ガールズ&パンツァー 彗星の狼王   作:兵頭アキラ

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リクの仲間集め編スタートです。
誤字・脱字を修正してくれた人に感謝です。非常に勉強になります。


装填手は力持ち

 サンダースとの試合まで一週間。それまでに、コメットの搭乗員を集めなければならない。

 トーナメント抽選会から帰って来た私は、自室のボコクッションの上で腕を組む。

 車長は私が務めるとして、後は四人だ。

 コメットは車長の他に操縦手と砲手、装填手に機関銃手兼通信手が必要だ。

 そのことを自室で悩んでいると、すでにチームを組み、ある程度形になったあんこうチームを率いるみほが鍵を開けて入ってきた。

 

「お邪魔しまーす」

「はーい」

 

 玄関に鍵はかけていたが、みほに必要な時は自由に入ってこれるようにと合鍵を渡しておいたのだ。当然、私もみほの部屋の合鍵を受け取っている。

 私はみほを招き入れ、部屋の真ん中にしつらえたテーブルのそばにあるクッションに座ってもらうと、そのままキッチンに足を運んで紅茶の準備をする。

 

「みほってストレートでよかったっけ?」

「うん。何でもいいよ」

「おっけい。……あ、そこの篭にビスケット入ってるから、好きに食べてて」

「はーい」

 

 聖グロ仕込みの手慣れた動作でティーポットにお湯を入れて温め、その間に二人分のティーカップとソーサーをお盆に用意する。そしてポットのお湯を捨て、二人分の茶葉――この間の感謝を込めてダージリン――とお湯を注いでお盆の上に乗せ、

 

「ダージリンのファーストフラッシュ。あと4分ほどかかるけど、お待たせ」

 

 みほの待つテーブルの前に運んだ。

 そして私はみほの対面のクッションに腰を下ろす。顔を上げると、みほがポカーンとした表情を浮かべていた。

 私は首を傾げ、

 

「何、どうしたの?」

「別に問題があるわけじゃないんだけど……、リクさん、手慣れてるなぁって」

「まあね」

 

 聖グロに通ってて紅茶が入れるの下手ってどうなんだと思いながら、ダージリンが丁度よくなるまで談笑し、お茶をカップに注いで本題に入る。

 みほが口を開いた。

 

「リクさん。コメットの搭乗員なんだけど」

「分かってる。私もずっと考えてた」

 

 彼女が私の寮室にやって来たのはやはり、私のチームについてだった。

 みほにしても生徒会にしても、更には大洗戦車道部としても大きな問題だろう。実際、広報のモノクルがコメットの搭乗員を集めるべく得意の横暴でポスターを作っていた。

 まあ、それでも私が悩んでいるのだから、結果は推して知るべし。

 私はパンと太ももを叩き、

 

「やっぱり足しかないかな!」

「それなら私達も協力する!」

 

 みほはそう言うが、私のためにチームの要である彼女が手伝う必要はない。私のブランクと集まったとしても足りない2試合分の経験値は確実にチームの足を引っ張る。そんなことにみほを巻き込むわけにはいかないのだ。

 

「いや、その気持ちはうれしい。でも、そうなればあんこうの練習の妨げになる。みほ達がチームの要である以上、今は自分のことに集中した方がいい」

「う……わ、分かった。でも、もしもの時は遠慮なく言ってね!」

「了解、キャプテン」

「な、なんかくすぐったいよ~」

 

 そう言ってみほは楽しそうに身を捩じらせる。

 暫くボコ談議で盛り上がった後、みほは自室に戻っていった。

 そして私は早めに就寝し、早朝から仲間集めに挑むとしよう。

 

○○○

 

 6時半に起床した私は、手軽にサンドウィッチを作ってティーバッグの紅茶と共に軽い朝食を作る。そしてそれを食した後、制服に着替えて髪を整え、リュックを背負って学校までダッシュで向かった。

 通学路を走りながら、

 

「まずは一年生からかな!」

 

 今日回るエリアを決める。

 1年生にした理由は特にない。

 しいて言えば、玄関から入って一番近いからぐらいしかない。あとは、兎さんチームは一年生だけで人数も多いから、情報を集めやすいぐらいだろうか。

 

「ええい鬱陶しい!」

 

 プラプラと揺れる三つ編みをむんずと掴み、走る速度を上げた。

 学校に到着した私は教室に向かうことなく、そのまま一年生の教室前を歩いて行く。一応、モノクルから有能そうな生徒のリストは受け取っており、すべて頭に叩き込んではいるものの、あの残念な人のリストが信用できるかどうかは不安が残る。

 とは言え今のところこのリストしか頼れるものがないので、教室を廊下から覗きながら歩いていると、

 

「うわぁ?!」

「え?大丈夫ですか?!」

 

 すぐ目の前に段ボール箱の塊が迫っていることに気づかず、正面衝突してしまった。しかも積まれていた段ボールが顔の位置にあったため、足だけが前に進んでバランスを崩し、廊下に倒れてしまう。背負っていたリュックが衝撃を吸収してくれたおかげで痛みはない。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 一番の問題は、運んでいる――見るからに重そうな――段ボールが私の顔のすぐ前にあり、ぶつかった直後に声が上から降って来たことだ。

 私は「大丈夫大丈夫」と起き上がると、重そうな段ボールを三つ積み上げた背の高い女子生徒を見上げる。

 

「君、一年生?」

「はい!坂田暁、一年生です!」

 

 暁。と名乗った彼女は一年生のようだ。

 

「えへへ、身長が182もあれば一年生には見えませんよね?よく言われます!」

 

