もしもハジメ君の性格がキツく口調が悪かったら(仮)   作:fruit侍

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少し遅くなりました。総体も終わったので後は期末考査さえ終われば纏まった時間が取れると思います。


幕間3

ボク達は、再びオルクス大迷宮にやって来ていた。しかし、人数は以前よりもちょっとだけ少ない。

 

理由は、愛ちゃん先生の護衛を担当したいという奴が清水君の他にもいたからだ。

 

清水君は、天職上愛ちゃん先生は勇者よりも魔人族に狙われやすい人間だと読んでいたため、愛ちゃん先生の護衛に立候補した。

 

しかし清水君以外の何人かが、戦いから逃げるような形で愛ちゃん先生の護衛に立候補したんだ。

 

その結果、園部という奴が命名した『愛ちゃん護衛隊』が結成された。

 

当然、他の奴等が自分達だけ戦いから逃げるような真似をする奴を許すわけがなく、清水君を含めた護衛隊に猛抗議したんだけど、清水君が愛ちゃん先生を護衛しなければならない理由で黙らせた上に、愛ちゃん先生がそれを了承していたため、奴らは引き下がるしかなかった。

 

というわけで、オルクス大迷宮に来ているメンバーは、前より少ない。といっても、五、六人減っただけだけどね。ボク? 鈴を死なせないためだよ。こんな奴等と一緒じゃ、いつ死んでもおかしくないんだもん。

 

今日で迷宮攻略六日目。

 

ボク達は現在、小休憩に入っていた。今いる階層は六十層。確認されている最高到達階数まで後五層。

 

ボク達の目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていた。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ない。だけど、数人は思い出しちゃうんだ。特に香織なんか、奈落へと続いているかのような崖下の闇をジッと見つめたまま動かなかった。

 

それはボクも例外ではなかった。崖下の闇を見る度に、お兄ちゃんの後ろ姿が脳裏に映し出される。

 

……ここから落ちれば、お兄ちゃんに会えるのかな?

 

「……リン……エリリン!」

 

その声でボクは現実に引き戻された。

 

「大丈夫? 辛そうな顔してるよ?」

 

「……うん。大丈夫だよ」

 

出来るだけ心配させないように、笑顔で返す。鈴も結構無理をしてるはずだ。いらない心配はさせられない。

 

「香織……」

 

そして横では、雫の心配そうな呼び掛けに、強い眼差しで眼下を眺めていた香織はゆっくりと頭を振ると、雫に微笑んでいた。

 

「大丈夫だよ、雫ちゃん」

 

「そう……無理しないでね? 私に遠慮することなんてないんだから」

 

「えへへ、ありがと、雫ちゃん」

 

(……お前が殺したも同然なのに、よくもまあそんな顔ができるよね)

 

雫もまた香織に微笑んだ。香織の瞳は強い輝きを放っている。そこに現実逃避や絶望は見て取れない。自分のせいでお兄ちゃんが死んだとは微塵にも思ってないからだろう。香織がお兄ちゃんに必要以上に構わなければ、お兄ちゃんが落ちることもなかったかもしれないのに。

 

ボクは怒りで手を握りしめた。

 

とここで、偽善勇者君がやって来る。

 

「香織、恵里……君達の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの裏切りに、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ」

 

「ちょっと、光輝……」

 

「今はそっとしてあげなよ!」

 

「雫と鈴は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染であり仲間である俺が言わないといけないんだ。……香織、恵里、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は裏切ったりしない。もう誰も失わせはしない。香織も恵里も悲しませたりしないと約束するよ。そしてもし、南雲が俺たちの前に立ちはだかったら、俺がこの手で倒す」

 

「うるさいよ」

 

ボクが発した言葉で、偽善勇者君が黙った。

 

「君なんかが傍にいてくれたところでボクは全然嬉しくないんだけど? 君みたいな偽善者と一緒にいたら、偽善が移っちゃうよ。君、お兄ちゃんを仲間だなんて思ってなかったんでしょ? だからそんな簡単にお兄ちゃんを倒す、いや殺すなんて言えるんだろうね!」

 

「お、俺は殺すなんて……」

 

「というか恵里、お兄ちゃんって……?」

 

ありゃ、口が滑っちゃったか。まあでも、隠しておく理由もないか。

 

「もうこの際暴露してあげるよ。ハジメ君は、ボクのお兄ちゃんだったんだ。血は繋がってないけどね」

 

「どういうこと!? エリリン!」

 

