふんと自慢げに笑った。早くも――しかも、一番性格の暗い林檎と――打ち解けてくれているのを見るに、相性は悪く無いようだ。

 明るく振る舞うのが苦ではない。というより、素の性格は明るいようだ。

 明るく冷静なのが彼女の本来の性格と考えられる。

 テレビに映る映像にデフォルメされたあんこうのアイキャッチが入り、大きなテレビモニターとサンダースの生徒が座っている姿が映った。彼女たちの頭で見えにくいが、舞台のようなものが見える。

 となると、ここはブリーフィングルームという事だ。

 

『全体ブリーフィングが始まるようです』

『では、一回戦出場車両を発表する。ファイアフライ1両。シャーマンA1・76ミリ砲搭載1両。75ミリ砲搭載8両』

『容赦ないようです』

『じゃあ次はフラッグ車を決めるよ!OK?!』

『イエーイ!』

『ずいぶんとノリがいいですね!こんなところまでアメリカ式です』

 

 さっきの瑠香が手に入れた隊長であるケイの情報と照らし合わせると、彼女は持ち前のポジティブさでチームをまとめ上げるタイプのようだ。

 カメラが優花里の方を向いている内に、フラッグ車が決定したようだ。瑠香の方もポケットの位置にカメラがあるため流石に映像では確認できないが、シャーマンであることは確定だろう。

 

「ファイアフライにはナオミかな」

「多分……その可能性が高いと思う」

 

 私の独り言を隣に座るみほが返してきた。

 恐らく、今彼女の中ではどのように戦車を動かすか。で一杯なのだろう。表情から真剣さがうかがえた。

 

『小隊編成はどうしますか?!』

『Oh!いい質問ね!今回は完全な二個小隊が組めないから、三両で一個小隊の、一個中隊にするわ!』

『フラッグ車のディフェンスは?』

『ナッシング!』

『敵には三突がいると思うんですけど……』

 

 ああ、この質問は悪手だ。

 相手しか知り得ない情報を見せるというのは、自分はスパイであると示す自殺行為に等しい。チラリと瑠香の方を見ると、やはり彼女は苦い顔をしていた。

 画面を見ても、この質問を境にナオミとアリサの表情が険しくなっている。

 

『一両でも全滅させられるわ!』

『『おぉ~!』』

『見慣れない顔ね……?』

『へ?!』

 

 遂にナオミが言及した。

 ただよかったのは、私のコメットのことが出なかったことだ。

 高校戦車道において、コメット=ディンブラの図式が成り立っているので、コメットを保有している=ディンブラ、つまり私がいることになる。こうなれば警戒レベルを引き上げられ、勝利は難しくなったことだろう。

 ナオミの言及でこの場にいる全員の視線が優花里に集中した。

 

『所属と階級は?』

『えっあの……第6機甲師団オッドボール三等軍曹であります!』

『偽物だぁぁ!』

 

 ナオミの声でブリーフィングルームが騒然とする。が、隊長のケイだけはお腹を抱えて大爆笑していた。

 偽物だとバレてしまったオッドボール三等軍曹こと優花里は、全力で脱出する。

 

『有力な情報を入手しました!これで、レポートを終わります!』

 

 その声と共に、カメラの映像が途切れて黒バックにスタッフロールが流れた。

 この会心の出来に、胡坐をかいた颯が膝を叩いて大笑いしている。

 同じ操縦手の麻子はローテンションだ。

 

「アハハハ!こういうの好きだぜ?アタシ!」

「何と言う無茶を」

「頑張りました!」

「いいの?こんなことして……」

「試合前の偵察行為は承認されています」

 

 ここで暁が素朴な疑問を投げかけた。

 

「でもバレたんですよね?いろいろと変更されたりしないんですか?」

「あ……」

 

 逃げるのに必死で、優花里はそこまで気が回らなかったらしい。

 そこで、最後まで残っていた瑠香が代わりに答えた。

 

「大丈夫。最後まで残ってたけど、変更はなかった」

 

 そう言ってグッと親指を立てた。

 なら心配はない。

 安堵の表情を浮かべた優花里はテレビから引き抜いたメモリをみほに手渡す。

 

「西住殿、黒畑殿。オフラインレベルの仮編集ですが、参考になさってください」

「ありがとう。優花里さんと兎山さんのお陰でフラッグ車も分かったし、頑張って戦術立ててみる!」

「大船に乗った気でいてくれよ。戦力差はあっても、戦術でひっくり返すことは出来るからさ」

「無事でよかったよゆかりん……」

「怪我はないのか?」

「ドキドキしました」

 

 あんこうのチーム感は全く問題がないようだ。

 私は瑠香の方を向き、

 

「これからよろしく、瑠香」

「ええ、こちらこそ」

「通信手としても、スパイとしても働いてもらうからね」

「望むところです」

 

 固い握手を交わした。

 すでに日が暮れ始めていたので、優花里の家で解散することにした。私とみほは帰り道が同じなので、何時ものように並んで帰る。

 暁と颯、林檎も同じ寮生なのだが、買い物して帰るようだ。彼女たちは直接スーパーの方へ向かって行った。林檎は当然のように暁に抱えられている。もう抵抗することは諦めたようだ。

 みほが歩きながら優花里から受け取ったメモリを眺めている。

 

「今度は私達が頑張らないとね」

「うん、頑張ろう!リクさん」

 

 早く帰って戦術を立てるべく、私達は帰路を走る。

 1回戦までもうすぐだ。




・オオカミさんチーム
 チーム標章―デフォルメしたオオカミの横顔。赤い頭巾をかぶり、懐中時計を銜えている。
 使用車両―巡航戦車コメット

・メンバー
担当        氏名      
・リーダー・戦車長  黒畑リク     
・通信手・機関銃手  兎山瑠香
・砲手        百合若林檎
・装填手       坂田暁
・操縦手       竜宮颯

解説
 1年生が1人、2年生が3人、3年生が1人の5人チーム。
 通信手の兎山瑠香と操縦手の竜宮颯以外は車長の黒畑リクがスカウトした。ほとんど素人だが、各々の特色を最大限生かすことのできるポジションについている。
 名字のモチーフが日本の昔話。リクのみ海外の昔話。
 車長の特性から基本的に単騎で行動し、多数を撃破することが多い。
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