 そう言う彼女は今もずっと積まれた段ボールを下すことなく、持ったまま朗らかに会話を続けている。

 私は彼女が非常に気になった。

 

「ずっと段ボール持ってるけど、重くない?」

「全然大丈夫です!鍛えてますので!」

 

 確かによく見てみると、女性らしい肉付ではあったが、がっしりとした筋肉を持っている。

 彼女は装填手にもってこいだろう。

 私はぶつかってしまった詫びに荷物運びを手伝おうとする。

 

「ぶつかった詫びに一つ持つよ」

「いいんですか?」

「ああ、悪いのはこっちだし」

「では、お願いします。重いですよ」

「うわ?!」

 

 私は暁の持つ段ボールを一つ受け取る。授業に必要という受け取ったソレは彼女の言葉通り重く、一つ10キロほどはあるだろう。彼女はこれを三つ重ねて、平然としていたのだ。

 素晴らしい。ぜひ欲しい。

 私が頬をニヤつかせていると、暁が心配そうに、

 

「大丈夫ですか?」

「最初は面食らったけど、大丈夫だよ。これより重いのを持ってたからね」

「ならよかったです!」

「でもすごいね。……ねぇ、君は何選択したの?」

「必修選択のことですよね?私は華道です」

「華道かぁ」

 

 やはり戦車道は選択してなかったようだ。

 だが、「華道を選んだ」と言った暁の表情に少し陰りが見える。私はそこを突くことにした。

 

「どうしたの?何か悩みでもあるのかい」

「ううっ、分かります?」

「露骨に表情が曇ってた」

「やっぱり……」

「言ってみなよ、先輩が聞いてあげる」

 

 私が先を促すと、意を決したのか、暁は悩みを打ち明けてくれた。

 

「私……本当は華道はしたくなかったんです」

「へぇ?」

「私結構流されやすい性格で、華道だって友達に誘われてなあなあで決めたんです。でも、私はもっと、別なことがしたいんです!」

 

 何と言うか、凄く幸先のいいスタートを切った気がするぞ私。

 ええと、装填手にもってこいな一年生が?現状に不満を抱いていると……これは誘うしかない。

 顔を俯かせながら隣を歩く彼女に、

 

「ねえ、戦車道とか、興味ない?」

「戦車道……ですか」

「そう。この間、体育館で資料映像見たでしょ?少なくとも、今やってる華道とは正反対なことだと思うけど」

「でも……」

「ちゃんと説明すれば、君の友達はちゃんと受け入れてくれるよ」

 

 しばらく沈黙が続いた。

 運んでいた段ボールを暁の教室に運び込むと、俯きがちだった彼女は顔を上げてこちらを見つめてきた。

 

「分かりました!相談してみます!」

「上手くいったら教えて。私、2年普通一科A組にいるから」

「はい!」

 

 大きく手を振る、背の高い彼女に背を向けて予鈴が鳴る前に自分の教室に向かう。

 彼女に対して私が出来るのは、上手くいくことを祈るだけだ。幸先のいいスタートを切るという、私の不安の抑制のためにもうまくいってもらわないと困る。

 昼休みになり、みほ達と食堂に向かおうとすると、背が高いゆえに目立つ暁が笑顔で、しかも猛スピードで近づいてきた。

 それだけで私には十分理解できた。

 

「先輩!私、戦車道やります!」

 

 ちゃんと理解を得られたらしい。

 私は小さくガッツポーズした。

 必要な人数はあと3人。

 一回戦のサンダース戦まで、あと7日。




 坂田暁(さかたとおる) 性別 女

・プロフィール
 所属校―県立大洗女子学園
 学年―1年生(普通三科A組)
 所属チーム―Fチーム(オオカミさんチーム)
 担当―装填手
 身長―182cm
 出身―茨城県日立市
 現住所―大洗女子学園女子寮
 家族―父(坂田浩二)・母(坂田翼)・妹(坂田楓)
 誕生日―3月21日(牡羊座)
 年齢―15歳
 血液型―A型Rh+
 好きな食べ物―ジビエ
 嫌いな食べ物―特になし
 好きな教科―体育・保健体育
 嫌いな教科―特になし
 趣味―人助け
 日課―筋トレ・走り込み
 好きな花―向日葵
 好きな戦車―マウス

・概要
 仲間探しのために廊下を歩いていたリクが、重い段ボール箱三つを一気に運んでいる彼女と出会い、戦車道に勧誘した。
 元々は友達に誘われて華道を選択していたが、別なことがしたかったようでリクの助言で相談したところ、応援すると励まされて始めた。それからの彼女は特に難色を示すことなく、ノリノリで戦車に乗っている。鍛え上げられた筋肉と恵まれた体躯でもって、重い砲弾をお手玉のように軽々と、どんな状況であろうとも装填する。
 その大きさから結構有名。

・性格
 非常に感情表現が豊かであり、ころころと表情を変える。また、小さくてかわいいものに目がない。
 可愛いと思ったものには抱き着く癖がある。また対象を小脇に抱え、全力ダッシュすることも。
 心優しく、困っている人がいれば手を差し出さずにはいられない。

・容姿
 少しぼさっとした黒髪ショートカット。ヘアピンで両端に前髪をまとめている。顔立ちは可愛いいより。プロポーションはチーム内最強。腹筋はシックスパックに割れている。カッチカチ。
 動きやすさ重視でスカートは短く、カラフルなニーソを履いている。

・特技
 重い砲弾を軽々と片手持ちし、どんな状況であっても装填できる。オオカミさんチームの攻撃能力を支える人物。
 また、応急手当程度なら完璧に処置することが可能。
 そのパワーを生かして戦車整備にも一役買っている。
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