「ボクの家族はちょっと訳アリでね。毎日のように虐待されてたボクは、一度自殺を試みたんだ。でも、お兄ちゃんが助けてくれた。お兄ちゃんとその両親は、ボクにこれ以上ないほどの愛と幸せをくれた」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! それが本当だとして、何で俺たちに話してくれなかったんだ!?」

 

偽善勇者君のその言葉に奴等は揃いも揃って頷く。檜山とかは、若干殺気も向けてきている。

 

「はあ? 何で君たちに本当のこと話さなきゃいけないの?」

 

「俺たちは仲間だ! 仲間に本当のことを話すのは当然じゃないか!」

 

「仲間ぁ? 君たちボクに本気で信頼されてるとでも? 残念。ボクは君たちのことこれっぽっちも信頼してませーん。仲間だとも思ってないし」

 

誰がお兄ちゃんを邪魔だと思ってる奴等を信頼するもんか。

 

「とにかく、お兄ちゃんを見殺しにした上に勝手に裏切り者だと決めつけて、殺そうとしてる君たちをボクは絶対に許さない。君たちに魔法を撃つことも厭わないから。言動には気を付けた方がいいよ」

 

ボクはこの場にいる全員に忠告する。鈴を除いたこいつらとお兄ちゃんだったら、ボクは迷わずお兄ちゃんを選ぶ。それほど、ボクにとってお兄ちゃんは特別なんだ。ボクからお兄ちゃんを奪ったこいつらを、ボクは生涯、絶対に許さない。

 

「恵里、南雲が裏切ったことを信じられない気持ちは分かる。でも、現実を見るんだ。奴は魔人族側に寝返って、俺達を裏切ったんだ。だから奴がこの世界の人々に危害を加える前に、俺達が倒さなきゃならないんだ」

 

にも関わらず、偽善勇者君はボクを諭すように話しかけてくる。ボクがまだお兄ちゃんを失ったショックから立ち直れてないとでも考えているんだろう。つくづくこいつの頭にはイライラさせられる。

 

「現実を見ろ? その言葉、そっくりそのまま返すよ。そもそも君は何でそんなに割り切れるの? お兄ちゃんが敵として出てきた訳でもないのに、何で裏切ったって確信してるの? お兄ちゃんが裏切ったって証拠はどこにあるの?」

 

「それは、教会の人達が……」

 

「君、教会の人間が言ったことなら何でも信じちゃうの? 君は人の言うことを100%鵜呑みにしちゃうようなバカなの? 君は「俺の仲間が裏切るわけがない!」とか言うかなと思ってたけど、本当は邪魔なお兄ちゃんを殺せる理由を見つけることができて、喜んでるだけじゃないの? つくづく最低な野郎だね」

 

「そ、そんなことは!」

 

そこで偽善勇者君は言い留まる。

 

「ないって言いきれないんだ。もういいよ。これ以上は時間の無駄。君がお兄ちゃんを仲間だと思ってないって分かったし、ボクが今後するべきことも分かったし」

 

「今後するべきことって?」

 

鈴が聞いてくる。

 

「君たちから離れてボク一人で旅に出る。お兄ちゃんを探す旅にね」

 

「そ、そんなの俺が許さないぞ! 大体、俺達は「仲間じゃないって何度言ったら分かるんだよ!」ッ!?」

 

ボクの話を全く聞いてない偽善勇者君に、とうとうボクはキレてしまった。

 

「君、ボクの話を全く聞いてないね! ボクとお兄ちゃんの関係を話したよね? なのに君は、『お兄ちゃんは裏切った、だから俺と一緒にお兄ちゃんを殺そう』って。頭おかしいんじゃないの!? 死ね! 死んで詫びろ!」

 

「落ち着け恵里! 君が南雲を兄だと思っていても、血の繋がりはない他人じゃないか! 本当の兄妹じゃないだろう!」

 

ついに偽善勇者君はお兄ちゃんを殺すことを否定しなくなった。しかもボクとお兄ちゃんが兄妹じゃないとか平気で言ってきた。

 

「だから何だっていうのさ! 血の繋がりがなかったら兄妹って呼んじゃいけないのか! ボクはお兄ちゃんに会いたいだけだ! 例え血は繋がってなくても、この世界にいるたった一人の家族だから! なのに何で邪魔するんだよ! ボクから何回奪えば気が済むんだよぉ……!」

 

ついに、ボクは泣き出してしまった。ボクはただ、お兄ちゃんに会いたいだけなのに。助けられなかったことを謝りたいだけなのに。こいつらは揃いも揃って邪魔をする。そんなにボクを苦しめたいか。そんなにボクは幸せになっちゃいけないのか。

 

「恵里、話はまだ」

 

「いい加減にしろ。光輝」

 

「エリリンに近づかないで!」

 

ボクに近づこうとしてきた偽善勇者君を阻んだのは、メルド団長と鈴だった。

 

「退いてくださいメルドさん。恵里と話をしないと。鈴も退いてくれ」

 

「話をすると言っておきながら、お前は一切こいつの話を聞いてなかったがな」

 

「エリリン泣かせといてまだやる気? これ以上は光輝君でも許さないよ!」

 

二人は真っ直ぐな瞳で偽善勇者君を睨み付けている。しかし対する偽善勇者君も負けじと睨み返している。

 

「ほう? 俺が見てない間に随分と偉くなったな? そんなに自分の思い通りにいかないことが不満か?」

 

メルド団長はその視線に挑発も含めながらそう返す。

 

「エリリン怒らせて、泣かせて、何がしたいの? エリリンは南雲君に会いたいって言ってるんだからそれでいいじゃん! なんで否定するの? そんなに南雲君が嫌い?」

 

鈴も、いつもの鈴とは考えられないような物言いで偽善勇者君に返す。本当にボクはいい親友を持ったなぁ。

 

「ち、違う! 俺は別に南雲が嫌いなわけでも、偉くなったわけでもない! ただ、恵里と話をしたいだけだ!」

 

だからいい加減認めろよ偽善勇者君。本当に現実逃避が好きみたいだね。

 

「休憩は終わりだ。今後お前はこいつと関わることを一切禁止する」

 

「な、何でですか! 俺は「休憩は終わりだ! さっさと進まんか馬鹿者! お前達もいつまで座っている!」ッ……!」

 

メルド団長はあれ以来、人が変わったように厳しくなった。訓練でも子供だからと容赦せず、偽善勇者君の我が儘を一切許さない。まさに鬼教官。お兄ちゃんを助けられなかったことに責任を感じているからだろうが、無理しているようにも感じられる。

 

ちなみに偽善勇者君は、メルド団長が厳しくなったことを、

 

これも南雲のせいだ……あいつのせいで……

 

とご覧の通り、相変わらずお兄ちゃんのせいにしている。聞こえないように小声で喋ってるんだろうが、がっつり聞こえてんだよバカが。

 

メルド団長の方に行ってみると、疲れた表情をしていた。

 

「はぁ……慣れないことをするのは辛いな……」

 

「団長、あまり無理はしないでください」

 

読み通り、無理していたようだ。メルド団長は性格的に、こういうの向いてないと思う。

 

「元はと言えば俺がお前達を甘く育てていたのが原因なんだ。不測の事態に対応できるほどの訓練を施していれば、坊主が落ちることもなかったんだ。俺への罰だと思って、これくらいは我慢しないとな……」

 

「はあ、仕方ないですね」

 

ボクはメルド団長に杖を向けた。

 

「天よ 見えざる所で戦う者に 癒しを与えたまえ 〝癒心〟」

 

詠唱した途端、メルド団長の体が淡く光り、目に活気が戻ってきていた。

 

「お、おお? 何だか疲れが取れた感じがするぞ! お前さん、今何をした?」

 

「〝癒心〟って言って、精神に作用する回復魔法で、疲労回復効果があるんです。ボクが開発したオリジナルの回復魔法です。といってもボクはあまり回復魔法に適正がないから効果は薄いし、魔力量もバカにならないので連発はできないですけど……」

 

「いいや助かった! 感謝するぞ!」

 

いつものように豪快に笑うメルド団長。本当は精神的にも疲労してるはずのお兄ちゃんを癒すために開発した魔法なんだけどね。ここで役立つとは思ってもいなかった。

 

「さて……そろそろだね」

 

繰り返すけど、今ボク等がいる階層は六十層。ベヒモスのいる六十五層まで残り五層。

 

そこで、ボクが夜も寝ずに開発した強力なオリジナル魔法の御披露目といこうじゃないか。

 

火力に関しては問題ない。気になるのは魔力量だが、このために魔力回復ポーションを買溜めしてきた。

 

敵はとるよ、お兄ちゃん。




恵里の離反回でした。勇者(笑)って本当に火に油を注ぐのが上手だなと思いますね。

それと、少しアンケートをしてみたいと思います。

兵器の新名はまだまだ募集中です。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=259253&uid=215423

皆さんが望むクラスメイト(一部を除く)の今後

  • 魔人族に着いていって奴隷化
  • 王都戦争編でハジメ君に一人ずつ処刑される
  • 迷宮で全滅
  • エヒトに強化(建前)されて捨て駒になる
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